GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート28 切り開け、己の未来 その13
~ナナシ視点~
ふむ、あの猪……ついに本来の姿を現したか……、それほどまでに横島を失うのは恐怖であったか……。
「■■■ーーーーッ!!!!」
言葉を発する事は出来ないのではない、恐らくだが古い言語なので言葉として感じられぬのだろうが……いや、凄まじい力だ。
(山その物……まさしく神であるな)
山の中に居る限りうりぼーは無敵であろう。あれはそういう神だ……山の中にいる限りは決して力が尽きる事は無いだろう……問題はその圧倒的な力に飲まれ、自我を完全に失わないかと言う所だろうな。
【ノーヴアアアアアアアッ!!!!!】
……あれは何か判らないな。妖精のような、精霊のような……なんとも言えない生物が雄叫びを上げ、茶釜を地面に叩きつけその上に飛び乗る。
「ユミルよ、横島のつれている者はまっこと不思議よのう」
「全くだ、だがそれは俺達にも言える」
茶釜が高速回転し、龍の首を弾き飛ばすと同時に霊力の壁を作り出し、そしてその中にバイク、UFO、車、そして飛行機のような何かが飛び込んでいった。
高速回転する茶釜の上で腕組し、仁王立ちするチビノブの回りにバイク、飛行機、UFO、車が旋回しながら近づいた。
【ノブウ!】
茶釜が光り輝き、鎧へと変化する茶釜。するとUFOが中心で2分割され変形しながらチビノブの足元へ近づく。
シャッ!!
具足から伸びたコードがチビノブの鎧と合体し、コードが具足の中へと撒き戻り、チビノブの足をジャッキなどで固定していく。
車がスライドし、チビノブの胴体を挟み込み鎧の上半身へと変化し、分割されたバイクがチビノブの両肩に装着される。
そして背部に飛行機が装着され、エンジンがチビノブの手に装着され回転しながらその中から握り拳を出現させる。
最後に飛行機の後部から出現した兜がチビノブの頭部に装着され、巨大化した火縄銃が飛行機の全面に装備される。
今この時大英霊「織田信長」の分身としてではない。
チビノブ自身が戦うと決め、横島を脅かす敵と戦う為の鎧。
ファイティングマスコット……。
その名も精霊王グレートチビノブッ!
【ノーッブウウウウッ!!!】
……霊力の壁が弾き飛ぶと、先ほど中に飛び込んだ4つの機械と合体したいのか勇ましい姿へと変貌した小人が雄叫びを上げる。その姿を見ていると笑いがこみ上げて来る、その姿を笑った訳ではない。
「まこと、面白い男よ」
種族が違うのに、ここまで慕い、そして傷つけられたことに怒るか……それだけ、横島が愛を持って接し、そしてその愛情に応えようとしている……。
【シャアアッ!!】
【ノブウッ!!】
突き出した左腕から放たれた光の壁が龍の口から放たれた種子を全て弾き落とし、掲げられた右腕が高速回転し、小人が突き出すと凄まじい勢いで射出された右腕が龍の首を跡形も無く消し飛ばす。
【ノーブウッ!!】
そして追撃に繰り出された霊波砲が龍の胴体を貫くが、それはあっという間に回復し、それを見て更に横島の傍の小動物達の怒りの気配が強くなる。その姿を見て、ワシは眉を顰めた。
(だがそれは危うい力だ)
怒りは限界以上の力を引き出す、だが怒りゆえにその視野は狭くなりその足を掬われる事になるだろう。
「みっぎゃああああああッ!!!」
チビの怒りの咆哮と天空から降り注ぐ雷、そして赤黒い雷を纏い宙に浮かぶチビの姿を見てそれを確信する。
「ユミル、この場は任せても良いか?」
