GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート26 妖怪病院 その7
~夏子視点~
銀ちゃんを先頭にして私とエルちゃんが駆け込んだのは黒い穴が道を塞いでいた森の通路。逃げるのに必死だったけど、このままでは袋小路に逃げる事になると思い慌てて叫ぶ
「銀ちゃん、そこ通れないやで!?」
「は?俺はここから登って来たんやで?」
不思議そうにしている銀ちゃん。もしかしてと思い振り返るとエルちゃんは膝の上に手を当てて、荒い呼吸を必死で整えながら
「……ちゃ、ちゃんと仕掛けは動かして来たよ」
「仕掛けってなんかあったんか?」
詳しく銀ちゃんに説明したい所やけど、背後から凄まじい音が聞えてくるので先へ行こうと促す。銀ちゃんも危ないのは判っているからか、問いただすことはせずに私達が持っていたのと同じ、除霊銃を手に先頭を走り出す。もう少しで通路を渡り終るという所でエルちゃんが足を止める、慌てて振り返るとエルちゃんは来た通路に両手を向けて目を閉じていた。
「エルちゃん、どうしたんや!?」
「僕は大丈夫だから先に行って!追っ手が追いついてくるまで少しでも時間を稼いだほうが良い」
言っていることは判る。でもそれがエルちゃんがこの場に残ると言う事ならば、認める事が出来ないと言おうとした瞬間。エルちゃんが突き出した両手から金色の光が放たれ、通路を完全に崩壊させる。これなら追って来れないと思うけど、目の前で起きた信じられない光景に銀ちゃんと揃って絶句する
「は、は……は……う……」
だがそれも死人のような顔色をしたエルちゃんの姿を見て消える。倒れてたエルちゃんを銀ちゃんが背負う
「とりあえず、話は後や!今のうちに距離をとるで」
「う、うん」
銀ちゃんに背負われているエルちゃんの血の気のない顔に、かなり無茶をしたんじゃないかと心配になりながら通路の先にあった階段を駆け下りた所で息を呑む、そこには立ち上がることこそ出来ないが、手足が人間の物じゃない軍服姿の化け物が2体転がっていた
「……もしかして銀ちゃんがやったん?」
「必要に迫られてな……暫くは悪夢を見そうや」
確かにと同意しつつ、唸り声を上げている化け物の横を通り、迷う事無く走っていく銀ちゃんの後を追って走る。全然躊躇わず走ってるけど、ちゃんと出口に向かっているのか不安になった
「銀ちゃん、今階段とかあったけど!?」
「俺が来た道の方が早いッ!!」
ちゃんと出口に通じてる!と叫ぶので、銀ちゃんの言葉を信じて銀ちゃんが飛び込んだ部屋に入ると魔法陣?って奴がぼんやりと光っていた……
「なぁ、あれ大丈夫?」
「……俺はあれでこの階に来たから多分大丈夫」
多分がつくのが凄い不安だけど、化け物が増えたので、捜索してる時間はないので銀ちゃんの言葉を信じるしかない。
「魔法陣で移動する前に少し休憩するか、この部屋の中には入ってこないみたいだし」
扉の前を通る気配がするけど、入ってくる気配は無いので少なくともここは安全と判断して埃まみれの椅子に腰掛ける。
「ありがと、私とエルちゃんだけじゃどうしようもなかったわ」
「運が良かったな、夏子。病院から帰る前に急にタクシーの運転手が気絶してただ事や無いと思って、慌てて戻ってきたんやで」
時間ギリギリまで病院で私と話をしていた銀ちゃんの結果オーライだろう。緊急バッグから蓋を開けていないペットボトルを銀ちゃんに投げ渡す
「お、サンキュー」
蓋を開けて一気に水を飲んでやっと落ち着いたのか、銀ちゃんは手にしていた除霊銃のマガジンを交換しながら、ソファーで横になってるエルちゃんに視線を向ける。
「記憶喪失らしいけど、もしかすると霊能力者だったかもしれないな」
「あの騒動で怪我したんかな?」
