GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。リポート25はその1はシリアス、それ以降はほのぼので書いて行こうと思います。原作よりも早いタイミングで覚醒した文珠。そしてそれを見た美神達の心境などを書いて行こうと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします




リポート25 横島家の非日常 その1
その1


リポート25 横島家の非日常 その1

 

~蛍視点~

 

横島が2対1と言う絶望的な状況を乗り切ったのは、また眼魂の2個使いだと私は思っていた。多分美神さんとくえすも同様だろう、だから厄珍とか、自分が持っている伝手を頼って薬品を用意していた。だが横島はそれとは全く異なる方法で危機を乗り越えていたのだ

 

(早すぎる……いや、でも早くない……ああ、わかんない!!)

 

私は横島が何時文珠に覚醒したのか知らないのだ。だからこれが早いのか、遅いのか判断がつかないのだ

 

「伝説?これが?いやあ?冗談……じゃないみたいですね」

 

冗談と笑おうとした横島だが、美神さん達の真剣な顔を見て、顔を引き攣らせる

 

「いや、待つんだ。これが本当に文珠なのか確認する必要がある、横島君。1つだけ手の中に握ってくれるか?」

 

西条さんが美神さん達を制して横島に声を掛ける。横島は4個を机の上に置き、1つだけを握り締める

 

「良し、そうだな……怪我が治るとかそういうのをイメージできるかい?」

 

「怪我が治る?ですか?……多分、大丈夫ですけど……それが何か?」

 

「出来るだけ正確に、思い浮かぶ感じで良い怪我が治るイメージを持つんだ」

 

西条……さん?姿は西条さんだ。だが口調が少し違うような……皆が怪訝そうに西条さんと横島を見つめる中、横島の右手が光る

 

「わっとと……」

 

驚いた横島が手を開くとその中の文珠が飛び出す。それは偶然か、それとも必然か私の足元に転がってくる

 

「……【治】って刻まれてます」

 

その文珠には間違いなく、治るの文字が刻まれている。これで決まりだ、これは紛れも無く文珠

 

「……令子ちゃん。これを使っても構わないか?」

 

「え、ええ……大丈夫」

 

会議室が異様な緊張感に満ちる中。西条さんが私から文珠を受け取り、それを小竜姫様に渡す

 

「!?」

 

光が溢れ、小竜姫様を包み込む。そして光が晴れたと同時に小竜姫様は自身の腕に巻かれている包帯を解く、次に着物の胸元を開き中を確認し

 

「治ってます。身体の何処に痛みも無い」

 

「……決まりですね。横島君の霊能は圧縮じゃなかった、横島君の霊能は全て文珠から零れ落ちた欠片だったのですね」

 

琉璃さんの静かな呟きが会議室に満ちる。異様な緊迫感の中……横島は

 

「零れ落ちた欠片ってどういう意味ですか?」

 

何を言われているのか理解出来ていない横島。心眼もだんまりと言う事は、心眼にとってもこのタイミングでの覚醒は不味いって事がよく判る

 

【うん、横島君。あたしから1つお願いがあるんだけど良いかしら?】

 

三蔵さんが横島に微笑みかける。横島が困惑しながら頷くと三蔵さんはにこにこと笑いながら

 

【文珠を作ってみてくれるかしら?】

 

「……いや、俺作り方なんて判らないんですけど?無我夢中で何がなんだか……」

 

命の危機に追い込まれ、そしてその中で文珠を作り上げた?いや、今までの横島のパターンではありえない事では無いと思うけど

 

「……横島。球体をイメージして、霊力を圧縮していけ。無理だと思ったら霊力を霧散させろ」

 

シズクが口を開いたと思ったら文珠の作り方を教える。皆が見つめる中シズクは深い溜息を吐いて

 

「……高島も文珠使いで陰陽師だった。アイツは公表する事無く隠し通していたけどな、切り札として持っていた」

 

シズクから告げられた言葉。それは横島が高島の転生者であると言う可能性を著しく高め

 

「で、出来た……のかな?」

 

握りこんだ拳を開いた横島の手の中の文珠……それが覆しようの無い証拠となりえたのだが

 

「「「「あ」」」」

 

私達の見ている中で4つの文珠のうち3つが音も無く消滅していく、そしてそれを見ていた三蔵さんとシズクは頷きあい

 

