GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート26 妖怪病院 その2
~夏子視点~
暗い、どこまでも暗い道を私は歩いていた。一切の光が無い底なしの闇……私はその中を足を引き摺りながら歩んでいた
(臭い、気持ち悪い……ここは何処なの)
その通路は不快な匂いに満たされていて、足元はまるで泥の中に居るかのように足に纏わりつき、足を下ろす度に足の裏に感じる何かを踏み潰すような感触も気持ち悪くてたまらない。それでも歩くことはやめない、じっとしていてはここから出る事なんて出来ないのだから
【出られない、出られない、ここからは出られない~♪】
突如闇の中に響いた調子はずれな歌声。その気味の悪い声が闇の中にこだまし、不快感だけが広がっていく
「誰!?どこにいるのッ!」
だが私は恐怖した。闇の中で突如聞こえてきた声が自分の耳元で聞こえたから、恐怖に顔を引き攣らせながら、手を振り回す。だけど、手には何も当たらない
【オイラはいるよ?近くにいるよ?】
「ひっ!」
ベロリと頬を舐められる感触がして、全身に鳥肌が立つ気味が悪いと思いながらも暗い通路を全力で駆け出す。走る事で生暖かい液体が跳ね、自分を汚して行くのが判る。それでも止れない、止る事が出来ない
【駄目だって、駄目だよー?そっちに行ったら死んじゃうよー?】
君の悪い声ががずっと耳の側を離れない。気持ち悪くて、恐ろしくて、前へ進む足を止める事が出来ない。そして走り続けて、やっと耳元から気持ち悪い声が遠ざかる……ほっとした瞬間。足元が消え、凄まじい浮遊感が襲ってくる。そして足元からあの不気味な声が再び聞こえた
【いただきまーすッ!】
「っきゃあああああああッ!!!」
聞こえた声に反射的に視線を下に向けると、巨大な歯と舌……私を飲み込もうとしている口が見えて、私はそう叫び声を上げるのだった……
「大丈夫?大丈夫かい?」
「え。あ……」
誰かの心配するような声と揺さぶられる感触に私は目を覚ました、ぼんやりとした頭で私を揺さぶっている誰かに視線を向けると、そこには隣の病室の記憶が無いと言う子供の姿
「どうして?」
「魘されてる声が聞こえたからかな?大丈夫?」
私の声が隣まで聞こえていたのかと思い、恥ずかしい気持ちになりながら身体を起こす
「ありがとう、起こしてくれて」
「別に良いよ。それに君が僕を助けてくれたって聞いてるしね」
にこにこと笑う少年?それとも少女?にありがとうと頭を下げる。
「私夏子って言うの、君は?」
「んー思い出せないんだよね……うーん……」
腕を組んで真剣な声で唸る。その仕草は中性的な容姿の事もあり、可愛らしいと思える物だけど、名前が無いって言うのは不便だと思い。私も腕を組んで一緒に唸る
(あ……)
朝の日差しが髪に当たってその髪がエメラルドのように光る。
「エルってどう?」
「エル?……うん、それで良いかな。エルで行こう」
自分の名前を思い出すまでの仮の名前と言う事だから、ニックネームみたいな感じで良いと思う。私はベッドから身体を起こして
「それじゃあエルちゃん。ご飯食べに行こうか?」
「うん、行こう」
身体自体は健康なので、出歩くことを許可されている。私がそうなのだからきっとエルちゃんも同じだ、手を繋いで病室を出て思わず呻いた。何故か夢で見た闇の世界を思い出してしまったから
「どうかした?」
「う、ううん、なんでもない。行こう」
私はエルちゃんの手を引いて食堂に向かったが、昨日までは感じなかったどこから見つめてくるような視線があるような気がしてしょうがないのだった……
~琉璃視点~
美神さんとくえすが朝一番で尋ねてきた。今回の除霊の仕事も無事に完結したと聞いているけど、どうしてそんなに怖い顔をしているのか理解出来なかった。
「どうかしました?」
除霊の勘を取り戻すために連続除霊は頼んでいるけど、リポートは何か異常があれば提出で良いって言ってあるし……昨日は特に強い霊力や魔力の反応も無いはず。色々考えてみたけど、どうしても美神さんとくえすが2人で尋ねてくる理由が判らなかった
「冥子の事前調査が3回連続で外れたわ」
「……マジですか?」
冥子さんの補助除霊による、調査の的中率はほぼ100%だ。1回はずれたとしてもそれは差異のレベルであるはず、それが3回となると流石に異常だ。
「冥子さんには?」
「ここに来る前に伝えてきましたわ。冥子も信じられないと言ってましたけど、事実です」
