GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
どうも混沌の魔法使いです。今回は東京での作戦会議から始まって、氷室神社での戦闘開始までを書いていこうと思います。後もう少しでセカンドも完結、話を大きく盛り上げていこうと思います!それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
リポート28 切り開け、己の未来 その11
~ブラドー視点~
東京防衛線の最前線基地であるGS協会。昨日聞いた、陰陽寮当主躑躅院の力を借りると決断しましたと我達に告げた西条。彼は反対される事を懸念していたようだが、我達の中で反対する者はいなかった。理由は単純だ、このままだと東京は攻め落とされる。それが判っているからこそ、反対意見など出る訳が無かった。
「思ったより~早かったのね~躑躅院~?」
「日本の危機ですからね。救援要請を受けて直ぐ京都を出発しましたよ」
穏やかに笑う中性的な容姿の躑躅院。こうして顔を見合わせるのは初めてだが、こうして向かうあうと奇妙な違和感を感じる。
(……2人……いや、3人……か?)
魔に属する者だから判る、「躑躅院」の中には複数の人格が存在している。この会議に参加しているゴモリーも目を細めている事から、あやつも感じ取っているだろう。
(意図的に作られた多重人格者……か?)
多重人格と言うのは見た事があるが、それらは元の人格が剥離し生まれた人格だ。だが躑躅院には魂が剥離した痕跡がない、これは意図的に必要とされる人格を植え付けられている可能性があるな。
「ブラドー伯爵、私に何か?」
「いや、こうして協力し合える事が幸運だと思っているだけだ」
気配を殺していたが、我の視線に気付いた……か、どうもきな臭いな。良い噂が少ない陰陽寮だ、少しばかり調べておいた方が良いかも知れん。
「では時間がないので早速本題に入ります。今日本全土を襲っている地震ですが、中国から渡ってきた神霊の身体が奪われ、ガープに利用されている事が原因だと判明しています」
横島達か、相当緻密な偵察を繰り返したのだろうな……敵の性質が細やかに記録されている。我達の方で記録した戦闘データと大差はないが、戦っている回数が段違いなのだろう。我達の方で把握出来ていない敵の能力も記録されていた。
「東京に出現するものはまだ弱いようですね」
【そうみたいね……数が多いのは再生が間に合わないって事ね】
山の中での戦闘では倒しても、即座に回復し学習しなおして出現するらしい。東京に出る個体はそんな能力は確認されていないが、山の中か否かというのが敵の再生能力に直結しているのだろう。
「神霊とも合流済みで、本体を捨てても良いと本人も認めているので核を破壊する方法で考えたいと思います」
「植物系と言う事はやはり細菌系が早いと思うワケ」
時間が無いと言うことが判っているので、エミが挙手して植物を枯れさせる方法で行こうと提案する。
「それは良いアイデアだと思うんだがね、回りの被害を考えるべきだ」
「うむ、植物を枯れさせるだけならば楽だが……地面に打ち込めば、周りを汚染するぞ」
優太郎とカオスがエミの提案に反対意見を出す。だが、敵も馬鹿ではないので、直接本体で出てくることは無い。
「……精霊石などで霊力を遮断出来れば楽なんだけど……」
「相手が神様じゃねえ……まぁ私達にも効果は殆どないんだけど」
ゴモリーの言う通り、元々天使のソロモンには精霊石は殆ど効果が無い。そして神霊の操られている肉体とやらも、知識がないとしても神の端くれ精霊石の効果は余り望めない。
「ふむ、それでしたら……地表に呪いを刻んでしまうのはどうでしょうか?」
「話を聞いていたかな?」
呪いを打ち込むと提案した躑躅院に西条が嫌味を言うが、躑躅院はにこやかに笑う。
