GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回は戦闘後の分析及び、シズとおキヌと言う当事者からかこの事件の話を書いていこうと思います。導師は……出ません、あの人好きじゃないですし。当事者のシズの話を聞いたほうがよっぽど為になると思いますしね。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その5

 

リポート28 切り開け、己の未来 その5

 

~美神視点~

 

レイと昆虫軍団の強襲を切り抜けた後、私達は氷室神社の大広間を借りて今回襲撃してきた敵の分析、そして300年前の事件の事をシズとおキヌちゃんの2人から聞くことにしていた。氷室神社の神主と早苗ちゃんには悪いけれど、2人の先祖だという導師に対する印象は決して良いものではない。明らかに後手に回っている対応、それに300年前とはいえ人身御供と言う選択を取った人間はどうしても信用しきれないのだ。そしてそれは間違いではないと言うことがシズの言葉によって証明されていた

 

【ワシは300年ほど前に大陸から日本に来た地霊じゃが、あの当時は大飢饉などが酷くてな。人の恨み辛みを吸収してしまい、少しばかり暴走状態になっていた。確かにまぁ、災害を起こしたことは認めよう。だが日本の霊脈の清らか力を吸収すれば、元の神霊に戻れる筈じゃった】

 

「……それはつまり、人間側の早合点と言う事か?」

 

【まぁ、そうなるかの。地震を起こし、地割れなどを起こしたが……人間に被害を与えぬように細心の注意は払っていた】

 

数回霊力を抑えきれずに起こしてしまった地震とそれによる旱魃、人間に被害を出さぬように注意はしたそうだけど、大きな地震になってしまったらしく、それによって討伐対象になってしまったらしい

 

「あの当時のずさんとも言える霊能事情では致し方ないとは言え」

 

「些か、短絡的な行動でしたね」

 

あの当時で考えれば、本当に日本が壊滅するほどの危機となれば神霊が動いていた。300年前と言えば、まだ日本にも多くの神が駐在していたのだ。勿論小竜姫様だって妙神山に居たし、何よりも

 

「琉璃のご先祖様が居たんじゃないの?」

 

「居たはずですよ。日本お抱えの霊能者として、多分……こんな事を言うのはなんですが、自分に箔をつける為の暴走をしてしまったんでしょうね」

 

あの当時で考えれば神代家、六道家を初めとした日本有数の霊能者が鎬を削っていた時代……その他の霊能者の評価が悪く、成り上がろうとしている霊能者も多い時代だった筈だ。

 

「つまり、あの導師が生前に暴走して、喧嘩を売ってはいけない相手に喧嘩を売った挙句、自分では対処しきれず人身御供を使ったと」

 

【身も蓋も無いが、まぁそんな所じゃな。ここら辺を治めていた殿に、若く美しい女を人身御供とするとして集めさせておったし】

 

本当に最初はこの話し合いに同席すると言っていた神主さんと早苗ちゃんがいなくて良かったとおもう、自分達の先祖がそんな非人道的な事をしたと言う事は最後まで知らない方が良いと言う物だ。私達もこの話は絶対に氷室神社の人間に話すべきではないと心に決めた。

 

【それで私も選ばれたんですよね。女華姫も命に身分も上下も関係ないと言って生贄を決めるくじ引きに混ざってくれましたね】

 

お姫様自らも生贄に選ばれる事を覚悟して、くじ引きに参加するとは……言ったら悪いけれど、導師と殿様よりもよっぽど人間味溢れていて、そして人の上に立つのに相応しい人間ね

 

【女華姫か……あの山のような巨体の大女……ワシは最初男と思ったわ】

 

【ふふ、確かにその見た目は完全に男の方ですけど、凄く心優しい人だったんですよ?】

 

「あのさ、おキヌちゃん。昔の事忘れたんじゃ?」

 

私達が尋ねる前に横島君がおキヌちゃんにそう尋ねた。おキヌちゃんは昔の事を忘れているはずなのに、シズと話す口調は完全に昔の事を覚えているようにしか思えない

 

【それはワシが説明しよう。単純に言うと、おキヌが人身御供になった際にワシとおキヌの魂は一時的に完全に同化した。おキヌの記憶と

清廉な魂はワシに移り、ワシの邪気と神通力がおキヌに移り、再び2つに分かれたんじゃ】

 

「つまりおキヌさんは神の力をその魂に宿していた?っ事ですか」

 

【そうなるな、だからこそ300年もの間。悪霊にもならず幽霊として存在することができたのじゃ】

 

