GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回で陰念、雪之丞、横島の戦闘シーンは完結まで書いていこうと思います。かなり長くやってきたリポート24ですが、まだ第2部完結までは大きなイベントが2つほど残っているのでまだまだ続いていきますよ!それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その9

 

リポート24 反逆者達の進軍 その9

 

~雪之丞視点~

 

俺の首を掴んで吊り上げているライダー。何処となく横島に似ているのに感じるのは嫌悪感だけだった。その無感情で機械的な様子が、感情的な横島との違いのように感じて、それが嫌悪感と不信感につながっているのかもしれないと思った

 

(……まだ……動く)

 

魔装術は砕けて、何度も殴られて額が割れて視界が真紅に染まっているが、手も足もまだ動く。血が流れた事で頭に上っていた血も抜けたのだろう……思考が妙にクリアになっている

 

(……だからまだ……俺は戦える)

 

俺の首を掴んでいる相手の手首を震える右手で掴む。すると相手は大きく溜息を吐きながら俺に言葉を投げかけてきた

 

「まだ抵抗するのですか?戦力差はこんなにも明らかだというのに?」

 

相手の攻撃は魔装術を簡単に砕き、俺の拳も霊波砲も防御姿勢すら取らない自然体で防がれる。捨て身で相手の攻撃に自ら飛び込み、相手の勢いを利用しての同時打ちで、額が割れ相手の防御力の高さに左手の指は殆どがあらぬ方向を向いている

 

「ったり前だ……男が約束を破れるわけが……無いだろう……が」

 

この程度で痛いだ、無理だの言える訳が無い。それに何よりも、俺は横島に任せろと言ったんだ。横島が時間稼ぎをすると言って俺なんかよりも苦しい戦いに挑んだ。その姿を見ておいて指が折れた程度で立ち止まれるわけが無い

 

「人間と言うのは理解できないですね。何故合理的に「うっせえ!!」……なるほど、まだ抵抗するのですね?」

 

「ごはっ!!!」

 

首を掴まれたまま広間の床に叩きつけられる。何かが砕ける音が聞こえたが、それは言うまでもなく俺の骨が砕けた音だろう。間違いなく重症だろう。叩きつけと共に俺の首を手放し、息が出来ず悶えている俺を爪先で蹴り上げるライダー。全身が痛いが特に胸が痛い……

 

(肋骨が……逝ったか)

 

呼吸をするたびに胸が痛む、間違いなく今砕けたのは肋骨だろう。だがその痛みのおかげか意識がよりハッキリしてきた

 

「「貴方達は約束も果たせず、ここで果てる。それが運命」」

 

機械的に無理だと告げる。約束を果たせず、俺がここで死ぬ。それが俺の運命だと人形がほざきやがる

 

「……けるな」

 

身体が痛むが、その痛みよりも怒りが上回っていた。約束を守れず死ぬ、それは俺と陰念ならと信じてくれた横島の気持ちを何よりも裏切る事だ……約束を破る事が俺には死ぬよりも辛いことだ。息苦しい中歯を食いしばり、袖で額から溢れる血を拭いながら立ち上がる

 

「ふざ……ける……なッ!」

 

拳を無理矢理握りこむ、折れている指を無理矢理握りこんだので尋常じゃない痛みが走る。だがこんな痛みがなんだ、男の約束を守れないことの方がよっぽど辛い……

 

「貴方の言っている事は理解不能です」

 

「……ぐっ!!!」

 

頭を鷲掴みされ吊り上げられる。頭蓋骨がメキメキと悲鳴を上げているがそれがなんだ。折れている左手で相手の手首を掴む

 

「ダチが頼むって、俺に任せるって言ったんだ!!」

 

この程度の痛みがなんだ、俺はこの程度で止まらない、止ってなんかやらない!!!全力で手を握ると何かが破裂したような音が響いて拘束から逃れる事が出来た。相手は手首を押さえてありえないとか繰り返し呟いている姿が見える。その姿があまりに滑稽で再び左手を強く全力で握り締める

 

「男が任せろって言って出来ませんでしたじゃねえ!!男が1度口にした事を覆せるかぁッ!!!!」

 

思いっきり左拳を振りかぶり、地面を力強く踏みしめながら左拳を突き出す。まるで交通事故のような音が響き、相手の首が大きく捻れてよろめく

 

「力が上がって……想定を超えて!?ありえない、ただの人間がこんなの……ありえるわけがない」

 

パニックになっている姿に馬鹿がと呟き、誰に聞かせる……いや、俺の中にいるであろう悪魔に叫ぶ

 

(おい!いつまで眠ってやがる!てめえだってダチの為に命を賭けたんだろう!?)

