GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート28 切り開け、己の未来 その7
~美神視点~
氷室神社に戻ってきた私達は立っていられず、その場にへたり込んだ。全員が見てしまったのだ、横島君と琉璃が急流に飲まれる姿を思い出し、血の気が引くのが判る。だが何時までもへたり込んでいるわけには行かず、横島君と琉璃の救出について考え始める。
「シズク、シズクッ!横島は!?横島は無事なのよねッ!?」
そう言って欲しいと言わんばかりに蛍ちゃんがシズクの両肩を掴む、相当乱暴な掴み方だったのかシズクは顔を歪める。いえ、違うわね……あの感じは、悔いているように私には見えた。
「……横島の気配は感じ取れない」
「え?」
「……横島の気配は感じ取れないと言ったんだッ!!!」
シズクらしからぬ怒声に全員が驚き、そして蛍ちゃんは力が完全抜けてしまったのかへたり込んで、嘘と繰り返し呟いている。
「小竜姫様、横島君の気配が感じ取れないと言うのは本当ですか」
「……はい、ただ横島さんが死んでいるから気配を感じ取れないのか、それとも急流に流されて神通力の溜り場まで行ってしまい。私達の感覚では感じ取れないだけかもしれません」
淡々と告げる小竜姫様だが、その手は硬く握り締められ、血が滴り落ちている。その姿を見れば、小竜姫様が自分を責めているのは明らかだ、それに責められるべきは私だ。くえすの転移あり気で敵の中に飛び込むことを決めたのは私だ。
「信長ッ!こっち来て」
【な、なんじゃ急に】
「思いっきりビンタして、早くッ!!」
【え?何を?】
「早くッ!!」
私の怒号に信長はどうなっても知らんぞと言ってから、振りかぶったビンタを私の頬に叩きこむ。景色が飛んで、蛍ちゃんやくえすの私の名前を呼ぶ声がやけに遠くに聞えた。
「……あーー痛い、とんでもなく痛いわね」
これ絶対後で腫上がるわね、でもこの痛みで混乱していた考えが纏まってくる。
「シロ!タマモ!それと牛若丸!悪いけど、チビ達を連れてすぐにまた山へ向かって貰うわよ、小竜姫様もお願いします!地図で当たりをつけるから、その周辺を重点的に!くえすと蛍ちゃんは東京に連絡!もうなりふり構ってられないわ、カズマも聖奈も呼び寄せるわよ!」
横島君が死んでいるわけが無い、絶対に生きているはず。ガープやレイも間違いなく、横島君の回収に走る。相手よりも早く、横島君と琉璃を発見しなければならない。
「シズクは川から横島君達の霊力を探して、近づけば判るわよね?」
「……ああ。見つけてみせる」
返事を返すと同時に地面の中に溶ける様に消えていくシズク。最悪の場合だけど、水の中に沈んで浮かんで来れない場合横島君達を見つけれるのはシズクしかない、そんな最悪の結果になってほしくないと祈るしかないが
「チビ、うりぼー、横島を探すわよ。匂いは覚えてるわね?」
「みむう!」
「ぷぎゅう!」
「……絶対、せんせーを見つけるでござる」
山岳図を取り出して、自分達が最後にいた場所。そして川の位置から横島君と琉璃が流れ着いているであろう、場所に丸をつける。もし違えば、後はシロ達の鼻が頼りだ。
【び、美神さん!私は!?】
「おキヌちゃんは霊脈のコントロールを奪われないようにしてなさい!良い!間違っても神社の外にでようなんて思わないことッ!」
おキヌちゃんが霊脈のコントロールを奪われてしまえばそれこそ全滅を避ける事は出来ない。大変だと思うけど、意地でも霊脈を確保しておいて貰いたい。
「美神さんはどうするんですか」
「別アプローチでノッブと一緒横島君を探すわ、山を登る間に作った休憩所、そこに横島君の切り札で戻って来てる可能性があるから!」
山に作った休憩所は全部で4箇所、横島君が意識を失っていても文珠を心眼が使っていてくれている可能性もある。可能性は限りなく低いけど……私はその可能性を信じたい、狼と狐の姿になって茂みの中に消えるシロとタマモ、うりぼーとチビとチビノブもそれを追いかけるようにして茂みの中に消える。
