GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート24 反逆者達の進軍 その11
~オーディン視点~
東京に迫っていた隕石が粉砕され、結界も破壊された。だがそれを喜ぶ者はこの部屋の中には居なかった……何故ならば、全員が全員あれを知っているから、地上から放たれた黄金の閃光は今この部屋にいる上層部の全員に深い傷を与えていたからだ
「……魔人姫マザーハーロットか」
アマイモンが小さく呟いたが、その声は会議室に驚くほど響き渡る。魔人姫マザーハーロット……最上級の神魔しか知らぬ魔人達の頭領の名……ルイ様に匹敵する。すなわち最高指導者と同格の力を持ち合わせる魔人達の長。それがマザーハーロット……聖書にも名を刻まれた別名バビロンの大淫婦とも呼ばれる存在だ
「復活しているのは知っていたが、まさか東京に陣取っているとはな」
即座に兵士を送りましょうと言う部下達を一喝する。静まり返る会議室に我は咳払いしてから
「魔人姫には四騎士が付き従っている。人間界を滅ぼすつもりか?」
我の言葉に黙り込む部下達、今事を構えればそれこそ四騎士達はその権限を使い人間を殺すだろう。人間に対する絶対的な上位存在が四騎士だ。しかし神魔にとってもその力は脅威である……
「……今は何もしない、これしか道は無い」
魔人と戦った時は神魔の両方が協力し、やっと戦う事が出来た。ガープ達と戦っている中で魔人とも戦いになればそれは互いを滅ぼし合う物にしかなりえない
「オーディン様。余りにそれは消極的過ぎるのでは?やはりここは攻めるべきだと」
「愚か者が、ただでさえガープに不覚を取っていると言うのに、ここで魔人とも会戦になってみろ。それこそ挟撃に、相手が協力し合うこともある。敵を増やして全滅するつもりか?」
アマイモンの正論に言葉に詰まる部下。人間などどうなろうが構わないと思っている一団だからこそ、攻め込めと言う部下を睨む
「とりあえずだ、今魔人は神魔には攻撃を仕掛けてきていない。人間には悪いが、積極的に対処に出る事は出来ない」
魔人姫は気紛れだ。今は人間を相手に遊んでいるようだから良いが、ここで神魔が大軍で来て再び戦争へと舵きりさせる訳にはいかない
「その代わり神魔からは人間達に手厚い援助を行う。まずは東京の復興、それと医療班をすぐに派遣しろ」
東京に現れたガープの塔と隕石。そしてそれと同時に各陣営に攻め込んできたアスモデウス達、今までの小競り合いなどではなく、本格的な戦争が始まろうとしているのかもしれない。我の言葉に返事を返し、会議室を出て行く神魔を見送りながら我を見つめているアマイモンに視線を向ける
「……消極的と思うか?」
「いや、今はこれでいいと思う。あまり戦局を広げてはそれこそ対処が間に合わなくなるからな」
少数精鋭の魔人一派と電撃戦と絡め手を得意とするアスモデウス一派。そのどちらも難敵であり、その両方を相手取るわけにはいかないから我は人間達の世界は人間達に何とかさせる手を打つしか出来なかった……
(竜神王が回復するまでは我だけか)
負傷し治療室にいる竜神王。あやつが回復するまでは我1人で神魔混成軍を指揮する事になる……こうしてアスモデウス達が動き出す前にアマイモンが合流してくれて良かったと安堵していると、扉が開きインドの方から出向してる文官がガタガタ震えながら
「も、申し訳ありません!シヴァ様がルイ様と共に下界へ……と、止められず申し訳ありませんでしたぁ!!」
「……申し訳ありません、我が主が、本当にご迷惑をおかけします。すいません、本当すいません」
魔法陣から現れたメイド服姿のルキフグスが何度も何度もインドの文官と頭を下げる姿を見て、我はアマイモンに嘘偽りの無い本心を告げた。
