GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート26 妖怪病院 その8
~横島視点~
風を切り、俺を押しつぶさんと迫る掌を飛び退いて交す。でかい割りに結構早い……しかも腕が4本もあるので上下左右と縦横無尽かつ同時に攻撃を仕掛けてくるので正直避けるので手一杯だ。
「中々良い反応ですねえ。ですが、これはどうですかな?」
押し潰しからの横薙ぎ、それを跳躍してかわし巨大な腕の上に飛び乗り、そのまま相手の顔目掛けて走る。
「せいっ!!!」
「無駄無駄」
踏み込んで拳を繰り出す。だが無駄と言う蘆屋の言葉の通り、ダメージが通っているようには思えない
【跳べ横島ッ!】
脳裏に響いた心眼の声に従い、腕を蹴って跳躍すると蘆屋の身体が紫のオーラに包まれ、凄まじい霊力が放電のような現象を引き起こす。
「ふむ、ふむ、助言の言葉に従い即座に行動できるのは素晴らしいですね」
褒める言葉だが、そのねちっこい絡みつくような声に眉を顰める。しかし、相手は幽霊に変化していると思ったが、変身してもダメージが通らないのは不思議だな。眼魂を交換するかと考えていると、再び心眼の声が脳裏に響く。
【……もう少し様子見をしろ】
心眼がそう言うのならそうするべきだろう。眼魂を交換するのは身体に掛かる負担も大きい、連続で交換するよりも有効な攻撃が分かってからでも十分と言うことだろう。そう判断し、ベルトに手を翳す。飛び出てきたガンガンブレードの柄を手にし振り上げ、肩に担ぐ。刀とかなら使いやすいんだけど、ガンガンブレードはどっちかと言うと大剣なのでこうして担いだ方が振りやすいし使いやすい。
「ふっふっふっ……1人で私に勝てると思うとは、くっくっく。余りに早計」
殆ど反射的に横っ飛びする。理由も根拠も無いが、このままここに居てはいけない。そう思ったのだ……そして俺の目の前に広がる紫の炎を見て俺の直感が正しかったと思った。
「あれはやばいな」
上手く説明出来ないが、ガープやマタドールと戦った時の炎に良く似ている。身体へのダメージは勿論、魂へのダメージも凄まじい事になりそうだ。
【……恨みの炎だな】
俺がいた場所には髑髏が浮かび上がる巨大な火柱が浮かんでいた。あれは直撃していたら大変なことになっていたかもしれない
「そら、続けて行きますよ」
連続で浮かんでは消える火柱を見て、慌てて回避に入る。次の炎が上がるまで少しのインターバルはあるが、これは不味い。余りに攻撃の間隔が早すぎる
【気をつけろ、調子に乗って動きすぎるなッ!】
心眼の忠告に心の中で判ってる!と叫び返す、火柱の周りは陽炎のように揺らめいており、その火力の凄まじさを如実に物語っている。だが俺が危ないと思ったのはそれだけではない。
【清姫だ、清姫眼魂を使え!】
心眼のアドバイスに従い、青い眼魂を取り出しベルトにセットする。それと同時に白い着物を連想させるパーカーがベルトから飛び出すのだが……
「いや近い」
【♪♪】
べったりとくっついてくる清姫パーカーの頭をぐいっと押し、ベルトのレバーを掴んだ。
「変身ッ!」
【アーイッ!開眼、清姫。熾烈に苛烈、華麗に加熱ッ!】
パーカーを着込むと同時に現れた扇子を手にし、それを振るうと火球が扇子から飛び出す。
「っとこれはこれは、中々面白いですねえ」
弾けるように飛び散った火球は巨大な亡霊の姿の蘆屋の身体を貫いたが、それも即座に回復されてしまう。
「それ」
「効くかッ!」
恨みの炎ではない、普通の炎ならば恐れる必要はない、腕をクロスして火に自ら突っ込む。
「効いていない……なるほどなるほど、その竜気ですか」
シズク魂同様、普通の火には強いのが清姫眼魂の特徴のようだ。普通の炎は自ら突っ込む事で防ぎ、扇子を振るい火球による連弾を叩き込む。だが、火の玉から飛び出したクナイの雨に慌てて身を捩り、扇子を左手に持ち、右手にガンガンブレードを持ちそれを必死に振るう
「くっ!厄介すぎるだろ!」
ガンガンブレードを振るう事でクナイを弾き、炎を掻き消すのだが、その数が余りにも多い。相手の攻撃を避ける為に動き回っていた足をつい止めてしまった。
「足を止めていていいのですかな?」
そしてその熱さに足を止めれば、蘆屋が狙い済ましたように再び火柱を放ってくる。咄嗟に飛び退いてかわすが、火柱はそのままその場所に残り続けている……一度は陰陽術で散らそうと思ったのだが、巨大化した事で火力が上がっているのか、それとも変身していることで俺の霊力のバランスが変わったのか……理由は判らないがとにかく無効化出来ないって言うのが変わりようの無い事実だ。炎があちこちに上がっていて逃げる場所が無いと言う事に焦りが胸に募る、一回ウィスプにチェンジすることも考えた。だが中距離の差し合いに特化しているウィスプでは相手の火力には対応しきれない、攻撃を回避しながらも必死に頭を働かせる……だがそれも火柱の方向に追詰められ、考えがどうしても纏まらない
(これが厄介なんだ……対処しきれんッ!)