「難しいと思いますけど、よろしくお願いします」
「大丈夫です、横島さんを見つけたら必ず連れて来ます」
小竜姫様にシロ達に同行を頼んだのは、超加速で戻って来れるからだ。
「美神さん、私も」
「私も行きますわよ」
自分達も行くと言う蛍とくえす、その意志は買いたいけど……今は駄目だ。2人の能力の高さは十分に把握している、だが、本当ならついてくるように言いたい。だけど……それが不可能なのは2人の状態を見れば一瞬で判った。
「そんな震えた手足で何をするって言うの?」
2人とも手足が震えてまともに立ってられる状態ではない、横島君への依存は警戒していたけど、今回は最悪の形で蛍ちゃんの弱点が露呈してしまった、くえすは正直予想外だったけど……それだけ横島君に想いを寄せていると言うことだろう。自分達の今の状態を見て、ついいていくと言えなくなった2人を残して私達は氷室神社を出る。夜は冷えるし、何よりも雪山だ。時間を掛けている時間は無い、時間が経てば経つほど、横島君と琉璃の生存率は低い物となるのだから、疲れているとか、霊力が無いとか言う泣き言を言える場合ではない
「良い、私の頼んだことをしておいて、ちゃんと横島君は連れて帰るわ。行きましょう」
【おう!】
ノッブと共に再び山の中に足を踏み入れる。師匠より先に弟子が死ぬなんて許さない、絶対に、絶対に見つけてみせる。私はノッブに頬を張られ、熱を持ち始めた痛みを堪え、横島君の姿を探して山の中を歩き始めるのだった。
~横島視点~
俺が覚えていたのは、コンクリートの壁に叩きつけられたと思うほどの衝撃と、変身が解除された事で発生する全身の痛みだ。しかも状況を把握する前に急流に飲み込まれ、泳いでいるのか、それともただ流されているのか、それすらも判らない。
【横島!意識を保て!良いか!絶対に意識を失うな!】
心眼の叫び声が脳裏に響く、その声すらも強烈な痛みとなり、意識を失うなと言う心眼の言葉でも意識を失いそうになる……だがそれでも俺は途切れかける意識を必死で繋ぎとめていた。
(な、なんとしても、上陸する)
背中に背負っている琉璃さんがいるからだ。何度水を飲んだか判らない、息苦しくて死ぬかもしれないと思った。だけど急流は俺と琉璃さんを安全に下流に運んでくれた
「ぜ……ぜ……うっ……ぐうう」
殆ど這うようにして川から上がる。琉璃さんは完全に意識を失っていて、目を覚ます気配が無い。もしかして水を飲みすぎているとかか、最悪の予想が脳裏を過ぎり、心眼に大丈夫かと尋ねる。
「し、心眼……る、琉璃さんは?」
【大丈夫だ、お前が水を飲まないように必死に泳いでいたから琉璃は頭を打った衝撃で意識を失っているだけだ】
琉璃さんが無事と言う事だけで身体から力が抜けた、でもこんな所で休んでいては敵に襲われるかもしれない。全身が痛むが歯を食いしばり立ち上がろうとして、その場に崩れ落ちた。
「うぎいっ!?」
【どうした!?だい……ぐっ、すまない。気付かなかった、私のミスだ】
「い、いやあ。心眼は悪くねえよ……」
冷たい谷川に長時間流されていたことで気付かなかったが、足に太い木の枝が刺さっていた。貫通こそしていないが、かなり奥深くまで刺さっているのが判る。
「……心眼、こういう時ってどうすればいい?」
【口にハンカチを詰め込め、それから引きぬけ。後は文珠で回復させる】
心眼の助言に従い、タオルを加えて両手で枝を握り締めて、思いっきり引き抜く。
「!?!?ッ!!!!」
声にならない痛みと吹き出る鮮血に目の前が暗くなるが、それでも意識を保つ。
【……私では応急処置程度の力しかない。すまない】
「いや、ありがとう。大分楽になった」
心眼では文珠の力を引き出すことが出来なかったようで謝罪してくるが、立ち上がる事は出来ないがそれでも痛みが無くなっただけでもありがたい。
「心眼、ここどこくらいだろう」
【かなり下流だと思う】
