GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート28 切り開け、己の未来 その4
~小竜姫視点~
レブナントに変身していると言うレイ……あれを間近で見た瞬間私ははっきりと理解した。アレは神魔の中でも最上位と言える存在が憑依しているとも言える……
(アルターエゴプロジェクト……)
複合神性持ちのホムンクルスを作ると言うガープ達のプロジェクト……その完成形を目の前にしたことで背中に冷たい汗が流れるのを感じた。あのクラスの力を持ったホムンクルスを量産出来ると言うのならば、それは人間界だけではない、天界や魔界でもそれは恐ろしいほどの脅威となるだろう。ただその言動を聞く限りでは、純粋な悪とは言い切れない。複数の神の神性を与えられた事で非常に不安定な性格をしていると思われる
「シッ!!」
飛び掛ってきた昆虫の胴を薙ぎ払い、返す刀で頭を叩き割る。強さは差ほどではないようですが……数が厄介ですね
(さて、どうしましょうか)
植物や昆虫が変態した魔物と言うのは総じて火に弱い。本来ならば、火を使えば一掃出来る。だが、炎を使えば森の中での神社である氷室神社に被害を与える可能性も高い、そのような状況で炎を使う事は出来ないので、神刀の柄を強く握り締める
「シャアッ!!」
「ふっ!!」
力任せに振るわれた棍棒のような武器を後ろに飛んで躱すと同時に前に踏み込み、胴体から両断する。巨大化した団子虫のような昆虫、空を飛ぶ植物の葉の羽を持つトンボのような異形、そして今倒した人型だが、木と蔓で構成された1つ目の異形……一番数が多いのは団子虫、次にトンボで一番数が少ないのは人型だ。だけど知性があるようには見えず、そして指揮官と言う様子でもない
(……数は3種類……と決めるのは危険ですね)
この場に来ていないだけで、上位種がいる可能性は極めて高い。それに動き出していない本体の事も気になる、まだ結界の中に封じられているのか、それとも威力偵察なのか
(いえ、そうではないですね)
氷室舞……琉璃さんの妹を攫いに来たとレイは言っていた。つまりその命令をレイに出した時ガープはまだここに私達が居ると言うことは予想していなかったのではなかろうか?もしくは私達が居る事を想定し、レイがどんな反応を示すのかそれを見定めようとしているのかもしれない
「鬱陶しいですね!」
足に絡みついてきた団子虫を蹴り飛ばし、腰に挿している2本目の神刀を抜き放つ。普段私が使う神刀では大きすぎ、そして取り回しが悪い。昆虫として考えれば十分に巨大だが、人や魔物として考えると小さい相手と戦うには大きな刃よりもこういう小回りの利く刃の方が使い勝手が良い
「……どうも、妙な流ですね」
指揮官はこの場にはいない、もしくはレイに指揮官としての権限が無いと私は予想していた。だけど、今は明らかに昆虫の動きが私を足止めするものに変わって来ている
(……判らない、それらしい反応はないのに)
魔力や神通力と言った力の流れも感じられない、しかし相手に知性があるようには到底見えない。本能的に私を狙って襲って来ているとしても、それでも説明がつかない
「「「「ギチギチギチ」」」」」
牙と爪を鳴らす虫に小さく溜め息を吐く、確かに女としての生き方は半分捨てているような生活をしています。それは私だって自覚していますが……虫に対する不快感はあるのだ。蹴り飛ばしても、切り裂いても飛び散る体液にも汚らわしいという嫌悪感さえある……だけどそれを表に見せることは決してない、それくらいの精神修養は積んでいる。冷静に戦況を見て、1つ気がかりな点があった
(……横島さんに反応を見せない)
最も横島さんが危ないと思っていたのに、横島さんへの反応が余りにも少ない。だがそれもブラフの可能性がある、この大規模攻撃の影でガープの手の者が奇襲の機会を狙っている可能性はゼロではない。シズクさんに目配せすると頷く、この中で一番手札が多いのはシズクさんだ。特に防御能力は秀でていると言えるだろう……これで横島さんへの護りは完璧とは言えないが、それでも十分と言える。罅割れた地面から這い出るようにして出てくる昆虫の群れを睨みつけながら、私は神刀の柄を強く握り締める
(氷室舞さん……もですか)