心眼のフォローがあったとしても、俺の動きではそのうち追詰められてしまう。俺の周囲を覆うように現れた火柱を見て思わず舌打ちした。病院で対峙した時の無敵性は確実にこの巨大な亡霊の姿になっても残っているだろう。それはさっきの渾身の一撃でもダメージが通らなかった事を見れば明らかだ。
(美神さん達が来る前に弱点の1つでも見つけないと駄目だ)
……突破口を見出すためにも、このままでは駄目だと判断する。美神さん達が合流してくれても、相手の攻撃が通らないのでは的が増えるだけであり、俺達の状況がますます悪くなる結果になるだろう。
(牛若丸眼魂しかない)
相手の無敵の秘密を探りながら、相手の攻撃を回避する。清姫眼魂の火炎防御は優秀だが、運動力はさほど高くない。この場合は機動力があり、自分よりも巨大な相手と戦い慣れている牛若丸魂にチェンジするしかないと俺は判断した。
【横島、牛若丸だッ!】
「判ってる!」
心眼に言われるよりも先に牛若丸の眼魂を手に取り、ボタンを押してベルトに押し込む、ベルトから飛び出した牛若丸パーカーゴーストが盾になり、直撃しかけた炎を弾き飛ばしてくれる。その間にガンガンブレードを地面に突き立て、レバーを握り締め、力強く引きながら叫ぶ
「変身ッ!」
【カイガンッ!牛若丸!シュバッと八艘!壇ノ浦ッ!!】
【頑張りましょう!主殿ッ!】
パーカーが装着され、身体が一気に軽くなる。そしてそれと同時に牛若丸の声も響く
(うえ!?牛若丸!?牛若丸ナンデ!?銀ちゃん達は!?)
2人を守ってくれていると思っていた牛若丸の声がしたので、思わずそう叫ぶ。頭は混乱していても、身体は動き連続で浮かび上がる火柱と左右から伸びる腕を回避し続ける
(ノッブとチビ達に任せてきました!それに1人でどうにかなるとお考えですか?)
牛若丸の言葉に無理と返事を返す、心眼のサポートがあったとしてもあいつの攻撃には対処しきれない。地面に突き立ったガンガンブレードを踏み台にして飛び上がり、振るわれた真空の刃を回避して着地する
「手伝ってくれるか?」
【勿論ですとも!】
元気よく返事を返す牛若丸。俺は地面に突き立ったガンガンブレードを引き抜き、それを2つに分離させ、4つの腕と髑髏の胴体、そして2つの頭を持つ異形へと変化した蘆屋を睨みつけるのだった……
~夏子視点~
廃墟から元の緋立病院に戻って安堵したのも束の間。病棟の窓の外の光景は私の理解を超えていた……いやな感じの男が巨大な亡霊になり、横っちは特撮番組に出てくるような姿になっている。一般人である私の理解を完全に超えていたのは間違いない
「はははは、軽業師ですか、いやいや実に愉快!」
「くたばれ!この外道ッ!!!」
久しぶりに再会した幼馴染が猪に乗っていたのも驚いたし、なんか綺麗な女の子も一緒だし、可愛い生き物と一緒だし、でもあれはいくらなんでもないと思う。何アレ、なんか特撮番組に出てきそうな姿になっているんだけどと言いたいんだけど言葉にならず、指を窓の外に向ける。銀ちゃんは腕を組んで、うんうんと頷き
「気持ちは判る。俺も最初見たとき同じ気持ちやった」
だよね、あんなの見れば動揺して声も出ないよね!?