隕石が落ちてくると言う映画も真っ青の霊事件の時に怪我をした可能性はあるのかもしれない、むしろあれだけゾンビや悪魔が徘徊していれば怪我は愚か死んでいてもおかしくないのだ
「とりあえず、ここから出たら横っちに相談してみよ。横っちもこっちに来てくれてるやろうし」
「ちゃんと横っちに連絡したん?」
「おうよ、知り合いに霊能者がいるんや。危ないときに連絡しないなんか馬鹿のする事やろ」
そっか、横っちも合流してくれるなら少しは……そこまで考えた所で思わず尋ねる。
「横っちって大丈夫なん?」
私の知ってる横っちは言ったら悪いが、助兵衛で、霊能者と言われても少し不安が残るんやけど……
「大丈夫や、横っちはかなり変わってた……物凄い意味で」
「……どんな感じに?」
「……ちっさい悪魔とか、でっかくなって炎を吐くモグラとか、竜神様とかと一緒で助兵衛って言うか……うん、ド天然になってた」
「それ大丈夫か?」
助兵衛なのもどうかと思うけど、ド天然って横っちに何が起きたんやろう……なんか会うのが怖いような、楽しみのような複雑な気持ちだ
「う……うん」
「エルちゃん!大丈夫か!?」
ソファーから身体を起こしたエルちゃんに駆け寄る。エルちゃんの顔色はさっきよりマシだけど、かなり悪い様子だ。だけどエルちゃんは大丈夫と笑い、ソファーから体を起こして立ち上がる
「進もう、嫌な予感がする」
「もう少し休んでいても大丈夫だぞ?」
銀ちゃんが休んだ方がいいと言うがエルちゃんは険しい表情で天井を見上げる。
「いや、急いだ方がいい。早く移動しよう」
その強い口調に私も銀ちゃんも何も言えず、エルちゃんの言う通りにし、魔法陣の中に足を踏み入れる。一気に変わる景色に驚くのも束の間
【さてさて随分と逃げたようですなあ……では始めましょうか、命を賭けた鬼事を……はは……はははッ!!ひゃーっははははははッ!!!!】
病院を揺さぶるような凄まじい狂笑に私達は全身を走る寒気を抑える事が出来ないのだった……
~銀一視点~
除霊銃を連射しながら通路をひたすら走る。魔法陣で移動すれば少佐と呼ばれた男の部屋に着くと思っていたのだが、移動した先はどこまでも続く一本道
「銀ちゃん、こんな所……違う見たいやね」
「ああ。違う、あの声の主の仕業だと思う」
移動して直ぐに聞えてきた狂った男の声。確実にあの男が俺達を来た場所と違う場所に移動させたのは確実だ……正直に言えば、移動して直ぐ走れば外に出れると思っていたのだが、自分の考えが余りに甘かった事を思い知らされた気分だ
「……あの声、部屋の奥で悪魔を解体していた男と同じだ」
「……もしかして、軍服の上に着物を着てる変な男?」
違っていて欲しいと思いエルに尋ねた。だけど、エルの返答はどうして知っているのか?で絶望感が重く肩に圧し掛かってくる。何度も見た化け物兵士を作った男がまだ生きているなんて信じたくないが、どうもそれが事実のようだ
【さてさて、その通路を走り続ければゴールですよ。ヒヒヒッ!!ささ、頑張って逃げてくださいな】
嘲笑うかのような男の声が響くと同時に、壁から浮き出るように亡霊が現れ始め、それから俺達はずっと走り続けている
【あああ……】
【げばあ……】
【ギィイイッ……】
現れる幽霊はさほど強いわけではない、こうして走りながら連射している除霊銃で行動不能に出来る程度の弱い幽霊だ。だがそれでも終わりの無い一本道を走りながら戦っていると、まだ続くのか、いつになったら終わるのか?と言う絶望感が重く圧し掛かってくる
「……僕が何とかしようか?」
「いや、それは本当に最後の最終手段にしたい」
エルの金色の光は凄まじい攻撃力を持っているが、その反面消耗が激しいので、どうしても連打する事が出来ない。除霊銃でなんとか対処できる相手に使って消耗されるのは避けたい
「くそ、これ絶対追い込まれてる」
思わずそう舌打ちする。これは確実に追い込まれている、追い込まれた先に居るであろう男に使って欲しいのであの金色の光は使わないで欲しいと頼む。
