GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
どうも混沌の魔法使いです、今回は横島と琉璃の美神達との合流、そして偵察隊との戦闘を書いて行こうと思います。セカンドの最終リポート、そろそろまた話を盛り上げていこうと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
リポート28 切り開け、己の未来 その9
~美神視点~
小竜姫様に抱えられて滝壷の近くに着地し辺りを見回す、滝の上面よりも霊力が密集しているのが肌で判った。
「古い神域ですね、もう神はいないですけど……神通力の名残がこの周辺を護っています」
古い神域……か、シズの祠だと思っていたけど、シズよりも前。おキヌちゃんの村に祭られていたと言う守り神の神通力かと思っていると、水が盛り上がりシズクも姿を現した。
「どう、横島君の気配はある?」
横島君と魂で繋がっているから、近くにいれば横島君の居場所が判るかも知れないと思い尋ねる……だがシズクは首を左右に振った。
「……いや、今はまだ感じない、それよりもタマモ達は?」
私よりも先に下りていたので周辺の捜索をしているのかもしれないと返事を返し、滝壺から離れて森の中に足を踏み入れる。すると、そこではタマモとシロが人の姿になっていたのだが……その回りではチビやうりぼーが唸り声を上げているのを見てただ事ではないと言うのが一目で判った。
【美神、小竜姫も気を引き締めろ。タマモ達が言うには、レイの匂いがするらしい】
【妙な気配はしてますから、間違いではないと思いますよ】
ノッブと牛若丸の言葉を聞いて、私は直ぐに折りたたんでいた神通棍を手にする。
「みぎいいッ!」
「うううーッ!!」
【ノブウーッ!!】
敵意と警戒心剥き出しのチビ達、動物だけあって私よりもレイの危険性を如実に感じ取っているのだろう。
「それで横島君の匂いは残ってるの?」
「うん、それはバッチリ。琉璃の匂いも残っているんだけど……」
そこで言葉を切ったタマモ、いつもはっきりしているタマモが口ごもるなんて珍しいと私は感じた。そしてタマモの言葉を引き継いだシロに私達は判断を悩まされる事となった。
「せんせーと琉璃の匂いにレイが混じったでござるよ」
2人の匂いにレイの物が混じった、考えられるのは2つ。1つは横島君と琉璃がレイに連れ去られた、もう1つは横島君と琉璃がレイを回収しただ。
「……何か妙ですね、警戒していきましょう」
「そうするしかないみたいね」
レイに連れ去られたのか、それともレイを回収したのか……どちらにせよ、前に進まなければどうすれば良いかなんて判らない。
「タマモ達は悪いけど先導してくれる?」
「判ってるわよ、ほら、行くわよ。うりぼー」
「ぷぎゅうッ!」
毛を逆立ったままにして歩き出すうりぼーと、その頭の上で放電しているチビ。その後ろをついて歩く、タマモとシロの後をついて4人で森の中を進む。
「ノッブはどう思う?」
【うむ、レイも巻き込まれて打ち上げられたというのはどうじゃ?】
抉り取られた谷を見てきたが、確かにあの規模の破壊の後を見る限りではレイが巻き込まれたと言うのもあながちありえない話ではないだろう。
「制御出来ているようには思えなかったですしね」
あの時のレイは完全に錯乱していた、まるで誰かに背後から声を掛けられているように、自分に言い聞かせるように繰り返し違うと、私は私だと叫んでいた。
【とりあえずはまず主殿と合流しましょう、ここであれこれ考えていても変わりません】
私達の話を中断し、茂みを掻き分けて行く牛若丸。その後姿には強い焦りの色が浮かんでいる、勿論私達も焦っていない訳ではない。