「みみーむー!」
「ぷぎゅーぴっぐー♪」
【ノノーブ!!ノブノブ!!】
小動物軍団が横っちを応援している。その姿は愛らしい、愛らしいんだけど……目を何度か擦る、それでも目の前の光景は変わっていなかった。
「ぷぎ?」
「増えてるッ!?」
エルちゃんを背中に乗せている猪、そして私の目の前にも猪がいて、思わず増えてる!と叫ぶ。なんでやねん!大きくなるだけでも相当なのに、それなのに増えるってどういう事!?猪を飼ってるだけでも相当なのに、もしかしてこの猪妖怪なの!と叫びそうになる
【いやあこいつらは増えるし、でかくなるし、ビームも出すぞ?そういう猪じゃ】
「どういう猪!?」
普通猪は増えないし、大きくならないし、ビームも出ない。愛想は良いし、可愛らしいけど、なんかやばい気がする。
(と言うか、この子もなんだけど)
血の様な真紅の瞳、そして絹のような黒髪は同性からしてもうらやましい。小柄ではあるが、小柄だからこそ彼女の美しさが際立っているような……気がする。しかし、最大の問題は彼女の顔の周りを浮遊している赤い火の玉だ……もしかして、いやもしかしなくてもこの子も幽霊なの?尋ねたいけど、尋ねられず、その顔を見つめているとノッブと呼ばれた少女は悪戯っぽく笑う。
【ん?ワシが気になるか?ははははッ!!ワシも幽霊じゃよ♪】
「横っちが何を考えているのか判らないッ!!」
GSを目指しているはずなのに、なんで幽霊とか、精霊とか、悪魔とかと一緒なのかわからず思わず叫ぶ。すると、ノッブと呼ばれていた少女が背負っていた火縄銃が私の顔に向けられる
「ちょっ!なにをする」
【だーってろ小僧。下手に騒ぐな馬鹿者。ワシが何で横島の手伝いもせずにここに居ると思っているんじゃ】
そう言うと、火縄銃の銃口は私の顔から逸らされた。だがあの一瞬、私は死ぬと思った。それだけの怒気が放たれたのが判る……いや怒気じゃなくて、もしかすると今のが殺気って奴なのかもしれない。そう思っていると私に銃を向けていた少女は気をつけろと短いが、鋭い声で告げる。
【横島の幼馴染の割には異常に耐性が無いの、まぁ良い。普通はそうじゃろうからな、だがここはまだあの蘆屋とか言う化け物の支配に置かれている、もっとよく考えて行動するんじゃな】
火縄銃の引き金が引かれ、暗がりから姿を見せた腕が蟷螂の兵士の頭が吹っ飛んだ。それは紛れも無く、私の大声で呼び寄せてしまった敵の姿だった……
「……すいませんでした」
「ごめんなさい」
銀ちゃんと揃って謝罪を口にする。私達の謝罪を聞いたノッブは鋭い視線を窓の外に向ける、これ以上話す事は無いとその態度で物語っている……それはそれだけ私達が彼女を怒らせてしまったと言う証拠だった。
(……横っち)
窓の外に視線を向ける。巨大な幽霊と戦う特撮番組のHEROのような姿をした横っち……その姿に驚かされるのと同時に、横っちが酷く遠くにいるように思えた。再会したらアイドルになっていた銀ちゃんにも驚かされたが、それとは別のベクトルで横っちが酷く遠くにいるように思えたのだった……
~横島視点~
「無駄無駄無駄!!そんな攻撃など効きませんよッ!!」
「ちっ!!」
振るわれた腕を踏み台にして大きく後方へ跳ぶ、余りに跳びすぎると蘆屋が展開している炎の壁に飲み込まれるので、その前に手を地面に叩きつけ地面を削り炎まで後数歩と言う所でやっと動きが止まった
(どう見る。心眼)
【異常だな……何かカラクリがあると見た】
逃げていてもキリが無いと思い、牛若丸の力も借りて切り込んでみたがやはりダメージは与えられない。
(手応えすらないとなると、あれはこの場所に存在していない可能性もあります)
牛若丸も自分の考えを告げる。思いっきり加速してからの突撃もダメージが無いとなると、牛若丸の話も真実味を帯びてくる。
(眼魂を交換した方がいいか?)
