GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回は美神達のサイドの決着と、塔の中にいる面子と外を回っている面子の視点で書いて行こうと思います、それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします



その10

 

リポート24 反逆者達の進軍 その10

 

~タイガー視点~

 

塔の周りをワッシは須田と言う男と一緒に回っていた。ワッシの霊能は戦闘向きでは無いと言う事で、見回りや横島さん達が塔を破壊してからの行動の為に動いていた

 

「よし、次のポイントに行くぞ」

 

瓦礫の上から駆け下りて来る須田。細身で長身、そしてその両手には精霊石で出来た爪型のグローブが装着されている

 

「いい加減何をしてるか説明して欲しいんですジャー?」

 

持ち運んでいる機械はかなりの重要なので、何に使うのか説明して欲しいと言うと、須田さんは地図を広げながら

 

「会長は横島達が確実に塔を破壊してくれていると考えている。あれは隕石のビーコンでもあるが、それと同時に結界の中の悪魔が出現するための制御装置でもあると思われる」

 

悪魔が存在するための制御装置?ワッシが首を傾げていると須田さんは舌打ちして

 

「魔界の悪魔が人間界でそうそう活動出来る物か、あれは魔界と同じ空気を作る、もしくは悪魔に直接魔力を供給するための装置だ。塔が破壊されれば、悪魔は魂食いで魔力を補給しようとする。だから精霊石の結界で悪魔を纏めて消滅させるんだ。来る前に説明しただろう?」

 

「アルファなんちゃらとか、ガンマそーだとか言われても理解出来ないですジャー……」

 

確かに出発前に色々と資料とかグラフとか見せて貰ったんじゃが、余りに専門知識過ぎて理解出来なかった。

 

「ちっ!これだから脳筋は嫌いなんだ」

 

……酷い言われようである。しかし霊能工学の専門用語なんて一介の学生が理解出来る訳がない……

 

(ああ、どうせならエミさんと一緒が良かったんですジャー)

 

何時も組んでるチームで動きたかった……そこまで考えた所で急にふっと身体が軽くなる

 

「……は、ははは!やりやがった。本当にやりあがったな!おい!寅吉とっととずらかるぞ!装置は捨てろ!」

 

須田さんが急に踵を返して走り出すのを見て、呆然としていると

 

「馬鹿やろう!急激に悪魔の行動範囲が縮まるんだぞ!こんな所にいてみろ!俺達は悪魔に喰われるぞ!」

 

そう言われて担いでいた装置を投げ捨て、慌てて須田さんの後を追いかけて走り出す

 

「何処に逃げるんですじゃ!?」

 

「まずは走れ!とにかく距離を取ってから考える!!ちっ!俺の計算よりも1時間も早い!早いのは良いが周りの段取りも考えろ!」

 

ぶつくさ良いながら走る須田さんの後ろを走りながら、ちらりと塔を見る。横島さん達は絶望的な戦いに挑みそれに勝利にした……自分との差があまりに出来てしまった様に思えて、思わず胸が苦しくなる。置いていかないで欲しいと思う

 

(いや違うんですジャー)

 

自分が足踏みしているから、横島さん達との距離が出来てしまったのだ……首から下げた虎の牙のペンダントをワシは知らずに強く握り締めているのだった……

 

 

~美神視点~

 

それは突然の事だった。急に身体が軽くなったのだ、そしてそれが何を意味するかは私も蛍ちゃんもすぐに判った。先に行った雪之丞と陰念がコアを破壊したのだ

 

「キッシャアアアアア!!!」

 

「くっ!こ、このおおおおおおッ!!!」

 

私が足を止めた一瞬にマンティコアが牙をむき出しにして襲い掛かってくるが、それを盾で防いで、そのまま地面を強く蹴り通路にマンティコアを叩きつける

 

「ギギッ!?」

 

今まで自分が優勢だったのに、急に私の力が上がった事に困惑しているマンティコア。全然気付いてなかったが、どうも私達もあの結界の中にいたことで霊能に制限がかかっていたようだ

 

(これで何とかなる)

 