そうよね。冥子さんは除霊は苦手な分、補助除霊による調査に力を入れていた。それが外れていると聞いて信じられないと思うのは当然の事だと思う。
「事前除霊の結果はどうだったんですか?」
「B~A-クラスって言う判定だったんだけど、除霊に踏み込んだらC-~Dランクって所ね」
美神さんが差し出してきたリポートに流しだが目を通す。写真に収められている悪霊のランクは確かにそう高くない、美神さんはC-と言ったけど、正直D+判定でもおかしくない
「A判定となるとレギオンとか、ポルターガイストでも上位のレベルですよね」
「ええ、だから初日はシズクとかを連れて行ったんだけどね……余りに程度が低いってもう着いて来てくれないのよ」
それは仕方ないだろう、シズクの力を考えればそれこそ、A+~AAAクラスまでの除霊までは楽勝だ。D判定の除霊に連れて行かれては溜まった物じゃないだろう
「霊脈とかの調査はした?」
「しましたわ。でも霊脈らしいものは愚か、霊道すらありません」
うーん、それは正直かなり異常ね。確かに除霊に向かって存在する悪霊のレベルが低いって言うのはありえない話では無い、逆に悪霊などのレベルが高い場合も勿論ある訳だけど……それでもそれらの場合は霊道や霊脈を通じて移動しているって言うのが一般的だ。それも無いのに、冥子さんの調査が外れると言うのはありえない話だと思う。
「都内に何か強力な反応とか無かった?」
「いえ、それらしいものは無かったですけど……」
隕石落としの件で今も尚GS協会は厳戒態勢をとっている。何か反応があれば、私の方から美神さんやくえすに連絡を取っている
「うーん、琉璃。西条さんと教授は?」
「あー今日本に居ませんよ?」
犯罪行為に走ったオカルトGメンと視察団の件で日本に居ない。設備に関しては使用許可を得てるけど、レーダーやセンサーの類は殆ど同レベルだし……
「よっぽど隠密能力の高い悪魔でしょうか?」
それだと悪霊の反応が弱くなっているのは、魂食いによるその悪魔の強化だと思うけど、都内でそんなことをすれば必ず痕跡が残る
「何かそれらしい報告って上がってない?病院とか」
「病院ですか?ちょっと待ってくださいね」
上げられている報告書などに目を通すが病院周辺でのそれらしい報告例は上がっていない。
「私の予想では病院関連だと思っているんです。それでもないですか?」
くえすが自分の予想が外れているって事が信じられないのか、良く確認してくださいと言うけど、本当にそれらしい報告も反応も無いのよね。病院以外となると霊園とか墓地とか、火葬場とかそこらへんになるかしら?
「お邪魔するわねー♪」
「……やぁ」
……なんか凄いの来たわ。一瞬思考が停止したのが良く判る、柩がゴモリーさんに抱き抱えられてやってきた。もうなんと言うか見た目のインパクトが凄い、それに柩の頭の上にゴモリー様の胸が乗っていて、柩が物凄く嫌そうにしている。
「凄い事になってますわね」
「黙れ言うな、凄い事になってるのは自分が良く判ってる」
そんな口調は駄目よーとゴモリーさんに頭をなでまわされ、柩の目付きが凄い事になってるわね。何時も死んだ目をしてるけど、今日のはまた凄い
「……病院。病院に気をつけるんだ、下手をすると大量に死者が出るよ」
「んー予言は終ったわねー、じゃあ買い物に行きましょうねー♪」
「待って!病院!病院で間違いじゃないッ!?」
ゴモリーさんに抱き抱えられたまま出て行こうとする柩にそう叫ぶ、柩は胸の中に抱き抱えられたまま予知の続きを口にする。
「深夜だ、夜の時間に気をつけるんだ!」
「ふっふーん♪可愛い服を着ましょうねー」
「お前は少しは状況考えろーッ!!!」
楽しそうなゴモリーさんに対して、怒鳴りまくる柩。だけど貴重な情報を柩はもたらしてくれた
「深夜帯の防犯カメラとかの映像とか、宿直の人の話を聞いて見ますね」
問題ないって報告を受けているけど、その報告自体が既に悪魔によって歪められている可能性があるのだから
「そうね。柩が態々言いに来たって事は間違いないわ」
「となると入院患者が多いところから回って行きましょうか」
柩の未来予知の結果だ。それは間違いなく的中している、病院側も中々OKを出さないと思うけど、それでも調べる必要がある。
「美神さんとくえすだけじゃ厳しいですからね」