「……姿が子供だから精神も幼いのだろう。横島の姿を見るまでは安心出来ないのさ」
【そうかもしれんの、とりあえず少しでも早く横島達を見つけよう】
最悪の場合の事は全員の脳裏に過ぎっている、だがそれを口にすることは無く固い表情で私達は森の中を進む、だがそれもほんの数分で止められた。
「おやおやおやおやぁ?まさかこのような所でお会いするとは、クフフフ……いやいや、拙僧も運が悪い」
どす黒い瘴気を纏った痩せぎすの男と開けた場所で鉢合わせた。その顔を見て、私は顔を歪めた。
「蘆屋……ッ!?」
「ほほう、横島から聞いておりましたか?ンフフ、そうですよ?拙僧蘆屋道貞と申します。どうぞ、お見知りおきを」
慇懃無礼と言う感じの蘆屋は私達を観察するように見つめ手を上げる。
「拙僧はレイを探しているだけ、そして貴方達は横島を探している。どうです?互いに見なかったことにすると言うのは?」
蘆屋の問いかけに一瞬何を言われたか理解出来なかった。
「何を企んでいるんですの?」
「企むなんてとんでもない。それでどうです?【貴様の様な外道の提案を受ける理由は無い!】……ンフフ。交渉決裂と言う事ですね、それならば仕方ありません」
牛若丸が擦れ違い様に一閃する。それで蘆屋の首は落ちたのだが、蘆屋は自身の首を抱えて笑い出した。
「ここで貴女方も捕らえましょう、優秀な女の霊能者。ンフフ……交配実験がはかどると言うもの」
蘆屋の影から手足が動物や昆虫の物に置き換わった、無数の人間が姿を見せる。
「外道め。その命を持って償え」
「ははははッ!私の罪など無い!私を裁く事など誰にも出来ぬ!!」
白目と黒目を反転させ高笑いしながら蘆屋は地面を蹴り浮かび上がる。
「どうぞお楽しみくださいな。ンフフ……慰み者になっても拙僧は楽しめますからなあ」
下卑た視線で私達を舐め回すように見つめる蘆屋に全員が嫌悪感をあらわにした。
「「「「死ね!」」」」
ここにいる女全員を敵に回した蘆屋だが、楽しくて仕方ないと言う様子で笑う。
「その威勢も何処まで続くか、ンフフ……楽しみに見させてもらいますよ」
蘆屋はそのまま空中に姿を消し、それと同時に現れた無数の異形の人間が雄叫びを上げて襲い掛かってくる。
「牛若丸、ノッブ小竜姫様、お願いします!」
「判ってます!皆さんは無理をしないでください!」
【呪われた命を終わらせて上げましょう】
【やれやれ、あの外道にはもう会いたくなかったんじゃがなぁ】
小竜姫様とノッブと牛若丸をセンターにして私と蛍ちゃん、そしてシロがバックアップ、シズク、くえす、タマモの遠距離攻撃と言う陣営で私達は異形の人型との戦いを始めるのだった……。
「さて……と、どうしますかな」
森の中で異形の人型と戦う美神達を見下ろす人影、目深に被ったフードと手にしていた金属片で装飾された本を弄ぶ様にして何者かは笑う。楽しくて仕方ないと、そして自らが動くべき時が来たのかと笑うのだ。
「接触するか、せざるべきか……これで決めるとしますかね」
男の手から乾いた音を立ててコインが放たれる、男の視線の先にはまだ遠いが木々をなぎ倒しながら、こちらに突き進む異形の姿があった。
「裏……ですか、ではまだ私は表舞台に立つべきではないと言うことですね。ですが……手助けくらいはしてやりますかな」
手にした本を開き、そこから何かを取り出す男。男の手の中には仮面ライダーの顔が描かれた3枚のカードが握られているのだった……。
~横島視点~
先ほどまでぽわぽわとしていた雰囲気のレイだったが、今は視線も定まり、身に纏う気配も鋭くなっていた。
「……横島に、琉璃……私は……そうですか、回収されたのですね」
人格と精神面が不安定とは聞いていた。だけど、ここまで変わる物かと俺は正直驚いていた