「ここには幸いサンプルが大量にあります。本格的に大地を汚染する呪いは必要ない、敵の嫌がる呪いを作るのです」
ほう……中々頭が回る、それとも陰陽師と言う人を呪う術者の知識からかと正直感心した。
「なるほど、敵が隠れていたくなくなるような空気を作る訳か」
「はい、敵を炙り出して、そこを狙い打つと言うのはどうですか?」
地中に隠れて、まともに動いてこない相手を探り出すにはその方法が一番確実かもしれない、問題は……。
「どれくらいで準備できそう~?」
「ん~細菌をベースにして、私の方は半日もあれば何とかなるワケ」
「私の方は1から分析なのでなんとも、ブラドー伯爵とドクターカオスが協力してくれれば、目処も立つかもしれませんが……」
ガープに操られている神霊の肉体が本格的に動き出す前に、我達の準備が出来るのかどうかという問題が大きく立ち塞がるのだった……。
~ガープ視点~
机に指を何度も打ち付ける。計算外の事が起きている……しかも修正不可能なレベルでだ。
「お前は何者だ、マントの男」
横島達の場所を確認し、送り出した神霊。それが倒されたのは計算の内だ……あれはあくまで作られた複製であり、御神体が無ければ身体の統合を十分に維持出来ない。寧ろ破壊される前提の人形と言っても良いだろう、だから破壊される事は想定内だ。
「御神体の事は仕方あるまい」
レイ自身も川に落ちて疲弊している間に横島達に捕虜にされていたと報告を受けている。狂神石のストックも使い切っていたようだし、そうなればレイは普通の少女と大差ない。2対1で取り押さえられ、御神体を取り上げられたとしても不思議は無い。
「随分と苛立っているようだな、侵攻に不満か?」
「……侵攻事態に不満は無い。だが、私の計算通りじゃないという事が腹立たしい」
天界と魔界の侵攻は想定よりも進んでいるし、量産型レイも十分に成果を挙げてくれている。人間界の侵攻はさほど重要視していないが、日本が滅ぶかもしれないという事で仏教系の神魔の動きを束縛する事を考えれば、こちらも十分な成果を挙げている。
「何が不満だ?我の戦略か?それとも暴走したアスラか?」
アスラは別に構わない、元々神魔の強い恨みを持つ。戦いになれば命令に従う等と思っていないのだから……私は指を動かして空中にモニターを投影する。
「これを見てくれ」
私を不快にさせている現況をアスモデウスにも見せる事にする、アスモデウスの意見も聞きたいと思っていたからな。
「……これは……横島と同じ……か?」
「ああ、恐らく似て非なる者……ノーフェイスを運用した時に現れた別の時空の横島忠夫と同じだと私は推測している」
紫、白、灰色の仮面ライダー……仮面ライダーと言う括りではあるが、その性質は全く異なっている。
「問題はこの後だ」
ライダー達が人形達を殲滅した後に現れたフード付きのコート?いや、ローブか?全身を覆い隠す服に身を包んだ男が手を翳すと3人はカードになり、男の手の中に戻っていく。
『いずれお前達に会いに行くぞ、ガープ』
そしてこの男は私の使い魔に堂々とそう告げ、空気の中に溶ける様に消えて行ったのだ。
「……何者だ、この男は」
「判らない、少なくとも使い魔で見ている時には私はこの男を認識していない」
「どういうことだ?」
「見ていた筈なのに、私はこの男を認識出来なかった。映像記録を見返して、やっと気付いたんだ」
私の認識すら完全に欺いた男がこうして映像記録に己の姿を残した……私はこれを挑発と受け取った。
「厄介な相手そうだな」
「ああ、相手の出方が……何事だ!?」
突如アジトに鳴り響いた警報。馬鹿な、この場所を神魔に特定されたのか!?慌てて外部モニターに接続する。
「……あいつは!?」
魔界の大地に立つフード姿の男……それは紛れも無く私を挑発していた男の姿だった。
(馬鹿な……量産型レブナントが全滅!?)