 

仲間のために命を賭けたという悪魔、それなら俺と同じだ。なら俺の気持ちがわかる筈だ、約束も守れず、ダチの信頼を裏切る事がどれだけ辛いかを判っているはずだ

 

(あつかましいとは判ってる!だけど力を貸してくれよ!なぁ!)

 

俺の今の力じゃアイツには勝てない。仮に勝てたとしてもそれは相打ちで俺も死ぬという結果だろう、それでは横島との約束を守れたとは到底言えない。弱い俺が敵に勝てないのは判る、だがそれで横島が心に傷を負うなど認められる訳がない

 

(……ギャンギャンやかましい、だがまぁ……お前の気持ちも判らんでもないか)

 

飲み込まれても知らんぞと言うぶっきらぼうな男の声。そして次の瞬間、俺は氷の中にいた。死ぬほど冷たいのに、熱い、熱くて、熱くて、身体が燃え上がりそうに熱い……この熱さを押さえる事など出来そうに無かった

 

「ウォオオオオオオオオーーーーッ!!!」

 

力が溢れて来る。雄叫びを上げながら氷を砕くと砕けた氷はそのまま全て霊力へと変換され、今までの俺の魔装術とは比べられないレベルで霊力が圧縮され正しく鎧と呼ぶに相応しい姿へと変化を遂げる

 

「俺はてめえをぶちのめして、約束を護るっ!!!」

 

その叫びと共にバイザーとフェイスガードが現れる。不思議な事に息苦しさも前が見にくいってことも無い、身体はボロボロで、霊力も枯渇しかけていたのに内から力がどんどん湧いて来る

 

「行くぜ行くぜ行くぜ!行くぜーッ!!!!」

 

ジッとしていることなんて出来ない。拳を握り締め、地面を蹴る。気が付いたら俺は一瞬で5m近い間合いを詰めていた。

 

「「!?」」

 

俺も相手も完全に困惑し、一瞬動きが止ったが、自ら仕掛けたこともあり俺の方が先に我に返り。拳を相手の顔面に叩きつける。今までは命中しても弾かれていた攻撃が完全に相手を捉え大きく吹き飛ぶ

 

「……ずいぶんといい男になってるな」

 

「うっせえ、茶化すな」

 

陰念の方も見た事のない姿に変化し、斧を手にしている。どうも陰念のほうも相手を殴り飛ばして、追いかけて来たって所か

 

「邪魔すんなよ」

 

「それはこっちの台詞だ」

 

俺の敵は青い方、陰念の敵は緑色。互いに邪魔するなよと言葉を交わし、自らが敵と決めた方に向かって駆け出すのだった……

 

 

~横島視点~

 

鋭い風切音が耳元を通っていき、思わず肝を冷やす。俺と教授、そしてモリアーティの戦いは今まで俺が行ってきた近距離の白兵戦などではなく、お互いに目まぐるしく足場を変え、飛び上がり、姿勢を低くする。1分所か1秒ごとに戦況が変わり続ける高速戦闘だった

 

【落ち着くんだボーイ、君はあの銃弾を眼で見て避けれている。落ち着いて、動揺せずに冷静に対処するのだ。射撃は私がサポートしてあげるからネ】

 

大丈夫。俺なら出来ると励ましてくれる教授。モリアーティと教授の声は同じなのに何故こんなにも違うのだろう、やはりその人のあり方とでもいうのだろうか

 

【ジャック!スペード!】

 

銃弾同士が空中でぶつかり、軌道を複雑に変える。それが何度も交錯し、軌道がまるで読めない

 

【右斜め後、左側面、後方からの強襲だ。無理に避けるよりもサイキックソーサーで防げ】

 

【その後はお返しに霊波弾を撃って上げればいい、動揺することも怯える事も無い。照準を合わせて引き金を引く、簡単な話だヨ】

 

心眼と教授の言葉に心の中で返事を返し、跳弾を繰り返し死角から迫ってきた弾丸をサイキックソーサーで防ぐ……実際は大分勢いは殺したが、貫通してパーカーを抉っていったので防げてないのだが……

 

「行け!」

 

ガンガンブレードを銃に変形させ、霊波弾を打ち出す。だがモリアーティは地面に手をつくと、そこを基点に魔力の壁を作り出し、それで直撃を防ぎ

 

【中々やるじゃないか】

 