【まだ完全に使いこなせているようじゃないみたいね。これなら霊能として押し通すのは難しいし、隠しておけるんじゃない?】

 

「……そうだな。今の時代に文珠の事を知られるのは不味いしな」

 

不安定な霊能となれば、それは固有霊能としても弱い。それに何もしなくても消滅するなら文珠ではなく、新しい何かの霊能として

 

「……誤魔化せますか?」

 

「ちょっと苦しいけど、不安定なら何とか見なかったことにも出来る……かも」

 

「いや、それを隠し通すよりも先に横島君は六道にも席を置く必要が出てくるかもしれない」

 

「確かに、流石にこのレベルになると私だけじゃあ厳しいわね、正式に後継人になってもらう必要があるかも」

 

「あ。それなら私も立候補しますよ、六道と神代が後継人なら並大抵の相手はちょっかい掛けれないですし、神魔の方はどうですか?」

 

「妙神山に戻り次第、すぐに手筈を整えたいと思います」

 

美神さんだけで横島を護れないレベルにまで事は進んでしまっているのだった……そして私も家に帰ったらすぐにお父さんに相談することを決めた。そんな中西条さんが手を叩き

 

「とりあえずだ。皆落ち着いて席に座って欲しい、横島君がまず文珠について理解していないこともある。それらの説明が先だ」

 

勿論横島君を護ることも大事だがと付け加えた西条さんに頷き。私達は椅子に腰を下ろすのだった……

 

 

~美神視点~

 

横島君を1人で残した結果が文珠だったのか、しかし琉璃の言うとおり横島君から零れ落ちた霊能として栄光の手や陰陽術が発現していたというのなら、それは遅いか、早いかの違いになるだろう。

 

「それで、零れ落ちた霊能って言うのはどういう意味なんですかね?」

 

意味が判らないで混乱している様子の横島君に説明してあげる必要があるわね、とは言え具体的な説明をしないと横島君も理解出来ないでしょうし、机の上に4個置かれている文珠を1つ取り

 

「くえすと唐巣先生と琉璃も1つずつ取ってくれる?」

 

私の言いたいことを理解してくれたのか、唐巣先生と琉璃も文珠を手にし、文珠に霊力を込めるがやはり何の反応も無い

 

「はい、横島君。これ持って火をイメージしてくれる?」

 

「え、は、はい」

 

困惑している横島君が文珠を手にし、霊力を込めると文珠には火の文字が浮かんでいる

 

「えっと……これはどういう?」

 

「それも横島君から零れ落ちた霊能って話に繋がるのよ、良い。文珠って言うのは高密度に圧縮された霊力なのよ、それに文字を与えることで指向性を与えるの」

 

ちんぷんかんぷんと言う様子の横島君。なんて説明すれば良いのかしら

 

「横島が陰陽術を使うときに文字を刻むでしょう?陰陽札自身は無色の霊力なので、刻まれた文字で効果を発揮するのです」

 

「あーなんとなく判るような。判らないような……」

 

横島君みたいに感覚で使う人には理論的な説明って全然理解出来ないのよね

 

「つまりあれか?文字を刻むのは横島しか出来ないって事で良いのか?だがさっきは横島じゃなくても力を使えてたが?」

 

陰念は粗暴な外見の割には結構頭良いみたいね。

 

「そう、そこが文珠の凄い所になります。文字を刻むことが出来るのは作り出した人だけですが、使用するのは誰でも出来るのです。でもそれは1文字のみ、横島さんはきっと複数の文字を刻んだ文殊を使えるでしょう」

 

「複数の文字?それは1つの文字と何か違うんですか?」

 

小竜姫様の説明に横島君が質問を出すので、琉璃に目配せをすると琉璃は会議室のホワイトボードに文字を書く

 

「治すと言うのと、治癒って言うの。硬いって言うのと強固。意味は同じだけど、横島君はどう思う?」

 

「それはやっぱり2文字の方が凄いっていうイメージですよね?」

 

「……その通りだ。より強い効果を発揮できるという事だ、ただ高島は色々実験していたが、やはり複数文字は高島しか使えなかった」

 

シズクがそう補足する。それにしても今回の事で横島君が高島の転生者って可能性が一気に強まってしまったわね

 

【あたしが隠して使うから、1個だけ治を作ってくれるかしら?】

 

「あ、すいません。私も1つお願いします、老師の怪我が酷いので」

 