何故ガープが氷室舞さんを名指して攫えと命令したのか、それが気がかりだ。この場で一番危険とも言える、横島さんと舞さんからゆっくりだが着実に引き離されるのを感じながら、私を引き離そうとする異形との戦いに意識を向ける。向こうが私を引き離そうというのなら、それに乗ってやろう、だが相手の誘いに乗った上で私は相手の作戦を破ってみせる。そう心に決め、津波のように襲ってくる昆虫をにらみつけるのだった……
~タマモ視点~
金属質な音が響き、シロがバックステップで後ろに下がってくる。手にしている霊刀を見て溜め息を吐く
「やっぱり人間の作る刀は脆いでござるよ」
シロが人狼の里から持ってきた霊刀は強すぎると言う事で、GS協会が紹介した鍛治師が作った霊刀を装備していたのだが、団子虫の甲殻に当たり砕けたのを見てシロが使えないといって刃に膝蹴りを叩き込みへし折る
「大丈夫なの?」
「鈍らなど必要ないでござるよ」
柄の先から霊波刀が飛び出し、再び飛び掛ってきた団子虫を頭から両断する。霊波刀は人狼の十八番だが、消費する霊力は決して少なく無い訳ではない
(……このままじゃ駄目ね)
狐火を使えれば楽だけど、森の中で神社も近いということで狐火を使う事は出来ず、指鉄砲の形を作り空を飛び交うトンボを下から打ち抜く、敵はさほど強いわけではない。だけど数が多すぎる
「シロ、横島と合流するわよ」
「……了解でござる」
シロはやや不服そうだけど、ここは仕方ないと思ってもらうしかない。氷室神社は安全地帯だが、逆を言えば敵に囲まれている状況だ。しかも昆虫の癖に頭が良い、完全に私達を分断するように立ち回っている
(どこかに指揮官がいる……って訳じゃなさそうね)
最初は勢いに任せて攻撃してきただけだが、途中から確実に動きが良くなっている。学習しているのか、それともどこかで隠れて指揮を取っている上位種がいるのかは判らないが状況は少しずつ少しずつだが確実に悪い物となっている。
(美神と蛍、それとくえすと琉璃は結界の外に近いわね)
派手に立ち回り、自分達に注意を寄せようとしている。言うまでも無く、自分達が作り出した隙を利用して横島と合流しろと言っているのは明らか……だけど問題は私とシロでは突破力が足りないと言う事だ。狐火が使えれば、良いのだが植物が混じっているので下手に炎で攻撃して炎がその場に残ることは避けたい……シズクは横島についているし、ノッブは屋根の上に陣取って火縄銃でトンボを撃ち落してくれている
「……食べる?」
「いや、いらないけど、どうしてこんな事をするの?」
「命令されたから?」
横島はレイと名乗った女の説得?いや、レイと言う女が何を考えているのか。それを聞き出そうとしている、敵に何をしているんだと怒鳴りたくなるが、レイは横島には好意的だ。また魅了したとか、そういうものじゃなくて……そうただ単に横島との相性がいいのだろう
(何か情報を引き出してくれるといいけどッ!)
人型の異形に霊波弾を撃ち込むが効果が薄い、霊波刀で無ければ有効打撃が入らないのだろう。
(不味いわね……)
「くっ!!ぬぬうっ!!」
「!!!」
シロは私よりも幼い姿だ、10歳前後のまだ幼い自分の姿だ。筋力や敏速力、それに霊力のキャパが圧倒的に少ない。それに自分の感覚よりも小さい身体に思うように動けていないのは明らかだ……このままではシロが危ないと判断して本来は使うべきではないと判っているが狐火を使う事を決意した
「狐火ッ!!」
威力を絞り込んで、相手の顔面に炸裂するように放つ。敵を倒すほどの火力も無く、しかし相手を怯ませるには十分すぎる狐火に相手が動揺している隙にシロが相手の胴体を蹴りつけて距離を取る
「タマモ、余計にピンチになったでござる」
「うるさいわね、あのまま押し潰されたかったの!?」
あの異形の人型からは離れることは出来たが、その代わりに団子虫に囲まれて完全に孤立してしまった。この状況をどうするか、必死に考えていると、私達の目の前に人影が舞い降りる
【せいっ!!!】
神社の屋根から飛び降りてきた牛若丸が着地と同時に、刀を振り回し団子虫を巻き込んで纏めて吹き飛ばす
「助けに来てくれたでござるか!」
【はい、主殿の命令です】