マッハ魂や、シズク魂、それにジャンヌ魂など、他の眼魂だって所有している。ゴーストチェンジをするべきかと問いかける、それに大して2人の返答はNOだった。
【今は止めておけ、牛若丸の身軽さがあるから回避出来ているが、眼魂を変えては捕まる可能性がある】
【それに、有効打を与えられず霊力だけを消耗しては変身も解除されてしまいますよ】
他の眼魂は多彩な能力を持つがその反面、俺に掛かる負担も大きい。力尽きるリスクを考えるとやはりもう少し様子見をして、相手の弱点、もしくはダメージを与える方法を見極める必要があるということか……
「それ行きますよ」
4本の腕と言うことは20本の指があると言うことだ。そしてそれらがバラバラに迫ってくる光景は圧巻である、だがそれは俺の命を奪いに来ている一撃と言うことには変わりは無い
「ぐっぐうう……ッ!」
ガンガンブレードで受け止め、いなすが自由自在に動き回る指は予想以上に厄介だった。牛若丸眼魂でなければ、2~3回受け止めただけで押し潰されていたと思う
【左に飛べ!そこから転がって敵の攻撃範囲から逃れろ!】
心眼の言葉に疑問も不安も抱かず、何も考えず言う通りに動く。1発だけ肩を掠ったが20本の指によって作られた鳥篭から逃げる為の犠牲と考えれば、それは安すぎるだろう。
「おお!これでも駄目ですか!いやいや、愉快愉快、今の時代には中々面白い男がいるのですねえ」
巨大な化け物の姿なのに、その声は飄々とした男の声。その外見と声の質の違いに僅かに混乱するが、それでもガンガンブレードを両手に構え続ける。
【それで大丈夫です、この手の輩は正攻法で来ることはありません。絡め手、絡め手で仕掛けてきます】
牛若丸の言葉が脳裏に響く、確かに少し顔を見ただけだが嫌みっぽそうな顔をしていた。それに身に纏っている空気が陰湿で顔を合わせているだけで気分が悪くなった……姿は人間だが、俺にはどうしても人間には思えなかった。
「随分とこっけいな動きで逃げ回りますねえ。それでは私を倒すことなんて出来ないですよ?」
地面から吹き上がる紫の炎を必死に回避し続ける、次の火柱が出るまでに大分時間差がある。だが、その炎が暫くその場に残り続けるのが実に厭らしい、あの蘆屋っていう男の性格を如実に現していると思う。しかも回避に専念していると挑発の声を投げかけてくる……だがそれが挑発と判っているので足を止めるなんてことはありえない……
「魔人を退け、御方を殴ったと聞いていたわりにはあまりにも弱い」
「な……!?」
蘆屋から告げられた言葉に思わず足を止めた……いや、止めさせられてしまった。それだけ蘆屋が口にした言葉は俺にとって衝撃的だったからだ、魔人を俺が退けたという話は神魔の中で隠されている話だと聞いているし、蘆屋の口ぶりだと蘆屋とガープが繋がっているようなイントネーションだった事もある。この状況で足を止める、蘆屋の攻撃が決定打にならなかったのは、牛若丸眼魂の機動力による回避能力があったからだ。それなのに足を止めてしまった……足を止めた俺を見て蘆屋が邪悪な笑みを浮かべたのが判った。
「愚かなり……さあ、死になさい」
「しまっ!?」
目の前に広がる光の本流。咄嗟に両腕をクロスして防御姿勢に入るが、当然そんな物で防げるなんて思っていない。だが身体を守らなければと言う当たり前の防衛本能による防御態勢だった……
【ちいっ!!!】
飲み込まれる!そう思った瞬間俺の脳裏に響いたのは心眼の舌打ち、そして凄まじい紫の光に飲まれたと思った瞬間に俺の視界に広がったのは俺を包み込む、青白い霊力の光なのだった……
~ルイ視点~
巨大な悪霊となった何者かと戦う横島を見つめる。誰の邪魔も入らない、超高高度……少しだけ見にくいが、それでも神魔の余計な邪魔が入らないのだから、これはこれで良いだろう。
「ルイ様。こちらをどうぞ」
「ああ、ありがとうルキフグス。良いタイミングだよ」
