GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回は3つの視点での戦闘を書いて行くつもりです。勿論その前にエミ達や冥子の視点も入れていこうと思っておりますが、横島達が激闘を繰り広げている間。残っている面子に何があったのかも、同時に書いていこうと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その7

 

 

リポート24 反逆者達の進軍 その7

 

~東京サイド~

 

ドクターカオスとテレサは塔の近くの一番被害者の多いシェルターで治療活動を行っていたのだが、そこには運悪くオカルトGメンの新入りたちがいて、早く治療しろとかすり傷程度なのに騒いでいた。

 

「悪いが、お前さんらより重傷者は何人もいる。その程度の傷、唾でもつけとりゃなおる」

 

「「「なんだとくそ爺!!!」」」

 

骨折をしているわけでもない、ゾンビに噛まれているわけでもない。それなのに早く治療しろとうるさい連中にドクターカオスが眉を吊り上げ、医療道具を運び込んでいたテレサが不機嫌そうに眉を顰めたその時小柄な影が空を舞った。

 

【のーぶーッ!!!】

 

妙に間延びした声が響き、バシッ!と言う鋭い打撃音が響き、騒いでいた3人が泡を吹いて昏倒する。

 

「お前ついてきておったのか?」

 

【のっぶ!】

 

チビノブがぶんぶんと手を振り、その姿にドクターカオスは溜息を吐いた。

 

「まぁお主のおかげで少し手間が省けたの」

 

「私がやっても良かったのに」

 

テレサの手にも棒が握られており、それで3人を攻撃しようとしていたのは明白だった。恐らく3人はチビノブに昏倒させられたほうがましだっただろう。

 

「手加減とか判らないから、これで覚えようと思ったのに」

 

残像を残しながら素振りをするテレサ。間違いなくテレサに攻撃されていたら骨が砕けていたのは言うまでもないだろう。

 

「無事に切り抜ける事が出来たら、何か作ってやろうか?」

 

ドクターカオスの言葉にコクコクと何度も頷くチビノブにドクターカオスとテレサは苦笑し

 

「ではまずは、暫くは手伝いをしてくれるかの?」

 

【ノブゥ!】

 

くだらないことで時間を取られたと呟き、ドクターカオスとテレサはチビノブも交え、避難している怪我人の治療を始めた。

 

「おいおい、黙って聞いてりゃなんだなんだ!お前達は何様だ!!」

 

「そうよ、貴方達が何をしてくれたのよ!逃げてきて、偉そうに命令して何様よ!!!」

 

「み、皆さん……」

 

ピートが向かったシェルターにはセイレーンがいて、2人でゾンビや悪魔を退けていたのだが、ゾンビが少なくなったら避難してきていた視察団がピートとセイレーンを罵倒し始め、それを聞いていた2人に助けられていた避難してきた人が視察団に怒鳴り始める。

 

「くっ!お前達こそ理解しているのか!吸血鬼のハーフと妖精。そんな相手がいてはゆっくり休むことも出来ないだろう!」

 

「人間じゃないんだから人間の避難所にいるのはおかしいのよ!」

 

視察団の男女の言葉にピートとセイレーンは悲しそうに顔を歪め、それを見て避難し、2人に護られていた民間人が激怒するのは当然の事だった。

 

「そうかい!でもな!俺達はあんちゃんと歌ってくれた姉ちゃんに助けられたんだ!お前達じゃねえ!」

 

「人間じゃないだって!?よく言えたもんだよ!大体あんた達にそんなことを言う資格があるのかい!」

 

味方がいないことに焦り、2人は自分達がGS協会の視察団の人間だと名乗った。いや、名乗ってしまった。

 

「じゃああんた達も霊能者じゃないか!隠れて、怯えて、ゾンビがいなくなりゃ霊能者だってよ!お偉いさんだから自分達の言う事を聞けってさ!」

 

男の言葉に避難してきていた民間人の批難の視線が視察団の2人に向けられる。

 

「霊能者なら、少しでもゾンビと悪魔と戦いなよ!ここにいるGS協会の人は頑張ってくれたよ!」

 

「そうだ、そうだ!怪我しても逃げてくださいって最後まで俺達を庇ってくれたぞ!」

 

徐々に自分達に向けられる批難の声に男女は徐々に耐え切れなくなり、ついには黙り込んだまま、避難所の事務室に閉じ篭った。

 

「あんちゃん達、悪いな、気を悪くしただろ?」

 

「ほら、水と携帯食料持って来たよ。少しでも良いからくいな」

 

「い、いえ!僕は食べたりしなくても平気ですから」

 

「あたしもだよ」

 

良いから良いからと言って水と非常食を抱え込まされたピートとセイレーン。確かに2人は人間では無い、この状況では恐れられても無理は無かった。だけど誠実に助けようとしていたから2人を庇ってくれる沢山の味方がいた、横島だけではない、人間じゃなくても受け入れてくれると言うのが2人には何よりも勝る報酬であり、そして味方であった。

 

「夏子、大丈夫か?」

 

「うん。私は大丈夫やけど、なんか大変なことになってるな」

 