流も随分と弱まっているが、それだけで麓に近いとは思えない。木々も高いし、なによりも森の気配がおかしいというか……人の気配が微塵も無いことから、山奥だろう。
【立てるか?】
「ごめん、無理。でも移動するしかないんだろ、悪いけど、俺の代わりに前を見て欲しい」
意識の無い琉璃さんを背負ったまま、匍匐前進の要領で前へ進む。文珠はまだあるが、十分な効果も無いのに使うわけには行かない。
【琉璃が目覚めるのは待つわけには行かないな】
「ああ、シズクが来てくれないのはおかしいしな」
川の近くならシズクが来てくれる、そう思っていた。だけど、これだけ時間が経っても現れないと言うことは、俺達の場所が判らない。またはシズク達も負傷していて動けないと考えるべきだ。つまり何が言いたいかと言うと、自力でどこか隠れる場所を見つける必要があると言うことだ。
【霊視で隠れれそうな場所を探す、私が休めと言ったら休め。良いな?】
心眼の優しくも厳しい言葉に判ってると返事を返し、動かない足に苛立ちを覚えながら必死に手を伸ばし、身体を引きずるようにして森の中を進む。これだけドロだらけにすると、シズクに怒られるかな?それとも、また勝手な事をしたと美神さんに怒られるかな?そんな事を考えていると身体の痛みも気になくなって来る。
【身体の痛みを感じられないのは、完全に霊体が麻痺しているからだ】
「……それは判ってる」
栄光の手も作れない、陰陽札も使えない。俺の霊力は間違いなく枯渇している、それはいくら馬鹿な俺でも理解している。
「早く休める場所を見つけないとな」
【そうだな、このままでは日が暮れる】
木々の間から零れる太陽の光が、オレンジ色に染まって来ている……それは夕暮れが近いことを示していた。
「もしかして意識を失っていたのかもしれないな」
【……私もな】
激流から陸地に打ち揚げられた時に意識を失っていたのかもしれない、夕焼けの光を見て俺はそう呟いた。それとも、レイとの戦いの段階で、既に昼近かったのか……どっちだろう。そんな答えの出ないことを考え、意識のない琉璃さんを背中に乗せて必死で這い蹲って森を進む。
「俺さ、今まで真剣……に……修行してたのかな」
【急にどうした?】
知識が足りないから基礎を教わり、足りない知識を覚えてきた。だけど、俺は真剣に修行してたのかなと思ってしまった。
「だって……よ、蛍も美神さんもヒーリング出来るだろ?でも俺は出来ねえ」
【……横島、人には相性がある】
「そうだとしてもさ、それに甘えてたんじゃないか?」
額から汗が零れ落ちて、それが目に入る。その痛みに顔を顰めながら、必死に前に進む。背中に琉璃さんの感触を感じるが、それが性につながる事は無い、今の俺に考えられるのは修行不足の言葉だけだ。
【お前は足りない知識を身につけている段階だ、2~3年の修行で、10年近く修行してる人間に追いつけると思うか?もし追いつけると思うのならば、それは慢心だ】
お前に才能はある、だかそれは時間を掛けて伸ばす物だと心眼に叱られる。
「そういう……もんかなあ」
【当たり前だ、むしろ数年で並みの霊能者を越えているお前の方がよほど規格外だ】
知識が足りないと言う言葉を言い訳にして、俺は本気で修行していなかったのではと思う。これは何を言われても、多分消えることは無い。
【横島!洞窟だ!】
「……やっとかよ」
切り立った崖の中にある洞窟を見つけた心眼に心の底から感謝して、そちらに手を進める。2人分の体重が手にかかり、皮がずる剥け鮮血が滴っているが……あれくらいなら根性で進んでやる。
【……大丈夫だ、中に生物の気配は無い】
心眼に霊視で中を確認して貰ってから、洞窟の中に這って入る。岩に背中を預け、漸く一息つけた。だけど、まだ駄目だ、このままでは2人とも凍死する。指を噛み切らなくても、血が滴り落ちているから楽で良いなと笑い、空中に文字を刻む。
【横島!馬鹿、今霊力を使うなッ!】
「い、今……使わないで……何時使うんだよ、心眼」
