GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート26 妖怪病院 その3
~くえす視点~
横島の思いつきと言う事で違うかもしれないという前置きはあったが、横島の話は決して間違いではないかもしれないと思った。
弱い分身をいくつも用意して、魂を吸収したら分身ごと回収……ですか」
「やっぱり違うかもしれませんか?」
横島は不安そうですが、あながち間違いではない。霊力センサーなどに触れない程度の本当に弱い弱い分身をいくつも作る、そして殺さない程度に人間から魂を奪い力を蓄える……
(問題は何を媒介にしているかですね)
吸血ならば痕跡が残る、それが無いということは夢を媒介にした魂喰いの線が濃い……夢を媒介にした魂喰いとなると……
「ナイトメアでしょうか?」
「……それが一番可能性が濃いわね」
悪夢を見せて対象の魂を食らう悪魔。それがナイトメアですが……
「でもナイトメア対策ってどこもやってますよね?」
蛍がそう呟く、そう。その通りなのだ、ナイトメアは有名な悪魔で対処法が確立している。今ではどこの病院もナイトメア避けの札や魔法陣を用意している
「ナイトメアの亜種って言う可能性もあるわね」
「あれだけの事件の後ですしね」
ガープの事件の後で東京だけではなく、日本中の霊力や神通力のバランスが崩れている。それに伴って、何かの変異が出た可能性は十分にありますわね……
「……一応調べてみたが、お前達の道具には感知できないレベルの極微量の魔力の残滓があった」
「私とシロの鼻でギリギリね」
シズクとタマモの言葉に横島の予想が限りなく正解に近いと言う事が判った。ただし問題は賢いナイトメアなのか、変異したナイトメアなのか……それともまったく異なる悪魔なのか……敵が絞り込めないって言うのが問題といえば問題ですわね。ですが、弱い分身をいくつも呼び出して、霊力を感知したら本体の元へ逃げる。それによって自分を特定させないという方法を取っている……その可能性が浮かんだのは横島の柔軟な発想のおかげと言えるだろう。美神もそう思ったのか、横島を褒める言葉を口にする。
「よく思いついたわね、横島君」
正直私達ではこの発想には辿り着けなかっただろう。生き残りの魔族であると言う事を前提で考えていたから、センサーの類は強力な物を使っていた。それに柩の予知の事もあり、調べる方向を変える事を決めた。だがそれはより強力な魔力に反応する見鬼を使うつもりだったので、弱すぎる魔力はやはり感知出来なかっただろう
「美神、とりあえずもう1度捜索のやり直しですわね」
「そうね……今回は分かれて再調査をしましょうか」
病院の周りを調べ、シロやタマモの嗅覚を生かして……相手の行動パターンを探りだすしかないですわね。
「じゃあ……あ、ちょっと待って電話だわ」
出発の打ち合わせをしようとした所で電話が入る。もしかすると琉璃が何かを見つけたのかもしれないですわね
「それにしても、よく思いつきましたわね?」
「いやあ、うりぼーが増えて歩き回ってるのを見て思いついたんですよ」
うりぼー……ああ、あれは確かに増えて歩き回っていろいろやってますわね。
「でも私もそんなの気にしたこと無かったしね」
「まぁ私もですわね」
そう言う物と思い込んでいた訳だ。霊力があれば、それを元に分身だって出来る。霊能の知識があるから、深く考えることは無かったと思う
「問題は大分霊力を蓄えているって所よね」
「……そうなるな、元々が対したことは無くてもどれだけ魂を蓄えているか判らない」
タマモとシズクの言う通りではある。今回は私達は完全に後手に回っている……下手に個別行動を取ればそれこそ、返り討ちにあう可能性主もゼロではない
「分かれて調査はリスクがあるかもしれませんわね」
「そうよね……時間は掛かると思うけど、集団行動の方が良いかも知れないわね」
相手がかなりの量の霊力を蓄えていたら、それこそ下手に見つかればそのまま負けてしまう可能性もある。
「所でノッブや牛若丸はどうしたのですか?ついでにおキヌも」
いつも大体一緒にいる幽霊3人組はどうしたのですか?と尋ねる。シロやチビ、うりぼーも一緒だ。だが……
「んにゅう……」
「みー」
「ぷぎゅるう……」
難しいことは判らないと言う事で集まって丸くなって眠っている。別にとんちんかんな事を言い出さないのなら、寝ていても構わないと思うが、子供組みと違って幽霊組みは除霊の前なら一緒にいてもおかしくないんですけど……