そして銀一が避難して来ている避難所には横島と銀一の幼馴染である夏子の姿もあった。

 

「あーあー、長期休暇やから観光に来たのに、なんでこないなことになるんやろうなー」

 

「でも運よく俺に会えたやろ?」

 

「まー知り合いがおるのは心強い……銀ちゃん!ちょっと私外出るわ!」

 

「おー気を……って!?アホか!なんで外にでるんや!?」

 

夏子から告げられたまさかの言葉に銀一は思わず素の大阪弁が出てしまったが、夏子は止らず避難所の出口に走っている。

 

「外で子供が倒れてるんや!黙ってみてられるかいな!」

 

「ちょっ!あーっ!クソ!俺も行く!」

 

夏子が走って行くのを見て銀一も黙ってみていられる訳がなく

 

「ちょ!?オタクなにしてるワケ!?って!あーもう!!なんで横島の知り合いは考える前に行動するワケ!?」

 

この避難所を担当していたエミは悲鳴を上げながら、2人の後を追って避難所を飛び出していた。

 

「おう、これで最後だぜ」

 

「きゃ~なんでこんなにするの~」

 

「は!俺はオカルトGメンだ、視察団だってやかましい方が悪い」

 

冥子の前に投げ捨てられた、男達は全員生きてるか?と心配になるほどにたこ殴りにされていた。

 

「後で責任追及されたら~どうするつもりなのよ~」

 

「ははっ!!そんなこたあ気にしてねえよ!おーい、もし俺が訴えられるつうたら証言してくれるかー?」

 

「おう!良いぜ兄ちゃん!偉そうなことばかり言って何の役にもたたねえやつより、兄ちゃんの方が俺達を助けてくれたしな」

 

「食べる物も水も独占しようとして、子供のことを考えて欲しかったからね。お兄さんが悪くないって証言してあげるわよ」

 

その言葉に不動はにやっと笑い、首を鳴らしながら椅子に腰掛けた。

 

「つうわけだ、心配ねえ」

 

不動がボコボコにした連中はオカルトGメンだ、視察団だ。俺達に従えといって民間人に命令ばかりしていた集団で、命知らずにも不動にも命令し、叩きのめされた連中だった。

 

「は~私は別にいいけどね~ショウトラちゃん。お願いね~?」

 

【わふ!】

 

とは言え、これで邪魔者はいないと治療を始める冥子を見つめている不動は、窓の外を見てもう目視出来るまでに近づいて来ている隕石に舌打ちをしながら、カーテンを勢い良く閉めるのだった……タイムリミットはもうすぐそこまで迫っていた……。

 

 

 

~美神視点~

 

広間を震わせる獣の咆哮に思わず冷や汗を流し、身体を小さくさせる。視線の先の扉は既に開いていて、陰念と雪之丞の2人が最上階を目指しているはずだ。

 

(ここからは本気って事ね)

 

今までの広間と異なり、やけに広く。そして結界などで構成されていて、私と蛍ちゃん、シズクとくえすの2人ずつで分断されるのと同時に壁がせりあがり迷路のように変化した。思わす舌打ちしたが、その変わりに2人は無傷で上の階層に行く事が出来た。正直2人で何が出来ると思わずにはいられないが、塔の上部のコアさえ破壊してくれれば、後は神魔の援護を得る事も出来る。1人でも最上階に辿り着くことが全員が助かる条件の1つだ

 

「かなり厳しいですね。どうしますか?」

 

「……そうね」

 

私達を分断した上で結界の中に放たれたのは異形の魔獣だった。見た感じは合成魔獣のキメラ、だがその圧力は獣ではあるが神魔に迫っていた。

 

「横島君がいる階層までは手抜き、それから上は本気で妨害にくるみたいね」

 

ここまで温存する事が出来ていた。まだ正式名称もない霊具を起動させる、機械の様な駆動音と共に右手首に装着していたブレスレットから高密度の霊力の盾、左腕には篭手と一体化した剣が展開される。

 

「私は弓みたいですね」

 

「いいんじゃない?向いてると思うわ」

 

蛍ちゃんは盾と一体化したボウガンのような形状だ。霊体ボウガンの発展型と聞いていたが、攻撃力には期待が持てそうだ。

 

(重さは殆ど感じないわね)

 

これだけの重装備だから重さも相当と思っていただけに、重さを感じないと言うのはありがたい。ここまで使う機会が無かったので出発前に蓄えてきた霊力の備蓄も万全だ。問題は使った事が無いだが、そこはぶっつけ本番でやるしかない。

 

「くえすとシズクは大丈夫でしょうか?」

 

あの2人には霊具ではなく、霊力を蓄える腕輪が2つずつ支給されている。2人とも霊力を攻撃に転換するタイプなので霊力が尽きる方がよっぽど危険だ。動きを阻害する防具よりも、そちらを選ぶのは当然の事だと思う。

 

「……蛍ちゃん。話はここまでよ」

 

「……っはい」

 

通路の先から聞こえてきた獣の吐息、生臭い匂いが近寄ってくるのが判る。

 

【グルゥ】

 