「こんにちわ、さっきまでの貴女はもう少し可愛げがあったけど……今の貴女の方が話は聞けそうね。それとも……私達と会話をする気は無いかしら?」
「……いえ、助けられた以上。ある程度の情報は提供するべきだと思います……ファントムコールダーは返せとは言いませんよ」
結界の中に封印されているファントムコールダーを一瞥するだけで、レイは俺と琉璃さんに視線を向けた。この反応は正直予想外だったので驚いた、ファントムコールダーを返せと暴れるくらいは考えていたからだ。
「私達を殺す気は?」
「素手でですか?無理に決まってるでしょう?」
レイはそう言うと着ていた法衣を捲りあげる、俺は反射的に目を逸らす。
「……なるほど、ガープにはそこまで信用されているわけではないと」
【酷いことをする】
見てはいないが、琉璃さんと心眼の言葉からレイには生身では霊力や神通力を使えないように封印が施されている様子だった。
「納得していただけたようで何よりです、それで大人しくしていれば私の身の安全は保証されるのですか?」
「そうね……貴女が大人しく、私達に従って「琉璃さん」……何?」
鋭い光をその目に宿す琉璃さんは少し怖いと思ったが、それでもこれだけは言わないといけないと思った。
「レイに命令に従えとか言うのは止めて欲しいんです」
「……横島君、それが無理だと判って言ってるのかしら?」
それは勿論俺だって判っている。だけど、氷室神社での会話、そして崖の上での取り乱しようを思い出したらそう言わずにはいられなかったのだ。
「彼女は自分自身を捜していると思うんです、だからその……強制するのは止めて欲しいんです」
思いっきり溜め息を吐かれる、敵の陣営の中枢にいる人物に何を甘い事を言っているんだと思われているのは間違いない、だけど……レイは話せば判ると俺はそう信じたかった。
「……自分は自分になりたいって言ってたよな」
「そうですね、私は私です。誰でもない私なんです」
無感情、無表情のレイが鬼気迫る表情になった……それだけ自分のあり方を、レイと言う個人なのだと訴えているのだ。
「それだったら、命令に従うだけじゃ俺は駄目だと思う」
「……ではどうすればいいのですか?どうすれば私は私になれますか?」
光の無い紅い目に射抜かれる、何の明るさもないその空虚な瞳に恐怖を感じながらも俺は言葉を続ける。
「そんなのは誰だって判らない、でも大事なことは何なのか俺は知ってる」
「……なんですか?その大事な事とは?」
姿は俺と同い年くらいだ、だけど、今のレイは俺よりも遥かに幼い少女のように思えた。
「大事な事は自分の心で決めるんだ、誰に命令されるんじゃない……自分で、自分の心で決めるんだ」
ネロちゃんからの受け売りだが、俺は本当にその通りだと思う。俺の言葉を聞いたレイは、一瞬目を見開き、繰り返し自分の心で決めると呟いていた。
「結構良い事言うのね、ま、自発的に協力してくれるならそれに越したことはないのは確かだし」
「いやぁ、受け売りです。俺にそう言ってくれた人がいて、俺もその通りだと思ったんですよ」
琉璃さんとそんな話をしていると、洞窟の中にまで響く大きな振動が突如俺達を襲った。
「きゃっ!?」
「だっと!?だ、大丈夫です……!?!?!?」
突然の衝撃に倒れてきた琉璃さんを咄嗟に両手で受け止めようとするが、俺も本調子ではないからか支えきれず。琉璃さんに押しつぶされるようにして、洞窟の中に倒れこんだ。その時顔に押し付けられた琉璃さんの胸の感触に俺は完全にパニックになってしまった。
「し、心眼どうなってるの!?」
【言わなくても判ってるだろう……敵だ。しかも近い】
心眼と話をする琉璃さんだけど、琉璃さんが動く度に胸が押し付けられる。その柔らかい感触と甘い香りは紛れも無く、極楽と言えたんだけど……余りに強く押し付けられ、俺は息が出来ず目の前が暗くなるのを感じた。