「吐きそうだ」
「……仕方あるまい、我も胃が痛くなってきたぞ」
なんでこのタイミングでとんでもない行動に出てくれるのか?我とアマイモンはルイ様の突拍子の無い行動に溜息を吐く事しか出来ず
「すまないが、ルキフグス。ルイ様を連れ戻しに行ってくれるか?」
「……はい、判ってます。ええ、判ってますとも」
連れ戻すのは不可能であり、関係各所に謝罪行脚になる事を悟ったルキフグスは、ハイライトの無い目で再び魔法陣の中に姿を消した
「お前は、今のうちにパールヴァテイの所にでも行け」
「は、はい!判りましたぁ!!」
そして文官にはシヴァの嫁を呼んで来いとアマイモンが頼む姿を見ながら、我は背凭れに深く身体を預けた。気のせいでも、勘違いでもなく、胃が痛み始め我は医療室にいる部下に胃薬を持ってきてくれと頼むのだった……
~琉璃視点~
ガープの作り上げた塔の機能を止めた美神さん達の帰還は言うまでも無く凄い騒ぎになった。正しだ、報道各社とか、そういうのではなく
【流石あたしの弟子ー!!やったわー!!!】
陰念と雪之丞が三蔵法師の胸に抱きこまれ、羞恥心と呼吸が出来ずに気絶……これだけで済めばまだ救いもあったんだろうけど……当然それで済むはずもなく
【消毒!滅菌!!】
デストロイヤー婦長による、治療と言う名の襲撃で本当に地獄絵図と化した。抵抗する間もなく全員が全員病院送り、抵抗すれば容赦なく絞め落とされると言う医療と言う名を借りた人間狩と思った物だ。長期入院になると思ったのだが、ビュレトさんが持っていたエリクサーとシズクの治療で早い段階で検査入院だけで済んだらしいが、デストロイヤー婦長とビュレトさんの争いが合った事は忘れてはいけない
【薬による無理矢理の治療が良いと思っているのですか!?】
「お前の暴力的な医療行為の方が問題があるに決まっているだろう!」
殆ど線にしか見えない攻防の結果。まだやらなければならない事があると言う事でエリクサーの使用が許可されたが、使用許可が出るまでは凄まじい攻防が繰り広げられていたと言わざるを得ない
(と言うか、あの人躊躇い無く腕とか折に行くのよね)
命を救うためなら何でもすると公言するフローレンス・ナイチンゲール。それは比喩でもなんでもなく、本当に何でもするのである。医療と言う名の物理攻撃は勿論、絞め落としや、関節技まで本当に何でもありなのだ。1度拘束してしまえば、後は基本的に治療行為をしてくれるだけなのだが、そこに向かうまでの過程が危険すぎる……私は溜息を吐きながら、もう1つの頭痛の元に視線を向けた
「不動さん、やりすぎとか考えませんでした?」
「やりすぎ?なんだそれは?美味いのか?」
ニッと乱暴な笑みで笑う不動さん。避難所で横暴な行為をしていた視察団やオカルトGメンの職員を病院送りにした……正直それに関して私は思うことは無い、やり方こそ乱暴だが不動さんは正しい事をしたと思っている。
「もう少し手加減してくれてればお小言言わないで済むんですけどねえ?」
「はッ!手加減なんぞ出来てたら俺はオカルトGメンを首になってねえよ」
ごもっとも、乱暴で言動も荒いが、仮にも彼は国家公務員だった経歴もある。ただ筋を通ってない事を許せないと言う真っ直ぐすぎる正義感と、相手を殴る事に躊躇いが無いのが彼の欠点か……ちなみに首になった正式な理由は実は実働部隊隊長と言う権力で好き勝手していた禿デブを殴り飛ばした事が理由らしいけど……ロケットランチャーやマシンガンを両手に持って走っている姿を見た限りでは、それ以外の問題もありそうだ
「証人も多いですし、とりあえず始末書だけお願いしますよ?」