話し声……ううん、違うわね。恐らく霊具が起動した時の霊力に反応してこっちに近づいて来ているのだろう

 

「多分だけど、この通路の壁は私達の行動を阻害するための物で、相手はあの巨体でもこの通路を十全に活用出来る」

 

壁がそり上がる前に見たのはライオンを2回りほど巨大化させた獣。見えたのは一瞬だが、前足には岩のような肌があった。

 

「あの巨体でこの狭い通路……普通は無理だと思うんですけどね」

 

常識的に獣を戦わせるなら、広い場所。それなのに狭くするその理由が判らないが、足音を立てて近づいてくるのだから先制攻撃を全力で叩き込ませてもらおう。蛍ちゃんとハンドサインを交換し、通路を背中にして相手が近づいてくるのを待つ、壁越しにでかいのを一発叩き込んでやると左拳を握りこむ。重々しい足音が近づいてくる、私の前に来た瞬間に壁に左拳を叩き込む。壁が砕け、霊力の刃に現れる。舞い違いなく捉えたタイミングだと確信していたのだが……その姿は何処にもなかった。

 

「い、いない!?」

 

間違いなく相手の気配は近づいてきていた、だが蓋を開けると相手はいない。その事に一瞬混乱した、気配も足跡も近づいていたのに何故!?

 

「美神さん!上!!」

 

蛍ちゃんが霊力の矢を放ちながら叫ぶ、顔を上げるよりも先に頭を庇ってその場を飛びのく、重々しい音と共にコンクリートの砕ける音。そして何かが羽ばたく音。

 

「……そういう訳」

 

体勢を立て直した私が見たのは背中に生えた漆黒の翼で、壁の上を滞空し、蠍の尾に似た漆黒の鎧に包まれた尾をこちらへ向けるキマイラ

……いや違う、更に上位の個体だ。

 

「マンティコア……ね。泣きたくなって来るわ」

 

S級の魔物であるマンティコア相手に、しかも移動範囲に制限を掛けられた上で戦う。余りに相手が有利すぎる条件に思わずそう呟いてしまう。だが条件で言えば横島君の方がはるかに不利な条件で戦っている、師匠である私が少しくらい不利だからって諦めるわけにはいかない。

 

「蛍ちゃんはフォローして!出来れば翼狙いでお願いよ」

 

伸ばされた蠍の尾を霊力の盾で受け止めながら、私は蛍ちゃんに向かってそう叫ぶのだった……。

 

 

 

~くえす視点~

 

次の広間に入るなり、シズクと共に結界の中に閉じ込められた。美神達も同じですが、陰念と雪之丞が先に行ったので、コアさえ破壊してくれれば後はどうにでもなる。まずはそれが最優先だ、横島を助けるためにもそれが何よりも大事だ。

 

「それでシズク、相手の気配は判りますか?」

 

「……判らない。こんな相手は初めてだ」

 

シズクが忌々しそうに舌打ちする。結界の中に閉じ込められ、そのまま放置されている。正直ガープがただの足止めなんてしてくる訳がない。この結界の中には何かがいる、だが気配が判らない。索敵能力を持つシズクに期待したが、どうもシズクも分からないとなると相当な隠密能力持ちだろう。時間がない時に、めんどくさい相手を配置してくれたものだ。

 

「……時間がない、広範囲に攻撃するが良いか?」

 

「どうぞ、私もそうするつもりでした」

 

相手の時間稼ぎに付き合うつもりなんてない。向こうが出てこないのなら炙りだしてやるつもりだ、シズクが両手を広げ、そこから水が滴り落ちる。

 

「……お前の遊びに付き合うつもりはない。消えろ」

 

シズクが氷の嵐を放った瞬間――私達は結界に背中から叩きつけられていた。

 

「けほっ……今何が起きましたの?」

 

「……判らない、しかも私が水でダメージを受けた」

 

ギリっとシズクが歯を噛み締める。水神が水でダメージを受けた、それは間違いなくシズクにとっては最大の屈辱だろう。しかし攻撃を放つと同時に叩きつけられていた、それらしい姿も見えず。

 

(なるほど、魔法使いの天敵ですか)

 

火力と範囲攻撃に特化した魔法使い、そしてシズクのような神魔に対するカウンター能力を持ち合わせた隠密能力持ちだ。

 

「さて、どうしますか?シズク」

 

私は魔力が尽きた時の補助武装として拳銃を所持している。聖句や、魔力をエンチャントされているカートリッジを外して、通常のカートリッジに交換しながらどうしますか?と尋ねる。

 

「……余ってるか?」

 

「ええ。ありますわよ」

 

2丁所持しているので1つ手渡し、予備のカートリッジを2つ手渡す。余りシズクは好きでは無いが、今はそんなことを言ってる場合では無い。

 

「……神宮寺、跳べ」

 

シズクの言葉を聞いて反射的に跳躍すると、地面に4つの傷跡がつく。この感じは爪と言う事ですかね、何にせよ獣と言うことに変わりはなさそうだ。

 

「助かりましたわ。では助かるついでに、攻撃の瞬間のことを教えてくれます?」

 