俺だって、これ以上霊力を使うのは危険だって判ってるさ。だけど、だけどさ……このままじゃ、死んじゃうんだよ……琉璃さんが。
「人が死ぬのは……見たくねえよなあ」
【馬鹿者ッ!お前が死ぬぞッ!?止めろ!】
心眼の制止の声がうるさくて、バンダナを引きちぎるようにして外す。その瞬間心眼の声が聞えなくなる、心の中で心眼への謝罪を告げる。でも止められても、俺は止まれないんだ。
「急急如意令……火精……招来」
空中に刻まれた血文字が地面に落ちて、温かい霊力の火が灯る。時間は掛かるけど、これで凍死の心配は無いはずだ……一安心すると同時に俺の意識は深い闇の中へと沈んでいくのだった。
~琉璃視点~
目を覚ました時、私の目の前に広がったのは岩の壁とその岩の壁を明るく照らす炎の明かりだった。何で自分がここにいるのかと言うことが判らず頭がぼんやりとしていたが、徐々に暗がりに目が慣れてくる。
「横島君ッ!?」
私と向かい合うように岩壁にぐったりとした横島君を見て、慌てて立ち上がり横島君に手を伸ばす。その身体は冷え切っていて、顔色も青く死人と見間違うような顔色だ。
「冷たい……横島君!横島君ッ!?」
声を掛けるが横島君は身じろぎ1つしない、慌てて口元に手を当てる。
「……い、息はしてる。で、でもこのままじゃ」
手に僅かに息が当たるけど、その呼吸は余りにも弱々しい。このままでは数刻も持たずに横島君は死ぬ……温めないといけないと思い、炎に手を翳して気が付いた。これは普通の炎じゃない、今こうしている間も横島君の霊力と体力を消耗させている。
「どうして気付かなかったのッ!?!?」
普通なら気付いていた、だが私も山の冷たい水で身体の芯まで冷え切り、弱り切っていた為が弱り切っていてそこまで気が回らなかった。横島君は自分の霊力と体力を削りながら、「私」にだけ炎の熱を向けていたのだ。私の服だけが乾いていて、横島君が今もびしょ濡れなのと心眼を巻いていない理由が判った。
「心眼!心眼起きてッ!」
【琉璃か!助かったぞ!】
横島君の手が握り締められるようにしてたたまれていた心眼を無理やり引き抜いて広げる。すると、すぐに心眼が浮かび上がり、思わず安堵の溜め息を吐いた。
【まだ間に合う!ぎりぎりだが、霊力は残ってる!】
心眼がそう叫ぶと洞窟を明るく照らしていた炎の感覚が変わる。本当なら炎を消すべきなんだろうけど、外はもう日が落ちている。獣除けにもなるから炎を完全に消す訳には行かないと判断したのだろう。
【私の神通力と竜気で炎を維持する。これで横島の霊力と体力はこれ以上減ることはない……減ることはないが】
「判ってる、横島君の体温が下がりすぎてるのよね」
濡れた服を着たまま何時まで気絶していたのか判らないが、死ぬ一歩手前まで身体が冷え切っているのは間違いない。ちょっと目を逸らしながら、濡れている横島君の服を脱がしていく、シャツにGジャンとGパンといつもの姿だから何とか脱がせる事が出来た。霊力の炎だから燃えることは無いので脱がした横島君の服を火の傍に置いて乾かす。
【……琉璃、こんな事を頼むはどうかと判っているが……】
「判ってる、判ってるから、最後まで言わなくて良いわよ」
洞窟の中だから火の温度で温まって来ている、だけど横島君にはまだ体温が足りない。私がこうして普通に動けるのは横島君のおかげだし、谷から落ちる時に横島君が護ってくれたから私は身体の何処も怪我をしていない……だけど、横島君は酷い有様だ。足には深い刺し傷があり、両腕も手の皮がずる剥けて血が今も滴り落ちている。
「……ふー」
自分よりも年下がここまでやってくれているのに、恥ずかしいとか思うほど私は人でなしではないつもりだ。躊躇っている時間も恥ずかしがっている時間も無いので手早く巫女服を脱いで下着姿になり、横になっている横島君を正面から抱き合うように抱きしめる。彼の肌と触れた私の肌に濡れた感触と共に冷え切った体温が伝わってくる。
(弱い……心音が弱すぎる)