ルキフグスが空中にテーブルと椅子を呼び出す、机の上には摘みとワインのボトルまで準備されている。流石ルキフグス、完璧なメイドと言えるだろう。引かれた椅子に腰掛けるとゆっくりと押され机が近くに来る、グラスを手に取り白ワインを口に含む。
「ふふふ、ああ。楽しいね」
横島が死んでしまえば私の楽しみはその大半が消えるだろう、それでも私は助けに出ないし、ルキフグスも応援には行かせない。それについでだけど、ビュレトやブリュンヒルデもこの場には来させない。横島の真価は生命の危機に追い詰められれば、追詰められるほどにその真価を発揮する。そう簡単に助けなどに入られて盛り下がるような真似はして欲しくない。
「よろしいのですか?このままでは横島は……「死なないよ。大丈夫、問題ないさ」
ルキフグスの言葉を遮って告げる、確かにあの凄まじい霊力の光に横島が飲まれかけた時は思わず腰を上げかけた。だがそれは寸前の所で止まった
(いやいや、よくやるねえ)
心眼と言う横島に与えられている使い魔……私が横島の家を訪ねるとずっと私を警戒しつつも、決して姿を見せないその使い魔が気配をあらわにした。それだけでも面白いのだが、今回はそれだけではなかった。横島が光の本流に飲まれたと思った瞬間、小さな球体がベルトから吐き出された。それは私で無ければ見逃してしまうほどの一瞬だけ具現化していた……本来ならそれにそこまで気に掛ける必要は無い、だがそれが伝説とも言える霊具なら話は別だ。しかもそれを相手の攻撃にあわせて、確認させないように使うという心眼の涙ぐましい努力も無駄になったと思うと更に楽しいと思えてくる。
(文珠……か)
文珠……私でも数回しか見たことが無い伝説の具現。それが使われた……それは私が新しい玩具を見つけた瞬間でもあった
(横島の能力か……いやいや、本当に面白い)
横島の能力はどれも面白いと思っていたが、まさか文珠までも獲得するとは……横島の才能か、それとも魂の問題か……どっちにしろ面白い
(しかしこうなると少し不味いか)
このまま戦いが続けば横島が死ぬ可能性は高い……だが横島は既に魔人へと到る準備が出来ている。つまり死ねば魔人として転生する可能性が高いのだ、人間としては死を迎えていても横島と言う存在は死にはしない。横島の本質が変わってしまうのは面白くないかもしれないが、人間の寿命としての枷から逃れるのならばそれも一興……私はそう思っていたのだが、このまま死んでしまうとネロの物になってしまうかもしれない……それは私としては面白いものではない。しかし、私が表立って動くわけにも行かない
「ルイ様、ベルゼブルが近づいています」
「ああ。それはいい、ルキフグス。呼んで来てくれ」
私は表立って動けないが、私でなければ何の問題も無い。それにベルゼブルは随分と横島に執着しているのでギリギリまで私の手元においておいて、本当に危ない時に助けに行かせる。いつ私の許しが出るかそわそわするベルゼブルを見るのも面白いかもしれない、私は手元のグラスを見つめながら横島を見ていると飽きる事は無いなと小さく呟くのだった……
~蘆屋視点~
今の攻撃は直撃した。私にはその確信があった、横島の心を揺さぶり足を止め大きな一撃を叩き込む。それは戦いの中の定石とも言える戦法だ……あれだけ収束した霊波砲ならば完全に横島の意識を刈り取ったはずだ。
(大きな土産が出来ましたねえ)
そろそろ人間界で出来る事も無くなるので撤退しようと思っていた矢先のナイトメアの襲来、そしてそれを喰らう事による私の霊力の上昇……あの馬鹿な馬面が現れた事で計画が1つも2つも前倒しになったことは素晴らしい。そして更に御方が望んでいる横島忠夫の身柄の確保……ここまでの手土産があれば私が人間であっても舐められることは無いでしょう。いや、それ所か並みの神魔よりもいい立場で迎えられるかもしれない
(……そう私は特別なのだからッ!)