「……言われなくても」

 

私には感知できない、極微弱の殺気。シズクはそれを察知したらしい、相手の姿が判らず、そして魔法も使えない。時間がない今、私とシズクに出来る事が姿の見えない敵の全容を知り、そして何故魔法を反射出来るのか、それを知る事が出来なければ死ぬ。

 

「イライラしますわねえ……時間がないと言うのに」

 

「……全くだ」

 

横島が危険だと言うのにこんなまどろっこしい事をしなければならない事に苛立ち、姿を隠している何かに激しい憎悪を抱く。こういうちまちましたのが一番嫌いなので余計に苛立った。

 

「……下から何か来る、薙ぎ払いだ」

 

シズクが氷で何かを防ぐ、遠心力、薙ぎ払い……氷が砕けた位置。それから姿の見せない襲撃者の位置を予測して引き金を引いた。

 

「そこですわ!」

 

「ギッ!?」

 

何かの呻き声と床に落ちる紫色の血液、これで普通の生き物では無いというのが判った。

 

「……何発当たった?」

 

「掠っただけですわね。大分速いですわ」

 

傷をつければ血液でどこにいるのか判ると言う淡い期待もあったが、敵の姿は見えない。恐らくある程度の自己再生能力は有しているのだろう。それに長い尻尾と来ればある程度の正体の予想もついた。

 

「どうもお仲間のようで」

 

「……みたいだな」

 

恐らくリザードマンのような姿をしていると言う予想がつく。恐らくだが、元々魔界に生息していた生き物をガープが改造して、魔法反射の能力を与えたか、それともその逆に姿を消す能力を与えたか、もしくは寿命などを取り払い、元々持っていた能力を改造されて防衛に配置されたと見るべきだろう。

 

「……時間は無いが、やるしかない」

 

シズクの言葉に判ってますわと返事を返し、表面上は冷静でも早くと急く心を抑えるのに私は必死だった。

 

「……心は熱く、頭は冷ややかに戦いの鉄則だぞ」

 

額に青筋を浮かべているシズクに言われ、お前が言うか?と思ったが、自分よりも動揺している相手を見ると逆に落ち着くのか私は小さく深呼吸をして気持ちを落ち着ける。

 

「言われなくても分かってますわ」

 

ここで私とシズクが切れて力任せに暴れたとしても、それが横島を助ける事には繋がらない。どれだけ怒りを抱えていても心は冷ややかに……それが魔法使いの鉄則なのだから。

 

 

 

~陰念視点~

 

俺と雪之丞の2人で塔の最上階を目指して走っていた、コアを破壊すれば神魔の弱体化をさせている結界を解除出来る。そうすればお師匠様も全力を出せる、2人居ればどちらかが護っている敵を相手にしている間に破壊できると思っていた。

 

「……横島の言うとおりになっちまったな」

 

「ああ」

 

最悪の場合。横島がなんとか道を作るから後を頼むと俺と雪之丞は言われていた。馬鹿な事を言うなと2人で言ったが横島は既に覚悟を決めていたのだろう。

 

『なんか嫌な予感がするんだよ、だから念の為に頼んでおくだけだ』

 

念の為と言っておきながら、こういう展開になる事を横島は予測していたのかもしれない。霊能者と言うのは勘が鋭いから、何かを感じ取っていたのかもしれない。

 

「少しでも早くコアを破壊するぞ」

 

「判ってる!」

 

とにかく俺達には時間がない。腕を振り、息が切れようが階段を登り続ける。そして最上階に着いた俺達を待ち構えていたのは2人の人影だった。

 

(人間……か?)

 

姿形は人間だが、生きているように見えない。その異質な雰囲気が嫌でも俺と雪之丞に警戒心を与え、2人が眼魂を取り出した瞬間にそれは確信に変わった。

 

【セット、ハルピュイア!レディ?】

 

【セット、サイクロプス!レディ?】

 

間に合わない!くそがッ!俺もホロウ眼魂を取り出しボタンを押した。

 

「おおおおおおおーーーーーッ!!!させるかよっ!!!」

 

雪之丞が雄叫びを上げながら魔装を発動させ、駆け出していく。止める間もない事に舌打ちするが、少しでも止めれる可能性があるならそれに賭ける気持ちも判る。

 

【アーイ!オソレテミーヤー!オソレテミーヤー】

 

(なんだ?この違和感は)

 

すぐに俺を襲ってくるパーカーが今日は何故か俺の周りを浮遊する事に留めている。何故と思いながらも襲ってこないなら、それはそれでいいと思いレバーを握り締める。

 

「「「変身!」」」

 

【心中!ゲッチュー!ガクガク!ゴースト!】

 

【ソニックソルジャー!ファントムコールッ!】

 

【ガイアソルジャー!ファントムコールッ!】

 

同時に変身と叫び、俺と2つの人影の姿が変わる。だが2人が変身した姿は機械的でロボットのような印象を受けた。

 

「邪魔!「敵は排除する」」

 