横島君が2対1で戦っているが、それも恐らく既に結界の束縛から開放された聖奈達が向かっているはず

 

「今までずいぶんと調子に乗って……くれたわねッ!!!」

 

篭手と一体化した刃を踏み込んで振るう。今までの踏み込みと違うことに一瞬反応が遅れたマンティコアの尻尾を切り裂く、青色の血を流し怒りの視線を私に向けるマンティコア

 

(……違うわね)

 

マンティコアと思っていたが、少し弱いように感じる。よく考えればガープ達とはいえ、マンティコアを飼いならす、もしくは使い捨ての兵力として使うには戸惑いがあったのだろう。それを結界で私達の能力に制限を掛け、向こうの能力を強化することでオリジナルのマンティコアと誤認させていたのだろう

 

(恐ろしいのはそこじゃないけれどね)

 

尻尾を失い、怒りに身を任せ飛び掛ってくるマンティコアの爪と牙を盾で防ぎ、隙を見て盾自身で殴りつける。今回の事で恐ろしいと感じたのは相手の緻密な戦略だけじゃない、効果が消えるまで自分達も対象に入っている事すら気付かなかった結界だ。これがどれほどの準備で展開出来るかは判らないが、これは明らかに人間用の結界だった

 

(つまり、それだけ本気って事ね)

 

盾の側面でマンティコアの体当たりを受け流し、がら空きの胴に蹴りを叩き込む。体重さがあるのでダメージはさほどでは無さそうだが、それがマンティコアの怒りを買うには十分の攻撃だった

 

「グルルルルルゥゥッ!!!」

 

「何?プライドでも傷ついたかしら?」

 

あのタイミングで私が剣を突き出していたら、それだけでマンティコアは死んでいた。それが判っているからこそ、マンティコアの目には激しい怒りの色が見える。自分を馬鹿にしていると判っているだろうから

 

(……別に舐めているわけじゃないんだけどね)

 

余裕そうな態度こそ保っているが、盾も剣も既に霊力が底を尽き掛けている。だからこそのこの挑発なのである、それは私の予想よりも効果を発揮してくれた。蛍ちゃんには目もくれず、尻尾を切り落とし、自身を挑発している私の姿しか見えていない。私は盾を剣で叩く、澄んだ音が響き渡る。チャンスは一度、そしてその機会を失うつもりは無い、この1回で確実に極める

 

「ほらほらどうしたの?怖いの?」

 

盾を捨て身軽になる。もう霊力も残っていないので、盾としての機能は期待できない。それなら投げ捨てて身軽になった方が良い

 

「ゴアアアアアア!!!」

 

私が挑発していると判ったのか、マンティコアが怒りの方向を上げる。私は盾を捨て開いた手で、太もものバンドに止めてある神通棍を手にする

 

(……本当、横島君といるからイチバチ所か、イチジュウでも挑戦しちゃうのよね)

 

相手は獣、人間よりも俊敏で、人間よりもはるかに凶暴。そんな相手なら確実性を取るのが一番だ、でも自分よりも圧倒的に強い相手にに挑み続けてきた横島君を見ていたからか、武が悪い賭けにも挑んでみようと思ってしまう。ゆっくりと間合いを詰めてくるマンティコアを見据え、最後の餌をまく

 

「え、あ……!?」

 

霊力はとっくに切れていたが、それを自前の霊力で維持ししていたのを消してみせる。そして武器が消えたことでうろたえる姿を演出した瞬間

 

「ぐアアアアアアア!!!」

 

雄叫びを上げて飛び掛ってくるマンティコアに笑みを浮かべる。私は自分の命をベットした、そして私はその賭けに勝った

 

「こっのおおおお!!!」

 

大口を開けて飛び掛ってきたマンティコアの口の中に手を突っ込み、神通棍を伸ばす

 

「っつう!」

 

鋭い牙で腕が少し切れたが、これで最大の急所が露になった。マンティコアから飛びのきながら蛍ちゃんの名を叫ぶ

 

「いっけえええ!!!」

 

「!?!?」

 

最大までチャージし、精霊石で増加された矢がマンティコアの口の中で炸裂する。マンティコアの身体が体内に飛び込んだ精霊石で焼かれ爆発する

 