三蔵の言葉に横島君が私を見る。私が頷くと横島君は文珠を握り締め文字を刻み三蔵に手渡す

 

【ありがと、ごめんね】

 

「すいません、ありがとうございます」

 

手を合わせて謝る三蔵と小竜姫様を見ながら心眼に視線を向けるが、心眼はまだだんまりである。どうしてここまで頑なに言葉にしないのか……心眼には何か思う事があるのだろうか

 

「とりあえず横島君。人の目があるところでは絶対に文珠を使ってはいけない、更に言えば作ることも禁止する。良いね?」

 

「文珠はかなりの霊力を消費するからね、命に関わる可能性も考えて欲しい」

 

西条さんと唐巣先生がそう言うが、横島君を除く全員が理解しているだろう。それは横島君に文珠を作らせない口実だと、今の情勢で文珠を作れるという情報が流れれば、横島君の人権は無視され、それこそ機械かなにかに組み込むことを考える輩もいるだろう。横島君が文珠を作れるという情報は何よりも隠し通さなければならない話だ

 

「とりあえず今はそんな所ですね。美神さん、GS協会の方で車を出しますので」

 

琉璃の言葉にありがとうと返事を返し、私達はGS協会の職員が運転する車でGS協会を後にした。事務所に帰った私はすぐに受話器を手に取り

 

「もしもし、令子です」

 

『思ったより早かったのね~琉璃ちゃんから話は聞いてるわ~』

 

「……お願い出来ますか?」

 

『ええ。大丈夫よ~令子ちゃんの事務所を正式に六道系列に迎えるわ~まぁ、名前だけね~』

 

今まではフリーでやってきたが、もう私個人の力では駄目だ。六道と神代の力を借りなければ弟子を護ることすら出来ない、その事に唇を噛み締める

 

【美神さんの決断は間違ってないと思いますよ?】

 

【私もです、オーナー】

 

おキヌちゃんといっちゃんの言葉にありがとうと返事を返し、背凭れに背中を預け、ビールをちょうだいとおキヌちゃんに頼むのだった……

 

 

~くえす視点~

 

屋敷に戻った私を待ち構えていたのは本を片手にした青年の姿。その名前を私は知っている、いや、私の魂が知っている

 

「ダンタリアン……なんのようですか?」

 

私の問いかけにダンタリアンは小さく笑う。なんでもない仕草なのに妙に苛立つ

 

「何少し君と話をしたいと思っただけだ。不快かね?」

 

不快かと言われれば不快だが、それは私の中にあるビュレト様の魔力がダンタリアンを嫌っているからだろう。だがそれでもこうして訪ねて来たその事に何か意味があるはず

 

「お茶を入れましょう。どうぞ中へ」

 

私はそう声を掛け、ダンタリアンを屋敷の中へと招き入れるのだった

 

「ふむ、良い茶葉だ。実に美味しい」

 

「お褒めに預かり光栄ですわ」

 

そんなに嫌味っぽくなくても良いじゃないかと肩を竦めるダンタリアン。

 

「これは性分ですので」

 

「……横島忠夫には甘いのに?」

 

その言葉に眉を吊り上げるとくっくっと喉を鳴らすダンタリアン。ビュレト様とダンタリアンの相性が悪い理由が判った様な気がする、ビュレト様はどちらかと言うと直情型だ。ダンタリアンのような人の真剣を逆なでするタイプと相性が良い訳が無い

 

「して私のような人間になんの御用でしょうか?」

 

強引に話を変えるとダンタリアンはそれすらも楽しいと言う表情になる

 

「君はビュレトの力を持つが、その性質はビュレトとは程遠いね。君の本質は……そうだね、ガープに近い」

 

目的のためならばどんな非道も犠牲も払う、そういうタイプだと面と向かって言われる。だがそれは私自身も自覚していることなのでそれに対して思う事は無い

 

「いやね。ゴモリーが柩をやたら気に入っていて、友人関係とか根掘り葉掘り聞く中で横島の次に君の名前が多かった」

 

……あいつ、私を売りましたわね!?あんまりべたべたされるのが嫌いな柩だ。自由になる為にゴモリーとダンタリアンが興味を持ちそうな私の名前を出したわねと心の中で罵る

 