「ノッブちゃん達は周りを調べてくるって言ってましたよ。俺のダウジングに使えそうな物があるかもしれないって」
横島のダウンジングですか……確かにそれも上手く行けば相手の居場所を特定出来るかもしれないですわね。
「でも正直期待は薄めなのよね」
「まぁそうですわね」
横島が悪いわけではない。ただ、ここまで自分の痕跡を隠すことに特化した悪魔を見つける事が出来るか?という不安はある。それに想定よりも悪魔が強い場合もあるので、最悪の場合ビュレト様に助けを求める事も必要かもしれない。そんなことを考えていると美神が通話を終えて、こちらを見る。その険しい顔を見て、胸騒ぎがした。
「あちこちの病院で魂が食われてる人が見つかったわ」
それは私達、そしてGS協会の初動捜査が遅れた事によって被害者が出たという言葉なのだった……
~美神視点~
東京都内の病院の内、7箇所で魂を失った事による植物状態の人間が発見された。琉璃の報告を聞いて現場検証に向かったのだが、そこには唐巣先生とピート、シルフィーちゃんの姿とエミとタイガーの姿があった。
「美神君か、私達も話を聞いて飛んで来たんだが……少しばかり……いや、かなり厄介な事になっているみたいだ」
唐巣先生が渋い顔をしている。それだけ厄介な事になっていると言う事ね……
「蛍ちゃんとくえすは現場の調査を、シロとタマモは何か痕跡が無いか探ってみてくれる?横島君はシズク達と一緒に何でも良いから気になる点が無いか調べてみて」
病院内に悪魔がいるとは思っていない。仮にいたとしても、これだけのGSが集まっていれば既に撤退している物と考えてバラバラに調査を始める。蛍ちゃんとくえすは霊能の知識から、シロとタマモは人狼と妖狐の嗅覚、横島君の直感とシズクと心眼のフォローがあれば、私達では見つけられない何かを見つけれる可能性は十分にある。
「それなら、タイガー。オタクもついて行くわけ」
「了解ですジャー。横島さん、よろしくお願いするんじゃ」
話を聞いていたエミがタイガーに横島君に同行するように指示を出す。タイガーは精神感応能力持ちだから襲われた人の思念を探すって所ね……
「では先生、僕とシルフィーは病院内のナイトメア避けが機能してくるか調べてきます」
「すぐ戻りますね」
時間をかけている場合ではないので、分散して一気に情報収集を始める。少なくても後4箇所は回らないといけないのだ、1箇所で時間を掛けることは出来ない
「私は詳しい話を聞いてないんだけど、唐巣先生とエミは何か聞いている?」
私よりも先に来ていたので、何か聞いてないか尋ねる。すると唐巣先生は手帳を出す、それだけでほかの病院も回っていると言うのが判った
「……まず魂喰いをされた被害者だけど、魂の尾が残ってるから犯人さえ倒せば助ける事が出来るかもしれない」
「だけどそれは時間の勝負なワケ」
魂が完全に消化されるまでが救出までのリミットって事ね。私の方も調べていた情報を出す
「横島君の質問で気付いたんだけど、どうも今回の悪魔は弱い分身を幾つも作って、人間とか悪霊を喰らって力を蓄えてるみたいなのよ」
「なるほど、道理で痕跡が見つからないわけだ」
私だけではなく、唐巣先生達も琉璃から依頼を受けていたのだろう、かち合うことは無かったけど、同じ案件で調査を行っていたみたいだ
「なるほどね……っとなると痕跡発見の難易度は高いと……令子オタク、これからどこを見て回る予定なワケ?」
「とりあえず、ここと、こっち、ノッブちゃん達が先行してるから、そっちと合流したいし」
「判った、じゃあ私達はこっちと海のほうに向かう。小笠原君はどうする?」
「もっかい、霊視して回ってる冥子と合流してみるワケ」
とりあえずこの病院のあとに回る所の打ち合わせを済ませる。同じ所に行っても、時間の無駄になるだけだしね
「所で、ナイチンゲールのいる病院って被害者出てる?」
一応確認と言う事で尋ねてた。すると2人は苦笑しながら逆に尋ねてきた、被害者が出ていると思う?と
「……思わないわね」
あのデストロイヤー婦長が気付かない訳が無いわね。判りきった質問をしてしまったと苦笑していると、蛍ちゃん達が戻ってきたので声を掛けて次の病院へと足を向けるのだった……
~夏子視点~
病院での味気ない夕食を終えて消灯時間となった。昨日の夢のこともあり、眠るのが怖いと思っても睡魔には勝てず。私は自分でも驚くほど早く眠りに落ちた……これで朝まで起きる事は無い。私はそう思っていたのだが、ふと目が覚めた
「あ……あれ?」