「ぺっぺ!!さ、流石に近かったわね」

 

「……ほんとですね」

 

2人ともマンティコアの血で全身びしょ濡れだが、マンティコアは倒した。私達を閉じ込めていた結界が砕け散る

 

「……流石に疲れたわ」

 

「……ですね」

 

すぐにでも横島君の元に駆けつけたいのに、立っていられず私と蛍ちゃんはそのまま尻餅をつくようにその場に倒れこむのだった……

 

 

~ビュレト視点~

 

階段を踏み砕く勢いで駆け上がっていく、結界を破壊した事で体の感覚が戻って来た瞬間、俺は跳ね起きて階段に向かって走り出した……

 

(どこまで俺は無様だ!)

 

人間の助けをするはずなのに、俺は何時も後手に回る。こんな有様でガープ達を止めるなんて良く言ったものだ

 

「落ち着いてください」

 

「やかましい!無理してついてこなくて良い!!」

 

落ち着けと叫ぶブリュンヒルデに無理してついてくるなと叫ぶ、俺達を見てくれていたシロとタマモを置いて、俺は上の階層に文字通り階段を踏み砕きながら上の階層へと走る。嫌予感がするのだ、何か俺達は見落としている、そんな気がしてならない……上の階層に感じる魔力が消えた

 

「ちいっ!!!」

 

扉を蹴り開けるが、ここにいたはずの何ものかの姿は無い。僅かに残る魔力の残滓がここに神魔がいたという証だった

 

(この感じ……同類か)

 

間違いない、ガープとアスモデウスのほかにもあいつらの陣営には、ソロモンがいる。他の魔族には判らなくても俺には判る、ここには同胞がいたと……

 

「ブリュンヒルデ!ここを出たら諜報部に連絡を取っておけ!今活動しているソロモンの確認をしろ!」

 

「え、あ……ビュレト様!?」

 

話は後だと叫び、扉を蹴り開けるようにして上の階層へと走る。

 

(綱手はどこだ!)

 

横島の気配が弱い、負傷しているのは確実だ。上の階層にいる回復能力を持つ奴と合流して、上の階層に向かわなければ……

 

「!?」

 

「おや、運が良いと言うのか、それとも悪いのか……御機嫌よう。ソロモンの魔神のビュレト殿」

 

広間に出たとき、俺の目の前には黒いローブを目深に被った男がいた

 

「……お前、あの時の」

 

「おや、私を見つけておりましたか?ははは、些か油断しましたかね」

 

こいつ何者だ?人間……じゃないな?だが神魔でも妖怪とも言いがたい。俺がこの塔を調べた時に姿を消した男……最初は見間違いと思ったのだが、俺達に紛れて塔の中に浸入していたようだ。腰の剣を抜き放つ

 

「何者だ、答えろ」

 

「怖い怖い。か弱い人間には恐ろしくて堪りませんね」

 

肩を竦める男は口元に余裕の笑みを浮かべ、そして俺を見つめてにやりと笑う

 

「魔神ビュレト、かつてアスモデウス、ガープ、ベリアルと共に魔界統一に出たサタンの軍と対決。何時までも終わりのない戦いに空しさを感じ「黙れ!」おっと怖い怖い」

 

俺の剣を身体を仰け反らせ交わした男はローブの中から瓶を投げつけてくる

 

「……エリクサーだと」

 

「ふふふ、必要でしょう?それを差し上げますから、今回は見逃してもらえませんかね?」

 

投げ渡されたのはエリクサーで思わず困惑する。不老不死にさえいたるという霊薬だが、これを希釈して薄めれば人間の傷などは立ちところに治る。だがこれを作れる存在は今はいないはずだ……こいつは本当に何者だ

 

「では失礼を、私はまだ見つかるわけには行きませんのでね」

 

待てと叫ぼうとした俺の声は発せられず、一瞬呆然としていたが

 

「そうだ、エリクサーを届けるんだった」

 

なんで俺はこんな所で立ち止まっているんだ?俺は頭を振りながら階段を走り出すのだった……

 