即座に横っ飛びをしながら掃射を打ち込んでくる。それに肝を冷やしながら、サイキックソーサーを一瞬だけ持つ壁にして後方に飛ぶ。再び中間距離へと俺とモリアーティの距離が離れる。今なら距離を詰めればそのまま押し切れるんじゃないかと言う考えが頭を過ぎる

 

【相手が射撃タイプだから近づくのがセオリーと思うが、それは罠だ。誘い込み大きな一撃で刈り取る、行けると思っても前に行っては駄目だヨ】

 

教授の言葉に踏み込みかけた足を止め、再びガンガンブレードを構える。モリアーティはそんな俺を見て小さく溜息を吐く

 

【なるほど、似たような思考を持つ相手と言うのはこうも厄介か】

 

【あっははは、だとしても私と君ではまるで異なるとも。私には味方が2人もいるからネ!】

 

俺と心眼の事だろうな。教授が上機嫌で返事を返す、それに対してモリアーティは足踏みをして、額に手を当てて

 

【横島忠夫と言う存在は脅威であると把握していたが、それは思っていただけと言う事のようだ。思い切りの良さ、眼の良さ、そして自分の勘を信じて迷う事無く動ける勝負度胸……横島忠夫の評価に関しては改めなければならないようだ】

 

真紅の瞳の不気味さと温度を持たない坦々とした言葉。だがその言葉に込められている殺意と怒気に思わず息が詰まる

 

【レブナントは参戦しなくて良いと言った以上……再びレブナントの協力を得るのは難しい】

 

ちらりとモリアーティが視線を逸らすので、そっちを見るとレブナントと言うライダーに変身していた少女は瓦礫の上に座り、足をパタパタさせながら鯛焼きを頬張っていた。俺の視線に気付くと抱えている袋と俺を交互に見ているので、首を左右に振ると安堵した様子でまた鯛焼きを齧りだす……なんなんだ。あの子は……さっきと全然違う、まるで子供じゃないか……

 

【ああ。レブナントは複合神性型ホムンクルス【アルターエゴプロジェクト】の試作だ。精神は極めて不安定かつ幼い、命令及び戦闘にでも入らなければその精神年齢は8歳程度の幼い物だ。善悪の区別すらあやふやさ】

 

聞いても居ない事をぺらぺらと喋るモリアーティ。しかし複合神性型ホムンクル……アルターエゴプロジェクト……名前だけでも判る。これは相当危険な計画なのだと思う。これをなんとしても聖奈さん達に伝えなければならないだろう

 

【さて何故私がこんなことを言うかと言うと。簡単な話だ、遊びは終わりにしようと思ってね】

 

教授が地面に手をつくと魔法陣が展開される。それを見て慌てて引き金を引くが、魔法陣から放たれている魔力で全てが明後日の方向に弾き飛ばされる

 

【無駄だ。私は既にガープ様には見限られている。自我は口惜しい事にお前と共にいる教授に持っていかれた、私には演算能力しかガープ様に差し出させる物がなかった。それも命じられて行動することしか出来ない哀れな人形だったさ、だからこうして失敗しようが成功しようがかまわない計画に擬似人格をインストールされ送り出された】

 

その言葉は平坦だったが、深い悲しみの色が見て取れた。俺が思わず口を開こうとすると

 

【おっと慰めは無用。仲間になれという言葉も無用、私は最後まで私を現世に呼び戻したガープ様への忠義を貫くまで】

 

魔法陣から姿を現したのは巨大な白い棺……だがそれは機械的で見た目と下りただの棺と言う訳では無いだろう

 

【超過剰武装多目的棺桶ライヘンバッハ……これがお前達の墓標となる!!!】

 

棺から打ち出されたミサイルの雨に絶句する。だが絶句してる場合では無い

 

「ええい!くそ!!」

 

弧を描いて落ちてくるミサイルをガンガンブレードで迎撃していると、今度は地面を抉りながらマシンガンの銃弾が迫ってくる

 

「化け物か!?」

 

サイキックソーサーで防いだのだが、簡単にソーサーを貫いてくる姿に絶叫する

 

【言っただろう?これがお前達の墓標となると!!この程度がライヘンバッハの力と思わないことだ!】

 

棺桶の下部が開いて砲門が姿を見せる。それを見た瞬間尋常じゃない寒気が俺を襲い、思わず足を止めてしまった

 

【ガープの技術力で作られた武器だ!並大抵物じゃないぞ!見てる暇があれば避けろ!】

 

【やばいよ!あれ!絶対やばい奴!!】

 

心眼と教授の声に我に返った後にはもう遅かった

 

【喰らいたまえ!】

 