私の眠りはかなり深いほうだ。それも1度寝たら途中で起きる事がないほどに深い眠り……それなのに目が覚めた。トイレに起きた訳でもない、寝苦しかったわけでもないし、喉が渇いているわけでもない。それでも私は目が覚めたのだ……
「時間は……っと」
朝方かな?と思い時計に視線を向ける、だけど時計の針は丁度頂点を指している……つまり深夜0時と言う事だ
「こんな時間に起きたの初めてだよ」
やっぱり眠る時に怖いと思っていたのが悪かったのかな……でも昨日の夢は夢なのにしっかり覚えていて、無意識に眠るのを拒否したのかなと思いベッドから身体を起こす……
「こういう時、個室って便利よね」
銀ちゃんがお見舞いで持って来てくれた横っちのGSとしての活動が書かれている週刊誌をベッドの脇の棚から取り出して、備え付けのライトの紐に手を伸ばす
「あれ?」
何度か引っ張るが電気がつかない。電球が切れたのかな?あ、でも私が入院してすぐ取り替えてくれた、まさか数日で電球が切れるなんておかしいよね……
「うーん……」
流石にここまで暗いと雑誌を見る所ではない。仕方ないけど、水でも飲んでベッドに横になろうと思いベッドから立ち上がる
「……しかし、横っちがGSかぁ……」
最年少記録は更新していないが、それでも通常の高校に通いながらと言うのでは初のGS免許持ちとなった幼馴染。アイドルになっていた銀ちゃんにも驚いたが、横っちはそれ以上だ。そんな事を考えながら、蛇口を捻りコップに水を注ぐ
「きゃああッ!?
コップに入ったのは、透明な水ではなく。まるで血のように赤い液体……いや、この血生臭さは間違いなく血だ。手にしていたコップを投げ捨て、悲鳴を上げて後ずさる
「ま、まさか……これも夢?……いてッ……ゆ、夢じゃない……」
まさか昨日の夢の続き?と思い頬を抓る。だけど鈍い痛みが頬に広がり夢じゃないことを確信する……だがそれと同時に凄まじい絶望感が襲ってくる。夢ではない、だが夢で見た恐怖が襲ってくるのだ、霊能者でもなんでもない。ただの高校生である私に
「……ヒッ!?」
な、ナースコールと思い震える足に鞭を打って立ち上がり。再び尻餅をついた……何故ならば、そこには歪んだ笑みを浮かべた自分自身がこっちを見つめていたから、しかも少しずつこっちに近づいているのが判る
「あ、あかん! これはあかんわッ!!!」
腰が抜けて立てない、正直漏らしていない自分を褒めてあげたいくらいだ。4つ這いで病室から出て、更に息を呑んだ
「え……え?……ここ何処や!?」
私がいたのは最新施設の病院のはずだ。だが扉の外に出ると、そこは板張りの通路と木で出来た壁……どう見ても私がいた病院ではない。
「ど、どうなってるんや……」
病室に引き返す……いや、鏡から私の偽者が出てきている。もし戻って捕まったらどうなるのか判らない、だから病室に戻ることは出来ない
「なんで起きてもうたんや……」
これはもしかしたら起きてしまったから、訳の判らない世界に引きずり込まれたのではと思い、どうして夜中に起きてしまったのかと心底後悔する。
「はッ! え、エルちゃん!」
隣の病室に入院しているエルちゃんの事を思い出し、殆ど這うようにして隣の病室の扉を掴んで開ける
「あれ?夏子どうかしたのかい?」
不思議そうに私を見つめているエルちゃん。無事で良かったと安堵し、このまま朝までエルちゃんの病室でエルちゃんと篭城しよう。そう思っていたんだけど、一瞬で綺麗な病室は板張りの廃墟のような病室へと変化した……それはここも安全な場所ではないという証だった
「これは……どうも大変なことになってるみたいだね」
「うん……」
一瞬だけ顔色を変えたが、それでもまたいつものような柔らかい笑みを浮かべるエルちゃん。その精神力というか、動じない心は正直すごいと思う
「ほら、夏子」
「あ、うん。ありがとう」
手を貸してくれたエルちゃんにありがとうと言ってやっと立ち上がる。1人ではないと言うのが気持ち的にも私に余裕をくれた
「と、とりあえず。他にこの病院にいる人を探そうか」
「……そうだね。ここにいても良い事が無さそうだ」
もしかしたら私はエルちゃんのように行き成りこの廃病院に移動した人がいるかもしれない。それに物凄く嫌な予感がするから、早くこの病院から脱出した方が良いと思う。それか病院にいるGSの人を見つけよう……
「怖いかもしれんけど、一緒にがんばろ」
「うん、頑張ろう」
私とエルちゃんは互いを励ましあい、ボロボロの病室を後にするのだった……
~銀一視点~