「まぁ私が尋ねてきた理由だが、君にだけは教えておこう。神魔、人間、魔人、アスモデウス、だが争乱の種はこの4つにあらず、後2つの争乱の種が人間界へと蒔かれるだろう」

 

「なんですって?」

 

ダンタリアンが告げた言葉は到底聞き流せるものでは無い。私が睨みながら尋ね返す、だが人間の殺気などダンタリアンにはたいした事が無いのか涼しい顔だ。

 

「言葉の通りだ。争乱の種はあと2つ。これは神魔にも伝えていない、教えるのは君だけだ。そして君はこれを他人に話す事が出来ない」

 

「……なるほど、縛りましたわね?」

 

正解だとダンタリアンは笑う。神魔の言葉は呪術となる、私はダンタリアンから告げられたこの事を誰に伝えることも出来なくされてしまった

 

「不安定な未来だ。選択によって変わることもあるだろう、だから足掻いて見せて欲しい。君が苦しみぬいて出す決断を私に見せて欲しい」

 

「判りましたわ。くたばれ、このくそ野郎」

 

楽しそうに笑いながら消えていくダンタリアンを最後まで睨みつける。その姿が消えてから怒りに任せて机を蹴り上げようとした瞬間に気付く

 

「……これは」

 

ダンタリアンが座っていた椅子の上に置かれていた物。それは魔法陣……しかも召喚術の陣

 

「……なるほど、それが貴方の見たいものと言うことですか」

 

ダンタリアンが見たい物、それはソロモンとの2重契約、もしくは私が苦しみぬいてダンタリアンを召喚することのいずれか

 

「本当、良い趣味してますわね」

 

魔神らしい感性と言えば感性なのだが、それは人間をなんとも思っていない冷酷な神としての側面を目の当たりにした

 

「良いでしょう。抗って差し上げますわ」

 

だがそのおかげで決意した。ダンタリアンが喜ぶような結末などぶち壊してやると心に決める。だからまず私がやるべき事は1つ

 

「今のままでは駄目と言う事ですね」

 

人間の魔法使いとしては高位だとしてもまだ足りない、もっと力がいる。だから私は受話器を手にする

 

『あら。とても珍しいお方からの電話ですね』

 

「ええ、そうですわね。魔鈴めぐみ」

 

魔鈴めぐみ……私と同じく魔女、魔法使いとしてGSの中でも屈指の知名度を持つ相手。ただし黒魔術が専門の私と異なり、白魔術をメインにした魔法使いだが

 

「いくつか魔道書を融通して欲しいのですが」

 

『……何をするおつもりですか?』

 

海外、イギリスなどを拠点にしているめぐみは今の日本の情勢を知らないのだろう。そうで無ければこんな言葉は返ってこない

 

「少し日本の情勢を調べて見なさいな」

 

『……いやあー実はここ数ヶ月遺跡に迷い込んでてて……あははは……しかも狙いの魔道書でも無かったですし……はぁ……』

 

乾いた笑い声を上げるめぐみ。魔道書探しをしていれば私も数ヶ月は遺跡暮らしをするのはザラなので笑えはしないけど

 

「……ソロモン72柱のアスモデウスとガープが魔界、天界、人間界を相手に戦争を始めましたわ」

 

『本当ですか!?日本は大丈夫なんですか!?』

 

「なんとかと言う所ですわね。隕石落としで正直危ないところでしたが……」

 

受話器越しに絶句するめぐみだが、次は申し訳無さそうな声で

 

『あの私は……その』

 

「判ってますわ。イギリスを出れないのでしょう」

 

めぐみは私と違い非常に温和で優しい、日本人なのにイギリスを拠点にしているのもそれが大きい。それにイギリス政府は魔女・魔法使いの復活に並々ならぬ意欲を燃やしておりそういう面でもめぐみはそう簡単にイギリスを出る事が出来ない

 

『はい、その通りです。オカルトGメンか、GS協会が動いてくれれば動けるとは思うんですけど、それでも大分時間が掛かると思います』

 

「それは承知してます、私の頼みは魔道書です。貴女に日本に来てくれとは言っていません、それもタダとは言いませんわ。私が所蔵している白魔術の本……それと交換して欲しいのです」

 

『判りました。大丈夫ですよ、魔法陣同士で交換で良いですか?』

 