横島の指示で助けに来たと言う牛若丸の言葉に安堵する。正直、あのままでは囲まれたままになっていただろうから……でも
「また囲まれてるじゃないどうするの?」
【強行突破】
「強行突破でござるな」
大体判ってた脳味噌筋肉が2人になった段階で嫌な予感はしていたが、その通りになったと溜め息を吐く。ただ不幸中の幸いは氷室神社の敷地が広い事にあるだろう、ま、大暴れをしても神社が壊れない事だけは感謝して欲しいと思いながら倒した傍から湧き出てくる昆虫の群れに向かって走り出す牛若丸とシロの後を追って走り出すのだった……
~琉璃視点~
くえすから借りている洗礼弾を放つエアガンを2つ構えながら、状況を分析する。敵の数はさほど多いわけではないのだが、一定以下になると倒した数がぴったり補充される。こちらの体力を削り取る目的か……それともこの場に足止めすることが目的なのか……
「ぬうんッ!!!」
「斬艦刀!一刀両断ッ!!!!」
舞ちゃんを守ってくれているのは本当にありがたい。だけど、ユミルってあれは正直どうかと思うハムスターサイズで4m近い刀を振り回すとかどんな怪力をしているのかと言いたくなる
「でやあッ!!」
「「「!?!?」」」
ナナシの飛び蹴りで人型が4体ほど纏めて胴体を貫かれて消滅する。ナナシの強さは知っていたからいいけど……いや、良くないけどナナシとユミルは妖精にカテゴライズするには些か問題があるような気がしてならない
「くえす、もう少し纏めて何とかならない?」
「出来るならしてますわよ、鬱陶しい」
あ、これ目がマジだから本当に切れる一歩手前だ。ただ、切れてないのはこの状況でプッツンして周りへの被害を与えないように我慢しているだけだ。
「ちっ、あのユミルの不意打ちさえなければ」
違った、ユミルの不意打ちで負傷していて思えないように動けないからやや大人しいだけのようだ。それが無ければとっくの昔に炎を持ち出して暴れていたかもしれない、そう思うとユミルが不意打ちでくえすを弱体化させたのは決して間違いではないように思えてきた
「……凍れ」
シズクが地面に手を当てると氷柱が走り、昆虫を貫きそのまま氷の中に閉じ込める。倒すまでには至っていないようだが、強靭な生命力を持つなら無理に倒すのではなく、行動不能に追い込む事が正解のように思える
「くえすも出来るでしょ、あれやってよ」
「シズクの真似と言うのが不快ですわ」
やめてくれないかな本当に、なんでこんな状況なのにプライドを優先するのか……正直横島君がレイと対峙してなければ絶対横島君とくえすを組ませるべきだったと思っている。横島君に良い所を見せたいから、冷静に行動してくれるんだけど……基本的にくえすって好戦的だから今みたいにイライラしていると何をしでかすのか判らなくて正直怖い
「ですから、私はこうします」
「「「!?」」」
くえすが指を鳴らすと岩が盛り上がり、昆虫を挟んで押し潰す。体液とかめっちゃくちゃ飛び散っているけど、動きを封じるのではなく一撃で倒せるのならばそれに関しては文句は無い
「このまま美神さん達と合流しましょうか」
「……あまり乗り気ではないですけどね」
横島君を見ていて、そっちに行きたいのは重々承知だけど、今はそれを認める訳にはいかない。レイが座っている場所を基点にして結界が開き、そこから昆虫軍団が雪崩れ込んで来ている。あれを止めないと、もっと上位種が侵入してくる可能性がある。それだけはなんとしても防がなければならない
「これって狙うのコツがある?」
「空を飛んでる相手に正確に下から当てれるなんて思わないことですわ」
空中から急降下して奇襲してくるトンボを何とかして、迎撃したいと思ったんだけど命中しなくてくえすに当てるコツがある?と尋ねると無理して当てれる相手ではないと言う返事が返って来る
(ちょっと不味いわね)
私の基本的な武器は霊刀と符術になるが、殆ど奇襲に近かったので装備が足りない。それは美神さんも同じだが、太腿のバンドに神通棍を携帯していたらしく、それで応戦している。これに関しては私の注意力不足と言える、現場を離れすぎていて武器を装備する事を忘れていた。
「もう少し錆び落としをしておく事を薦めますわ」
「……返す言葉も無いわ」