なにかとんでもない話になってきた気がする、人身御供になり魂となった事で神と一時的に融合して、元の人格を保ったまま分裂する。ちらりと琉璃を見ると首を振る

 

(つまりおキヌちゃんはただの村娘じゃなかったと言うことね)

 

琉璃……正しくは神代家と同じく神降ろしに耐えうる肉体だった。だからこそシズと一時的に融合しても元の人間の魂に分離する事が出来たのだろう

 

【あの、おキヌ殿に邪気が移ったと言いましたが】

 

【もしかしてあれかの、偶にくすくす笑って邪悪な気配になるのは】

 

【ワシの邪気じゃな】

 

……おキヌちゃんのダークモードってめちゃくちゃ怖いって思ったけど、神霊の邪気を纏っていたとなれば納得だ。と言うか、その邪気は……

 

「ねえ、なんで皆で俺を見るの?」

 

「「「「別に……」」」」

 

横島君に近寄る女の子への嫉妬心とかで発揮されていたわよね。下手をすれば、周囲一面が呪われていたかもしれないと思うと嫉妬くらいで済んで良かったと思う

 

【じゃが心配ない、おキヌの生き返る準備は出来ておる。生き返らせる時はおキヌの中の邪気はしっかりと回収する、これで元の穏やかな

心優しい村娘に戻るじゃろう】

 

「え?おキヌちゃんは元々優しい穏やかな子だよ?ちょっと怖い時あるけど」

 

【も、もう!横島さんったら】

 

頬を赤らめ、両手で頬を押さえていやんいやんと身を攀じるおキヌちゃん。なんか物凄く感情を表に出すようになったわねえ……蛍ちゃん

とくえすがむっとしてるけど、其処には触れない方向で行きましょう。藪を突いてなんとやらだ

 

「それでシズ、どうやってあの化け物を退ける事が出来たのか、それについて説明してもらっても良いかしら?」

 

【うむ、おキヌとワシの関係性はこれくらいにしておくかの。あの導師が作った最終兵器は使いたくないしの】

 

【私も嫌ですよ、あんなの】

 

導師が何か準備していたって聞くだけで凄い嫌な予感がするわね。

 

「……ちなみにその最終兵器って何だ?」

 

【人間の魂を余す事無くエネルギーにして射出する砲台だ】

 

「な!?そんな事をすれば2度と輪廻の輪に戻る事は出来なくなりますよッ!!」

 

小竜姫様の怒声に驚きながらも、2度と転生出来ぬほどに魂を磨耗させる兵器を作り出した導師への評価はますます低い物となる

 

【そもそも、導師が本気でおキヌを生き返らせるつもりがあったかどうか、あのような兵器を作る男じゃからの】

 

【でも、あれですよね。その功績で、女華姫と結婚してこの土地を貰ってましたよね?】

 

【うむ、正直ワシもそれはどうかと思うがの……】

 

とりあえず、私達の中で共通した導師の評価は人間を人間とも思わない、最低最悪の下種な霊能者であると言うことだ。氷室家が導師の子孫だとして、導師が使っていたという霊的兵器が現代に伝わっておらず、結界術や封印術に秀でた霊能者へと変化した事に私達は安堵するのだった……

 

【そ、そこまで言わなくても良いのに……】

 

なお導師はシズとおキヌの自分のネガティブな話ばかりをされ、氷室神社地下の自分が作り出した霊的兵器の上で体育すわりをして、涙を流しているのだった……

 

 

 

~琉璃視点~

 

氷室家の開祖がとんでもない事をしていたと言う事をシズとおキヌさんに聞いた後。最後に現れた巨人をどうやって退けたのかと言う話に移っていた

 

【あれはワシの本来の肉体と神通力の結晶だ。この土地の霊脈の力をおキヌが引き出し、ワシが居ることで存在を維持できず崩壊した】

 

「崩壊したって事はもう出てこない?」

 

横島君が安堵した様子で尋ねるが、物事はそんなに簡単な話ではない

 

【いや、今回退ける事が出来たのはあやつと霊脈の繋がりが弱かったからじゃ、再び現れる時は今回のようには行かぬ】

 

【そうですよね、今こうしている間も私が使える霊脈がどんどん少なくなっているのが判ります】

 

霊脈の支配権をおキヌさんから取り返す為に、一時的に姿を消していると言うことね

 

「……そうなるとあいつの使い魔は暫くは出てこないな」

 

【普通ならそうですよね。使い魔を作り出すのに力を使っていては消耗する一方ですし】

 