「おう!判ったぜ」
手を振り部屋を出て行く不動さんを見送る。今回の件ではかなり助けられたし、それにGS協会ですぐに出動させれる戦闘班のリーダーだ。謹慎させるわけにも行かないのでかなり甘い対応になってしまったが、それ以上に視察団とオカルトGメンの一部の職員の態度が悪かったのでそれでトントンと思うべきだろう
「まだやること沢山あるのよねえ……」
あの塔はまだ東京の真ん中にあるし、家を失った人の仮設住宅の建設、それに今は休んでいる美神さん達からあの塔で何があったのかと言うのも聞かなければならない……とりあえず今は出来る所から処理していくしかない。私は意を決して電話を手に取る
「忙しいところすまないな、神代会長」
「ちょうど一区切りついたしね」
躑躅院との話を先に済ませることにした。彼……いや、彼女?かもしれないけど、かなり危うい人物なのは判っている。だから何を要求するのかと言うのを考えていたのだが、躑躅院の要求は私が危惧していた金や、神代家の技術などではなく
「横島忠夫と話をしたい」
その1つだけだった、拍子抜けとは言わないが、思わず眉を吊り上げる。そんな私の反応を見て躑躅院は笑いながら
「判っている、判っているさ。六道と神代の秘蔵っ子だ、別の組織の人間に触れさせたくないのは判る。だがそこまで隠されると気になると言うものだろう」
「……悪いけど、1対1での会話は認められないわよ?」
もし躑躅院の能力が洗脳とかそういう系列だとしたら、横島君と2人きりになんて出来るわけが無い
「ああ、それで構わない。なんなら、報告を聞くときに一言二言話せるだけで構わないよ」
かなりの譲歩した条件を出してくる躑躅院に違和感を覚えながらも、それでも私達が近くにいる場所ならと思いながら私はその躑躅院の申し出を受け入れるのだった……
~ビュレト視点~
俺とブリュンヒルデ、そしておまけでダンタリアンは妙神山に居た。その理由は神魔からの支援物資を受け取るというものあるが、もう1つ。どうしても明らかにしなければならない事があったからだ
「……一応確認しましたけど、妙神山、神界正規軍から持ち出された記録は無いですよ?」
包帯と湿布が痛々しい小竜姫が手に書類を持ちながら呟く、その言葉にブリュンヒルデも俺もさすがに表情が曇る
「そう……か」
俺の手の中にあるエリクサーが4分の1ほど残った瓶。エリクサーは今神魔の中でも極めて稀少な薬品だ、勿論アシュタロスも所持してないし、ダンタリアンとゴモリーも所持してない、俺は勿論こんなものは所有していない。そして魔界正規軍にもブリュンヒルデに確認を取らせたが、全て保管されているとの事
「これはどこから来たんだ?」
俺がいつの間にか持っていたエリクサー。それを横島達に使ったが、後で我に返ればなんで俺がこれを持っていたという問題があったのだ
「両方の正規軍に保管されている物は全部ありましたしね」
「そうですよね……どこから持ち出したんですか?」
「判らん、それが判らないからこうして妙神山に来たんだ」
もしかしたら天界正規軍かと思ったのだが……思わず溜息を吐くと
「だから私の話を聞けと言っているだろう?」
「黙れ、俺はお前が嫌いなんだよ」
ダンタリアンを睨むとダンタリアンは私もお前が嫌いだよと笑う、俺とダンタリアンの相性は絶望的に悪い。小竜姫とブリュンヒルデが青い顔で止めに入るが
「判ってる、こんな所で争うものか」
「それが懸命だ。バタバタしてる中で中立地帯で暴れればどうなるか、猿でも判る。これでも判らなければ、お前は猿以下だ」
額に青筋が浮かぶが、それを拳を握り締めて耐えているとメドーサが姿を見せる
「小竜姫、とりあえず魔界からの……何事だい?これは?」