「私も運が悪い」

 

男は柱の影から姿を見せ苦笑する。最初に来た人間にエリクサーを渡し、記憶を奪う予定だったのに、まさかソロモンに会うとはと肩を竦める男の腰にはセーレを下したフォルティスが腰に巻いていたベルトの姿があった。この男がフォーティスの変身者だったのだ

 

「やれやれ、さっさと撤退しましょうかね」

 

階段の下から近づいてくる気配に男は肩を竦め、閉じていた本を開き。その姿を今度こそ塔の中から消すのだった……

 

 

 

~くえす視点~

 

それは唐突なことだった。シズクと協力し、この中に何体のリザードマンがいるのか、それを調べている時。8体まで数えた所で、身体がふっと軽くなった。それはまるで水の中から出た時のような、全身に掛かっていた重さが無くなる

 

(なるほど……ね)

 

解除されるまで実感できない人間までも範囲内に入れた結界……それはガープが人間を侮っていない証拠であり、そしてその結界をこのタイミングで切って来たと言う事はより本格的な活動を人間界で行うための物であろう

 

「シャアア!」

 

「……失せろ、下等な蜥蜴が」

 

シズクが拳を握り締めると、その目の前で青紫の血の華が咲く。その光景に周囲にいたリザードマンの困惑した気配が伝わってくる

 

「よく今まで好き勝手してくれましたわね」

 

これはお礼ですわと呟き、指を鳴らす。炎の柱がリザードマンを包み込み、黒焦げになった死体が音を立てて崩れ、私の炎で出来たマグマの中に下半身が飲み込まれ、徐々にその中に引きずり込まれていく姿を見て小さく笑う。今まで好き勝手してくれた奴が骨さえも残さず消え去るのは見ていて気分が良いですわ

 

(……弱体化に気付かせず、そして敵対者には対応する装備をですか)

 

黒焦げになったリザードマンの死体には、焦げ1つ無い鏡の様な盾が身に付けられていた。あれでこちらの攻撃を跳ね返していたのだろう。全身がマグマに飲み込まれる前に死体の腕に蹴りを入れ、弾け飛んだ盾だけを回収する

 

「シズク。さっさと片付けますわよ」

 

「……言われるまでも無い」

 

私が結界の中で放った炎は広間の床をドロドロに融解させマグマにより、その温度を急激に上昇させている。私は懐に忍ばせておいた精霊石のナイフに魔力を通して振るう。バターのように結界が切り裂かれる

 

「先に出てますわよ」

 

「……ああ、そうしろ」

 

結界を破壊出来なかったのは、私自身が弱体していたからだ。本調子に戻れば破壊とまでは行かないが、切り裂いて外に出ることなど容易い、私が外に出て数秒でシズクも出てきて、指を鳴らす。結界の中から急激に冷やされたマグマの音が響き渡り、結界を揺らすすさまじい爆発が発生する。結界にこびり付いている青紫の血を見て

 

「薄汚い花火ですこと」

 

「……まったくだな」

 

意図的に発生された水蒸気爆発は結界の中のリザードマンを纏めて吹き飛ばしていた。当初の計画ではシズクの氷の中で自分達だけを護るつもりでしたが、そんな必要はありませんでしたわね

 

「では行きましょうか?」

 

「……だな」

 

横島が心配で仕方ないので余裕を持った喋り方をしている私とシズクだったが、競い合うようにして階段を駆け下りていく……美神達が残ったフロアには内側から爆発したマンティコアの死体が転がっていたが、美神達の姿は無かった

 

「……一応無事だったみたいだな」

 

「そのようですわね」

 

激闘の後はあちこちに転がっている。美神と蛍は1体のマンティコアを相手にしていたようですが、砕けている壁などを見ると恐らく狭い通路に閉じ込められての戦いはさぞ厳しい物だったでしょうね……少しだけ広間に視線を走らせ、下の階層に向かう。

 

「あれは!?」

 

「……」

 

捲れ上がった広間の床や、壁に付いている鋭い攻撃の跡……そして瓦礫の上に突き立っている白い機械的な棺桶……それらをを見るだけで横島の戦いがどれほど厳しい物だったのかが一目で判る。横島はと視線を走らせると横島の側にモリアーティが居るのを見て思わず身構えるが