「ビームウウウウ!?」

 

ごんぶとのビームが広間の床を削りながら迫ってくる姿に絶叫してしまった俺は多分悪くない。うりぼーとかチビのビームを見た相手もこんな気分だったのかと言う的外れな事を考えながら俺はサイキックソーサーを2重に展開し防ぎに入った……のだが予想を遥かに超える威力にサイキックソーサーは簡単に砕け、俺は巨大な霊波の光の中へと飲み込まれるのだった……

 

 

 

~陰念視点~

 

新しい眼魂……チェイサーと言う眼魂は素早さが低下する変わりに、凄まじい攻撃力と防御力を有していた。超高速のヒット&アウェイを繰り返し、上下左右縦横無尽に切り込んでくる相手の攻撃をほぼ無効にするその防御力は確かに頼もしい

 

(だが、このままでは千日手か)

 

この防御力に攻撃力も比例しているのならば、一撃でも直撃すればその一発で流れを変える事も出来るだろう。だが俺の攻撃は当たらず、向こうの攻撃は俺には通らない。完全な千日手だ

 

「オラオラオラッ!!!」

 

「こ、こんな……あり、ありありあり!?」

 

……雪之丞のやつ絶好調じゃねえか。互いの拳がぶつかりあり、弾け飛ぶのだが雪之丞の方が圧倒的に立て直しが早い。相手が1発繰り出す前に2発、3発と叩き込んで相手の勢いを削いでいる。相手が殴られすぎてなんか壊れているラジカセみたいになってきたが、キャパオーバーで思考停止に近いか。上空から降下してきた翡翠の閃光を斧で受け止め弾き飛ばす

 

「……防御力は脅威ですが、攻撃が当たらなければどうと言う事は無いですね、このまま耐えていれば私の勝となる」

 

その言葉に舌打ちする。塔に入ってからの時間の感覚は曖昧だが、もう時間はさほど残されていないだろう。仮に装置を破壊しても、隕石が地表を通過する時のダメージで地上は壊滅的な打撃を受ける

 

(装置は……あそこか)

 

塔の中心にある機械。あれが隕石の誘導装置であり、そして神魔の力を削ぐための装置なのだろう。だが高密度の結界に護られていて仮にこいつを無視して装置の破壊に向かったとしても恐らく攻撃力が足りない……それが判っているから俺は千日手と思ったのだ

 

(なんか無いのか)

 

今までの眼魂には何らかの特殊能力があった、こいつにもこの状態を解決出来る特殊能力が無いのかと思わずには居られない。ライダーがなんらかしらの特殊な能力を持つ筈……いやそうとも限らないのか?特殊な能力を持たぬ代わりに高い身体能力を持つ場合もあるのか……?俺も横島も眼魂の事は殆ど知らない、そう思い込むのは間違いなのか……?

 

「おい!雪之丞!さっさと装置を壊せ!!」

 

相手が早すぎるので俺では出し抜いて装置に近づく事が出来ないので、雪之丞にそう叫ぶが即座に怒声が返ってきた

 

「わーってる!!だけどな!直撃食らったらこっちもやべえんだよ!!!」

 

雪之丞の方が優勢なのはその手数と圧倒的な攻撃力で押しているからだ。そして相手が雪之丞の攻撃力の上昇に動揺しているからだろう、ここで攻撃を緩め装置に向かえば冷静になって流れが相手に戻るかもしれない。それを本能的に悟っているからこそ、装置を破壊する事が出来ないのだろう

 

「シッ!!」

 

「ちいっ!」

 

考え事をしている間も上空から降り注ぐ閃光と翡翠の光となった体当たりを防ぎ、いなし、反撃のチャンスを待つが相手の動きが早すぎて対応出来ない。どうせなら斧ではなく、もっと速度の高い射撃武器が欲しかった。相手に速度に対応出来ない巨大な武器では何の意味も無い……

 

「ぐっ!!!」

 

上空からの急降下キックを咄嗟に斧で防ぐが、かなりの勢いがついていたので防ぐ事が出来ず、吹き飛ばされる

 

「ええい!鬱陶しい……ん?」

 

ダメージは差ほどではないのだが、この調子でヒット&アウェイにしろ、耐久に持ち込まれたとしても霊力が底を尽きて変身が解除されるか、暴走するかの二択しかないと焦りながら体勢を立て直し斧を構えようとした時に気付いた。斧の刃の近くに妙な出っ張りがあることに、それを掴んでスライドさせると眼魂をセットするであろう窪みが姿を現したのだ。

 

(これか?)