主戦力として生産しているはずの量産型レブナントが全て全滅している、警報が鳴り響いて殆ど一瞬でだ。……この男……何者だ。
「態々お越し頂けるとは光栄だ。それでお前は何者だ?」
映像で声を掛けると男はふっと小さく笑った。その姿にますます苛立ちが募る、だが男はそんな私達を見てなお嘲笑うように言葉を続ける意。
『魔神が壊すというのなら、それを守る。神が守るというのなら、それを壊す。それでこそ、中立にして公平というものでしょう?だから……私はお前達を壊しに来た』
「ほう、私達を壊すか……大きく出たな、人間如きが」
『そうやって驕るのがお前達の悪いところだ。だからこそ、お前達は弱い人間に足元を掬われる。覚悟するがいい、我が刃はお前達に届くぞ』
男が手にしている銃がモニターを破壊する。なるほど、宣戦布告に訪れたという事か……。
「潰すぞ、アスモデウス」
「ああ、ここまで虚仮にされて黙ってはいられんよなあ」
まだ男が外にいる、そう思い全軍出撃したのだが……そこには本を開いている男の姿があった。
「ほう、ソロモンが2人も相手をしてくれるとはな」
「人間如きが私達を挑発した事を悔いるがいい」
「悪いが、私は純然たる事実を告げただけだ。さて……と今お前達に好きに動かれると、私の計画が狂うんでな。ここで足止めをさせて貰う」
男は読んでいた本を閉じ、コートの内側から何かを取り出す。なんだ……眼魂と……何かの機械が男の手に握られていた事に気づき、魔法を放つがそれは余りにも遅かった。
【ヴィートゥスッ!!】
男の腰に巻かれていたベルトに眼魂を嵌めこまれた機械が装着される……この男も仮面ライダーかッ!?
「変身」
【逆行! パラドクスタイム! スゴイ・ネガイ・オモイ 仮面ライダーフォーティス、フォーティス、フォーティスッ!!】
柱時計が現れ、それが時間を刻みながら男の姿を覆い隠していく……そして柱時計が消えた時。ローブを身に纏った仮面ライダーが私とアスモデウスの前に立ち塞がっていた。
「貴様……何者だ」
アスモデウスの問いかけに謎の男が変身したライダーはマントを翻し、道化のような大袈裟な身振りを取る。
「数多の世界を巡り、過去と未来を記録する。我は遠い過去と遠い未来より来たりし者にして、未来から過去へと到りし存在(もの)。我が名は仮面ライダーヴィートゥス。真なる歴史の簒奪者であるッ!」
慇懃無礼と言う様子で名乗りを上げるヴィートゥス。だがその姿を見た時、私の怒りは霧散していた。この男は……普通じゃない、アスモデウスもそれを感じ取っていたからか、人間形態から燃え盛る炎を纏った紅い悪魔の姿へと変貌を遂げる。
「そこまでの大口を叩いた事を後悔するぞ!人間ッ!」
この男を自由にさせてはいけない、私は本能的にそれを感じ取りアスモデウスと同じく魔神形態となり、ヴィートゥスへと向かって行くのだった……。
~美神視点~
蛍ちゃんとくえすと琉璃とおキヌちゃんの見ているだけでも正気を失いそうな暗黒空間は今はそんな事をしている場合ではない、と言うシズの冷静な突っ込みの前に霧散した。だがこれは後日また騒動になりそうな問題だったが……とりあえず、今は何も言わなかった。
「そう、判ったわ」
『すまないね、東京の方の人員には全員了承を得ているが……必要な事だった』
躑躅院に協力要請、前回の隕石落としの時もそうだったが……例え危険だと判っていても今は手を借りなければならない状況だ。
「向こうの要求は?」
『前回と大差ないよ。横島君とゆっくり話をする時間と、陰陽寮への見学を希望している』
「よっぽど引き抜きたいのね」
横島君は現在の陰陽師の中ではもっとも優れた能力を持っている。陰陽師の技術が廃れかけている陰陽寮には、喉から手が出るほどに欲しい人材だろう。まぁ、私も琉璃も横島君を陰陽寮に渡すつもりはないし、横島君自身も陰陽寮に行く事を選択することは無いと思う。