木人や昆虫が押し寄せて来ているこの状況でユミルを残す事は心苦しい、だがチビ達のフォローに入らなければその怒りの炎はチビ達自身を燃やし尽くすだろう。年上としてそれを諌める必要がある、例え敵を屠る事が出来たとして、自分達が傷つけば横島が悲しむ……そんな事すら判らぬほどに怒りに飲み込まれている。このままでは、そう遠くない内に自滅するのは目に見えていた。
「行け、ナナシ。この場は任された」
「すまぬの」
「ふん、構わん。どうせ俺は誰かと共に戦うと言う事が出来ぬ1人の方が戦いやすい」
ワシと同じサイズの癖に巨大な大剣を振るうユミル、あの男もまたワシと同じ……戦いに敗れ、そして気が付けばあの姿でこの世界に現れていたと言う。
「むんッ!!!!」
振り下ろされた剣……いや、ユミルが言うには「斬艦刀」の柄から霊力の渦が現れ、ユミルの身体を白と赤を基調にした鎧が包み込み。光が消えた時には西洋の鎧に身を包んだ鎧武者がその場に佇んでいた。
「眼前に立ち塞がる敵は全て破壊するッ!!!」
背後の赤いドリルを回転させ、木人達の群れに突っ込んでいくユミル。あの暴れようでは、下手に近づけばワシも巻き込まれかねんな……。
「ではワシも行くか、マスタークロスッ!」
拳から黒い霊力に包まれ、ワシの姿も変わっていく……生身では流石にあの中に飛び込むのは余りに危険、だがこのまま見捨てる訳にも行かぬ。地面を蹴り、背中の翼から霊力を噴出してチビ達の元へと飛びながら思う。
(まっこと、面白い)
死んで目覚めれば異なる世界、そしてそこには追い求めた美しい自然があった……人の営みがあった……。
(ならば、それを護る事こそがワシの使命よッ!)
一度は全てを壊そうとした、だが妖精と言う第二の生を受けた今。ワシがするべきことは壊す事ではなく、護る事。なればこそ、ワシは■■■■ではなく、名も無き妖精「ナナシ」であれば良い、鍛え上げた武術はまだワシの手の中にある……壊す事しか出来ぬこの拳で護る事が出来るのだから……。
~ブリュンヒルデ視点~
圧倒的な神通力の奔流、それは魔に属する私とビュレト様には致命的なまでに相性が悪かった。
「ちっ、判ってたはずなんだがな……」
「わかっていたつもり……だったのでしょうね」
神殺し、英雄殺しの2つ名を持つ神魔嫌いの山神「乙事主」……横島が連れているうりぼーが乙事主の可能性は考慮していた。
「動けますか?」
「今はまだ何とかなる……が、時間が経てばどうなるか判らん」
存在するだけで私達の動きを制限する事が可能とは想像もしていなかった。小竜姫は神に属する者だから、まだ負担は軽微だ。だが乙事主の力が高まれば、そう遠からず動けなくなるだろう。
【むぎいッ!!!】
【へぶろッ!?】
重圧に耐えかねて牛若丸と信長が地面に倒れ……いや、めり込んだ。中級、最上級の神魔ですらこの有様なのだ。英霊では既に活動するのも限界と言うレベルなのだろう……。
【【!!!!!】】
言葉も発する余裕も無いのか目配せをしてくるので頷くと、2人の姿はその場から掻き消える。霊体化をすることを選択したのは明白、そしてその選択も正解だと私は思った。
【■■■ーーーーーッ!!!!】
「ギャオオオオオオオッ!?!?」
手にした無骨な剣で巨人を切り裂き、両肩から伸びている4本の首を切り落とす乙事主。時間が経てば経つほどに、周囲に満ちる力は重くなっていく。
【ノーブウウウウッ!!!】
ゴーレムの中から響くチビノブの怒声、サイズは人間の子供と同じ位なのだが信じられないパワーを発揮している。ドクターカオスの作品と言うのは判りますが、もう少し何とかして欲しいと思ってしまった。
「みぎいいいいいーーーーッ!!!」
赤黒い電気を纏うチビも普段の愛くるしさは何処にも無く、完全に怒りに飲まれているのが明らかだった。
「小竜姫、私とビュレト様は大丈夫ですので、あちらをお願いできますか?」
「……はい、判りました。どうか、無理をしないでください」