邪魔だと雪之丞が叫び、拳を繰り出そうとした瞬間。水色のパーカーのライダーは無造作に雪之丞の顔面を掴み、信じられない事に雪之丞の身体を持ち上げたのだ。

 

「がっ!ぐっ!?」

 

相手の方が小柄なのに相手は片手で雪之丞を持ち上げ、壁に向かって走り出す。

 

「雪之丞!!「排除する」ぐっぐう!?」

 

その姿を見て思わず雪之丞の名を叫んだが、次の瞬間。俺は横殴りの衝撃を受け、上空に向かって弾き飛ばされていた。

 

「うっぐっ」

 

俺の首を掴んでいるライダーの背中には翡翠色の霊力の翼が生えていて、低空飛行からの体当たりで弾き飛ばされたというのが判った。首に伸ばされている手を必死に振りほどこうとするが、信じられない力で全く振りほどく事が出来ない。

 

「「……繰り返す。敵は排除する、横島忠夫、美神令子以外は抹殺せよ、それが私に与えられた命令。よって抹殺する!!!」」

 

機械的な声が同時に発せられ、俺は上空からの急降下で広間の床に叩きつけられ大きく弾んだ。

 

「げほっ!ごほっ!」

 

凄まじい衝撃に息が出来ない。思わず蹲り咳き込む、反対側でも凄まじい炸裂音がして、雪之丞も同じように壁か地面に叩きつけられたのがわかる。

 

「排除する」

 

「ぐっ!調子に乗るんじゃねえ!」

 

脇腹を蹴ってきたのでそれを受け止め、足を払い倒れた所に拳を振り下ろす……

 

「な!?」

 

だが俺の拳が捉えたのは広間の床で、今目の前にいたライダーの姿は無い。混乱した次の瞬間、背後から蹴りを叩き込まれる。

 

「ぐっ……何が起こってる!」

 

広間の床を抉りながら何とか衝撃を殺して立ち上がり、俺を蹴り飛ばした相手の方を向くが敵の姿は無い。

 

「どこだ!?「ここだ」!?」

 

俺の懐に一瞬に現れていて思わず腕を振るうが、何も手応えがない。

 

「私は量産型レブナントタイプH。貴方のスピードは遅すぎる」

 

「がっ!ぐっ!?」

 

一撃の威力は大してない。だが、連続して繰り出される攻撃は全て急所を正確に射抜いていて、ダメージよりも急所を攻撃されたことで動きが鈍ってくるのが判る。

 

「くっ!こ、この!オラア!」

 

「無駄です、私は量産型レブナントタイプS。貴方の攻撃は私には届かない」

 

無機質な言葉が雪之丞に投げかけられる。雪之丞の拳も霊波砲も完全に無効化されていて、重い反撃を受けたたらを踏んでいる。

 

「余所見をしている暇があるのですか?」

 

「くっ!舐めんなあ!!」

 

大振りではなく、鋭く小さい打撃で少しでも相手の動きを阻害しようとするが、クリーンヒットは愚か、かすりもしない。

 

「無駄です。私とタイプSは、対神魔用にロールアウトされています。人間では決して勝てません、なので抵抗せず死を受け入れることを提案します」

 

無機質に告げられる言葉にふざけるなと拳を握りしめる。勝てないから諦めるなんて情けない真似が出来るか、俺なんかよりも遥かに横島が苦しい戦いをしているのに諦めろって言われて諦めるはずが無い。

 

「「情けねえ真似が出来るかぁッ!!!」」

 

俺と雪之丞の叫びが重なり、繰り出した拳がライダーの顔面を捉え、数メートル吹っ飛ぶ。俺は殴られすぎてぼんやりする頭を数回振って、拳を握り締める。

 

「人間を舐めたらどうなるか、教えてやるぜ」

 

神魔が人間より優れている、そんなのは当たり前だ。だけど人間だって神魔を打倒出来る、傷を付けることが出来る。俺も雪之丞も絶望的な状況でも諦めず立ち上がってきた奴を知っている……だからッ!!この程度で諦めてたまるかッ!!!

 

「「俺はお前をぶちのめして、この塔を破壊してやる」」

 

何度倒れようが、何度血反吐を吐こうが、俺は止らない。横島に頼まれたんだ、男が1度任せろと言っておいて、やっぱ無理でしたなんて情けない真似なんて出来ないから、俺は拳を握り締めそう叫んだ。

 

「そうですか、では排除します」

 

「お好きなように抵抗してください、私は貴方を抹殺します」

 

無機質にロボットのように排除します、抹殺しますと言う2体に向かって俺と雪之丞は同じことを叫んでいた。

 

「「やってみろ、この人形野郎。人間を舐めるのも大概にしやがれ」」

 

 

 

~横島視点~

 

 

背後から来た衝撃にたたらを踏んだ瞬間、胴に槍の一撃が叩き込まれ塔の壁に背中から叩きつけられる。

 

「ぐっふ」

 

その凄まじい衝撃に一瞬息が詰まる。そのまま広間の床に倒れかけるのを足を地面に叩きつけるようにして耐える。

 

【大丈夫か横島!】

 