『こちら側の作戦としては、東京に出現している土人形や昆虫を分析して相手を炙り出す準備と、エミ君の黒魔術で相手を弱体化させるつもりで動いている』
「判ったわ、こっちの方の報告だけど……本体は龍になるかもしれないって」
受話器越しで西条さんが息のを呑んだのが判る。元々シズは球根のような、植物状の神だった、だが、日本と言う土地に適合する為に身体を再構築し、極上の霊脈を利用しての身体を作り上げているそうだ。最初の目撃された蠍のような下半身を持つ巨人から更に変化する可能性があるかも知れないらしい。
『小竜姫様達が関係しているのか?』
「……その可能性はゼロじゃないって」
竜神を見た事により、より強い存在を知ってしまった。だから更に身体を作り変える可能性があるとシズは言っていた……正直巨人と言うだけでもう厄介なのに、それが更にパワーアップするとか本当に冗談じゃない。
「あくまで可能性の段階だけど、こっちは龍と戦う事も想定して準備してる、姿形は龍でも、性質的に変わりはないらしいし」
あくまで土着の神であり、大地から切り離す事が出来ないというのが攻略のヒントになるだろう。くえすの呪いにエミの黒魔術が加われば、相当弱体化させれるという希望はある。
『……どこまで弱体化させれるかが肝だな』
「そうね、小竜姫様達も動いてくれてるけど……多分どれだけ頑張っても下位クラスの神魔と同等らしいわ」
私は今西条さんと連絡を取る為に会議を抜け出しているけど、大広間ではまだ対策会議が行われているだろう。
『もう少し増員を送ろうか?』
「ううん、これ以上は良いわ。と言うよりも、もう無理でしょ?」
私の言葉に西条さんが苦笑するのが判る、私達が氷室神社に来てからそろそろ10日。私達のほうも苦しい戦いをしているが、東京で主戦力となっていたビュレトとブリュンヒルデが抜けてしまったのだ。間違いなく、戦力的に言えば東京の方が苦しい状況になっているだろう。
『……出来るだけ早く、こちらも準備を終えてシンダラに道具を送らせる』
「うん、ありがとう。こっちももう少し偵察と準備を整えるからあんまり焦らなくても良いわよ」
ここで御神体を取り戻したのが大きなアドバンテージになっていると思う、霊脈の支配権はおキヌちゃんとシズがいるので元々こちら側にあった。それでもあの巨体を操る事が出来ていたが、支配権の差でおキヌちゃん達の前ではまともに活動できず御神体を求めてた。だけど、それも手にした事で流れは確実にこちらに傾いてきていると思う。
「おかえりなさい、美神さん」
古い和綴じの本を大量に抱えている横島君が私に気付いておかえりなさいと声を掛けてくる。今私達は相手の偵察と平行してもう1つの作業を行っている……それはおキヌちゃんがかつて暮らしていた集落で祭られていた神についての調査だ。
「どう?何か手掛かりはあった?」
「んーすんません、俺こういうの読めないんでなんとも……ただもう少し古い年代をって言われたので、色々探してますけど……」
古い文字を読むには横島君では知識が足りないから、こうして運搬係を務めているって訳ね。
(それにしても、凄いバランスね)
横島君の頭にしがみついているうりぼー、蹄で身体を全然固定出来ないはずなのに横島君の頭の上から落ちる気配がない。
「みむう?みみー?」
「ぷぎゃうッ!!!!」
「みーむう……」
チビが多分降りるように言っているんだけど……うりぼーは唸り声で返事を返す。横島君がいなくて、随分とうろうろしていたけど……横島君から離れると居なくなってしまうとでも思っているような素振りだ。
【ノッノー!】
「よし、これで頼まれた本は揃ったな。また運びに行くか」