【琉璃すまないが、体を上げてくれ。横島が、お前の胸で窒息する」
「え?あ!きゃあ!ご、ごめんね!?だ、大丈夫?」
自分の態勢に気づいた琉璃さんが慌てて立ち上がった、ほんの少し、ほんの少しだけ惜しかったと思いながら大丈夫ですと返事を返して立ち上がる。
「やべえ……あんなの相手に戦えないぞ」
「そうなるわね、レイもお構いなしで潰しに来た見たいね」
地響きを立てて近づいてくる巨人とその周りを飛び交う、昆虫や翼を持つ木の兵士。その姿に俺と琉璃さんが絶望感で一杯になる、俺は負傷しているし、琉璃さんは巫女で戦闘者ではない……ここで死ぬのかと俺が思ったその時。
【大丈夫だ、救援が来たぞ】
心眼の声に顔を上げると、うりぼーを先頭にして走ってくるタマモとシロ、そしてその後ろにいる美神さん達を見て助かるかもしれないと言う希望が胸の中に広がる。
「レイ、一緒に来てくれるよな?」
「……はい、私は死にたくありませんから」
手を伸ばすと俺の手を握り返したレイを立ち上がらせる、琉璃さんは結界で封印したままのファントムコールダーを脇に抱える。
「美神さん達と合流して、シズクの転移で逃げましょう」
戦うことは不可能、それならばシズクの転移でこの場から逃げる。俺と琉璃さんはそれだけを考え、レイと共に洞窟を飛び出すのだった……。
~小竜姫視点~
何とか蘆屋が召喚した異形の兵士を倒した直後に地響きと共に現れた土くれの巨人、それは氷室神社に現れた時よりも小柄だった。だが戦うと考えれば、その脅威度は依然として高いままだ。
(横島さんと琉璃さんの回収後、即時離脱しかありませんね)
巨人だけならば私だけでもギリギリ対応出来るかもしれない。だが、土で出来ていると言う性質上倒しても復活する可能性が高い……昆虫や木の兵士も翼を持ち恐ろしい数が進んできている事と疲弊具合を考えれば、ここで戦うのは得策ではない。横島さん達を回収したら、即時撤退するしかないだろう。
「美神さん!小竜姫様ッ!!」
地響きに気付いて隠れていた横島さんと琉璃さんが姿を現した、無事でいてくれたことは喜ばしい事だ。だけど、何故か2人の側にはレイの姿もあった。
「横島なんで、その女も一緒な訳?」
「いや、色々あって……な。とりあえずファントムコールダーは取り上げてるから変身は出来ない」
状況を簡単に説明してくれた横島さんですが、その顔色は決して良くは無い。土気色の一歩手前と言う様子だ。
「シズク、横島君をお願い。死ぬ一歩手前まで衰弱してたから」
死ぬ一歩手前と聞いて、タマモさん達の顔が険しい物になる。勿論私もだ、変身の反動だけではない……なにか別の要素があったのは明らかだが、死ぬ一歩手前まで衰弱していたと聞いてやはり戦闘は無理だと判断する。
「ぷぎいッ!」
「……悪い、うりぼー」
巨大化したうりぼーの跨る横島さん、その姿を見れば張り詰めていた緊張の糸が切れたと察するのは簡単な事だった。琉璃さんは決して戦闘が得意な訳ではない、最悪の場合を想定して気を張り続けていたのだろう。
【美神、それに小竜姫。このまま戦うには明らかに不利じゃな……どうする?ワシが戦闘不能になるがデカイのぶちかますか?】
宝具を使うか?と信長が尋ねてくる。無論倒すためではない、撤退する隙を作り出す為の物ではあると言う事は判っている。ちらりとシズクさんを見ると、首を小さく振る。
「すいませんが、それはもう少し後でお願いします」
【心得た】
宝具であの巨人と昆虫を吹き飛ばしたとしても、撤退するする術が無い。超加速では運べて1人、シズクさんの転移が頼りでしたが……それが出来ないとなると下手な大技で消耗するわけには行かない。