つまり今度現れる時はおキヌさんが居たとしても、あの巨人を退けることは出来ないと言うことね

 

「……厄介だな、霊脈と直結されているとなると」

 

「そうですね。私とシズクさんのフルパワーでも対処できるかどうか……」

 

竜神としては最高レベルの強さを持つシズクさんと小竜姫様でも霊脈から無尽蔵に霊力を引きだせる相手では幾らなんでも勝ち目は無い

 

「それで勝てないという事を言いたいのでしょうか?」

 

【いや、勝率があると言う話だ】

 

シズは広間から地図を持ってきて、地図に×印を付ける

 

【ここが、氷室神社。それでここが、ワシの祠になるんじゃが、ここに御神体が残っている】

 

御神体と聞いてシズが何を言おうとしているのか私達は一瞬で理解した。多分理解出来ていないのは、横島君くらいだろう

 

「あの、シズさん。舞さんと良く会っていたと言ってましたけど、彼女はここまで来ていたんですか?」

 

【いや、ここら辺に中間の社を作ってここら辺で会っていた】

 

新しい×印が地図に打たれる。氷室神社と社の丁度中間みたいね、ここら辺なら運動音痴の舞ちゃんでも来れるかも

 

「ここまで行くとなると結構厳しいですね」

 

「……谷の下に川があるが、ここまで霊力が乱れているとな」

 

「あのすいません、何の話か理解できないんですけど」

 

横島君が挙手をして訳が判らないと言う、専門的過ぎる知識なので理解できないのは当然だ。いくら美神さんでもここまで教えるには時間が足りていない

 

【神には御神体と言う本体がある、それが力の源であり。そしてこの世に具現化する鍵となる】

 

「ふんふん、あれ?でもそれだとシズクと小竜姫様も?」

 

横島君がそう尋ねると、小竜姫様は首から下げているペンダントを、シズクさんは扇子を取り出す

 

「私はこれになります。一番最初に生えてきた角ですね」

 

「……私はこれだ。高島が私の鱗で作った扇子」

 

御神体は安置するか、自分で所持するのが一番安全で確実な方法だ。シズは結界の中に安置すると言う方法を取ったのだろう、それは本来なら正しい保存方法の1つだと思うけど

 

「問題は相手もそれを知らないわけが無いって事ですわね」

 

「間違いないわね、レイが回収に向かっているかもしれない」

 

今はまだここにあるとシズが告げているけど、それもどこまで信用出来るか判らない

 

【ワシと牛若丸で見てくるか?】

 

【主殿達はここに居てくれても大丈夫ですよ?】

 

ノッブ達がそう告げる、確かに英霊の方がと一瞬思った。だがそれは横島君からSTOPが掛かった

 

「レイも変身が出来る。もしノッブちゃん達がレイの眼魂に封じられる危険性もあると思う」

 

そうなると牛若丸とノッブの2人が敵に回ると言うことだ。確かにそうなったらどうしようもない

 

「危険は承知で私達で直接行くしかないって事か」

 

御神体を手に入れなければあの巨人を倒す事は出来ない。危険を承知で私達は明日早朝から、シズの御神体が眠ると言うやシロを目指して出発する事を決めるのだった……

 

「お話は終わりました?ご夕食とお風呂の準備が出来ましたので、どうぞ身体を休めてくださいな」

 

突然これだけの大人数で押しかけたのに、笑顔で迎え入れてくれてる。氷室凛華さんには感謝しかない

 

「すいません、本当に」

 

「いえいえ、気にしないでください。庭に温泉もありますからゆっくりと身体を休めてくださいね」

 

女性としては大柄だけど、もしかするとそれが女華姫の血を引いている証なのかもしれない

 

「まだ山の中は雪が残っている場所もありますから、アイゼン等を用意しておきますね」

 

「あ、それなら友達に声を掛けてダウンジャケットを持ってきてもらうだ!」

 

山に向かう私達の為に積極的に動いてくれる氷室家の皆さんに感謝し、もしガープの計画が完全に実行されたら一番最初に大きな被害を受けるであろう氷室神社を、舞ちゃんを受け入れてくれた優しいこの人達を、そして日本を守る為にも何としても御神体を手に入れて見せると決意を新たにするのだった。なお、夕食の後横島君がお風呂に入っている頃

 

【ちょっとした出来心じゃろッ!!】

 

「それでなんで男の人のお風呂を覗くんですかッ!待ちなさいッ!その煩悩断ち切ってあげますッ!!」

 