チビノブも頭の上に本を載せて歩いてきて、2人で歩いていこうとするので、逃げられる前に注意をしておくことにする。
「今は仕方ないけど、そのうち横島君も読めるようになりなさいよ?」
「……頑張ります」
GSとして独立するならこういう古文書を読める知識も必要になるんだからねと声を掛け、山積みの本の周りに足を向ける。
【これは当時の食糧事情じゃ、えーっとこれは日照りの記録】
【こっちはあれですね、昔の伝染病とかので……んーっと】
「……これは近いな、小竜姫。この種類の本を探してくれ」
「判りました、すいませーん、横島さん、今度はこっちにお願いします」
ノッブと牛若丸、そして小竜姫様とシズクが本を凄まじい勢いで捲り、違う違うと投げ捨てている。氷室神社に保管されている文献だから、もう少し大事にして欲しいんだけどと思いながら本を片付けている蛍ちゃんと琉璃にどういうことか尋ねる。
「私が読める範囲じゃ、手掛かりが無くて3人に頼んでます」
蛍ちゃんと琉璃が読めないとなると江戸時代とかじゃないわね、もう少し昔の記録にまで手を伸ばしているのかもしれない。
「琉璃も無理なの?」
「読めない事はないんですけどね……流石に平安時代初期とかの文献は少し……」
平安時代後期なら私でも読めるんだけど……、流石にその年代ともなると読むのは些か厳しいわね。
「……む」
「これは些か不味いですかね」
【やべえってもんじゃねえだろ】
【……知らない方が幸せな事ってあるんですね】
……急に凄い不吉な話を始めた小竜姫様達。おキヌちゃんの集落が何を祭っていたのか?それを尋ねると小竜姫様は引き攣った顔で口を開いた。
「だいだらぼっちです」
「「「え?」」」
私と蛍ちゃんと琉璃の驚愕の声が重なった。そして小竜姫様はそんな私達を見て、小さく溜め息を吐いた後。
「もう一度言います。だいだらぼっちです。本体ではなく、分霊ですけど……間違いないと思います」
国作りをしたと言う巨人、神や鬼とも称される巨人……日本のあちこちに伝承のある有名すぎる妖怪であり、神。それがかつてこの山で信奉され、暴走したシズの肉体に食われたもう1柱と判明し、私達は心の底から深く溜め息を吐いたのだった。
(これ、くえすとエミの呪いで何とかなるかしら……)
分霊とは言え、だいだらぼっち。その知名度と強力さは折り紙つきだ……しかも龍の性質まで持ち始めるかもしれないとなると、西条さんには焦らなくて良いと言ったが、時間的な余裕はそれほど無いのかもしれない。
「文献探しが終わったのなら、横島を借りてもいいですか?」
「え、あーうん。良いわよ」
くえすが横島君を助手にくれと言うので、良いわよと茫然自失と言う感じで私は返事を返すのだった……。
~レイ視点~
横島達が撤退したあと、私は金色の蝙蝠に先導され山の奥に案内された。そこには派手な色彩の着物を纏った優男……確か、蘆屋の姿があった。
「今回は私の手違いでとんでもない事をしてしまい、申し訳ありませんでした」
「手違い?」
何を持って手違いをしているのか判らない、私自身も川に落ちる前があやふやで良く覚えていない。
「コブラの眼魂をお返し願いたい」
「……これ?」
血の様に真紅に輝く眼魂を懐から取り出す、これは単独では使えないと聞いているけど……もしかするとこれが私が意識を飛ばした理由なのかもしれない。
「調整を行いたいので」
「……やだ」
「はい?」
「やだ」
返すのが正しいと思ったのだが、これを返したくないと思い懐に再び隠す。蘆屋が目を丸くしているのが判る、頭を押さえ再び蘆屋が返してくださいと言う。
「……嫌だ」
「何ゆえですかな?それは単独では使えませぬよ?」
「……それでもやだ」
何故かこれを手放してはいけない気がする、だから嫌だと拒絶する。