「ああ、メドーサ。すぐ私も行きますから」
メドーサと共に逃げるように部屋を出て行く小竜姫。ブリュンヒルデが若干羨ましそうにしているのは無視する
「お前がエリクサーを持っていた理由だがね、私の本にも記録が無い」
「駄目じゃねえか」
偉そうな事を言って何を言っているとダンタリアンはまぁ待てと笑い
「未来予知が回復し、過去と未来も見通す私の権限が戻っているのにも拘らず、それを認識出来ない。それがどれだけ異常か判るだろう?」
「……ダンタリアン様よりも神格が上が関わっていると言うことですか?」
ブリュンヒルデの言いたい事は判るが、そうではない。ソロモンの魔神はその何れもが上級、最上級に属するが、それらが持つ権限は仮に最高指導者であれおいそれと手を出す事が出来ない領域だ
「歴史に干渉する能力を持つ何者かが、暗躍しているという事だよ。そうで無ければ説明がつかない」
ガープやアスモデウスでもない、かと言って魔人達でもない、第3者の介入の可能性が浮上した。
「第4の陣営と言う事か?」
「さぁ?それはどうだろうね?陣営かそれとも個人か……なんにせよ、まだまだ事件は収拾などついていないと言う事だよ」
……歴史改変そんな能力を持つ相手がいるとは信じられないが、ダンタリアンの性格は最悪、最低だが……嘘は言ってないだろう
「オーディンにそれと無く伝えておいてくれるか?」
「は、はい。流石に信じきれないですが伝えておきます」
ダンタリアンの勘違いとかで済めば良いんだが、もしくは、ダンタリアンの本がまだ正常に戻ってないとかなら救いもあるんだがな……
(俺が思い出せないのが悪いか)
恐らく俺はその何者かに接触しているのだ。だからこうしてエリクサーを持っていた、俺が思い出せればそれで解決するんだがな……
「ビュレト、ブリュンヒルデ。天界と魔界からの救援物資の準備は出来ました、出発しましょう」
俺達が妙神山に来ていたのは、天界と魔界からの救援物資を受け取るためだ。有事には中継基地としての役割を持つ妙神山、ここが一番大規模な天界と魔界へのゲートを持つ、エリクサーについても調べるつもりだったが判らない以上早く東京に戻るべきだ。なんせまだ悪魔やゾンビの討伐は終っていないのだから
「お前も東京に戻れば少しは手伝えよ?」
「……考えておこう。そもそも私は前線には向かない」
これ以上人間にだけに負担を掛けるわけには行かない、東京に戻り次第。俺もブリュンヒルデも悪魔の討伐を始める予定だ
「私も同行します」
「大丈夫か?」
負傷している小竜姫は大丈夫ですときっぱりとした口調で言うので、これ以上尋ねるのは野暮だと思い。俺とブリュンヒルデ、そしてダンタリアンと小竜姫の4人で支援物資を手に東京へと引き返していくのだった……だがそこには予想もしない光景が待ち構えているのだった……
~横島視点~
俺がどうやってモリアーティとレブナントと言うライダーを倒したのか?と言う話をする為に俺はGS協会を訪れていた。ノッブちゃん達は霊力が回復していないのに無理をしたので、眼魂で療養中だし、難しい話をするのでチビとうりぼーはお留守番で、私達じゃ何も出来ないからとタマモとシロがチビとうりぼーの面倒を見るのに残ってくれた。だから俺はシズクと共に会議室に来たのだが……
「君が横島忠夫か、よろしく。私は躑躅院だ」
男か女か判らない中性的服装をした赤紫色の髪をした人物に手を差し出され、困惑しながらも手を握り返しながら、横島忠夫ですと返事を返す。確か、塔に突入する前に見た気がするけど……どんな人なのだろうか?ここに居ると言うことは霊能者だとは思うけれど……
「ああ、失礼したね。私は陰陽寮の当主になる」