【煩悩所か首と胴体がオサラバするわぁッ!!】

 

ノッブと小竜姫様の追いかけっこが始まり、それから暫くして横島君が若干気落ちした様子で広間に来て

 

「……場を和ませようと思ったんですかね?バッチリ目があったんですけど、もしかして俺セクハラされてます?」

 

なんかとんでもなく悩んでいる様子の横島君に私達は何も言う事が出来ないのだった……

 

 

~美神視点~

 

氷室神社の電話を借りて東京へと電話する。通話が繋がるまで大広間を覗いているが……先ほどまでの緊迫とした空気が霧散しているのが実に良く判る

 

「よーし、よーし、良い子だ」

 

「ぷぎゅー」

 

ドライヤーとブラシでうりぼーの毛並みを整えている横島君だ。

 

「もう、横島は本当にうりぼーとかが大切なのね」

 

「そりゃもう可愛いからなあ」

 

「ぷぎゅう!」

 

うりぼーを抱っこして笑う横島君は、見かけよりも随分と幼く見えて可愛いという印象が強い

 

「……ったく、しょうがない奴だ」

 

「あら、でも、気をずっと張っているよりかはずっと良いと思うわ」

 

琉璃の言う通りだ、横島君の纏う空気で先ほどまでの張り詰めた空気が霧散している。横島君は本当にムードメイカーよね

 

【もうすぐご飯が出来ますよー】

 

「山菜の天ぷらとかだべー」

 

おキヌちゃん達も表情が柔らかくなっている。確かに気を緩めすぎるのはよくない、だけども、ずっと張り詰めていると簡単に切れてしまう。適度なリラックスがこのような状況では大事なのだ

 

「よし、今度はチビだ。おいで」

 

「みむうー♪」

 

今度はチビを膝の上に乗せてブラシで毛並みを整えている横島君、その表情は凄く生き生きしているのが良く判る。

 

「やれやれ、まぁ、これも横島の良さか」

 

「……面白い人間だな」

 

「ナナシとユミルももうすぐご飯にするねー」

 

舞ちゃんもパタパタと楽しそうに歩き回って夕食の手伝いをしている。さっきまでは沈鬱そうな顔をしていたのに、横島君を見ているうちに自然に笑顔が増えてきたと私は思っている

 

【蓑虫の刑とか酷くねッ!?】

 

「少し反省していなさい、全く……横島さん、不埒者は成敗しておきましたからね」

 

小竜姫様の言葉に複雑そうな表情をしながらもありがとうございますと頭を下げる横島君、そういう姿を見ているとやっぱり横島君にはGSと言う職業は向いていない様に思える

 

(でもそうは言ってられないのよね)

 

レアな霊能を多数持ち合わせ、伝説にある文珠使い。それらの才能が横島君をどうしても非日常に導いてしまう、もし横島君が霊能者でなければもしかすると保育士だけじゃなくて、ペットショップとかも案外天職なのかもしれないと思うようになってきた。

 

「くう」

 

「わんわん!」

 

「はいはい、判ってるよ。シロとタマモもちゃんとブラシをしてやるからな」

 

ご飯の前にブラシをしろと言わんばかりに鳴いているシロとタマモを見て、苦笑しながら膝の上を叩く横島君を見ていると受話器のコール音が変化した

 

『もしもし?』

 

「あ、西条さん?私、私」

 

『令子ちゃんか、氷室神社の方はどうだい?』

 

状況はあんまり良くないということを伝える。知性と精神を失った暴走している神の肉体と、レイとの遭遇。霊脈の支配権についてもそこまで残された時間はないということを伝える

 

『増援は必要かい?』

 

「ううん、今の所は大丈夫。それよりも東京はどう?」

 

『こっちも状況は芳しくないね。特に神社仏閣を失った事で悪霊の大量発生が続いている、能力的にはそこまで脅威じゃないけど……徐々に出現する悪霊のランクが上がっているね』

 

悪霊の強さのランクアップ……具体的な事を言わない西条さんだけど、多分エミや唐巣先生が出張るレベルの強敵なのは間違いない

 

「神社の復旧とかはどう?」

 

『そっちもやってるけど、中々難しいね。悪霊も馬鹿じゃないからね、それよりもだ。僕達よりも君達の方が心配だよ』

 

レイや知性の無い神との戦いと聞いている西条さんの声色が引き締まる

 

『最悪の場合、遠慮せずに増援要請を出して欲しい。ビュレトやブリュンヒルデ、それに優太郎さんもいる』

 