まだ動けるうちに小竜姫に美神達の元へ向かうように促す、私達はもう空を飛ぶことすら難しいが……それでもまだ戦える。
「この戦いが終わったら、1度妙神山に顔を出すか」
「そうです……ね。そうしましょうか」
今回の事でも実感したが、このままでは私達すらも足手纏いになる可能性が出てきた。もう、神である、英雄であると言う事は戦闘において何の優位性も無い、むしろデメリットにすらなりかねない……。
「この体たらく、竜神王やオーディンに文句すら言えん」
「あら、お父様に文句など言ってらしたのですか?」
言葉のあやだといいながら剣を構えるビュレト様、私も重くて、手から零れ落ちそうな槍を握り締めて眼前を睨みつける。
「「「ギギィ……ッ!!!」」」
私達同様乙事主の出現で動きが鈍くなってきているが、それでも歩みを止めない木人と昆虫の群れ。神魔として、あんな存在に敗れるわけにはいかない。
(それに……)
横島が小竜姫を慕っている姿を見た、師として尊敬されそして頼るべき人として扱われている姿を見て羨ましいと思ってしまったのだ。
「余計な事を考えてるなよ?」
「失礼な、やる気を上げているんですよ」
恐らく今回もこんなありさまではとても尊敬されるなんて事は無理だろう……それにこんな打算をしているなんて知られれば、それこそ失望されかねないと苦笑する。だけど、そのおかげで身体に入っていた力が抜けたのを感じた……。自然体……敵の眼前であったとしてもリラックスが出来る事……そして目指すべき場所、目的が判った。危機的な状況なのに、笑みを隠す事が出来ない事に気いた。だが、その笑みが危機的状況なのにリラックス出来ていると言う証であり、先ほどまで感じていた緊張感とプレッシャーは綺麗さっぱり消え去っているのだった……。
~美神視点~
今回の作戦立案は私ではなく、くえすとブリュンヒルデだった。平常時ならば横島君の桁違いの霊力を隠す事は難しいが、今の琉璃の霊力が混じった事で、霊力のバランスが崩れている横島君を発見するのは難しいと判断し、くえす、シズク、シズ、そしておキヌちゃんの4人と共にスナイパーライフルでの狙撃役を務めさせた。
(途中まで完全に計算通りだったのにッ!)
横島君は戦えないから姿を隠し、狙撃役を勤めさせるのは正解だった筈だ。それに、小竜姫様やビュレト、それに私達が巨人と率先して戦う事で横島君への注意を逸らし、そしてくえすの呪いとエミの黒魔術と躑躅院の陰陽術、そしてルーン魔術の4種類の呪いは間違いなく巨人の力を削ぎ、そして本体を引きずり出すという私達の作戦は間違いなかった筈だ。
「うっ……」
背後から聞えてきた琉璃の声、その声は疲弊しきっていて限界が近いのが明らかだった。私は悩みながらも、今のこの状況での最善の一手を考えた。
「蛍ちゃん!先に行ってちょうだいッ!シロとタマモも2人についていってッ!」
茂みから顔を出したばかりの2人にそう叫ぶ、私達が撤退を選択したのと同様で、シロとタマモも撤退を選択したのだ。その理由は間違いなく、氷の土台から落ちた横島君を見たのが理由だろう。
「人使いが荒いわねッ!ま、いいけどッ!」
「せんせーのところに戻るんでござるよなッ!?」
やっぱりシロ達も横島君が落ちる光景を見て、引き返していた様だ。蛍ちゃん1人を先行させるのは不安だったけど、シロとタマモも一緒なら大丈夫だろう。
「美神さん……はいッ!」
私に背を向けて走り出す蛍ちゃんを見送り、足がもつれた琉璃に肩を貸す。
「大丈夫?」
「……ギリギリです、本当に……」
小竜姫様達が全力を出せるように結界を作り上げていた琉璃の消耗は凄まじい筈だ。
「……うりぼーが乙事主に変化したから、無理やり結界を上書きされたんです」