夏子とエルが廃病院と化した緋立病院を脱出するために動き出した頃。暗い山道を走る青年の姿があった……
「くそッ!どうなってんねんッ!!!化け物の仕業か!あーくそッ!GSはなにやってるんやーッ!!!」
銀一は息を切らしながら悪態を付く。夕方に夏子の見舞いを終えてタクシーで帰っている途中に意識が途絶え、気が付いたら深夜。タクシーの運転手はいくら揺すっても目を覚まさない……そしてタクシーを出れば病院は赤いオーラに包まれている。とっさに俺は来た道を全力で引き返していた
「あ、あったあッ!!」
山の中の公衆電話。そこに駆け込み、テレフォンカードを入れる。
「出てくれ、出てくれ!」
俺はGS事務所なんて知らないので、横っちの自宅に電話を入れる。
『はい、横島ですけど?』
「横っちか!俺や!銀一やッ!」
「お?銀ちゃん?どうかした?夕方くらいに電話してくるなんて珍しくないか?」
夕方?腕時計を見ると時間は深夜0時を回っている、どう考えても夕方なんて言葉は出てこない時間だ
「横っち、俺はなんか今深夜の時間帯に閉じ込められてる見たいなんや」
『は?』
「悪い!上手く説明できんけど、病院が赤い光に包まれてて、俺は森の中に閉じ込められてるんやッ!」
受話器越しにばたばたと横っちが動き回る音がする
『具体的に教えてくれッ!』
「夏子の見舞いに来てたんや!それで帰ってる途中に意識が途絶えて、山の中にいたんだッ!」
俺だけではない、夏子も危ないと思うと自然と声が荒くなる。横っちは落ち着けと繰り返し言う、場所さえ判ればすぐに行けるからと叫ぶ
『緋立病院だったよな!?』
「あ、ああ!そうや!なんかあれはやばいッ!」
俺には霊能なんて無い、だけどあそこが危険と言うのは判っている。夏子が危ない、そのことを横っちに訴えていたのだが、突如電話の音声が乱れ始める
『……銀……ない……』
「もしもし!もしもしッ!!何言うてるかわからへんでッ!?」
突然横っちの声にノイズが走り、何を言っているのか判らなくなる。新品のテレフォンカードなので通話が出来ないなんて事はありえないのに……
『……だ……く……ろ……』
「何言うてるんや!?くそッ!切れてもうた……ッ!?なんやねんこれは!」
横っちとの通話が切れ、再び番号をプッシュしようとすると、公衆電話は消え去り。俺は木の枝を握り締めていた……そのありえない現象に俺は混乱する。だがそれと同時にこれでこの辺りがとんでもないことになっていることを確信した
「今行くからなッ!!」
俺で何が出来るかなんて判らない、だけど夏子が危ないと知っていて止まっていることなど出来なくて……俺は山道を緋立病院に向かって走り出すのだった……。
だが美神も横島達も想像だにしない事が「緋立病院」では起きていた。
【ひ、ひいい……来るな、来るなあ】
【おやおやぉやあ?たかが人間から無様に逃げ回るのですかあ?】
ナイトメアの身体はボロボロで、そんなボロボロのナイトメアを追い回しているのは着物姿の貼り付けたような笑みを浮かべた若い男だった。
【人間は弱い、餌になれと言ったのはお前だ。だから拙僧が今度はお前に言いましょう、強い私の実験台になりなさい】
【ひ、ひいい……ッ!や、やだあああッ!!げぼれおっああーっ!!】
暗闇から伸びた昆虫のようであり、しかし肉食動物のように引き締められた異形の前足が窓から外に逃げようとしていたナイトメアを胴体から貫いた。
【くく……くふふふう……ふうははははははあッ!!良いぞ、やっと理想的な素材を手に入れた、クフフ……ああ、楽しい、楽しいなあ……】
【あ、がぎ……い、いぎゃあ……】
着物姿の狂ったように笑いながら血反吐を吐くナイトメアの頭を掴み、暗がりの中に中へと消えていくのだった……。
ナイトメアは呼び覚ましてはいけない者を引きずり出してしまった、元軍病院跡地である緋立病院を餌場に決めたとき、ナイトメアは逃れられない死の運命に囚われてしまっていたのだ。
だがそれに気付いた時はもう遅い、この病院に潜む悪意は目を覚まし、既に動き出していたのだから……。
リポート26 妖怪病院 その4へ続く
ここから廃病院編が始まっていきます。一般人、記憶喪失、アイドルと霊能に関係の無い組み合わせでハイドアンドシークで話を展開して行こうと思います。ここに来て新しい要素にチャレンジして行こうと思います、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
-
サイドまたは視点は必要
-
今のままで良い