(ビュレトさんとブリュンヒルデさん)
東京にはまだ神魔がいるが、自由に動ける戦力はあの2人だけだ。私達が無事にこの場所から離脱する方法は1つ。ブリュンヒルデさんのルーン魔術でビュレトさんか、くえすさんの魔力をブーストして転移で逃げる……これしかない。
「来るわよッ!」
「チッ!横島君とうりぼー、それと琉璃を中心にして卍ッ!シズクと牛若丸はレイの監視をッ!」
動く事の出来ない横島さんを中心にして、前後左右に配置する。……今私達が出来る陣形ではこれが一番優れているだろう。
「私が先陣を切ります、援護をよろしくお願いします」
美神さんに声を掛け、空中から急降下してきた昆虫を切り捨て、返す刀で地面から生えるように現れた木人を胴体から両断する。
【ちえいッ!!!】
【ノーブーッ!!】
銃声が2発響く、信長とチビノブの射撃が的確に相手の頭部を打ち抜き、その勢いを弱らせる。
「てかげんなしで行くからねッ!狐火ッ!!!」
そこをタマモさんの炎が放たれ木人と昆虫を纏めて焼き払う。木人と昆虫相手では私達も引けを取らない、だがそれはあの巨人が動いていないからこその有利性だ。
(早く気付いてください)
ビュレトさん達もこっちに向かっているのならあの巨人を見れば、私達がここに居る事は判るはず……早く気付いて合流してくれるかどうかが私達の命運を左右する。
「チッ!数が多いわねッ!」
「みぎーッ!!!」
美神さんの神通棍が振るわれ、木人を吹き飛ばす。それは敵を倒すには火力が足りないが、即座に放たれたチビの雷で炭化し木人が森の中に倒れる。
「せいッ!!美神殿!このままでは不味いでござるよッ!」
【完全な消耗戦ですからねッ!】
シロさんと牛若丸が横島さんを護りながら刀を振るう、しかしその通りだ。完全な消耗戦であり、撤退はビュレトさん達が合流してくれる事を祈るしかない……木人と切り結びながら必死にこの場を切り抜ける方法を考える……だがそれは、悪手だった事に気付いたのは全てが手遅れになった時だった。
『キキィッ!!!』
突如空中から襲ってきた機械で出来た蝙蝠、その蝙蝠の口から吐き出された衝撃波が結界を砕く。
「しまッ!!」
「……どうも、これは返して貰います」
結界の中に封じられていた篭手を蝙蝠の足が掴むと同時に、レイも地面を蹴って牛若丸とシズクさんの警戒をすり抜けて一気に離脱する。
「ファントムコールダーは返して貰いました。ここで貴方達を倒して、横島を連れ帰るというのも吝かではないのですが……」
篭手を再び身につけたレイは左手に眼魂を握りながら、私達を一瞥し……眼魂を懐に戻し、背を向けた。
「大事な事は心で決めろと横島が言いました、そして借りは返す物と言うのも私は知っています。なので助けられた借りはここで見逃すという事で手を打って貰いましょう……ではまた何れ、ここで死なないでくださいね」
だがレイは戦う事をしなかった、背を向けて歩き去る事を選んだのだ。その信じられない光景に、思わず一瞬動きが止まった。ガープの手下なのに、戦う事を自らの意思で拒絶したのだ。
「!!!!!」
風を裂く音、そして地響きのような音を立てて巨人の腕が振り上げられる。
「シズクさん!」
「……やるだけやってみるッ!」
この中であの巨人の攻撃を防げる可能性があるのはシズクさんの氷の壁以外ありえない。だが質量の差がありすぎる。
「ノッブ!宝具をお願いしますッ!!」
【判ってるわッ!!!】
少しでも攻撃を加えて相手の質量を削ぐしかない、そう判断して私が腰を深く落とした時……それは現れた。
クラックアップフィニッシュッ!!!
「!?!?」
巨人の腕を食い千切るばかりの勢いで紫の流星が巨人へと食らいついた、そしてそのまま身体を回転させ巨人の腕を肩から捻り切る。
セルバーストッ!