 

ベルトのバックルを開き、そこに入っているチェイサー眼魂をセットし、窪みを元に戻すと斧が発光しながら声を発し始める。

 

【ヨクミローヨ、マッテローヨ!】

 

「はぁ!?待ってろってなんだ!?」

 

これで何とかできるか?と淡い期待を抱いていたのに、斧から発せられる声は良く見ろと待ってろの音声に思わずいらだって叫んでしまう。時間がないって言うのに待っていろと言う言葉には煽られている様にしか思えない

 

「どうも逆転の武器ではなかったようですね」

 

馬鹿にするように急降下と共に繰り出される蹴りを受け止める。そのまま足首を掴もうとするが、俺の手が伸びるよりも早く俺の腕を蹴り、反転しながら上空へと逃げる。その舞うような動きに沿うように動く翡翠の尾は流星のように見えた、だが美しいとなどと感じるわけも無く、馬鹿にされているように感じて苛立ちが強くなるのだが

 

「うっらあああああ!!」

 

「あの馬鹿!俺まで巻き込むつもりか!?」

 

雪之丞の雄叫びと地面を殴りつける音、その瞬間周囲の温度が下がり氷柱や氷柱が姿を見せる。それは俺を巻き込みかけていたが、それと同じに俺にとっては最大の好機を齎した

 

「!?」

 

突如目の前に現れた氷柱に正面衝突し、落下してきたライダー目掛け駆け出し

 

「ぶっ飛べッ!!!」

 

ダッシュの勢いと全力で振りかぶった斧の一撃がライダーの胴を捉える

 

「ごぼっ!?」

 

苦悶の声を上げて、身体がくの字に折れて相手がボールのように吹っ飛んだ瞬間。斧の発している声が変わった

 

【マエミローヨ、イッテイーヨ!】

 

「な……な……なにい?」

 

吹っ飛んでいるはずの相手が急激にスローになる。まさか、これがこの眼魂の能力?

 

(相手のスピードを遅くする?……いや、考えてる時間はねえ!!)

 

相手がスローになっている時間がどれほどかはわからないが、さほど時間的な猶予は無いはず、地面を蹴りスローで吹っ飛んでいる相手の懐に飛び込み拳を繰り出す

 

「!?!?!?」

 

火花を散らし吹っ飛ぶが、やはりスローなので少し吹き飛んだだけで終る。相手の動きが鈍いうちに拳と蹴りを連続で叩き込む。その度に相手の姿勢が変な形で空中に留まり、混乱しきっている今が好機だと思い、身体のバネを生かした回し蹴りを叩き込む

 

「がっ!?」

 

スローモーションで吹き飛び、結界のコアの直線状に止ったのを見て腰のレバーに手を伸ばす

 

「男の拳はてめえと、てめえの大事な物を護る為の物なんだとよ、だから俺は!この手に!横島との約束を握り締めるッ!!!」

 

雪之丞が右拳を大きく掲げ、姿勢を低くする。それを見て相手は篭手のボタンを押し込む

 

【シンピガン!サイクロプス!ファントムバーストッ!!】

 

「お前を潰す!お前の存在は危険だ!!」

 

先に駆け出したのは敵の方だったが、俺には何の心配も無かった。雪之丞が負ける訳が無いと判っているから

 

【ダイカイガン!チェイサー!オメガトライブ!】

 

「はぁぁぁ……ッ!」

 

腰を深く落とし右足に霊力が集束するのと同じに跳躍し、空中で反転し飛び蹴りを放つ

 

「これが俺の!誓いを護る拳だああああああッ!!!!!」

 

「ば、馬鹿な!?あ、ありえない、こんな、こんなの!こんなのありえないいいいいいい!!!」

 

青いライダーの拳を左手で弾き、右拳を相手の胴に突き立て駆けて来る。それを見れば雪之丞が何をしようとしているのか明らかで、俺も雪之丞の計画に合わせる事にした

 

「おおおおおおおおおおおッ!!!」

 

「!?!?」

 

最後まで自分の時間が戻らず困惑している相手の胴に蹴りを叩き込み、そのまま結界のコアに突き進む。普通では粉砕できないのなら、挟撃そして、大質量をぶつけて粉砕するしか破壊する手段が思いつかなかった、雪之丞の場合は考えたのではなく、勢いだろうが、野生的な勘と言うのは恐ろしい物だな……

 

「ぶっ潰れろオオオオオオオ!!!!」

 

「おーりゃああああああああッ!!!」

 

敵を直接コアに叩き込み、制御装置は2人を巻き込んで爆発した。殺した……いやホムンクルスだから、そうは言っても気分は良くないか……

 