とんとん拍子で話が進む。本来は私とめぐみの相性は決して良いものでは無いが、善人であるめぐみからすればソロモンの魔神相手に戦うための力が欲しいとなれば断る理由がない。魔法陣の上に乗せた白魔術の本が消え、変わりに古めかしい魔道書が姿を見せるのだが……

 

「めぐみ、これはなんですの?」

 

本の上に乗せられていた腕輪が2つ。これはなんだ?と尋ねるとめぐみは苦笑しながら

 

『これの封印を解くのに数ヶ月掛かったんです。ただ効能とか判らないので分析ついでに差し上げます』

 

「実験の間違いでしょう?」

 

私の言葉に苦笑しながら、失礼しますと電話を切るめぐみ。善人と言われてるけど、腹の中真っ黒ですわね。まぁなんにせよ目的の魔道書は手に出来た。私は椅子に腰掛け魔道書を開く、その中から落ちてきたのは古びた地図のコピー

 

「……訂正しましょう。貴女は善人ですわ」

 

イギリス政府の判が押されている紙も一緒に出てきた、政府から預かっている物を複製して送ってきたと言う事は自分の立ち位置を危うくするが、それでも送ってきたと言う事はこれが私の力になると言う事だろう。ならば先にこれを調べようと思い、私は読みかけていた魔道書を閉じて、地図を手にして書斎を後にするのだった……

 

 

~老師視点~

 

包帯塗れの己の体を見て苦笑する。大袈裟なと、確かに怪我こそしたがここまでする必要は無かった。だがロン曰く、お前が弱っていると見れば攻め込んでいる馬鹿がいるだろうから、お前自身が囮になれば良い。と言う事でこの有様である。まぁそれも戦法としては受け入れることが出来るので問題は無いが

 

「老師、少し宜しいでしょうか?」

 

「うむ。入れ」

 

小竜姫の声に部屋の中に入ることを了承したが、入ってきた小竜姫を見て苦笑した。その気配は未来の小竜姫だったからだ

 

「おぬしが出てきたと言う事はなんじゃ?横島に何かあったか?」

 

「……横島さんが文珠に覚醒しました」

 

その言葉に思わず顔が引き攣る。早すぎる、横島が文珠に目覚める事は判っていたが早すぎる……

 

「これを竜神王様へ」

 

差し出されたのは治の文字が刻まれた文珠。横島が文珠に覚醒したことは隠す必要のあることだが、情報はいずればれる。それを防ぐ為にも竜神王の回復は急を要する

 

「え、老師?あ、あれ?」

 

急に現代の小竜姫に切り替わったことに驚きながら、ワシはキセルを吹かし

 

「報告は確かに受けたし、文珠も預かった。小竜姫も疲労が堪っているのじゃろう。少し休め、ワシは竜神王の元へ向かう」

 

「え、あ、は、はい!」

 

困惑している様子の小竜姫に疑問を挟ませないように畳み込むように言葉を投げかけ、部屋を後にする。残された小竜姫が混乱しているのがわかるが、時間を掛けてる場合では無いのでそれは無視する

 

「大丈夫かの?」

 

「……身体が思うように動きませんでしたよ」

 

そう苦笑する竜神王。ワシが治療を施すと言う事で無理にここまで入って来れたが、やはり天界の重鎮なので警護が凄い

 

「すまぬが、今から行うのは仙術の秘術ゆえに全員退出願いたい」

 

無論そんな言葉が普通なら通る訳が無いが、ベッドから身体を起こした竜神王がその通りにしろと口添えをしたので、ワシと竜神王だけになる

 

「竜神王。これが判るな?」

 

手の平の中に隠した文珠を竜神王に見せる。それを見て驚く竜神王の胸に手を当てると文珠がその効力を発揮する

 

「……横島ですか?」

 

小声で尋ねてくる竜神王に頷くと竜神王は沈鬱そうな顔をする。文珠の希少性、そしてその効果を考えれば当然のこと。そしてそれが人間が持つ能力となればそれは大変な騒動になるだろう

 

「何とか出来るかの?」

 

横島の護衛を今まで以上に増やす必要がある。それも頼れる神魔だけでだ……竜神王は少し考える素振りを見せてから頷く、神界、魔界も同時にガープの行動範囲になっているが、それ以上に人間界を制圧されると不味い。人間界は戦場と考えると劣悪だが、拠点として考えればこれ以上に無い拠点となる。それは魔族だからできる手段……魂喰いによる魔力の回復。それをされれば神としては非常に苦しい戦いに追い込まれる