陰陽寮!?もしかして俺が勝手に札とか作ったのがバレた?と冷や汗を流していると先に来ていた美神さんと蛍に名前を呼ばれ、これ幸いと2人の後ろに逃げる。躑躅院はそんな俺を見て薄く笑っているのが、なんか余計に怖いと思った
「……お前は」
「ご機嫌麗しゅう。シズク様」
俺の後に部屋に入ってきたシズクに深く頭を下げる躑躅院さん。シズクは少し困惑した表情を見せた後に俺の隣に腰掛ける、知り合いなのか?と尋ねようかと思ったが、腕を組み目を閉じてしまったので話しかける雰囲気じゃないので家に帰ってから訪ねて見ようと思った
【横島さんは大丈夫ですか?】
「なんとか……かな?」
身体はやっぱり痛いし、何より慣れ親しんだとも言える霊体痛がじんわりと俺を襲っている。心配そうに尋ねてくるおキヌちゃんに苦笑いをしながら返事を返すと、西条さんが会議室に入ってきて中にいる全員に目を通す。
「じゃあ、全員揃ったから今回の件についての報告を聞こうかな」
西条さんがそう仕切り始めるが、雪之丞と綱手さんにクシナさん、それとカオスのじーさんとマリアとテレサの姿が無いし、良く見るとタイガーやピート、それにブラドー伯爵の姿も無い、エミさんや冥子ちゃん達の姿も無い。その変わりに小竜姫様の姿があるけれど……
「ブラドー伯爵達も大分無理をしたので動けないらしいんです。後雪之丞君は動ける状態じゃないのでクシナさんと綱手さんが看病してるんですよね?それと」
ブラドー伯爵も相当無理をしたって言うのは俺も知っている。神魔の能力を制限する結界の中で俺達を消耗させないために終始先陣を切っていたのだ、その消耗具合は十分に察することが出来る
【ええ。かなり無茶をしたみたいだから、エリクサーで霊力と体力は回復したけど、暫く安静よ】
三蔵ちゃんが険しい口調で告げる。雪之丞大丈夫かな?この話し合いが終わったらお見舞いにでも行くべきかな?と思ったのだが……
「横島も安静にしてないと駄目だからね?」
「……はい」
蛍に釘を刺されたので、電話にする事にした。かなり無茶な約束をして、それを果たしてくれた雪之丞にはやっぱり感謝してるし、陰念は腕組んでむすっとしてるけど、会議が終わったら話を聞いてみようと思う
「エミさんと冥子さんは人数も人数なので後日リポートで確認するから良いそうです。あ、あとエミさんから、近畿 剛一が駄目だと言うのに避難所から出たそうなのでこちらからも注意しましたが、横島君からも連絡をしておいてください」
銀ちゃん……なにやってるんだよ。危険なときは大人しく避難してくれよと思いつつ、琉璃さんのきつめの言葉に判りましたと返事を返し、西条さんの仕切りで再び報告会が始まるのだった……
「今回では神魔が無力となり、応援にこれず申し訳ありません」
小竜姫様がそう謝罪するが、服の下からも包帯が見えているのを見れば、何もしてなかったわけでは無いと言うのが良く判る。だから誰もそれを責める人間はいない
「天界はアスラがシヴァ様、ヴィシュヌ様の2柱に戦いを挑み、魔界ではアスモデウスの強襲。今回の事件は3界同時テロと言えるべきものでした。
シヴァ?ヴィシュヌ?俺の知らない神様の名前だ。ただ美神さん達の顔が引き攣ったので、凄まじい神様と言うのは良く判る
「インドの最上級の神だね。それでアスラはどうなったんだい?」
「……信じられないですが、シヴァ様、ヴィシュヌ様のお2人を相手に終始優勢に戦いを進め、そのまま姿を消したそうです。恐らく、狂
神石によるブーストもあると思いますが……今後天界、魔界は厳戒態勢に入ると思います」
人間界だけじゃなくて、天界と魔界も大変な事になっているようだ。それだけガープが本気になったと言う事なのだろうか?