心眼の言葉に大丈夫じゃないと心の中で呟く、ジャンヌ眼魂。ジャンヌさんの眼魂と異なり、白の姿……多分ジャンヌダルクと言う本来の存在で考えれば、この白い姿が本来のジャンヌ・ダルクなのだろう。その能力は堅牢な防御力……正直この防御力に助けられ、俺はなんとか生きているというレベルだった……1度神宮寺さんの眼魂を使おうとしたが使えなかった。神宮寺さんの多彩な魔法を使えるなら2対1でも何とかなるかもしれないと思っての事だったが使えなかったので、今もこうしてジャンヌ眼魂の高い防御力を頼りにして戦っている。

 

【ふむ硬いね。今のは完全に意識を刈り取ったと思ったのだがネ】

 

モリアーティが観察するような視線を向けてくる。姿も顔も同じなのにその悪意に満ちた表情には嫌悪感しか感じない。

 

「……上の階層にはガープ様が改造した魔獣がいますし、私の量産型もいます。貴方のお仲間は目的を果たせずに死んでいると思いますよ?」

 

だから抵抗は止めたらどうですか?と近づいてきて警告する少女に手にしていた旗を振るう。火花を散らす旗と槍、だがよろめいたのは俺だけだった。

 

「美神さん達を……甘く見るなよ……絶対にやってくれる」

 

俺がここで足止めをしていれば、美神さん達は最上階の結界のコアを破壊してくれるだろう、だから俺はそれを信じて待つだけだ。

 

「……別に私はそれに関して思うことは無いんですけど」

 

振るわれる拳を頭を下げてかわし、地面を蹴って間合いを放す。槍はリーチをつめれば有利と思っていたのだが、間合いを詰めても強い。それなら距離を取ったほうがまだ対応しやすいと判断した。

 

「くっ!」

 

無言で振るわれた槍に肩を抉られ、火花が散る。だが胸を狙われていたのを肩にそらせる事が出来たのなら十分御の字だ。

 

【無理に攻めようとするな。距離を取りつつ、モリアーティは私が見る】

 

無茶を言うといいたくなるが、それが出来なければ俺が死ぬ……地力も戦闘技術もあちらが上。無理だと判っているがやるしかない、それでも心眼がモリアーティを見てくれているのでギリギリ対処出来ている。

 

「……えい!」

 

可愛い掛け声から振るわれる可愛くない薙ぎ払いを旗で受け止める。力はそれほどでもないのだが、ここにモリアーティが加わるとその威力が何倍にも跳ね上がる。

 

【それ!】

 

「ぐっ!!!」

 

その槍にモリアーティの銃弾が当たり圧力が増し、そのまま押し切られてしまう。正確無比な射撃、これが攻撃にも防御にも加わるので厄介だ。

 

「はっ!!!」

 

踏み込みと同時に繰り出される刺突。狙いが肩であるのが判ったので致命傷では無いと判断し、歯を食いしばり耐え。上段から旗を振り下ろすがモリアーティがそれを許すわけも無い。

 

【んー狙いは良いがまだまだ】

 

4つの衝撃を受けたと思った瞬間旗が弾かれ、後退させられる。そして俺の動きが止ったその瞬間に4つの閃光が走り、俺は再び弾き飛ばされていた。

 

「ぐふっ!!」

 

壁に叩きつけられ何度も咳き込む。幾らジャンヌ魂の防御力が高くても、流石に限界が見えてくる。

 

「……そろそろ降参してはどうですか?貴方は稀少らしいのでそう酷い目には合わないと思いますよ?」

 

「……やなこった」

 

咳き込みながら立ち上がり、旗を構える。切っ先が振るえ、目の前が歪むがそれでも不屈を訴える。

 

【信じるねェ、実にくだらない、どれだけ頑張ろうがどうしようもない現実と言う物は存在する。君は私達に回収され、他の人間もサンプルとして実験台になる。それは覆しのない確定した未来なのだよ】

 

俺を見て愚かなと言うモリアーティにうるさいと叫んで、旗を振るい少女を弾き飛ばそうとするが、それよりも先に目の前に文字が浮かんだ。

 

【避けろ!】

 

心眼の言葉を聞くよりも早く横に飛ぶ。文字が光り輝き放たれた炎に肝を冷やす。

 

【ほら、私から注意が逸れた】

 

「がっはっ!!!」

 

心臓を的確に貫く弾丸に上半身だけが大きく弾かれる。変身しているから身体を貫通することは無いが、その凄まじい衝撃に意識が跳びかける。

 

【気絶するな!踏み止まれ!!】

 

心眼の言葉に歯を噛み締めて薄れ掛けた意識を繋ぎ止める。正確無比な射撃が俺の攻撃を、そして移動を阻害する。防御を繰り返し、最後まで持つのか?と言う考えが脳裏を過ぎる。ジャンヌ魂は防御力こそ高いが、攻撃力は低い。それは最初の数回の打ち合いで理解していた、心眼の補助もあり、先手先手を取っているのに防がれる。モリアーティに妨害されているのもあるが、妨害されるのも攻撃力の低さが大きく影響しているだろう。

 