 

【STOP!私!私だッ!!教授だ!お願いだからもう止めてくれないかネ!?ボーイが寝てるから、誰も止めてくれなくて今まで殴られていたんだから!君達にまで襲われたら私座に帰ってしまうヨ!!!!】

 

よく見るとモリアーティとは全く雰囲気が違う。それ所かたんこぶだらけで泣いている姿を見て、発動しかけた魔法を解除し横島に近づく

 

「シズク、良かった……横島を見てくれる?動かすのは不味いから」

 

横島の様子は酷い有様だった。全身きり傷だらけで、顔には痣まで出来ている。それも当然だろう横島は2人で英霊とライダーを相手にしていたのだから

 

「……大丈夫だ。すぐに治療に入る」

 

シズクが横島の近くに座り込む。私は離れた所で広間を観察している美神に近づく

 

「ああ、くえすね。どう見る?」

 

「どう見るも何も、今回のは失敗してもどうでもいい作戦だったのではないですか?」

 

私達を誘い込み、神魔の注目を集めその陰で暗躍していたのだろう。本気ならば、塔の中に本物のガープが居てもおかしくなかったのだから

 

「となると、ガープの本当の目的は何処にあるのかなって思ってね」

 

「……うんざりしてきますわね」

 

これだけの激闘の後にまた戦いなんて冗談じゃないが、その可能性が極めて高く思わず溜息を吐きたくなる

 

「あいたたっ!お!?蛍!?シズク!?そっちは大丈夫だったのか!?」

 

横島が意識を取り戻し、蛍達を心配するような事を言うが、それよりも先に横島の方がよっぽど心配だったという怒声が響く

 

「先に横島への説教ですか?」

 

「……悩む所ね」

 

そう苦笑する美神と共に横島の元へ向かう。横島は至近距離で怒鳴られた事に耳を塞ぎ

 

「いや、でもあの場合はああするしかなかったし」

 

「そうだとしても格上相手に1人で挑むとかありえないでしょう!?もっと自分の事を大事にしてよ!」

 

蛍の涙目の怒声に横島は謝る事しか出来ず、おろおろしながら視線で私と美神に助けを求めている

 

「蛍。気持ちは判りますが、私達よりも重症な横島に怒鳴るのはどうかと思いますわよ?」

 

「どうせ説教するなら治ってからの方が良いわ」

 

私の助け舟と美神の助け舟だか良く判らない言葉に、渋い顔をする横島。勿論私だって思う事はあるのだから

 

「怪我が治ってからですわよ?」

 

「……はい、すみませんでした……」

 

しょんぼりしている横島を見ているとシズクは横島の頭の上に水を振りかけながら

 

「……霊体はそれほどでもないが、身体はずいぶんとボロボロだな。大丈夫か?」

 

「え?そう?あんまり痛くないけど」

 

……痛みを感じないほどボロボロと言う事を自覚して欲しい物ですわね。私達が全員溜息を吐いているのを見て首を傾げている姿を見て、きょとんとしている横島に心からそう思う

 

【あのー私も身体ボロボロだから少し休ませて貰うヨ】

 

教授はそう言うと横島の側に転がっていた眼魂の中に消えていく……教授の眼魂で勝った?いや相手と同じ能力を持つ眼魂だったとしても、それでモリアーティとはイーブン、もう1人のライダーの対策とはなりえない

 

「何があったの?」

 

「いや、俺もよく理解して無いんですけど……心眼がなんとかしてくれたのかな?」

 

心眼が?横島のバンダナに視線が向くが心眼は何の反応も見せない、ここでだんまりとか止めて欲しいんですけどね……そんなことを考えていると上の階層へ続く扉が開き陰念と雪之丞が互いに肩を貸しながら姿を見せる

 

「ちょっとすいません」

 

横島はそう謝ると、顔を顰めながら立ち上がり2人に近づき。手を上げる、2人はそれを見て苦笑しながらふらふらながら横島に近づき、勢い良くハイタッチする

 