「判りました、ならば無理に返せとは言いませぬが決して使いにならぬように」
「……判ってる」
私が余りにも拒絶するので、蘆屋も諦めてコブラを返せということは無くなった。変わりに、狂神石の瓶を手渡してくるのだが……。
「……少ない」
「ええ、少々こちら側に問題がありまして」
問題?と私を首を傾げると蘆屋は何とも言えない表情をする。その表情にただ事ではないと私も悟った……馬鹿にするわけでもない、考察を口にする訳でもない、本当に見たことのない表情を蘆屋は浮かべたのだ。
「ガープ様とアスモデウス様が重症、基地から手を引き撤退しております」
「……何があったの?」
「それが……判りませぬ」
「……どういう事?」
「判らないのです、私もその戦いを見ていた筈なのに……思い出せないのです。恐らくそういう能力者に襲撃を受けたとは思うのですが……」
ガープ様達も同じだと冷や汗を流す蘆屋。それは少なくともガープ様達を戦闘不能にするだけではなく、記憶も奪う相手。
「……魔界正規軍ではないのですね」
「ええ、魔界正規軍なら全員取り押さえられているでしょうからね」
少なくとも戦闘不能にして、その場に放置するような真似はしないでしょうと蘆屋は顔を歪めながら口にした。
「そういう事情で狂神石はこれ以上は提供出来ませぬ」
「……でもこれじゃあ、戦えない」
ファントムコールダーを起動するだけの狂神石も無い。これでは、私は戦えないというと蘆屋は札を数枚手渡してくる。
「ガープ様もレイに戦えとは言っておりませぬ。どうせ、横島も戦闘できる状況ではありませぬ。ゆえに、横島の変身無しの戦闘データの記録をお願いします」
渡された札の説明を軽く受けると蘆屋は印を結んで闇の中へと消えていった。戦わなくてもいい、戦闘記録だけを取れという命令に少しだけ安堵している自分に違和感を感じながら、私はその日は眠る事にした……少しでも霊力や神通力を回復させる為にだ。
「……どうなるのかな」
地響きを立てて進む神霊。前は下半身が蠍みたいだったが、今はそれに加えて両肩からドラゴンの顔が姿を見せている。御神体は失ったが、より強力に進化していると言うことだろう……。
(あれ?)
でも見ているとその身体の一部が少しずつ剥がれているように見える。その剥がれた部分は即座に再生しているけど……ちょっと調子が悪そうにも見える。
「……予定より早い?」
夕方から夜くらいの予想だったが、殆ど朝と言っても良い時間だ。予定よりも早く完全体になった訳でもなさそうだし……。
「……何か攻撃を受けたのかもしれない」
ビュレトやブリュンヒルデが合流した事も確認している。御神体が無いので、完全体になる前で出撃しない筈だったのだが……もしかすると私が気付かなかっただけで、先に何らかの攻撃を受けた可能性もある。
「……でもその程度は大きな差にはならない」
何かの攻撃を受けていたとしても、あの巨体だ。それに、殆ど無限再生の手下も多数いる……多少の妨害など何の障害にもならないだろう。
「……安心してください、死にそうになったら回収してあげますから」
氷室神社から出てきた横島達を見て、誰に聞かせるでもなく私はそう呟き、蘆屋から預かっていた札の1枚を引き裂くのだった……
リポート28 切り開け、己の未来 その12へ続く
次回は戦闘メインで話を書いていこうと思います。特に描写も無く、ガープとアスモデウスが行動不能になってますが……後日書く事になるかもしれません。まだ、ヴィートゥスの詳しい能力は不明と言う事で1つ。判明しているのは「記憶操作」+「ジオウ系ライダー」と言うことですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い