元々戦闘が得意な訳ではない、あくまで私は神降ろしを行う巫女であり直接的な戦闘が得意ではないのは当然だ。だがそれを言い訳にして、足手纏いになって皆に迷惑を掛けるのは本位ではない。私も時間が許すのならば、訓練や特訓をして本格的に錆び落としをしておく必要がある
【だーっ!倒しても倒しても数が減らないとか止めて欲しいんじゃけど!】
神社の上で狙撃してくれていたノッブが怒鳴る声が聞える。かなりの数が撃破……撃破?おかしいわね。倒した瞬間は敵の死体は残っているけど……今はそれらしい姿は氷室神社の中のどこにも確認できない
「くえす、トンボの死体ってどうなってるの?」
「……なるほど、相手が賢くなってる理由が判りましたわ」
今目の前で倒した相手が地面に溶ける様に消えていった、恐らく地面の中で霊力を吸収して体を再構築して復活している。だからこれだけの数を倒しているのに足場が埋め尽くされることが無く、そして敵の数にも変化が無い。これだけ倒しているのにそれはありえない話だ……だが敵が地面の中に取り込まれ、再び身体を再構築して出現していると考えれば足場が埋め尽くされない理由も敵の数が張らない理由もある程度は説明がつく
「くえす、悪いけど倒すんじゃなくて封印する方向でお願い」
私の言葉に判ってますわと返事を返すくえす……突発戦闘で相手の事を理解していなかったけど、これは予想以上に厄介な相手かもしれない……再び地面の中に消えていく虫の残骸を見て私は自分達が劣勢に追い込まれている事を理解するのだった……
~美神視点~
地面から浮き出るように現れる昆虫を見て舌打ちしながら、結界札を投げ付け昆虫を結界の中に閉じ込める。倒しても倒しても敵の数が減らない、一番前線に出ていた私はその理由を敵が無限に出現していると最初は考えていた。だけど地面から湧き出るように姿を見せた事と敵の死体がいつのまにか消えている点から倒しても地面を基点にして回収され、何らかの方法で回復し再び出現しているのではと予測した
「美神さん、まだ結界札残ってますか?」
蛍ちゃんが結界札が残っているのかと尋ねてくるので、最後の1セットを蛍ちゃんに投げ渡す。私と蛍ちゃんで手持ちは20枚……20体は動きを封じれる経験になるが、正直そんなの焼け石に水に過ぎない
「使うのは人型に絞り込んで、昆虫はしょうがないわ。倒していきましょう」
団子虫とトンボは正直其処まで脅威ではない、確かに組み付かれれば危険度は跳ね上がる。だけど、その甲殻もさほど硬いわけではなく、霊力を通して殴れば十分にダメージは通る。だけど人型は駄目だ……最初は棍棒を所持していたが、今は剣や槍を持っている個体までいる
「こっちの攻撃パターンを学習しているんでしょうか?」
「その可能性は高いわね」
最初は棍棒、次は槍、そしてその次は剣……明らかに神通棍に適応した装備を持ち始めている。敵の強さは正直Bクラス程度の弱い魔物と同格か、それよりも少し強い程度だ。だけど、装備も体力も万全ではない今決して強くない相手だとしても、決して油断できる相手ではなくなっている
「……私は私、誰でもない私なの」
「君は君じゃないのか?」
「私じゃない私もいる、私は沢山いる。だけど、私は私1人だけいれば良い」
風に乗って横島君とレイの話が聞えてくる。何を言っているのか理解出来ないが、横島君が前に来た複合神性内蔵型ホムンクルス……「アルターエゴ」ガープ達の主戦力となるであろうホムンクルス部隊。それが大きく関係していると言う予想はつく、自分と同じ顔を持つほかの個体を見て、自分と言う存在に強く執着をし始めたのかもしれない
【不味い、霊力の流れが変わってきたぞ!】
少女……いや、違うわね。弱いが神通力を持っている……ガープに力を奪われた神霊、それが彼女なのかもしれない
「ちょっ!?じょ、冗談きついわよ!?」
大きな地響きが響き、山の奥から何かの唸り声が響いてくる
「美神さん!下がって!下がってください!」
「やばいのがこっちに向かってきてますわ!」
琉璃とくえすの声を聞いて、慌てて氷室神社に引き返す。森を抜け、氷室神社に続く石段に辿り着いた時。私達もそれを見た
「……嘘でしょ」
「これは少し不味い所じゃないわね」