「ああいうの、私には理解出来ないわね」

 

「……男同士のあれだろ、女には理解出来ないさ」

 

苦笑するシズク……まぁ確かにあれは私達には理解できないですわね。へたり込んで痛みに顔を歪めながら笑っている馬鹿達の考えなんて理解出来る訳が無い。下から駆け上がってくる気配と足音……私も美神達もその場に座り込む。意地で立っていたけど、限界なんて勿論とっくの昔に超えていた……助けが来たなら無理をして立っている意味は無い。大人しく救助されよう……次の戦いはすぐそこに迫っているだろうが……今はこの戦いを終らせる事が出来た。それで良しとしましょうかね……勢い良く開いた扉の音と駆け込んでくる足音を聞きながら私の意識は闇の中に沈んでいくのだった……

 

 

 

~唐巣視点~

 

ふーっと大きく息を吐き、握っていた拳を開き、眼前に倒れている男達を睨みつける。彼らは今の今まで避難所に隠れていたのだが、安全と判った瞬間に出て来て、自分達が主導で今回の事件は解決したとする為に車で避難所を回っていた琉璃君を害そうとしたのだ

 

「なにをしたか判っているのか?唐巣神父……私達が主導になれば、君の破門だって取り消せる」

 

「悪いが今の自由な立場も気に入っていてね。それに何で私が君達の下に付く理由がある?」

 

私も見てきたが、避難所で自分は偉いだのなんだの言っていた視察団への評価も、オカルトGメンの職員も気に食わない。自分の危険を理解して、それでも動いていた琉璃君を裏切り理由にはならない

 

「お前!なんでそっちについている!躑躅院!お前を呼んだのは私だろう!」

 

「呼んだ?は!なぜ私がお前のような格下に従うと思ったんだ?私はお前達が企んでいるクーデターを公表する為に東京に来ただけだ」

 

躑躅院の冷酷な色が宿った瞳に黙り込むオカルトGメン。中性的な容姿と名を明かさないので男か、女か判らないが彼が身に纏う空気は間違いなく支配者のそれだ。同じ風格を持つ琉璃君や冥華さんとは別方向の圧倒的なカリスマの持ち主だ

 

「それくらいで良いんじゃないかな?」

 

「唐巣神父か、ふむ。私がどうこうしたわけでは無いがね?」

 

まぁ叩き伏せたのは私とあそこで腕を回している大男……不動君の2人だけだけどね。

 

「あー良い喧嘩だった。最高だな」

 

不動君がもっぱらだ。話を聞くまでも無く殴る蹴る、投げ飛ばす。男も女もお構いなしの彼には正直苦笑するしかないな……そんなことを考えているとオカルトGメンのマークの付いた車が止り西条君が姿を見せ

 

「霊能法違反で全員検挙する!」

 

逮捕状か……この状況でよく裁判所が発行してくれたなと思いながら躑躅院に近づく

 

「今回は協力してくれて助かったよ」

 

「日本の危機だ。協力するのは当然だろう?」

 

……嘘だな。耳触りの良い事は言っているが、彼は本当の事を言っていない。私の視線に躑躅院はふっと小さく笑い

 

「ほら、英雄の帰還だ。労わなくて良いのかな?」

 

塔から出てくる美神君達の姿が遠くに見える。彼の事は気になるが、戻って来た美神君達を労わない訳には行かない

 

「……ずいぶんと厄介な相手だね」

 

「はい、彼はちょっと底が見えないです」

 

今回はこうして協力する事が出来た。だが彼がいつまでも味方でいるとは思えない

 

「彼の扱いは細心の注意を払った方が良い」

 

「……判っているんですけどね。今回の件にはずいぶんと協力してくれたし、無碍にも出来ないんですよ」

 

厄介な相手だね。年若いが、この根回しの良さ。相手が断れない状況を作り出す手腕は魔窟とも言える陰陽寮で鍛えられた物だろう。今の琉璃君では対処出来ないほどに老獪な相手だ

 

「後はあの隕石を……」

 