「うん、判ってる。最悪の場合は連絡するわ」

 

当面は相手も御神体を狙って動くだろう。御神体さえ手に入れてしまえば相手方の切り札だと思われるシズの肉体は使えない、まずは何としてもレイよりも先に御神体を手に入れる事が最優先だ

 

「こっちのほうだと団子虫、トンボ、それと植物で出来た人型が軍隊みたいになってるわ。今はここら辺だけだけど、その内そっちにも出てくるかもしれないから、本当に気をつけて、倒すよりも結界で封印しないと何度でも復活するから」

 

『それは厄介だね、情報ありがとう。それじゃあ、僕もまた現場に出るから、ここで失礼するよ。令子ちゃんだけじゃない、横島君達にも

気をつけるように伝えて欲しい』

 

それじゃと言って電話を切る西条さん。向こうの状況はかなりぼやかされたけど、やっぱりこちらと同じ状況と見て間違いないわね

 

「東京はどうでした?」

 

「悪霊の群れだって、下手をするとレギオンが出てくるかもしれないわね」

 

通路に背中を預け、腕を組んでいるくえすに東京の状況を伝えるとそうですかと言葉短く頷き

 

「御神体の所に横島を連れて行くのは反対ですわ」

 

「駄目よ、横島君は連れて行く」

 

「……リスクを判っているんですの」

 

「判ってるわよ」

 

視線だけでも人を殺せるなら、今のくえすの目が正にそれだ。私だって、氷室神社が完全に安全と言えるのならば横島君を氷室神社に残す。だけど、幽霊としてこの場に留まっている導師の事、そしてレイの存在もある。

 

「レイが本気だったらここは吹き飛んでるわ」

 

「……それは判っていますが…」

 

神霊眼魂を駆使し、自身も神通力を持つレイは正直言って、小竜姫様やシズクでも勝てるかどうかと言う相手だ。そんな相手が襲ってくるかもしれない、場所に横島君を1人で残す方が危険性が高い

 

(……それに、中世の時もある)

 

蛍ちゃんが殺された時に暴走した姿。あの時は、狂神石によって横島君が魔族に落ちたことで姿が変わった。今魔人に近づいている横島君だと、正気を失うだけであの時の姿になりかねない……近くに置いておく方が安心できると私は思う

 

「横島君を1人にしたらどうなるかなんて言うまでもないでしょう」

 

「それは……そうですが」

 

横島君は案外無茶をする、しかも自分の身を省みない所もある。そこが横島君の危うさだ、自分よりも他人を優先する。それは決して良い傾向ではない

 

「不安はあるけど、横島君を信用してあげなさい。それが何よりも横島君にとって嬉しい事のはずよ」

 

「……それで横島が無茶をするとなると、私は如何しても許容出来ませんわ」

 

くえすらしからぬ、不安そうな声。それだけくえすが横島君を心配していると言う証であり、そして想いを寄せていると言う証でもあると思う。

 

「もうちょっと信頼してあげても良いと思うわ」

 

「……アレでですか?」

 

「あー、待て待て、判った判ってるから!」

 

「みむみむー」

 

「ぷぎー」

 

【ノッノー♪】

 

ご飯ご飯ーと言わんばかりに口を開けて、横島君の周りに集まっているチビ達。果物やメロンパンを慌しく準備をしている横島君を見て、私は少し考えてから

 

「……余り信用しすぎない方がいいかも」

 

「でしょうね、見ていて微笑ましいというのは認めますけれど」

 

いい感じで話を締めようと思っていたのにそうならなかった事に苦笑しながら、私達も食事をする為に大広間に足を向けるのだった……全ては明日。時間との勝負だ、今日一日くらいはゆっくりしていても良い筈なのだから……

 

 

 

~ガープ視点~

 

レイからの報告を聞いて、私は少しばかり眉を顰めた。氷室舞の捕獲を命じていたが、そこに横島達が混じってくると言うのは想定していたよりも些か早い、場所は伝えておいたが思っていたよりも辿り着くのが早かった

 

(命令の簡略化が失敗だったか)

 

今のレイには複雑な命令を理解するだけの知恵が無い。だからこそ、氷室舞の捕獲のみを命じたが少しは臨機応変に行動してくれる事を期待したのは失敗だったかもしれない

 

「それと蘆屋が作った眼魂は単独では使用出来ませんでした」

 

蘆屋が作ったと言うとコブラ眼魂か、動物系の眼魂を使うと言う実験は失敗したと言うことか

 