【さぁさぁ!頑張ってください、もう少しですよぉ】
もう体力も除霊銃のマガジンも後が無いというところで男の甚振る様な声が響き、いらつきを覚えた瞬間目の前が一気に明るくなる。だが俺達の顔に笑みは当然無い……何故ならば、俺達の目の前にはにやにやと笑う男……過去の記録で見た蘆屋と言うキチガイが俺達の前にいたからだ
「さぁさ、ここがゴールですよ。あの世……と言う名の絶望のゴールですよ」
蘆屋の周りには俺達を追いかけていた化け物よりも遥かに強力そうな化け物が何体もいる。後ろに逃げようにも化け物の息遣いと足音が聞え、前はどう見てもこんなちゃちな武器で突破できるような相手ではない
「……行けッ!!!」
先制攻撃と言わんばかりにエルの両手から金色の光が飛び出すが、それは蘆屋の前で霧散する。信じられないという顔をしているエルに対して、蘆屋は陰湿そうな笑みを浮かべ、指を左右に振る。
「1度喰らえば対処法なんていくらでも思いつきますよ。そんな物を切り札にする方がどうかしてると言うべきですね」
そう言うと蘆屋は喉を鳴らし、白目と黒目の反転した目で俺達を見つめて笑う。
「霊力も無しに良くここまで逃げたと褒めてあげましょう、貴方達ならば優秀な私の駒になってくれる……そう信じていますよ」
そんな信頼いるかと叫びたいが、周りの化け物からの放たれている威圧感が増し、立っていられずに思わずその場に尻餅をつく。
「さ。丁寧に運んでください、決して傷つけないように」
化け物がにじり寄ってくる姿を見てもう駄目だと思ったその瞬間。風を切る音が響き、肉を裂く音と蘆屋の苦悶の声が響いた。
「がっ!?」
【間に合いましたね! 貴方達が主殿のご友人で宜しいかッ!!】
「前! そいつは死なないッ!」
カジュアルな服装に身を包んだ小柄な少女が蘆屋の首を刎ねた。だが即座に回復しているのを見て危ないと叫ぶと、その少女はバク宙で蘆屋の放った札を回避した。
【面妖な……】
「ふふふふ、英霊が2人。これはいいですねえ、大収穫ですよ」
助けに来てくれたのはありがたいが、相手が倒せないのではどうにもならない。だが少女はにやりと笑った。
【私はあくまでも主殿のご友人を発見するのが仕事。この2人を見つけた段階で私の仕事は完了しております】
「では大人しく捕まってくれると?」
【まさか、私は主が死ぬまでお仕えする所存。あれほど仕えがいのある御仁は兄上のほかにはおるまい】
微妙にかみ合わない会話を聞いていると突如ガラスが割れるような音が響き、何かが通路の飛び込んでくる。
「よっしゃああーッ!俺の勘すごくね!?銀ちゃんいたじゃん!」
【そうだな。12分の1を良く当てたよ】
「みみーむー♪」
【のっのー♪】
「ぷぎゅるう」
茶色い何かに跨った横っちが壁を突き破り、俺達と蘆屋の前に着地する。俺はその姿を見て思わず目元に浮かんだ涙を拭った。
「何が凄いや!遅すぎやッ!!」
「それは正直すまん!悪霊まみれでここまで来るのも大変だったんだぜ。でも間に合っただろ?」
「間に合ったとは何を差して「うりぼー!ビームッ!!!」
「ぷぎゃあああーーーーッ!!!」
「あーーーーーッ!!!!」
蘆屋が何かを言おうとしたが、それを遮って放たれたごん太のビームが蘆屋とその周りにいた化け物を吹き飛ばす。
「しゃあ!「何勝ち誇っているんです?私はまだ健在ですよ?」……くそったれめ」
だが蘆屋が目の前に現れにやにや笑う姿を見て、横っちは跨っていた猪から降りて俺達の前に立つ。その後姿は自分の知ってる横っちとは違うと思い知らされ、思わず息を呑むのだった……
~横島視点~
軍服の上に着物を着た奇妙な男。その姿を見て、直感でやばいと悟り先制攻撃でうりぼーにビームを使わせた。だがノーダメージだった……
(心眼、どう思う?)