神魔の力が戻った。後はあの隕石を破壊して貰えばと言いかけた時、東京タワーの方角から金色の閃光が走り、隕石を砕いた

 

「……ビュレトさんでも、ブリュンヒルデさんでも無いね」

 

「魔人姫……どこかにいるって言ってたけど、日本に居たのかもしれないですね」

 

魔人の長。魔人姫、それが東京にいる可能性が今の一撃で浮上した……私達は揃って溜息を吐きながらも、絶望的な戦いに挑み、そして無事に戻って来てくれた美神君達を笑顔で出迎えるのだった……

 

 

 

~ベルゼブル視点~

 

横島達が無事に結界を破壊した事で身体に掛かっていた負担は消えた。これで降下して来ている隕石を破壊が可能になった、横島が頑張ったのだから、あれくらいは私の方で処理をしようと思い立ち上がろうとするとルイ様に肩を掴まれた

 

「ルイ様?」

 

「彼女がやる気みたいだからね、邪魔をしない方が良い」

 

魔人姫に視線を向けると奴は楽しそうに笑いながら立ち上がり

 

「ああ、良い物を見た。横島……やはりお前は我らの末席に座るに相応しい」

 

「何を勝手なことを言っているんだい?彼は私の玩具だよ」

 

……魔人姫もルイ様も言っている事は同じレベルだと思うんだが、2人の怒気と魔力がぶつかり合い空間を歪めるのは止めて欲しい

 

「まぁ良い、それを決めるのは横島だからな」

 

立ち上がった魔人姫の姿が一瞬で変わる。赤いワンピースが赤黒いドレス姿へと変わり、背後には金色の鎧が浮遊している……

 

(これが……魔人の頂点)

 

ルイ様で慣れているから倒れる事は無いが、その圧倒的な魔力と神通力。そしてその存在感はルイ様に匹敵すると思われる

 

「ネロ、パンツ見えてるけど?」

 

「ははは、見せて恥ずかしがるものでは無いわ」

 

一部が透けているスカートからは、下着が見えているし、背中は丸出しで、僅かな布が見えるが尻まで見えている

 

(痴女か……酷い服装だ)

 

同じ女としてあれは正直どうかと思う。だが魔人姫からすればそれは自分の美を最大限に引き出す服装と言う事なのかもしれない

 

「餞別だ。見るが良い、余の一撃をッ!!」

 

魔人姫が虚空に手を翳すと炎が溢れ出し、炎その物が剣となったような歪な大剣がその手に握られていた

 

「本当なら余の劇場を出す所だが……そこまでする必要もあるまいて……星馳せる終幕の薔薇【ファクス・カエレスティスッ!!】」

 

力任せの技では無い、軽やかなステップから放たれた剣の一撃は金色の閃光となり隕石を貫く。その圧倒的な破壊力に思わず息を呑む……

 

「おっと、このまま地球に落としては被害が出るな」

 

魔人姫が拳を握り、それを開くと降下して来た隕石の破片は跡形も無く消失していた

 

「うむ。これで良い」

 

ドレス姿から再びワンピース姿になり、座り込む魔人姫。見た目は子供だが……この力。間違いなく、ルイ様に匹敵している……そうで無ければ、ルイ様とタメ口で喋る事など不可能だろう

 

「所で、ネロ。もう少し付き合わないか?」

 

「ん?まだ催し物があるのか?」

 

「横島の所に遊びに行こうと思うんだ」

 

「その話乗った!して何をして遊ぶのだ?」

 

物凄く嫌な予感がする……この邪悪とも取れる笑みは何度も何度も見てきた。そしてそれは高位の神魔にとってはトラウマとも言える笑み……

 

「ポーカーだ。賭け事は面白いじゃないか」

 

「ほほう。それは面白そうだな」

 

数多の神魔を泣かして来たルイ様のギャンブル好き。それが横島へと向けられようとしていて、それを止める事が出来ない事に私は心の中で横島への謝罪を口にするのだった……

 

 

リポート24 反逆者達の進軍 その11へ続く

 

 




次回は後始末の話を書いて行こうと思います。その次は別件なしでリポート25で日常系の話に入って行こうと思います、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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