背中から抱きしめるかと少し悩んだ。だが余りにも横島君の心音が弱すぎた上にすっかり冷えてしまっていた、それに霊力があり得ない程弱くなりすぎている……これでは体温が回復する前に横島君が死んでしまう。
「駄目よ、逝ったら駄目……そっちに逝ったら駄目よ」
逝くな、逝くなと繰り返し声を掛け続ける。声だけではなく、私の霊力と体温を横島君に譲渡する為により一掃密着すると彼の胸へと押し当てて張り付いていた私の胸が形を変えて水音を立てる。横島君が魔人に近くなっているのならば……本来ならば喜ぶべき事ではないが、緊急事態である今はその事が今はその事が正に不幸中の幸いだった。彼の身体……その身体の質は神魔に近いはず、それならば神代の技で霊力を譲渡する事だって決して不可能ではない。
【琉璃、気をつけろ。横島の霊力は無尽蔵だ】
「……それは、もう少し早く言って欲しかったわね」
霊力が横島君に触れている場所から凄まじい勢いで吸い込まれていく……しかもそれだけではない、横島君と私の魂の波長が合って行くのが判る。
「これは……きついわね」
【自我を保て、危険だと思うなら、私を手首に巻け】
心眼の申し出をありがたく受け取り、心眼のバンダナを手首にきつく結ぶ。それのおかげか、横島君に吸い込まれていく私の霊力の勢いが少し弱まって行った
「……心眼、ごめん。多分……寝ちゃう」
【結界は私が維持する、すまないな巫女にこのような真似をさせて】
「……気にしないで……良いわよ」
巫女ではある、だが巫女であると同時に私は人間だ。助けてくれた人を見捨てるような真似は出来ないのだ……これは心眼に言ってもいいかな。
「……私、横島君って結構好きなのよね」
その言葉を最後に私は霊力を横島君に譲渡した事への反動で眠りに落ちた、でも横島君を逝かせない為に、その背中に回した手の力を緩めることは無かった。
「あ、あああ……あの、る、るるる……琉璃さん」
「ん……んん?」
どもっている横島君の声が聞えて、意識がゆっくりと覚醒してくる。
「おはよう」
「おお……おお……はよう……ございます、あ、あああ……あの、こ、これは……」
その慌て含めく姿にくすりと笑ってしまう、横島君の周りにはあれだけ女の子がいるのに下着姿の私を見るだけでこれだけうろたえていると可愛いと思えるから不思議だ。
「とりあえず……服を着ましょうか?」
両腕で胸を隠し、微笑みかけると横島君はその顔を真っ赤にして、まるでブリキ人形のように何度も何度も頷く。
「は、ははは……はひッ!」
互いに背を向けて乾いている服に着替える、昨日服を脱ぐ前に感じていた気恥ずかしさとかは不思議と無かった。
「横島君」
「は、はい、そ、そのなんで……抱き合って……」
顔色が目まぐるしく変わる横島君。赤くなったり、青くなったり、私を気恥ずかしそうに見つめて来たり、その反応を見て愛おしく見えてしまうのは何でだろう。
「おねーさんの裸は安くないんだからね?」
「え!?えうえう……」
目を白黒させる横島君に向かって私はウィンクする。蛍ちゃんやくえすには悪いけど、命を助けられたこともある。それに元々横島君のことは好意的に感じていた、だから本気になってしまうのは仕方ない事だ。
(琉璃……か、蛍とくえすとはまた違うが……悪くはないか)
横島と琉璃に声を掛ける事はないが、心眼は横島の魂の中で琉璃も横島の伴侶に相応しいかと呟くのだった。
~ガープ視点~
「レイの反応が途絶えた最後の記録はどうなっている?」
「……は、はい。コブラ眼魂の反応を最後にき、記録しています」
私の問いかけに蘆屋が小刻みに震えながら、レイとの反応が途絶えるまでの最後の記録の報告をする。コブラ眼魂を作り上げたのは、蘆屋だ。その責任を追及される事を恐れるのは当然の事、だが私は怒り等は抱いていなかった。
「単独起動は不可能ではなかったと言うことか……聞いておくが、眼魂に魂は宿っていたのか?」
「い、いえ。コブラの性質のみを組み込んだ眼魂です」