【オヤスミー】

 

ベルトが消え、変身が解除される。その瞬間ドッと身体が重くなるが気絶するほどではなかった。だが雪之丞は魔装術が砕けると、その場に座り込む。その姿は明らかに疲労困憊と言う様子だった……

 

「……疲れたな」

 

「ああ。だけど……俺達はやったぞ」

 

装置に亀裂が走り爆発していく、俺達に任された仕事はやりきった。これでお師匠様や綱手が何とかして

 

「ごは!?」

 

「雪之丞ーーー!?」

 

爆発した装置から弾丸のように何かが吹き飛んできて、それが雪之丞の顔にめり込むのを見て思わず叫ぶ、なんだよ、命懸けでやりきったのになんでこんなに締まらないんだと思いながら、俺は倒れている雪之丞の顔にめり込んだ物に手を伸ばした

 

「……これは……あいつらの」

 

雪之丞の顔にめり込んでいたもの……それは量産型レブナントと名乗っていた2人組みが変身するのに使っていた、篭手型の変身ツール……その罅割れた残骸なのだった……

 

 

~横島視点~

 

俺は霊波の中に飲み込まれて死んだ。そう思っていたのだが、突然身体が軽くなったような。そんな感覚がした

 

【これは……戻ったぞ!】

 

【ああ!間違いない!!】

 

心眼と教授の嬉しそうな声が脳裏に響き、俺の意思ではなく右腕が動き、そこから放たれた光が霊波を防ぐバリアとなった

 

(……あれ……は)

 

視線の先にはレブナントの攻撃を防いだのと同じ翡翠色の珠から放たれている壁の姿があった。どれくらいの時間放射されていたかは不明だが、珠が罅割れ砕けると同時にビームの放射は止った

 

【なるほど、量産型レブナントは破れたか……】

 

教授が聞き捨てなら無い事を呟く、量産型!?量産型なんて者までいるのか

 

【そうなると神魔が増援に来るのも時間の問題……レブナント、君は撤退したまえ】

 

「元からそう命令されている、じゃあね、教授」

 

少女は瓦礫から飛び降りると黒い渦に飲み込まれるようにして消えた。これで割り込んでくる事が無いけど……彼女に関してはいろいろと謎が残る結果となった

 

【さて、では続きをしようじゃないか。横島忠夫、そして我が半身よ】

 

棺桶を構えるモリアーティだが、その規格外の大きさの射撃兵装によろめいているのが判る

 

【降参したらどうだい?そう酷い扱いはしないと約束するヨ】

 

【ふふふふ、私らしかぬ甘さだ。横島忠夫に影響されているようだな】

 

教授の言葉にモリアーティは小さく笑い、腕が震える中棺桶を俺に向ける

 

【言っただろう?私は最後までガープ様への忠義を貫く!】

 

放たれるミサイルとマシンガン。霊力では無い、物理的な攻撃は言うまでもなく脅威だ。これならば霊力の方がよっぽど対処しやすいと思いながら、その場から駆け出し、マシンガンはサイキックソーサーで防ぎ、弧を描いて降下して来るミサイルは霊波弾で打ち落とす

 

【ボーイ、彼はもう意地になっている。終わらせてあげるのが情けと言うものだヨ】

 

説得は無理なのだろう、あそこまでボロボロでも戦うと言う意志を覆さない事。そこまでガープに心酔しているのか、洗脳されているのかは判らないが、ここまで戦わせると言う事がガープの恐ろしい能力のように思えた

 

【言葉を交わすのこれで最後だ。ぐだぐだと長話をするのは性じゃない】

 

棺桶に霊力と魔力が集まっていくのが判る。俺も腰のレバーに手を伸ばす

 

【ダイカイガン! プロフェッサー!オメガシューティング!!】

 

ガンガンブレードの銃形態の先端に霊力で出来た銃身が追加で現れる。それは上下で分かれていて、鰐の口のように思えた

 

【これが終局の風景だ!!世界崩壊をその目に見るが良いッ!!!】

 

棺桶から放たれる弾幕のようなミサイルとマシンガンの嵐に思わず足が止りかけるが、即座に心眼と教授の声が脳裏に響く

 

【止るな!切り札はある、お前は進め!】

 

【その通り、活路は前にしかないヨ】

 

あの弾幕に突っ込めってか!?いや、でも心眼と教授の言葉だ。それに俺自身もそれしかないと思っていた、逃げれば射程の広い銃弾に撃たれてそのまま畳み込まれると思ったから、そしてもう1つは……

 

(あの時ほど怖くねえ!)