「単独と言うことは、複数使用は出来たのか?」

 

「はい、コブラの毒を使うという方法での使用は出来ました」

 

変身するには霊力が足りないのか……それとも動物だから霊格が足りないのか

 

(なんにせよ、これは今後の研究課題だな)

 

眼魂と言うのは未知に満ちている。仮に生成できたとしても実用段階には遠い可能性だってある……これは蘆屋のミスではなく、実用段階にない可能性を考慮せず。レイに渡したミスになるだろう

 

「判った、だがコブラは使用するな。殺すにはまだ早い」

 

「……はい、判りました」

 

コブラの霊圧だけを抽出した眼魂の能力を付与すれば、意図しなくても殺してしまう危険性がある。最終的に殺すとしても今はまだ早すぎる

 

「それと巨人ですが、巫女の幽霊の一喝で消滅しました」

 

それは興味深いな、精神と知識だけを持って逃亡したのは把握していたが……地霊だけではなく、巫女の幽霊……恐らく横島達と共にいるあの巫女の幽霊だと思うが……あの巫女がこの土地と何らかの関係がある可能性があるな

 

「判った、座標を送る。その場所にある、御神体を回収し、巨人に与えておけ。そうする事で不安定な、霊核も安定するだろう」

 

知識と精神がないので、本能で動くでかぶつだ。だがその身に宿る神性は本物……御神体を与える事で擬似人格を獲得する可能性もある。ゆっくりと擬似人格を植え付ける事を考えていたが、そこまでゆっくりしている時間はなさそうだ

 

「氷室舞の捕獲、御神体の回収、優先するべきはどちらですか?」

 

逐一命令しないといけないか……だがこの程度の事でイラついていては天界と魔界を同時に相手取って戦う事など出来ない。それにレイは文字通りプロトタイプ、自我も応用力も希薄だ。そんな相手にイラついていては自分も同じ程度の知識しかないと認めているような物だ

 

「氷室舞の捕獲は一時中断、御神体の確保及び、横島の戦闘データ、もしくは拉致が可能ならばそれを最優先だ」

 

「……横島の周りは」

 

「好きにしろ。殺すも、痛めつけるのも、見逃すもお前に一任する。良く考えて行動しろ」

 

了解しましたと告げるレイを一瞥し、通信を切る。正直日本で騒動を起こすのはそちらに注意を向ける事と、もう1つ横島の魂へ過負荷を掛けてその魂を変質させることにある。もっと、もっと強くなるが良い、そして我らに対する憎悪を燃やせ

 

「ふふふふ、全ては私の計算通りだ」

 

レイに渡すことの無かった4つの眼魂、そして盾のようなガントレット……準備は出来ているが、まだ横島が完成していない。横島が今よりも、もっと魔人に近づいた時、そして今よりもなお激しい憎悪を私達に抱いた時。その時こそが私達の本懐が成し遂げられる時なのだから

 

「だからもう少しだけ待っていろ」

 

私の机の上で魔力を放出し、震える3つの眼魂「A」「G」「S]とナンバリングが施された、血の様な真紅に輝き、炎を纏う眼魂。黄金色の輝きを放ち、見る者を狂わせる光を放つ眼魂、そして緑に輝き、消えては現れるを繰り返す眼魂を見て私は笑みを零す。全ては大義の為……天上の輝きを再び世界を照らさせる為。世界を再び1つに纏める為なのだ

 

「全ては些事……大義の為の犠牲となれ」

 

天界も、魔界も、人間界も全てを犠牲にしても成し遂げるのだ。それこそが私達が存在している理由なのだから……

 

「ぶえっくす!!」

 

氷室神社の一室で眠る横島は突如凄まじい寒気を感じて、大きくくしゃみをして目を覚ました

 

「……ぷぎゅう?」

 

「うー冷えてるのかなあ、おいで」

 

「ぷーぎ♪」

 

山の中で冷えたのかなと呟き、布団をめくってうりぼーを抱き枕にして再び眠りに落ちる横島。それは決して寒気などではなく、本能的に己の身の危機を感じ取ったのだが……横島がそれに気付くことはないのだった。だが仮に気付いたとしても、横島に出来る事など何もない……全ては運命の中の出来事であり、それを覆す事など誰にも出来ないのだから……

 

 

 

リポート28 切り開け、己の未来 その6へ続く

 

 




次回は山を進み、御神体捜索と次のイベントへの話を用意して行こうと思います。超鉄板の生存フラグって奴ですね、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

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