魂が宿っていないはずの眼魂……その段階で眼魂として破綻している。だが蘆屋の作成した眼魂は動物の性質のみを組み込んだ弊害であるが、それであるがゆえに量産の利く眼魂であった。
(面白い、これだから未知と言うのは面白くて仕方ない)
他の眼魂、ハルピュイアやサイクロプス、ゴーレムではない反応だ。罰せられる事を恐れている蘆屋だが、新しい発見をした有能な部下を罰するつもりはなかった。
「使い魔を飛ばしておけ、レイを発見次第。液状化した狂神石を投与するように、また横島を見つけたら回収しておけ」
「は、はい……判りました」
罰せられないことに拍子抜けした表情の蘆屋が深く一礼して、私の研究室を出て行く。研究とは失敗と成功の繰り返しだ、レイの反応が途絶えたのは正直不味い展開だが、コブラ……すなわち蛇の眼魂に蛇に関する神性が宿ったかもしれないと考えればこれは紛れもなく幸運だ。
「問題はリミットに間に合うかどうかだな、やはり調整不足か」
複合神性アルターエゴプロジェクトの試作の0番であるレイには複数の神性が組み込まれている、量産型は1柱だけとする事で安定度を増している。
「やはり最初の1体だからと、気合を入れすぎたか」
出力や性能は紛れもなく上級……いや、最上級に匹敵する。だがその反面、極めて不安定であり狂神石を定期的に摂取させ魂に負荷をかけなければ自我に目覚めてしまうかもしれない……戦略兵器としては失敗作も良い所だ。
「……反応が途絶えて4時間か」
摂取させるリミットは当に過ぎている、後は体内に残っている狂神石とファントムコールダーの中に内蔵されている狂神石の貯蔵が何処まで持つかだが……と、ここまで考えた所で私は自分が笑みを浮かべていることに気付いたのだ。
「そうか、これは私に取っては望むべきことか」
自らが創造した者が刃向かう、味方として運用するよりも敵に回った方がデータを取るのは相応しい。自分が作り出したモノが自分に逆らうかもしれない……それを楽しいと思うとは……。
「私はどこまで行っても科学者と言うことか」
自分の想定を超えることが楽しくて仕方ない、自分の想像を創造物が超える事が楽しくて仕方ない。これは科学者としての悪癖と言っても良いだろう、ただ1つ言えるのは……私に取ってはどちらでも良いと言う事だけだ。
「どうなるか見届けるくらいはしてやるさ」
私の創造物だ、それくらいの慈悲はある。それにあの神霊から奪い取った神性のおかげで、日本に神魔の注目が集まっている。今の内に種を撒こう、まだまだ私達がやるべきことはあるのだから……。
「い、痛い……頭……が……痛い」
レイもまた横島と琉璃同様川から這い出て、森の中を彷徨っていた。激しい頭痛と全身を襲う疲労感……どうすればいいのか、何をしたらいいのかそれすらも判らないままレイは森の中をさまよい歩く、歩みを止めたいと思っても頭の中に響く声がそれをさせない。
『立ち止まるな、進め。止まれば死ぬぞ』
『大丈夫、この道であってるわ』
『苦しいけど、頑張って立ち止まらないで』
頭痛の中でも聞える声に導かれながら身体の痛みと疲労感を感じながらもその歩みを止めることは無いのだった、レイは気付かないがガープから渡された神霊眼魂……赤黒い光の中から僅かに零れる鮮やかな光、狂神石によっても完全に狂わなかった眼魂に宿る神霊が残された僅かな力を振り絞りレイを救おうとしていたのだ、神霊達に導かれ進むレイの進む先には横島達が身を休めている洞窟があるのだった……。
リポート28 切り開け、己の未来 その8へ続く
と言う訳で今回はここまでですね。あんまりやらない、微エロネタ……かな?を頑張ってみました。次回は横島の視点から入って、美神達と合流するところまでを書いて行こうと思います。その後はインターバルをはさんでボス戦を書いて、この話のラストに向かっていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い