私の言葉に苦笑する2人。確かに2人のGSとしての腕は極めて高い、だけど良くない噂も多いので病院としても、書面を見て対応してくれるとは思えないしね。私の言葉に肩を竦める美神さんとくえすと共に調査の為にGS協会を後にする事にするのだった……
~横島視点~
銀ちゃんに教えてもらった夏子が入院している病院は「緋立病院」と言うギリギリ東京都内と言う感じの場所にある病院のようだ。蛍に尋ねてみたが、どうも蛍も知っているくらい有名な場所らしい
「霊力中毒とかの専門病棟ね。そこに入院してるって事は結構酷い状態なのかもしれないわね」
俺を不安に思わせたい訳じゃないけどと笑う。勿論そんな事は判りきっているのでそれを責めるような事はしない
【あんまり悪霊とか幽霊のみない場所ですよね。私も散歩の時に通りますけど】
「そうなの?あーじゃあもしかすると俺のランニングコースの近くだったりする?」
おキヌちゃんの散歩のコースとなるとおれのコースとダブっている場所が多い。住所だけだからあんまりわからないけど、もしかして俺の知ってる場所?と尋ねる
【結構近いと思いますよ?横島さんが土日に行く散歩コースの方です】
「そうそう、途中で川があってそっちの方に行くでしょ?その逆方向に行くのよ」
蛍の補足もあって場所が判ったけど、結構遠くに入院してるんだなと思った。出来るだけ早くお見舞いに行こうと思っていたけど、ちょっと近い内にお見舞いに行くのは難しそうだ。昨日の除霊の事もあるが、3日連続冥子ちゃんが事前調査を外した。これはおかしいと美神さんも言っていて、今日も朝からちょっと調査に出るって言っていたのもある。俺と蛍はシズクやノッブちゃんに意見を求めて見ることにしていた
「んー霊脈とか、それっぽいのないし……なんで悪霊とかのランクが下がるかなあ」
【共食いしたならレギオンとかいますしね……何か変なにおいはありませんでした?】
「……それっぽい匂いも無いでござるしなぁ」
昨日付き添ってくれたシロに牛若丸がそう尋ねるけど、シロは何も感じなかったと告げる。もちろん俺や蛍も調査してそれらしいものは無かったんだよな……
「……おかしな話だな。12神将を用いているなら外れるとは思えんし」
【そうじゃよなあ……うーん】
シズクもノッブちゃんも思い当たる節は無いって言ってるし……霊脈、霊道がなければ、瞬間移動的なものは出来ないって話だ。
「心眼も特に何も感じ無かったよな?」
【ああ、何か感じたら私が言わない訳が無いだろう?】
だよな……心眼の索敵能力で感じ取れないとなると本当に原因は何なのだろうか?俺も蛍も冥子ちゃんの所で実習したから判るけど、冥子ちゃんが外すとは思えないし……本当に何なのだろうか?
「みむー♪」
「「「ぷぎゅー♪」」」
【のーッ!のぶぶーッ!!!】
チビとうりぼーをチビノブが追いかけている。チビは純粋にすばしっこくて捕まえる事が出来ず、うりぼーは分身と混じっているから対処できないようだ。それでも喧嘩せず遊んでいるので良かったと思う
「ぷぎゅ」
【ノーブウ!?】
捕まえたと思ったのに分身で手の中から消えるうりぼーに驚いている姿に思わず笑いかけて……あれ?って思った
「あのさ、凄い馬鹿みたいなんだけど1個気になった事聞いて良い?」
そう言えば前から気になっていたと言えば気になっていたのだ、ただ何時聞けば良いのかなと思うのと、可愛いから良いやと思っていたんだけどさ
「うりぼーって分身するじゃん?元に戻るとさ、どうなるの?」
「……いや分身には意識は無いからね?」
「あれで?」
分身同士が鳴いて、跳ねてる姿を指差して尋ねる、どう見ても意識が無いようには見えない。それを見て蛍はうーんっと唸り始め、シズクに助けを求める
「……分身にもよるが、高度な分身だと本体の見たものがフィードバックすることはある。私もそういう分身は使えない事は無い」
「じゃあさ、分身が悪霊を食べて、美神さん達が来る前に消えてるとかない?」
分身が食べて、んで本体に逃げ帰るとか無い?って尋ねると、蛍達が目を見開く
「盲点過ぎたわね」
「と言うかあれよね。霊脈とかそういうアプローチするし」
【経験不足が役立つ事があるな】
【横島のひらめきって物凄いなッ!よしよし、ワシが褒めてやろう】
褒められているのか貶されているのか今一判らないけど、俺の呟きがもしかすると今回の事件の突破口になるかもしれないって事で
「よーし、うりぼー。おいでー」
「ぷぎゅう♪」
俺にその閃きを与えてくれたうりぼーを抱き抱えて頭をなでまわす。俺には判らない難しい話を始めた蛍やシズク