結界の上書き……神殺しであり、英雄殺しの乙事主。その範囲は間違いなく神魔と英雄に特化しているのだろう……さっきまで空を飛んでいたビュレトやブリュンヒルデが地面に立っているのは力を制限されて浮かんでいる事が出来なくなっていると言う事ね……。
(本当に乙事主だったなんて)
もしかしたらその眷属程度に考えていたけど……まさかの乙事主本人とは思っても見なかった。しかし、その力を解放したのは横島君がシズの肉体に喰われかけたからだ。
(それだけ横島君を想っていたと言うことかしらね)
勿論私も蛍ちゃんも龍の首が横島君を喰らおうとした時に走り出した、だがそれよりもうりぼーが早かったのだ。
「横島君、大丈夫?」
「う……美神さん、は、はい……何とか」
シズクに背後から抱きかかえられるようにして横島君が返事を返す。その顔は青く、呼吸も速い。傷口が開いたのか、それともうりぼーの結界の効果を受けているのかは判らないが、状況は良くないのは明白だった。
「シズクが言うには状態はあんまり良くないようです」
蛍ちゃんが脈拍を測りながら私に報告をしてくれるけど、それは聞かなくても判っていた。蛍ちゃんと共に先行したシロとタマモが狼と狐の姿で横島君の膝の上にいる、それは自分の霊力を譲渡しているのだろう。つまり、横島君の状態は最悪を通り越して、最低の可能性もある。
「……い、いや、俺は大丈夫」
「横島、ぶん殴りますわよ?」
くえすの言葉に横島君が引き攣った顔をする。どうもくえすやシズクの制止を振り切って動こうとしていたのだろう……。
「小竜姫様、状況はどうなんですか?実際私達に今の所勝ち目はあるんですか?」
準備していた結界は無力化され、そして小竜姫様達は戦えるが凄まじいまでのハンデを背負ってしまっている。この状況で勝ち目があるのかと尋ねる。
「……勝ち目はありますが、問題は乙事主様と相手の核を見つけ出せるかです」
龍の首から新しい肉体が現れた、そしてその前の肉体は砂のように崩壊した。間違いなく、前の肉体には呪いの弾丸は命中していたのだ。
【弾丸が命中した瞬間に気配が変わった】
【間違いなく本体だったんです】
シズとおキヌちゃんが本体だったと必死の形相で告げる、だがそんな顔をしなくても2人の話が真実なのは明らかだ。長い間共同体だったのだからおキヌちゃんがその感覚を見逃すわけが無い、それにシズだって自分の肉体だ。これも間違えるわけが無い……それから導き出される答えは1つ。
「この森の中に居る全てが新しい肉体たりえるってことね?」
「……そうなると思われます」
数は減っているが、昆虫と木人、そして巨人から切り落とした肉片すらも新しい肉体となって再生を促す可能性があるのだ。
「ええい!!良い加減にせんかぁッ!!この馬鹿者共があっ!!!!」
ナナシの一喝に思わず耳を塞いだ、ハムスターサイズなのに森を全て揺らすような声量って本当にとんでもないわね。
「だから止まれといっておるだろうがぁッ!!!石破天驚拳ッ!!!」
それでも動きを止めなかったチビ達にナナシの手から打ち出されたエネルギー弾が命中する。
「みぎいッ!?」
【のばあッ!?】
「チビがぁッ!?」
チビ達の絶叫と横島君の悲鳴が響く、だが今の一撃で頭に血が上っていたチビとチビノブも少し落ち着いたように見える。
「くえす、シズク、横島君をお願い。蛍ちゃん、心配だと思うけど今は動くわよ」
琉璃はここにくると意識を失い、死んだように眠ってしまった。やはり、安全な所まで来るまでは気を張っていたけど……やはり、琉璃はとっくの昔に限界を超えていたのだろう……。シズクの側が今一番安全なので、横島君と一緒にこの場に残す事にする。
「……はいッ!」