「神魔からは支援物資と東京に残っている悪魔の討伐隊が派遣される事になっていますし、先立ってビュレトとブリュンヒルデの両名が悪
魔退治を始めてくれているので、美神さん達はゆっくりと身体を休めてください」
小竜姫様の言葉に判りましたと返事を返すと、心眼が頭の中で声を掛けてくる
(横島来る前に書いておけと言った手紙を回せ)
手紙?ああ、会議の後に少し時間をくださいって奴だな、ポケットから手紙を出して蛍の前に置く、資料を見ていた蛍が横目で俺を見るので
(心眼から、話の内容は俺も判らない)
心眼からの話と言うと蛍は頷き、目を通すと美神さんに回す。躑躅院は机に腰掛けず、ソファーで話を聞いているのであの人までは手紙が回らないので大丈夫だろうと判断する
「じゃあ次は私ね。あの塔の中にはマンティコアの劣化クローンみたいのが配置されていたわ、戦う場所は狭くてかなり苦戦したわね」
「私とシズクの方は放射系の攻撃を反射するリザードマンが10体ほどですわね。一応その反射する盾みたいのは回収しましたわ」
鏡と言うか、銀みたいな光沢な盾を神宮寺さんが机の上に置く。それを見ていた小竜姫様は少し考える素振りを見せてから
「神魔の方で回収しても良いですか?」
「ええ、お願いします。ドクターカオスが治療で忙しいので、分析出来る人がいませんから」
琉璃さんの了承を得てから、その盾を回収する。しかし放射系を反射するとか、神宮寺さんとかとは致命的に相性が悪かっただろうに……それを相手に勝てた神宮寺さんとシズクが凄いと改めて思う
「えっと俺の方なんですけど、レブナント……名前はレイっていうらしいんですけど、彼女は途中で戦闘を放棄して鯛焼きを食べ始めました」
俺の報告には?と言う視線が向けられるが本当の事だから、そうとしか言い様が無い
「戦闘を放棄?横島君がダメージを与えたのかい?」
「いや、ずーっとボコボコにされてました」
モリアーティとレブナントの2人のコンビの連携は完成していて、正直ずっとあのままでは俺は死んでいたと思う。ジャンヌ眼魂の防御力に命を救われた形になっている
「途中で教授が助けに来てくれたんですけど、その時にモリアーティが引けと指示したら、反論もせずに変身を解除したんです」
教授も来る時に声は掛けたんだけど、霊力が回復してないからと言う理由でノッブちゃん達と同じく留守番である
「そう言えば、教授もモリアーティらしいけど、それは大丈夫なのかい?」
西条さんが心配そうに尋ねてくるけどそれは問題ないと思う
「胡散臭くはあると思いますけど、自分はガープにあれこれされるまえに脱出した正義の方らしいので大丈夫だと思いますよ?」
俺の言葉に美神さん達は渋い顔をする。胡散臭いっていうのが嘘をついていると思われる理由なのだろうか
「とりあえず後日面談をさせてもらう。その後どうするか決めるわね」
「……教授は味方だと思いますけど……」
でもやっぱりモリアーティを見ているから、無条件で信じる事が出来ないって事か
「まぁ横島を助けてくれたのは良く判ってるから、本当に念の為よ?ね?美神さん」
「ええ、ただ、やっぱり報告書としてリポートが残るから余計なやっかみが入らないようにする措置と思ってくれれば良いわ」
「神魔としても話を聞いて消滅させると言う事も無いので心配しなくても大丈夫ですよ?」
蛍と美神さん、そして小竜姫様が大丈夫と言うので、俺は再び塔の中の話をし始めた。あのレイと言う少女については絶対に情報を共有しておく必要があると思ったから
「モリアーティが消滅する前に教えてくれたんですけど、彼女はガープが主体にしているえーっとなんだっけ?」
【複合神性内蔵型ホムンクルス。アルターエゴプロジェクトの試作0号らしく、精神が不安定で非常に幼い人格らしい】
心眼が話を覚えていてくれて良かった。そうそう、アルターエゴだ。しかし複合神性っていうのが理解できないけれど