【前に出ると言う方法もあるが、それだとモリアーティが問題だ】

 

心眼と頭の中で相談しながら、横薙ぎに叩き込まれた槍を旗の柄で受け止め、横へ受け流し拳を繰り出す。

 

「……当たりません」

 

だがそれは首を傾げるだけで交わされ、それならばと膝蹴りを放とうとしたが……やはりこれも届かない。

 

【良く頑張るねえ。もうそろそろ諦めたらどうかな?】

 

長い銃身から放たれた銃弾が膝に命中し、苦悶の声を上げた瞬間に少女の拳が顔面にめり込み大きく弾き飛ばされる。

 

「……ぐっ、まだまだぁ」

 

身体は痛い、もう無理だと心が叫んでいる。でもそれでも、それでも俺はまだここで倒れるわけには行かないのだ。歯を食いしばり、視界がぼんやりと滲む中。それでも俺は膝を折らない、意地でも倒れるつもりなんか無い。

 

【レブナント、どうも彼の闘志は折れないらしいね。意識がある限り、彼は立ち上がるよ】

 

「……判りました。では意識を完全に奪いましょう」

 

少女は無感情にガントレットを操作すると全身に凄まじい魔力を纏った。

 

【シンピガン!スカサハ!ファントムバーストッ!!】

 

「影の国へと連れて行きましょう」

 

手にしていた槍を落とし、それを爪先に乗せながら少女が坦々とした声で告げる。咄嗟にベルトのレバーに手を伸ばしたが……俺の手はレバーを掴むことは無かった。

 

「うっ……」

 

積み重なったダメージに足がもつれ、一瞬意識が遠のいた。その時間は数秒にも満たない、本当に一瞬の事。だがこの状況でそれは致命的だった……。

 

「蹴り穿つ死翔の槍【ゲイ・ボルク・オルタナティブ】ッ!!」

 

上空に飛翔していた少女がオーバーヘッドの要領で槍を蹴ってくる。それは空中で分裂し、雨のように迫ってくる。もうジャンヌ眼魂で防ぐことは出来ない、韋駄天でもかわす事が出来ない。

 

【ゲームオーバーチェックメイトだよ。ボーイ】

 

嘲笑うかのようなモリアーティの言葉がやけにはっきり聞こえる。

 

(死ぬ……ここまで……)

 

眼前に迫る死を運ぶ紅い雨。もう今からここまで、諦めるしかないのか……。

 

(違う、まだだ)

 

まだ俺は全てを出し切っていない。まだ、腕も動く、足も動く、霊力も使える。それなのに諦めるのか?足元に転がっている清姫ちゃんの眼魂を握り締めナイトランターンにセットする。

 

【ダイカイガン!ジャンヌ、清姫ッ!ガンガンミナー!ガンガンミナーッ!!】

 

「諸天は主の栄光に、大空は御手の業に。昼は言葉を伝え、夜は知識を告げる。我が心は我が内側で熱し、思い続ける程に燃ゆる」

 

ガンガンブレードから溢れ出た霊力の余波が上空から降り注ぐ、死の雨の第一陣を防いだ。ガンガンブレードの刃を握り、頭の中に浮かんだ言葉をただひたすらに口にする。

 

「我が終わりは此処に、我が命数を此処に、我が命の儚さを此処に。残された唯一の物を以(もっ)て、彼の歩みを守らせ給え」

 

ガンガンブレードから溢れ出ていた霊力が紅く染まり、それと同時に白銀のパーカーも燃えるような赤に染まる……いや、これはきっと燃えているのだろう、この詠唱の通り命の炎を燃やしているのだ。

 

【横島!止めろ!今の状態でこれ以上の魂への過負荷は死ぬぞッ!!】

 

心眼の静止の声が聞こえるが、俺はもう止まらない。いや、止まったら動けなくなるのが判っている。だから動き続ける、立ち止まらないで、諦めないで、心を折らないで俺は前に進み続ける。仮に倒れたとしても――後ろ向きには絶対倒れてなんかやらない、道は前にしかない、そしてどこまでも続いているのだから。

 

「主よ!この身を委(ゆだ)ねます!! 紅蓮の聖女【ラピュセル】ッ!」

 

ガンガンブレードだけではない、全身が燃える炎を纏ったまま前に出る。不思議な事に、痛みは無い、苦しみも無い。降り注ぐ死の雨を弾く、ガンガンブレードを、拳を振るいひたすらに弾き続ける。

 

「……これはちょっと予想外ですね」

 

【私もだよ、まだこれだけの力があったとは驚きだネ】

 

レブナントとモリアーティの信じられないと言う声がやけにはっきりと聞こえる

 

弾く

 

弾く

 

弾く

 

弾く弾く弾くッ!