 

マタドールと戦った時も、ガープの複製と戦った時よりも恐ろしいとは思えなかった。だから俺の硬直は殆ど一瞬で自ら弾幕の中に飛び込んだ。視界を塞ぐ銃弾とミサイルの嵐に怖くないと思ったがやっぱり怖い。心眼の切り札はまだかと思わずにはいられない

 

【斜め前!0.4秒後に反転!そのまま0.7秒前進!】

 

教授のコンマ何秒の回避の指示に従いながら少しずつ、少しずつだが前に進む。手にしているガンガンブレードの銃身には既に凄まじい霊力が集束されている

 

【良いか、チャンスは一瞬だ!動揺するなよ!】

 

心眼の怒声が脳裏に響いた瞬間、俺の目の前に存在していた銃弾の壁は存在せずモリアーティの背中が目の前に広がっていた

 

【消え……後!?】

 

モリアーティが振り返る前にガンガンブレードの照準を合わせる。だがこれは俺の意志ではなく、教授が俺の身体を動かした結果だった

 

【さよならだ。同じ私である、君に私はこうして別れを告げよう。疑似宝具展開……別れの時間だとネ!】

 

銃身がさらに展開して複雑な魔法陣が描かれる。モリアーティはふっと笑い

 

【そのようだ。横島、そして異なる私よ、ライヘンバッハは君達に譲ろう。私から、君達への餞別だ。好きに使いたまえ】

 

今までの憎悪に満ちた表情ではなく、柔らかい表情を浮かべたモリアーティは手にしていたライヘンバッハと言う名の棺桶を投げ捨て、両手を広げる

 

【これより先の戦いはより苛烈に、そして激しく、死と破壊を齎すであろう!抗え!立ち止まるな!そして……躊躇うな!】

 

それは俺に対しての助言のように思えた。モリアーティが最後にニッと笑う。それは教授の笑みと同じ物だった

 

【ボーイに対する助言に感謝するヨ。また会おう】

 

【ああ、また会おう】

 

俺の意志ではなく引き絞られた引き金、そしてガンガンブレードから放たれた凄まじい霊波砲がモリアーティの姿を跡形も無く消し飛ばす

 

【オヤスミー】

 

変身が解除され、よろめくと教授に抱きとめられ、そのまま広間の床に寝かされる

 

【休みたまえ、疲れただろう?】

 

確かに疲れている、疲れているけど……1つだけ聞きたかった

 

「なぁ、モリアーティはあれで良かったのかな?」

 

もっと他の道があったんじゃないか?と教授に尋ねると教授は俺の前髪を撫でて

 

【君の優しさは美徳ではあるが、優しさでは救えぬ物もある。モリアーティは君にそれを教えてくれたのさ】

 

そうなのかな。教授の目を見ていると眠くなり、俺はそのまま目を閉じて眠りにへと落ちていくのだった……

 

【教授。1つ頼みがある】

 

【なんだね?】

 

【美神達が来る前にあの瓦礫の周りに落ちているビー玉の様な物を回収して欲しい】

 

【それは構わないが、なんの意味があるのかネ?玩具に見えるが?】

 

【あれが最後の回りこんだ奴の種でな。人に見られると不味いんだよ】

 

【……なるほどネ、判った。回収してくるよ】

 

【ああ、頼む。美神達が来る前にな】

 

 

 

 

~????視点~

 

横島と陰念、雪之丞の戦いが終った頃。塔をゆっくりと登る少年の姿があった。いや少年と言うのは正しくない、姿こそ少年だが。その正体はソロモンの魔神、セーレであった

 

「全くガープも回りくどい事が好きすぎる。有能ならばさっさと回収してしまえば良いんだよ」

 

レブナントと一緒にさとぶつぶつ言いながら横島がいる階層の下の大広間に足を踏み入れたセーレだったが、即座に飛び退く。その瞬間セーレがいた場所が何者かに射撃される

 

「素晴らしい、良い反応と褒めてあげようじゃないか、少年」

 

手を叩きながら姿を見せたのは真紅の銃を手にし、ローブを目深に被った黒い仮面ライダーの姿だった

 

「……お前……何者だ!?なんで気配も何もない!」

 

セーレはこの階層に生命反応が無いと知っていたので何も持たず、現れていた。だが結果は異なり、襲撃者がいた事に動揺した

 

「何者か……か。よろしい、では名乗るとしよう。まぁ、どうせ忘れるだろうがね。」

 