5m近い巨体の異形が遠くから地響きを立てて、真っ直ぐに氷室神社に向かってきている。赤い単眼と鋭い牙を剥き出しにしている口元からは涎が流れ続け、紫色の舌が宙を漂っているのが見える……その巨体さ、そしてその身体から放たれている圧倒的なまでの神通力と負の霊力……あれがあの少女が奪われた神性の結晶であり、そしてその肉体と神通力を持って作られた戦闘用の肉体なのだろう
「「「「ギギィッ!!!」」」」
「「「「シャーーーーーッ!!!!」」」」
「「「「!!!!!ッ」」」」
そしてあの異形が姿を見せてから明らかに敵の動きが活性化して来ている、氷室神社の結界の所まで戻るのも難しいかもしれない
「シズクさん、消火をお願いします!」
「後で私のせいとか言わないでよッ!」
「早く、早くはなれるでござるーッ!危ないでござるよーーーーッ!!!」
シロの声がして、殆ど反射的に石段から茂みの中に飛び込む。その直後に炎が神社から放たれ、私達を追いかけていた昆虫を纏めて焼き払い、その直後に冷たい雨が降る。正直なんて事をと思うが、そうでもしなければあの追撃を振り切ることは出来なかったと思うと、小竜姫様達のとった行動は決して間違いではないと思う……間違いではないと思うんだけど……
「「「「殺す気かッ!!!」」」」
直撃していたら私達も火達磨になっていたので、4人で声を揃えて殺す気かと叫けぶ。せめてもう少し安全を確認してから攻撃してくれても良かったと思う
「早く!時間がないんです!」
「怒鳴ってる暇があったら後ろ見なさい!」
後ろ?今炎が通過して……振り返った瞬間。私達は文句も言わす、石段を全力で登り始めた。何故ならば炎を突っ切って人型が物凄い勢いで登ってくる。下半身が燃え様が、腕が無かろうがそんなのお構いなしで登ってくるその姿には恐ろしさしかなく、必死で階段を登っていると階段に黒い影が落ちる、一瞬雨かと思ったがそうではなかった
「みむう!」
「「「「「ぷぎぎーーーッ!!!」」」」」
【ノッバアアッ!!!】
「「「「うりぼーが飛んでるッ!?」」」」
横島君が大事に大事に育てているうりぼーが分身し、チビをその背中に乗せて飛んでいる。しかもチビノブまでもUFOみたいな上に乗って爆発する茶釜を投げ続けている。何がどうしてこうなったのかは判らないが、今が氷室神社に撤退するチャンスだと思い。死に物狂いで石段を駆け上るのだった……
~横島視点~
美神さん達が危ないと言うことは俺も理解していた、だけど俺はジッと俺を見つめるレイから目を逸らすことが出来なかった。紅くきれいな目である筈なのに、何の感情も感じ取れないその目を見て俺はレイから背を向けるのは良くないと思ったのだ
「私は私、だけど私じゃない私もいる、ねえ、私は本当に私だと思う?」
「……俺は君しか知らないから、君がレイなんだろ?」
俺の返事にレイはそういう解釈もあるんだと呟いて、鯛焼きの入っていた紙袋を丸めて握り締める。するとその紙袋は一瞬で燃え尽き、風に乗って消えていく
「横島は横島でしょう?別の横島はいるの?」
「い、いや、俺は俺1人だけど」
「人間は1人なの?」
「普通は1人だと思う」
話しているうちにどんどん饒舌になり、何かを考え込む素振りまで見せるレイ。その姿は外見とは異なり、本当に幼い少女にしか見えなかった。
「私が私になるにはどうすればいいと思う?」
問いかけられた言葉に俺が返事を返すことが出来ないでいると、レイは小さく、本当に小さく溜め息を吐いて
「難しい事なんだね」
「ああ、それは凄く難しいことだと思う」
敵同士と言うには何とも言えない微妙な距離感。手を伸ばせば届きそうだけど、手を伸ばしたらレイが居なくなってしまう様な気がする
「……たぶん今度は戦う事になると思うけど、横島にはあんまり痛くしないから」
「他の皆は?」
俺にはあんまり痛くしないと言って笑うレイに他の皆は?と尋ねる。レイは首を傾げて
「横島と氷室舞は殺すなって言われてるから、殺さないだけだよ?だから他のは殺すか、壊す」
今までの幼い風貌と変わり、急に冷酷な殺人者のような気配を纏うレイ。その凄まじいまでの気配の変化に思わず息を呑んだ
「じゃあね、また会いに来るよ」
そう笑って影の中に溶ける様に消えていくレイ。その姿が完全に見えなくなると同時に、俺は蹲り必死に荒い呼吸を整える
【大丈夫か?意識ははっきりしているか?】