「------ッ!!!!」
巨人の声にならない叫びが山の中に響き渡り、紅い閃光が空を貫いた。胸にキャノン砲を持った、シルバーの人型が胸から放った一撃が巨人の上半身と下半身を分断し、山のような巨人の胴体が私達目掛けて落ちてくる……だがそれすらも私達には届かなかった。
メロンスカッシュッ!!
「……シッ!!!」
戦国武者の鎧兜に似たアーマーを身に纏ったライダーが手にしている剣を振るい、その切っ先から飛び出した刃が巨人を両断する……
「仮面……ライダー」
突如この戦いに乱入したのは紫、灰色、そして白の仮面ライダーの姿だった。砕かれた巨人の残骸が土となって降り注ぐ中、3人は縦横無尽に戦場を駆ける。
「「「……」」」
3人はこちらに視線を向ける事無く走り出し、木人や昆虫をその拳で、手と一体化しているドリルで、手に握った盾と剣で倒していく……その姿を見ていると、目の前が急にゆがみ私達は氷室神社の庭に立っていた。
「小竜姫!良かった、間に合いましたねッ!」
「ぎ、ギリギリでしたわね……」
くえすさんとブリュンヒルデさんの声……転移によって助けられたと言う事に気づき、私達はその場に尻餅を突いた。助かった事は間違いない……だがそれ以上の謎が生まれた。私達を助けた3人の謎のライダーの存在だ……だがそれを追及するよりも先にやるべき事がある。
「ブリュンヒルデさん!横島さんが重症なんです!早く治療をッ!」
さっきまでは意識を保っていたが、今は完全に意識を失い脱力している横島さんの治療……それを何よりも優先するべきだと思い、私は声を張り上げるのだった。
~西条視点~
薄暗い部屋にキーボードを叩く音だけが響き続ける……美神達が氷室神社で襲撃されているのと同様、東京もまた断続的に昆虫、木人による襲撃を受けていたのだ。
「ビュレトとブリュンヒルデが抜け……神魔は、メドーサとダンタリアン、ゴモリーの3人か」
メドーサは積極的に協力してくれてるが、ダンタリアンは現在消息不明、ゴモリーは柩を護ると言う目的があるため、柩が前線に出れば協力してくれる。
「アルテミスの力を借りれれば、もう少し負担を減らす事も出来るのだが……」
横島君が通っている学校の机妖怪の愛子君、彼女と共にいるアルテミスはあくまで自衛の為にしか戦ってくれない。
「ナイチンゲール婦長、三蔵法師様……それに沖田君への負担が余りにも大きい」
白竜寺の雪之丞、陰念、クシナの3人も奮闘してくれているが、余りにも敵の襲撃の範囲の幅が広すぎる。しかも1度出現すると、断続的に出現し続けるので、その間は戦いっぱなしになる。
「もしもし?ああ、了解。彼らには余り無理をしないように伝えて欲しい、それと冥子さんにも同じ様に伝えて欲しい」
今部下の報告で僕は決断せざるを得なかった、雪之丞君と陰念君が霊力枯渇でダウンした。最も激しい前線で戦っていたからそれは無理もないが、魔装術、そして横島君と同じ眼魂を使う事でこの事は想定出来ていた。
「やはり僕は指揮官の器じゃないな」
戦力図や人員配置ではない、仮に指揮官としても前線で自らも戦いながら指揮を出す方が性に合っている。今こうしていても、前線に出たいと思っているのだから……。
「すまないが、唐巣神父、冥華さん、それとドクターカオスとブラドー伯爵に連絡を取ってくれ」
僕の決断は決まっている、だが、僕と同じく東京を死守する為に戦っている皆にも事後通達ではなく、事前通達にしたいと思ったから部下にそう頼む。机の上の1枚の書類……陰陽寮からの協力要請だ。正直、陰陽寮に貸しを作るのは怖い、だが今東京にいる戦力は相当消耗しているし、疲労も蓄積している。オカルトGメンもGS協会もボロボロで、六道女学院の講師や、事務職に就職した卒業生まで借り出している。これ以上負傷者を出すわけには行かない……神代会長の変わりに東京を預かっている者として、大局を見なければならない。