「複合神性……それってもしかして神の権限を擬似的に複数組み合わせるって事かしら?」
「ありえない話じゃないと思います。ガープは魔工学や、魔術に精通してますが、ホムンクルスなどの製造にも特化していたらしいですし」
「そうなると、今後アルターエゴと言うホムンクルスが増えると厄介だね」
美神さんや神宮寺さんが話を広げていると陰念が手を上げて
「俺と雪之丞は量産型と名乗るホムンクルスと戦った。既に量産態勢は出来ていると思う、俺が戦ったのがタイプH、スピード特化で単体
飛行が可能だった。雪之丞が戦ったのがタイプS、異常な攻撃力と防御力の白兵戦特化だった」
「琉璃さん、すいませんが少し席を外します」
小竜姫様が険しい表情で会議室を出て行く。多分神魔の上層部に今の話を伝えに行ったのだろう、レブナントでも恐ろしいほどに強かったのにそれが量産されているとか冗談じゃないと思う
「量産型ですか……ガープの陣営の戦力はどうもそのホムンクルスと、変身ツールによる集団戦と言う事でしょうね」
「量産の準備が出来たから、これだけ大きく動いたという訳ね」
今まで散発的だったり、英霊を使っていたのはそのホムンクルスを作るための時間稼ぎだったと言う事か……
「あ、でも精神が不安定らしくて善悪の区別がつかないらしいです。レイって子だけだと思いますけど」
強大な力を持つのに善と悪が判らないと言うのは恐ろしい事だと思うが、逆にそこが彼女の強さであり、弱さだと思う
「……お前は仲間に引き込めると思っているのか?」
【まぁ、善悪が判らないと言うのなら、それを教える事で味方に出来る可能性もあると思うけど……】
シズクと三蔵ちゃんが俺が言おうとした事を引き継いでくれるが、美神さん達の顔色は険しい
「やっぱり難しいですかね?」
「難しいというか無謀ね。下手をすればスパイを抱え込むことになるだろうし」
「そうだね、そもそも横島君。その情報は何処からだい?」
モリアーティですと言うとますます美神さん達の顔が険しくなる。俺も考えたけどやっぱり嘘の情報と言う線もある。だけど俺の直感では本当の事だと思っている
「取り合えず今は情報を集める事を最優先にしよう」
唐巣神父の言葉で1度レイに関する話は終わりとなり、その後は俺では理解出来ない難しい話と専門用語のオンパレードとなった為、黙って話を聞く事しか出来ないのだった……
~美神視点=
シロとタマモにチビとうりぼーを横島君が連れて来てないことに安堵した。躑躅院に見せるには危険すぎる面子だからだ、特にタマモを見せることにならなくて良かったと思う
「すいません。今戻りました、あの陰念さん、横島さん。後日神魔から派遣されて来る兵士がいるので、貴方達が見たレイと量産型と言うホムンクルスについて教えてください」
小竜姫様の言葉に横島君達が頷く。今まで危機を切り抜けるのに使ってきた力が敵に回る、それは恐ろしい事だ。しかもそれが何十人で攻めて来るなんて想像するだけでも恐ろしい
「とりあえず今の段階で判る事は全部ですね。皆さん、疲れているのに集まってくださってありがとうございました」
琉璃が頭を下げると、それに変わるように躑躅院がソファーから立ち上がり
「今まで陰陽寮は閉鎖的であったが、今回の件で守秘義務が如何に愚かしいか判ったよ。陰陽寮を近い内に公開する、その時は是非見学に来て欲しいよ、横島君」
「うえ?」
自分が名指しされると思って無かったのか素っ頓狂な返事を返す横島君に躑躅院はふふっと笑い
「では神代会長。横島君と話をしたいと思っていたが、今回は止めておこう。今自分がやるべき事が判ったので、失礼するよ」
躑躅院はそういうと背を向けて会議室を出て行く、私達の視線が自分に集まっている事に気付いた琉璃が溜息を吐きながら
「視察団の事でちょっとありまして」
唐巣先生にも聞いていたけど、かなり酷かったみたいね。西条さんも額に手を当てて
「一応全員逮捕して留置所に入れてるよ。あまりに酷すぎる」