「……だ、大丈夫だと思う」
今まで俺に何の声も掛けなかった心眼。だけどそれには理由がある、レイの言葉には言霊が宿っており、下手をすれば俺が操られかねないと言う事で心眼が俺の精神を護っていてくれたのだ、レイが消えた事で声を掛けてきてくれた。それでやっと終わったと一息付く事が出来た
「……無理はするな、1度神社に戻れ」
そうすることが正解と言うことは俺だって判っている。ただ話をしていただけなのに、凄まじい疲労感。目を閉じてしまえばそのまま寝入ってしまいそうなほどに疲れ果てている……シズクの言う通りにするべきかと悩んでいると凄まじい雄叫びと地響きが響き始める
「……シズク、俺は大丈夫だから美神さん達のほうに回ってくれ」
あの巨体を相手にするには美神さん達だけは無理だ。だがかと言って俺も戦えない、それならばシズクが美神さん達のフォローにはいるのが一番正しい選択の筈だ
「……だがお前をこの場に残すことの方が心配だ」
先ほどよりは敵の勢いは弱くなっている、だがそれでもまだ俺の近くにも、舞ちゃんの近くにも昆虫とトンボの姿はある
「ナナシ、横島君を連れてきて!」
「い、いや!それは無理じゃ」
「任せておけいッ!!」
出来るの!?と言う早苗ちゃんの突込みが遠くに聞える。俺も正直ナナシで大丈夫と言う不安はある、だけど今は俺よりも美神さん達の方が危ない
「みむう!」
「ぷーぎゅう!」
【ノブノブー!】
チビ達がやけに気合満点と言う感じで鳴く、チビはうりぼーの上に跨り。うりぼーは俺の鞄から陰陽札を取り出して引きずってくる
【ノーッ!!】
そしてチビノブが腕を掲げると、空中に「N」の文字が浮かび、其処から丸っこいUFO見たいのが降りてきた
「「……」」
【のーッ!!】
勇ましく叫んでUFOに飛び移るチビノブ、茶釜を取り出して団子虫に投げ付ける。茶釜が爆発し、あちこちで火柱が上がっている。
「ちょっと消火してきてくれるかな?」
「……そうだな。その方が良いな」
このままだと山火事になるのでシズクに消火作業を頼み、俺は陰陽札に文字を刻みうりぼーに貼り付ける
「風精招来」
うりぼーの周りに風が逆巻き、チビの号令で勇ましく鳴いて走り出すうりぼーの姿がぶれ増える……のだが、増えたうりぼーまでもが風を纏って空を飛ぶ姿には思わず絶句した。
「動くなよ、落とすからな」
「……よろしくお願いします」
【ナナシ、お前本当に妖精か?】
俺を頭の上で持ち上げて、軽々と俺を運ぶナナシにも絶句したが、今はそれ所ではない。地響きを立てて近づいてくる巨人に思わず視線を向けると、いつの間にか俺の隣にいたシズが心配ないと呟いた
【おキヌが来た。これでとりあえずは何とかなる】
シズの視線の先をつられてみると、いつもの紅白の巫女装束ではない。どこか神々しさを感じる装束を身に纏ったおキヌちゃんの姿に思わず視線を奪われる
【去りなさいッ!ここは貴方の来る所じゃありませんッ!!!】
山全体に響くようなおキヌちゃんの一喝、思わず耳を塞いでしまうような凄まじい一喝だった。
「嘘だろ」
【嘘ではない、当然だ。おキヌはこの山自身とも言える、仮初の山の主ではおキヌに勝つ事などできぬ】
シズの言っている事も、目の前で起きたことも正直信じられない、だがおキヌちゃんのその一喝で信じられない事に巨人の姿は土くれとなり、消え去った
「倒した?」
【いや、違う。神通力と霊脈の流れを断ち切っただけだ、まだあいつは生きておる。あやつを倒すには……】
一時的に相手を無力化しただけであり、倒すにはどうすればいいのか?と話をしてくれるシズには悪いと思ったのだが、俺は霊力の粒子を撒き散らしながら降りてくるおキヌちゃんの神々しい姿に完全に見惚れていて……シズが話している内容は何1つ俺の頭の中には入ってこないのだった……
リポート28 切り開け、己の未来 その5へ続く
今回はいろんな視点で話を書きましたが、最終的に言うと書きたかったのはUFOチビノッブとうりぼー飛行隊です。後、神・おキヌちゃんですかね。次回は中断してしまった話の続きを導師抜きでシズとおキヌと言う導師以上の当事者の口から語って貰おうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い