「……分身と仮定して、となると反応は短時間で広範囲って可能性があるな」
「となると、どこを基点にしているかよね」
「霊脈の近くがやっぱり関係していると思うんだけど……」
【ここはどうですか?霊脈が近いですよ】
【馬鹿じゃなあ、霊脈は近いが、神社や教会が多い場所に拠点を構えると思うか?】
「よっぽど馬鹿じゃないと、そんなところには構えないわよね」
「……ここはどうだ?霊脈はさほど近い訳じゃないが、周囲にはGS関係の施設は無いぞ?」
「割りと狙い目と言えば狙い目よね。病院って言う所が嫌らしいと思うわ」
「じゃあ、これで1度美神さんに報告するとして、仮にだけどどんな悪魔とかが居ると思う?」
凄い専門的過ぎてさっぱり判らん、シロが逃げてきたので俺はうりぼーを1度フローリングの上に降ろして
「ドラ焼き食べる?」
お茶請けで買って来ているおやつを食べるか?とシロに訪ねる。シロは座布団の上に寝転がりながら俺の方を見て
「貰うでござるよー」
【あ、じゃあ私お茶入れますね♪】
「あ、それならチビとうりぼーに林檎もお願いして良い?」
とりあえず進展があったのだから、難しい事は蛍達に任せ俺達は少しだけ早いが3時のおやつにする事にするのだった……
~悪魔視点~
ほんの僅かだが、今回の事件の手掛かりを掴み始めた横島達……しかし横島達は知る由も無かったのだ、こうして手掛かりを集め、そしてどんな敵が今回の事件に潜んでいるのか?それをおぼろげながらに掴み始めた。だがそれは余りにも遅すぎたのだ
「う、ううー……」
「うわあ、う……ううう……
病院の中に魘される声が響く、だがそれは入院患者だけの声だけでは無い。ナースステーション、宿直の医師、GS……この病院の中に居る全ての人間が魘され、その顔に大粒の汗を浮かべ、届かない助けを求める。苦悶の叫びが響く中を鼻歌を歌いながら歩む影
【おやおや、おやおやおやあ!】
「……うっ、ううう……」
魘されながらも病室から這い出て来た女性を見つめる。黒い影、助けを求めるように伸ばされる手を踏みつけ、指を鳴らす
「……ひっ!」
魘され続けていた女性が目を覚まし、踏みつけられた腕の痛みに顔を歪めながら、自身の腕を踏みつけている主を見て恐怖に顔を歪める
【イヒヒヒ……いただきまーすううううッ!!!!】
影の口は一瞬で女性の魂だけを飲み込み、抜け殻となった肉体だけが病院の通路へと残された。だが決して死んでいるわけでは無い、死んているとも、生きているとも言えない完全な植物で女性の身体はその場に放置された
【楽しいねえ~楽しいねえ~イヒヒ、ヒヒヒ~】
一瞬だけ放たれた魔力の反応はGS協会、オカルトGメンのセンサーに感知されることは無かった。それこそがこの悪魔の最も賢い点だった、隕石落としの際に神魔の妨害を防ぐ為に用意された結界、そしてその中に召喚された悪魔はその大半がビュレトとブリュンヒルデが討伐された。だがこの悪魔は狡猾でそして自らの力と言う事を理解していた
【くっくっふひははははあッ!!】
まともに戦えば自分は死ぬ。それが判っていたから悪魔は暴れるのではなく、人間に憑依し避難する人間として病院の中へと逃げ込んだ。そしてその場所で殺さないように細心の注意を払い行動し、そして今は自らの技能を用いて狩りの瞬間だけ魔力を放出すると言う方法で魂喰いを繰り返していた。そして見つかることを考え、本体ではなく分身体で動く事もまたこの悪魔の賢い所だった
【次はどこに行こうかなあ、ヒッヒッヒ~】
そして異形の悪魔は調子外れの歌を歌いながら、影の中へと消えていく。自らの弱さを知るからこそ、派手に立ち回らず、そして今まで生き延びてきた悪魔だが、この1回の魂食いで我慢してきた欲求を抑える事が出来なかったのだ。悪魔は口から涎を垂らしながら影の中へと消えて行くのだった……
そして翌日10人近い植物状態が発見される事となり、自体は一気に動き出す。だがそれは悪魔を追い詰める事となり、更なる被害拡大を齎すのだった……
リポート26 妖怪病院 その3へ続く
次回は半分は美神達の視点、後半からは夏子とエルの2人の視点で悪魔に支配された病院からの逃走劇を書いて行こうと思います。
ホラーとミステリーを半分半分で書ければいいなあとか思いますね、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い