オカルトGメンの新米まで酷いとか、琉璃とか西条さんが不憫すぎるわね
「それで横島?態々残って欲しいって何の話ですの?」
くえすが横島君にそう切り出すと、横島君ではなく、心眼が浮かび上がり
【横島の命を救い、そして2対1と言う絶望的な情況を切り抜けた方法を説明しようと思ってな】
横島君はレブナント、レイと言う少女については話してくれたが、どうやってあの状況を切り抜けたのかは教えてくれなかった。それは心眼が隠すべきと判断したって事だったと……
「その前にシズク、1つ聞きたいんだけど、躑躅院って知り合いなの?」
蛍ちゃんのその問いかけにシズクは閉じていた目を開き、溜息交じりで告げた
「……高島に嫁がせるという話で高島の陰陽術を教えられたのが躑躅院だ。平安時代でもそれなりの地位にある陰陽師の一族で高島と仲が良かった」
……横島君の前世の可能性である高島、そしてその高島の妻になる筈だった躑躅院……か。もしかして横島君に声を掛けたのって平安時代の婚姻とか言わないわよね。蛍ちゃんが物凄い顔をしてるし、くえすも凄い顔をしているので違って欲しいと心から思う中、横島君が間延びした声で琉璃に質問する
「あ、それで1つ。あの躑躅院さんって男なんですか?それとも女?」
横島君の問いかけには誰も答えられなかった。何故なら誰も知らないからだ、中性的な容姿で、男か、女かも判らないのだ
【横島、それは後にしておけ。今このタイミングで口の堅いメンバーが揃っているこの時しかチャンスは無い】
心眼が固い口調で横島君を叱る。しかしそれを見て、嫌がおうにも緊張感が高まった、今まで心眼がこんなことを言う事は無かったからだ
【心眼さん、一体なんなんですか?】
【見れば判る。横島】
おキヌちゃんの心配の言葉も無視し、心眼が横島君にそう促す。まさか魔人化したとかそんなんじゃないわよね?と思った私達の前に横島君が差し出したのは翡翠色のビー玉のような物が5つ
「ビー玉?お前ふざけてるのか?」
「いや、ふざけてないと……思うんだけど……」
良く判ってない様子の横島君と陰念だけど、私達は理解した。理解してしまった……
「琉璃!カーテン!」
「判ってます!!」
慌てて会議室のカーテンを閉め、出入り口に鍵を閉める。私達の反応に驚く横島君だが、これでもまだ全然足りないくらいだ
「……美神さん、これってもしかして……」
「……信じられないけど、多分そうよ」
「私も始めて目にしたよ。でも確かにこれならば横島君が生き残った理由も納得だ」
私達の反応を見て首を傾げている横島君。これが何か理解していないのだろう、だが説明するよりも先に聞かないといけない事がある
「横島。これは敵が所持していた物ですわね?」
くえすがそうであって欲しいと思っているのは明らかだった。勿論私だってそうだし、小竜姫様もそうだろう。だけど横島君の返答は
「いや、多分……俺が作ったと思うんですけど……これ何なんですかね?「護」って文字に助けられたんですけど?」
その言葉に私達の願いは裏切られた、そしてそれと同時に今後横島君が神魔だけではなく、人間にも狙われると言う可能性が生まれてしまった。躑躅院や視察団の人間がいなくて良かったと心の底から思った……
「良い?横島君。良く聞いて欲しいの、そのビー玉……ううん、霊具はね、「文珠」って言うのよ。伝説の中で語られる最上級の霊具よ」
琉璃が険しい表情で告げる。目を大きく見開き、嘘でしょ?と言う横島君の手の上にある物、それは奇跡の体現、伝説の中にのみ語られる「文珠」の姿だったのだから……
リポート25 横島家の非日常 その1へ続く
次回からは新リポートです。その1は文珠について、その2からは日常の話を書いて行こうと思います。シリアスはもう少しだけ続きますが、どうか次回の更新もよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い