昆虫と木人を倒す事で、核が転移で逃げる場所を潰す。そうしなければ、いつまでもこの戦いに終わりは来ない。シズク達に横島君を任せ、私達は再び森の中に足を踏み入れるのだった……。
「……ちょ、ちょっと様子を見に来ただけなのに、なんなのだわッ!?この空間は~ッ!!」
美神達が山の中に足を踏み入れた時、横島が死に掛けているのを感じたエレシュキガルも乙事主の結界に囚われ、転移は出来ない。隠していた神格も表に出てしまっていることに右往左往していたのだが……ひとしきりパニックになれば落ち着いてきたのか何度も深呼吸を繰り返した後は虚空に手を翳し、両刃の巨大な槍を召喚していた。
「ここまで来たのだから、乗りかかった船。少し手伝いをするのだわ、べ、別に横島が心配とかそういうのじゃないしッ!う、うん!大丈夫大丈夫ッ!!「女神、お前何言っておるのだ?」ほ、ほわああああああッ!?な、なんでここにいるのだわッ!?」
「いや、横島の生命力が随分と弱まったようだから、余も様子を見に来たのだ」
冥界の女主人と女帝が美神達の知らない所で、戦いを始めていたりするのだが……幸か不幸か、それに気付く者は誰も居ないのだった……。
「あ、これが終わったらまた横島のところに行かんか?」
「え、あー行くのだわッ!?」
そして再び、冥界の女主人と女帝が横島の家を強襲する事が決まっていたりする……。
~おキヌ視点~
導師様と神代家に因縁があった……そのおかげか、私の魂を弾丸にして放つ装置は壊された。これで私が魂を限界まで磨耗する事はなくなった……だけど、その代りに相手にトドメを刺すことが出来ないという状況に陥ってしまった。
(どうすれば良い、どうすればいいの……)
このままでは全員全滅する……敵は弱体化しているので簡単にその腕は足を切り落す事は出来る。だが、切り落とした部分に倒した相手の核が移動して再び復活してしまう。
「みむうううーーーッ!」
「うむ、それでよい!怒りで吹き飛ばすのではない、確実に仕留めよ」
ナナシとチビちゃんが昆虫や木人を適格に破壊していく、相手の手下が減ればそれだけ相手の核が移動する先が無くなる。
「アンサズッ!」
「ちっ、まともに戦えんのは面倒だッ!!」
ブリュンヒルデさんとビュレトさんも乙事主様へと変化したうりぼーの結界の効果で武器を使うのも難しくなったのか、魔法と魔術を使い始めた。
【■■■ーーーーーッ!!!】
獣の咆哮が響くと空気がまた一段と重くなった、乙事主様は山の化身ではあるがそれと同時に荒神である。その力は人間にも、神魔にも等しく有毒である。
「ちっ、シズク。横島は任せます、私は少しでも敵の数を減らしてきますわ」
「……判った、気をつけろ」
美神さんや蛍ちゃんも動きが鈍くなっているのを見てくえすさんが戦闘に出る事を決めた。数は減っているし、増える事はないが森を埋め尽くすばかりに現れていた木人や昆虫もその勢いを減らしている……だけど完全にその姿を消したわけではない。
【……焦るな、気を静めろ】
【シズ?】
シズが私を見つめて真剣な表情でそう告げる、今まで黙り込んでいたのに突然何をと困惑しているとシズは再び目を閉じた。
【私が感じ取れるように、お前だって、悪意を感じ取れるはずだ】
【悪意……ですか?】
【そうだ、相手は自分を特定されないために転移を繰り返している筈だ。お前も感じ取れるはずだ】
シズの言葉に促されるように目を閉じて、意識を集中させると確かに感じる……この森の中を動き回る数多の気配を……。
【で、でもこんなに気配に多かったら何を探せば良いのか】
【落ち着けと言っているのだ。確かに敵の気配は多い、だがその中でも気配の強弱があるはずだ】
気配の強弱……今まで考えても無かった事。そして私が戦場に立つと言うことは余りにも少なかった……シズに言われている事も正直半分も理解出来ていないと思う……それでも、泣き言を言ってる余裕なんて無い。