(情報が足りない、もう少し様子見だな)
直感でやばいと感じ取ったのは心眼も同じだったが、あの高出力のビームを受けてもダメージが無いと言うのは納得出来ない。
「ノッブちゃん頼んだ」
懐に忍ばせた眼魂に触れるとノッブちゃんが姿を見せる。
【気色悪いのー】
背後から姿を見せている化け物に刀を抜いて駆け出していくノッブちゃん。相手の力量が判らないので挟み撃ちなんてごめんこうむる、だけど牛若丸が動かないのを見て何かあると俺でも悟った
「あの男は?」
【首を跳ねましたが、すぐ復活しました。なにかからくりがあるかと】
首を跳ねても死なないと聞いて舌打ちする。うりぼービームが効かなかったが、バリアや何かと思ったんだがどうもそれとは違うカラクリがあるようだ。
「ほほう!英霊ですか、なるほどなるほど……貴方横島忠夫ですね?」
俺の名前を知っている……その妙な雰囲気とあわせて、俺の中で奇妙な男に対する警戒心が跳ね上がる。俺の眉がつりあがったのを見て、男は失礼でしたねと笑う
「元日本軍霊能特殊装備開発室 局長蘆屋道貞と申します。ふふふ、これから何度も顔を見合わせることもあるかも知れないのでお見知りおきを」
にやにやと笑うその姿。見た目は病弱そうな痩せ型の男……だけど、何ともいえない不気味な雰囲気がある
「急急如律令ッ!!!火精招来ッ!我が敵を喰らえッ!!」
ノーモーションで放たれた陰陽術に俺の指は咄嗟に動いていた。横島の動きは殆ど条件反射に近い、今までの戦いの経験がそれを可能にしていた。宙に刻まれた文字が淡く輝き、横島達を包み込む。
「急急如律令ッ!!!霊符の力を散らしめよッ!!」
剣指で素早く描かれた文字に霊力が宿り、蘆屋の陰陽術をキャンセルする。
「ほう……触媒なしとは驚き、しかしまだまだ陰陽師としての力量は未熟な模様ですね」
両手の指の間全てに挟まれている札を見て、顔から血の気が引く。それを見て蘆屋は笑い声を上げる
「青褪めましたね?つまり貴方にはこれを……【ノッバアアッ!】……は?茶釜?」
チビノブが影から茶釜を取り出して蘆屋に投げ付けるそれを見て、俺は慌てて銀ちゃんと夏子に耳を塞ぐように叫ぶ。そして次の瞬間爆発した茶釜が蘆屋を吹き飛ばす……一瞬上半身が消し飛んでる姿が見えて吐きそうになるが、ビデオの逆戻しのように蘆屋の姿は一瞬で元に戻る。
(今の見たか?)