ライダーはそう笑うと手にしていた銃をローブの中に戻し、大袈裟な身振りで自己紹介を始めた

 

「我は未来より来たりて、過去へと進む者。我が名はフォーティス、仮面ライダーフォーティス。真なる歴史の簒奪者である、以後お見知りおきを」

 

「歴史の簒奪者だって?ずいぶんと大きく出たね」

 

セーレはその名乗りに深いそうに眉を顰め。虚空からレイピアを取り出す

 

「大きく出たわけでもなんでもない、純然たる事実であるのだが……まぁ良かろう……君の存在は今ここでは邪魔でしかない。よって、排除させてもらうとしよう。」

 

真紅の銃の銃身をスライドさせ、現れたスリットにカードを装填し、銃口を上に向け引き金を引く

 

【KAMENRIDE ビルド】

 

【KAMENRIDE クローズ】

 

「存分に楽しんでくれたまえ」

 

【鋼のムーンサルト!ラビットタンク!!】

 

【Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!】

 

打ち出された光から青と赤の仮面ライダーが召喚される

 

「な、何なんだ!?何なんだよ!?お前は!?」

 

「言っただろう?真なる歴史の簒奪者である、と。さぁ、少し遊んであげたまえ」

 

フォーティスの言葉でクローズ、ビルドがセーレへと駆け出す

 

「っと!なんだなんだよ!?どうなってるんだよ!うぐう!?」

 

手にしたレイピアでドリルクラッシャーを防ぎ、クローズの蹴りを飛んでかわすが、そこに真紅の銃から放たれた銃弾が叩き込まれ、セーレは呻きながら地面を転がっていく

 

「このままだと面白くないことになるのでね、この歴史を奪わせてもらうよ」

 

【フィニッシュタイムッ!】

 

ローブの下のベルトに装填された何かのボタンを押し込み、ベルトのバックルを回転させる。するとビルドとクローズはエネルギーへと変換され、セーレの身体を拘束し、広間の中をまるで柱時計のような重厚な音が鳴り響く

 

「なんだよ!ふざけるなよ!お前は何者なんだよ!?なんでこんな能力がある!?お前は何者なんだ!」

 

「くどいな、何度も言っているだろう?真なる歴史の簒奪者であると、ではさよならだ。再び会う時までね」

 

【パラドクスタイムブレークッ!!!】

 

跳躍したフォーティスの蹴りがエネルギーとなったビルドとクローズごとセーレに叩き込まれる

 

「う、うわあああああ!?」

 

爆発と共に炎の中に消えるセーレだが、フォーティスが指を鳴らすと炎が消えセーレの姿が元に戻る。だがその目に生気はなく、そして動く気配が無い

 

「さてと……君はこのままレブナントを連れて、拠点へと戻る。フォーティスと名乗るライダーとは遭遇せず、横島忠夫を回収しようともしていない……こんなところか。」

 

 

セーレの頭に手を当てて、球体となった光を取り出すとそれを握り潰すフォーティス。そしてセーレは目の前にいるフォーティスの前を素通りしていく……

 

「なんで僕がこんな使いっぱしりをしなくちゃいけないんだ、全くガープも人使いが荒いんだから」

 

ぶつぶつと呟き、自身をじっと見つめているフォーティスに目もくれず、自身が今登ってきた階段を下りていく

 

「さて今はこんなものかな」

 

フォーティスはローブの中に銃を戻し、変わりに本を取り出すと同時に楽しそうに階段をゆっくりと登っていく、だがその姿は明暗を繰り返し、横島達のいる階層を抜けて上の階層へ辿り着くと鮮やかなにその姿を映し出した。その時にはフォーティスの姿はローブを纏った青年の姿へと変わっていた。

 

「今の段階における横島忠夫がガープ陣営に回収される事態は回避された。今の段階では……ね。横島忠夫……君が『   』であるか、それとも『   』であるか……観察させてもらうとするよ……」

 

ふふふっと小さく笑ったフォーティスは本を開き、その中に吸い込まれるようにして消えていくのだった……そしてそれから数分後、美神達が扉を開け、下の階層にいる横島の元へと走っていくのだった……

 

 

 

リポート24 反逆者達の進軍 その10へ続く

 

 

 




変身組みの戦闘回は終了、次回は美神達の決着編とエミやタイガー達の視点で書いて行こうと思います。最後に出たライダーは平安編、第三部で出る予定でしたが、予定を変更してここで登場しました。彼の目的も今後の物語に関わってくるのですが、セーレを瞬殺した点は大袈裟でもなんでもなく、素でセーレよりも強いという感じです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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