(出来ると思い込む事ですよね、横島さん)
出来ると思い込め、そうすれば多分。うん、きっと出来る。それが横島さんがよく言ってる事だった、疑うな、迷うな、揺らぐなと自分には出来ると思い込むと横島さんは言っていた。
「……シズク、怒ると思うけど……両腕だけでいい、後1発……ライフルを支える腕と引き金を引く手があればいいんだ」
「……横島……ちっ、これが終わったら説教だ。この大馬鹿者が」
【狙いは私が定めてやる、お前は私が撃てと言ったら引き金を引けばいい】
「それはありがたいな、心眼、シズク……頼むぜ」
横島さんも重症なのに、まだ戦おうとしている。そして美神さん達を助けようとしている……出来ないとやる前から嘆くのではない、自分なら出来る。やってみせると、ボロボロの身体を引きずって立ち上がろうとしているのだ。
【ノーノー……ノーブウウウウッ!!!】
「斬艦刀ッ!!疾風怒濤ッ!!!」
ロボットになっているチビノブちゃんの背中から巨大な砲門が展開され、森を薙ぎ払うかのように霊波砲が放たれ、ユミルの振るった巨大な刀が木々の間から現れた木人を薙ぎ払っていく、だが2人の攻撃はまだ終わらない。
「チビ!使えッ!!!」
「みむうッ!!!」
ユミルの投げた刀を空中で受け止めたチビちゃん、その刀を振り上げると短くなっていた刀がユミルが振るっていた時と同じように巨大な刃となり、放電しているのか眩い光を放ち始めた。
「みっぎゃあああああああッ!!!!」
空中で回転したチビちゃんが手にしていた刀を投げ、それが地面に突き立つと地面に電撃が走った。
「敵味方識別……ッ!?美神さん、チビがッ!?」
「一々細かい事気にするんじゃないわッ!横島君に似てきたと思いなさいッ!」
……美神さん、それはそれでどうかと思うんですけど……でもこれは間違いなくチャンスだった。
【……見つけたッ!】
【私もですッ!】
敵の数が極端に減ったのでやっと一際強い悪意を明確に確認出来た……残っている悪意の反応は数個……あれ?
(消えた?)
他に残っていた悪意の反応が突然消えたことに疑問を覚えたが……再び敵が出現する前に狙い打つこのチャンスを逃す訳には行かないと思った。
【あの一本松!その上のトンボが本体ですッ!】
巨人や木人ではなく、弱い昆虫に本体を移していた。だがそれは正しいように思えた、空を飛ぶトンボならば敵の脅威に気付き、逃げる事も出来る。戦況を見極め、木人や昆虫を召喚する事も出来る。巨人を目晦ましにし、そちらに注目を集める。
【■■■ーーーーーッ!?!?】
鋭い銃声の音から遅れ、声にならない獣の悲鳴が響き渡り、地面から現れていた木人や昆虫、そして竜の首を持つ巨人も溶けるように姿を消した……思わず安堵の溜め息を吐いたが、それは直ぐに消えた。
【……】
白銀の髪を風になびかせ、猪の被り物をした乙事主様が何の感情も見せない無機質な瞳で私を……いえ、横島さんを見つめている。確かにガープに操られていたシズの肉体を破壊することは出来ましたが……まだ1騒動おきそうな事は何も変わっていないのだった……。
リポート28 切り開け、己の未来 その14へ続く
リポート28でやりたかったのは、琉璃と横島のコミュを進める。レイとのイベントを進める、ブレイブハートでうりぼー進化、ファイティングマスコット・チブノブですね。原作でのシーンをカットしすぎて盛り上がりが少々足りなかったかもしれませんが、戦闘シーンは別件での「ガープ&アスモデウスVSフォーティス」で補完したいと思いますのでご容赦の程を願います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い