(ああ。見た……手品の種は判らんが、牛若丸の話通り相手の能力はダメージを受けないことにあると見た)
今のは完全に直撃だった、現に相手の身体も一度は吹き飛んでいる。だがそれでも次の瞬間には回復している、回復とか、残像とか、防御したとか、そんなちゃちな手段じゃない。心眼でも見切れない何かが、あの男を護っている。
「チビ、チビノブ、うりぼー。銀ちゃんと夏子を頼んだぜッ!」
栄光の手を両手に作り出し、狭い通路を蹴って蘆屋に接近する。距離を取ったままでは相手の行動に一歩遅れる、無詠唱とまでは行かないが、相手の陰陽術の発動までの時間はかなり短い、相手に詠唱をする隙を与えてはいけない。俺と心眼はそう判断した
「せいッ!!」
「とっと……なかなかやり……おっと」
正拳は交わされたので、それと同時に姿勢を低くして足払いを仕掛ける。蘆屋の足を掬い、身体が揺らめいたところで前に踏み込もうとする
【待て横島!罠だッ!】
心眼の言葉に踏みとどまり、右の栄光の手を霊波刀に変え、反射的に横薙ぎの一撃を叩き込む。それは蘆屋には届かず、その影から現れた片腕が獣、もう片方の腕が刀の異形を切り裂き消滅させる
「ふむふむ、攻撃力に目を奪われがちですが、その反射神経は脅威ですね」
冷静に観察されている事に気付き舌打ちを打つ、ガープやマタドールとまでは言わないが、この男も底が見えない。特に今のタイムラグなしの召喚術……こうなると接近で相手の詠唱を潰すという俺のプランは通らなくなる
(ええい、こうなりゃ出たとこ勝負だ)
Gジャンの内ポケットから銀の銃身を持つ銃を取り出す、アンちゃんが作って、ワルキューレさんに使い方を指導された霊波銃。それを左手に持ち、右手は霊波刀を維持する
「む、そう来ましたか……いやいや、中々多彩な戦術ッ!「伸びろーッ!!」 持っているようで」
霊波刀を伸ばすと同時に、霊波銃の引き金を引く伸びる刃と圧縮された霊波の2段攻撃。だがそれも、蘆屋には届かない、いや当たっているのだが、ダメージにはならない
(どうもこの状況で相手の秘密を解き明かすのは無理そうだな)
脳裏に響く心眼の声に小さく頷く、夏子と銀ちゃん、それと10歳くらいの子供と俺にとっては守りたい者が多すぎる。しかも相手の方が有利な条件となると、相手の無敵の秘密を探っている余裕なんてあるわけも無い
「そら、行きますよ」
俺と同じ……いや、俺よりも洗練された無詠唱の陰陽術が同時に放たれる。そのうちの1枚は霊波銃で撃ち落す、もう1枚は夏子と銀ちゃんを護ってくれているチビの電気ショックで迎撃される。蘆屋が目を見開いているうちにと前に出ようとするが、俺の影から伸びる腐敗した手が俺の足首を掴むので、舌打ちをして霊波刀を下に向かって突き刺す。
「ふふふ、いやいや、中々面白い勝負ですねえ」
相手の方が余裕があるのは当然だ、だが、俺も切り札は切ってない。いや、正確には切り札を切れない、この距離では銀ちゃん達を巻き込む可能性があまりに高すぎる。ここは何とか時間を引き延ばして……
「我が祖たる蘆屋道満直伝の陰陽術と五行陰陽術は随分と相性が悪い様子」
「……道満?」
告げられた名前が妙に頭に残った。これを忘れてはいけない……俺はそれを直感で感じた。
【横島!いいぞッ!】
【準備完了です!】
ノッブちゃんと牛若丸の声を聞いて、銃を懐に戻し拳を握る。周囲の霊力を収束し、肘までだった栄光の手が肩までを包み込む
「……行くぜぇッ!!」
手の甲から3つの光が溢れ、背中の霊力の翼が砕け散る。夏子と銀ちゃんはノッブちゃん達によって、この空間から脱出している。だからこそ、俺はこの一撃を繰り出すことが出来る