「……反対されるか否か、いや……状況は皆判っている筈」
全員が理解しているはずだ、このままではそう遠くない内に東京は陥落する。戦える霊能者に対して、敵の数と質が違いすぎるのだ。それは特化戦力として令子ちゃんや、横島君の能力ばかりが伸びていた事が大きく関係している。
「100の訓練よりも1の実戦……思い知らされたな」
僕もその言葉の意味は十分に理解していたつもりだが、まさしく理解していたつもりだったのだ。横島君は基本的な霊能の知識が余りにも足りていないが、それを補って余りある戦闘センスを持っている。雪之丞君やピート君が悪いというつもりは無い、だが知識がある分。どうしても攻めてに欠いているのだ……それは本来ならば、堅実で生存率を重視していると褒めるべき点だ。だが、それは多少無理をすれば届くという場面で踏みとどまるという事に繋がっている。
【いやあ~随分と大きい手を打つねえ】
私驚いたよ~と笑いながら教授が部屋の中に入ってくる。温和な笑みを浮かべているが、その目は僕を品定めするような目を向けている。
「僕は貴方の御眼鏡に叶ったかな?」
【ん~悪辣さがまだ足りないねえ、人の上に立つならば……己が動く事などあってはならないよ】
犯罪界のナポレオンと呼ばれた男の冷徹な視線が僕を射抜いた、いつもふらふらとしている好々爺としての雰囲気は何処にも無い。
【まぁその甘さは嫌いじゃないけど……ね、オカルトGメンが使えないなら、使える所から引っ張ってくるしかない】
「……公務員だから、安定していると思って入社する人間が多すぎるんですよ」
GS免許の国家資格と公務員だから給料が安定している……そんな安易な考えで入ってくる人間が多すぎる。僕がオカルトGメンに入った時はもっと試験も厳しかったのに、今は随分と簡単になったと思う。
【まぁ良いさ、陰陽寮を連れて来る事を選択した事は間違いじゃないと思うよ】
「いえ、陰陽寮は呼んでいません」
ほう?っと呟き、教授の目の色が変わった。正直、今の陰陽寮とオカルトGメンの質は正直同じレベルだ。いや、むしろ平安時代の陰陽術を失伝している分陰陽寮の方が酷いと言える。
「僕が助けを求めたのは躑躅院本人です」
【なーる、金ではなく、彼……いや彼女かな?個人的に求める物を対価にするわけだ】
「……恨まれるの覚悟の上ですけどね」
躑躅院が求めるのは横島君との話し合いだろう……稀有な陰陽術の使い手だ、横島君の術を知りたいと思うのは当然の事。
【殴り倒されない事を祈るよ】
「はは……本当ですね」
軽く笑う教授だが、その目は真面目だ。そしてその真面目な顔のまま……。
【いや、マジで気をつけなよ?くえすは呪うよ?容赦なく呪うよ?】
……うん、それは判ってる。判ってるから、そんなにマジな顔をしないで欲しいなあ。令子ちゃんとかが帰って来てから、説得する事を考えるだけで胃痛がするんだから……今からそんな不安になる事を言わないで欲しい。
「西条さん、皆さんが到着されました」
「そうか、ありがとう」
考え事をしている時間は終わりだ、ここからは自分の考えを僕よりも遥かに経験のあるGSを相手に認めさせなければならない。コーヒーを口に含み、大きく深呼吸をして僕は唐巣神父達が部屋に入ってくるのを待つのだった……。
【死刑宣告を待つ気分かね?】
「……ちょっと黙っててくれますか?」
ニヤニヤ笑う教授を睨みつけ、僕は説得する内容を考えるのに頭を悩ませるのだった……。
リポート28 切り開け、己の未来 その10へ続く
今回はここで話を切らせて貰おうと思います、次回は少しのほほんとした感じで、琉璃と横島の反応を見てなんかあったと察する蛍とかくえすを書いて行きたいですね。リポート28はあと5~8話続けていこうと思います、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い