 

ただひたすらに全身を包んでいる炎に突き動かされただひたすらに槍を弾き続ける。だが半分も弾いていない所で、異変が俺を襲った。身体が力に入らない、ガンガンブレードが重くて仕方ない、気を抜いたらそのまま倒れこんでしまいそうになる。

 

「お……おお……おおおおおお……オオオオオオオオオッ!!!」

 

叫ばないと何かしていないと駄目だ、このままでは消えてしまう。俺は動けなくなってしまう、そんな確信めいた予感に突き動かされガンガンブレードをがむしゃらに振るった――そして……俺の手から乾いた音を立ててガンガンブレードが弾けとんだ。それだけじゃない、ジャンヌ魂も解除されてウィスプ魂に戻っていた事に……この時初めて気付いた。

 

【良く頑張ったよ、だけど、ここまでだ】

 

モリアーティが手を叩きながら、諦めろという言葉を投げかけてくる。だが諦めると言う言葉は俺の中で一番縁の無い言葉だ、まだ動ける。動けるならば、俺が諦める訳が無いのだ。

 

「まだ……まだ諦めて堪るかッ!!!!心眼!手伝ってくれ」

 

【判っている!ここで死ぬ訳にはいかないからなッ!!】

 

霊力で盾を作る、極限まで圧縮して全てを防ぐなんて贅沢は言わない。手でも、足でもくれてやる、だけど頭は守る。頭だけが無事なら、俺はまだ戦える。足を失おうが、腕を失おうが死ななければ俺の勝ちだ。

 

「俺はッ……」

 

耐えてみせる。自分で大丈夫だ、耐えて見せるから先に行ってくれと言ったのに、その俺がここで倒れるわけには行かない。

 

「俺は……諦めないッ!!!!」

 

サイキックソーサーを全力で展開する。だが俺の霊力を振り絞ったサイキックソーサーは無数に降り注ぐ槍には何の意味も持たない、紙のように砕け、死の雨が降り注いだ。

 

「ぐっ。ぐぎっ!!!」

 

音を立てて槍が身体を抉っていく、それでも霊力の集束は緩めない。今で駄目ならもっと圧縮する、もっと、もっと!!!霊力を搾り出せ

 

「あ、あああああああああーーーーーッ!!!」

 

目の前で高密度に圧縮された霊力が渦を巻く、徐々に貫通していた槍が少なくなる。でも駄目だ、まだ足りない、もっと、もっと霊力がいる。そうでなければあの雨を防ぐ事が出来ない、そうでなければ死んでしまう。

 

【これ以上は命に関わるぞ!】

 

霊力をこれ以上使えば命に関わると心眼が言う、だが耐える事が出来なければ、俺はどの道死ぬ。でも俺は死ぬつもりなんてない!耐えてみせる。これで耐えれないならもっと、もっと圧縮して、ほんの少しでもいい致命傷を防ぐ事が出来ればそれでいい。約束を護れないで死ぬつもりなんてない、俺は約束を「護」るんだ!ここで耐えて、皆が戻ってくるのを待つんだ。

 

「う、うおおおおおおおおおおッ!!!」

 

その時澄んだ音色が聞こえた気がした。目の前で渦を巻いていた霊力が集束して、俺の前に集まってくるのがやけにはっきり見えた、そしてそれはそうあるのが当然とでも言うかの用に俺の目の前で結晶化していく、それはグレイト魂の時に眼魂を作る時と同じのように思えた。

 

【そんな、まさか!?早すぎる!?】

 

心眼が何かうろたえている中、眩い霊力の輝きの中。俺は見間違いかもしれないが、ある物を見た。それは翡翠色に輝くビー玉のような何か……その中に刻まれた「護」と言う文字。それが一際輝いた次の瞬間、俺は後方に向かって弾き飛ばされていた……。

 

「ぐっ……く……」

 

【オヤスミー】

 

壁に背中を預けて崩れ落ちる。何とか生きてはいるが……変身が解除され、立ち上がることすら出来ない。蜘蛛の巣状に割れている壁がどれだけの勢いで俺が叩きつけられたのかを如実に現していた。

 

(あ、あれは……)

 

俺の目の前で「護」と刻まれた球体が霊力へとなって消えていく……なんだったんだろうか、今のは……握りこんでいた手を開くと同じようなビー玉が零れ落ちるが、身体の痛みと霊力の消耗で意識が途絶えかけていてそれ所では無い。

 

「これでもう終わりです。大人しくしていてください」

 

【甘いねえ、手足を全て折ってしまえばいいんだよ、生きていればいいんだ。丁寧に扱うこともないさ】

 

ゆっくりと近づいてくる影に、もう駄目かと思ったその時。

 

【ボーイッ!!!】

 

勢い良く扉が開く音と俺を心配する声。その声の聞こえたほうに視線を向けるよりも先に、俺は誰かに抱き抱えられていた。

 

「なん……で?」

 

【ボーイ!大丈夫カ!?生きているのか!?私が判るかネ!】

 

涙を浮かべ俺に駆け寄ってくる教授の顔が俺の目の前にあるのだった……。

 

 

 

 

リポート24 反逆者達の進軍 その8へ続く

 





どの視点もハードモードで進行して行きます。原作よりも早めに文珠に覚醒しましたが、条件的には満たしていますからね。妙神山での修行、生と死の狭間。覚醒する条件は満たしていると私は思っています。次回は横島と陰念の視点をメインで書いていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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