「滅殺の……ファイナルブリットォオオオオッ!!!」
通路を削りながら蘆屋へと突き進む、そして蘆屋の胴に拳を突き立て霊力を解放する
「ははっ、私の攻撃は効かないのに随分と無駄な事をなさる」
「いや、無駄じゃねえ」
凄まじい霊力の光の中、首を傾げる蘆屋。攻撃が効かないのは俺だって十分承知している、だから俺のこの攻撃は蘆屋に向かって繰り出した物ではない
「お前に効かなくても、この空間はどうだろうな?」
「……それが狙いかッ!?」
澱みきった魔界とも言える異空間……それは存在するだけでも、周りに影響を与える。それを破壊するのは正直、勝利すべき拳でも僅かに足りない。俺は右拳に握りこんだ文珠が光り輝き、蘆屋ではなく、その周りを包む何かを破壊する手応えを感じながら右拳を振りぬくのだった……
~蘆屋視点~
私が長い時間を掛けて、作り上げた空間が破壊された。それに対して激しい怒りを抱く物の、それを成し遂げた横島にも強い興味を抱く
「イヒヒヒ……良くもやってくれましたね」
あの霊力の拳だけではない、あの出力は確かに凄まじい物だったが、私の世界を壊すには足りない。何か奥の手がある……それを引きずり出してやると元の世界に戻り、横島と向かい合いながら告げる。異界を砕かれ、殴られた衝撃で外に飛び出ているが、ダメージはあるわけも無い。着物からどす黒い球体を取り出し翳す、私の影から現われた異形の兵士が私を包み込み、私の身体を強化していく
【ヒヒヒ……こうなればお前に勝ち目はありませんよ】
「それはどうかな」
横島の腰にベルトが巻かれていることに気づいた。横島は手にしていた黄色の球体の側面を押しベルトに押し込む
【アーイッ! シッカリミナー!シッカリミナーッ!!】
「ほ?」
ベルトから飛び出した黄色い服が横島の回りを踊るのを見て、思わず間抜けな声が出る。流石に私の知性を持ってしても、理解できない光景に驚くのは当然だ
【イッヒヒー♪】
「行くぜ、ウィスプ」
何かしてくる。それを直感的に悟りそうはさせないと攻撃を繰り出すが、それは横島の前を踊るパーカーに打ち落とされる
「変身ッ!」
【開眼ウィスプ!アーユーレデイ?】
ベルトのレバーを力強く引くと、黄色の服は空中でUターンし横島へと急降下する。それに合わせて横島が右手を高く掲げるとそれと同時にウィスプが左手を突き出して降下してくる。
【イッヒヒー!!!】
空中でハイタッチを交わすと横島の身体が鎧に包まれ、その上半身を覆うように黄色の服を着込む
【OKッ!!レッツゴー!イ・タ・ズ・ラ!ゴ・ゴ・ゴーストッ!!!】
横島の姿が一瞬で変わったことに驚いたが、それ以上に面白い事になると確信し、周囲に人魂を作り出し、骨で4つの腕を作り出す。あの姿になった横島から感じる威圧感は中々の物……ただ身体が大きいだけでは、的になると判断した。
「ではでは、始めましょうか。貴方の力を見極めさせてもらいますよ」
「やってみなあッ!!」
地面を蹴りまるで飛ぶように向かってくる横島に巨大な外骨格の中でほくそ笑み、私はあの御方から名前を聞いていた横島の力を見極める為の戦いを挑むのだった……
リポート26 妖怪病院 その8へ続く
次回は横島と蘆屋の戦闘を書きつつ、夏子やルイ様の視点をいれていこうと思います。なお蘆屋が変化した姿はFGOのゴーストの巨大版のあれをイメージしていただけると幸いです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い