私はかつて日本軍で霊力の軍事利用をし、世界大戦を制する為の発明を繰り返していた。我が偉大なる祖先「蘆屋道満」が扱ったという陰陽術も学び、そして今の霊能とは異なる平安時代の技術も学んだ。それによって作れたのが、あの人間の身体をベースにした不死の兵士であり、そして手足を動物や動物の物に置き換えた異形の兵士達……そして最後に手がけた戦車をベースに人間の魂を吹き込んだ軌道要塞……
(全く、愚か過ぎて話にならない)
私が作った兵器を使えば、日本は世界大戦の勝者になれたと言うのに……人道的ではない、それは人間がやる行いではない等と言って私を殺そうとした。それで私は人間に見切りを付けた……私の素晴らしい研究を無駄にする国にこれ以上貢献するつもりは無かった。道満が考案し、使う事の出来なかった邪法を使い人間を捨てた時にあの御方に出会ったのだ。自分を認めてくれる場所、自分がいるべき場所を!今まで生きてきたのはこの御方に出会う為だけだったのだと!そう思うほどに私は強く、あの御方に心酔した。だが今はまだ早い、もっと力をつけろと言われて、その場は別れたが今ならばあの御方の元で力を振るうことが出来るのだ
(さてと、後はあの英霊を回収して離脱することにしましょうか)
この姿は非常に強力だが、その分燃費が悪い……下手にこの場に留まって神魔や、GSと戦うことになると面倒だ。横島忠夫とあの英霊を回収して離脱するべき動き出した時。私の放った霊波波を突き破りピンクのパーカーが現れる……
【アーイッ!シッカリミナー!シッカリミナーッ!!!】
それに続くように聞えてきた歌に驚きながらも微笑んだ。さっきの霊波砲は殺さない程度には全力だった、あの奇妙な鎧で護られていたとしても意識を刈り取るだけの攻撃力はあったはずなのだ
(ああ、これはまだまだ面白くなりそうだ)
早く離脱しなければならないと判っている。だがあの御方が警戒し、気をつけろと言う横島忠夫の力。それを体感してみるのもいいかもしれない、横島にも言ったがこれから何度も顔を見合わせることになるかもしれないのだ。相手の力を知っておくことは決して無駄ではない……だが、さっきも言った通り、この姿は燃費が悪い。ここは取り込んでいる兵士を戦力にして戦うことにしましょう
「変身!」
【カイガン!卑弥呼!未来を予告!邪馬台国!】
霊波砲を吹き飛ばし姿を見せた横島、やや毒々しいピンク色に少し眉を顰める……いえ、これは色で眉を顰めたのではないですね。何かは判らないが、あの姿になった瞬間。周囲の空気が変わった……私に有利だった空気が消えてしまったのが判る。
「んっふふふ。いやいや、それはまた奇怪な姿ですなあ」
「おめえに言われたくねえッ!」
ははは、確かに……いや、いや、全くその通りで思わず笑ってしまう。その歯に衣を着せぬ言い方は嫌いではない
「どうです?私と共に御方に仕えるつもりはありませんか?」
連れ去るよりも仲間として連れて行ったほうが楽だ。だからそう言葉を投げかけたが、横島の返答は霊波刃を飛ばすという物だった。
「残念交渉決裂ですね、では命のやり取りを始めましょうか」
兵士を影から呼び出し、2本の腕には霊力を纏わせ、残りの2本で印を結ぶ、横島は刀を逆手に構え腰を深く落とす。
(これはこれで愉快なり)
自ら戦場に出るというのは初めてだが、これはこれで面白いと微笑み。弾丸のような勢いで駆け出してくる横島に向かって、異形の兵士を差し向けるのだった……
リポート26 妖怪病院 その9へ続く
今回は色々な視点となりましたが、次回からは本格的な戦闘開始となると思います。ヒミコ魂VS巨大ゴースト(蘆屋)&亡霊兵士たくさんと言う感じですね。美神達が途中で合流して、この話の決着まで書いていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い