 

「小竜姫を人間界に配置します」

 

「それがよかろうて」

 

小竜姫、メドーサの辺りが最も配置する人員で適している。それに魔界正規軍もブリュンヒルデを置いている以上、こちらも一定以上の人材を配置する必要がある

 

「老師、これからどうなると思いますか?」

 

「それが判れば苦労せんわい」

 

ガープもアスモデウスも戦上手だ。一人でも厄介なのに、それが2人。神魔も一枚岩とは言えぬ以上苦しい戦いになるのは必須

 

「どこまで巻き返せるかじゃな」

 

向こうの牙はこちらの喉元に突きつけられていると言うのに、こちらは向こうの拠点すらわからぬ始末。今までは散発的なテロに留まっていた事が神魔に油断と慢心を与えた。どうせ敗北者大きな手は打てぬと高を括っていた者が多すぎたのだ……それが向こうの策略とも知らずに……

 

(苦しい戦いになるの……)

 

神魔側が圧倒的な不利な状況で始まったアスモデウス、ガープとの戦い。既に追い込まれている状況からどうやって戦況を引っくり返す事が出来るか?ワシの脳裏に浮かんだのが横島の姿で……ワシは深く溜息を吐きながら脳裏に浮かんだ横島の姿を消し

 

「オーディンと合流しようかの」

 

「そうですね」

 

今は魔界の方が情報を多く掴んでいる。ここに留まっていても変わらないと判断し、ワシは竜神王と共に天界を後にするのだった……

 

 

 

~アシュタロス視点~

 

蛍から聞いた横島君が文珠に覚醒したと言う言葉に一瞬頭の中が白くなる。確かに横島君の最終的な霊能ではあるが、余りに早い

 

「美神さん達の対応は?」

 

「とりあえず文珠を作らせない事と六道と神代の傘下に美神さんが入る事を決めた」

 

霊能で強い発言力を持つ六道と神代だ。その傘下に入れば当面の安全は確保出来たと見て間違いない、ただ問題はそこでは無い

 

「もう逆行の記憶は何の意味も持たないよ」

 

「……判ってる」

 

今回の隕石落としに神魔の能力を封じる結界。そのいずれも本来無かった事件だ。私も協力したいところだったが、そうなると過激派の情報を得れなくなる。だから動けなかったことに歯がゆさを感じる

 

「すまないが蛍。私は少ししたら人間界を去る事にしよう」

 

「え?」

 

このタイミングでの私が人間界を後にすると言う言葉に蛍が目を見開く

 

「ど、どうして?」

 

「どの道人間界にいても私は大きく動けない」

 

ガープにスパイと思われると思うように動けない。そうなれば結局どこにいても意味は無い、それでは味方としては言いがたいだろう

 

「危険だが、ガープの陣営に直接乗り込む」

 

「そんなの危険だわ!」

 

危険だとしてもこのまま人間界にいても思うように動けないのならば、リスクは承知で動くしかない

 

「今直ぐと言う話じゃない、もう少し状況を見てからだ」

 

「……本当?」

 

姿が見えないうちに勝手に魔界に行かないかと心配そうにしている蛍に大丈夫だよと笑いかける

 

「ある程度の備えをしてから魔界へ行くよ。多分向こうからアプローチがあるだろうからね」

 

ここまでガープ達にとっての良い流れが出来たとなると、ここで合流を拒否すれば不信がられる。つまりここがガープの陣営に潜り込み情報を得るチャンスなのだ

 

「無茶しないでね?」

 

判ってるよと笑い返す。時間がどれくらいあるかは判らないが、人間界にいれる間に出来る間の供えをしておかなければならない。

 

(私もまた覚悟を決める時が来たようだ)

 

ここまで大規模作戦となると、間違いなく続けて動き、神魔にダメージを与えるために大規模な作戦を打つだろう。そして受けた被害を神魔が修復している間に、また大規模な作戦を計画する。つまり次にガープが動いた時、それを出鼻で挫く必要があるだろう。神魔にとっても人間にとっても正念場が近づいているのだった……

 

 

リポート25 横島家の非日常 その2へ続く

 

 




次回はのほほんとした話で書いて行こうと思います。シリアスばかりでは疲れてしまいますからね、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

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