GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート28 切り開け、己の未来 その14
~小竜姫視点~
戦いが終わった……いや、戦いが終わったとはまだ言えない。横島さんを見つめる色の無い瞳……乙事主様だ、神ではあるが神を嫌い、人を嫌い、英雄を嫌う。
(戦う事になるのかもしれない)
ここには神も英霊もそして人間もいる……乙事主様の嫌う物全てが揃っている。下手をすれば……いや、下手をしなくても戦う事になるかもしれない……そう思うと額から冷や汗が流れた。
【お前は面白い人間だな、横島忠夫】
静かな声だが、森全体に響き渡る声……これは神託ッ!?誰一人言葉を話す事は許されない。それが許されているのは横島さん1人だけだ……。
「面白い……ですか?俺が?」
口を開こうとしても誰も口を開く事が許されない中。横島さんが能天気な声で乙事主様に返事を返す、ここにいる全員が必死に目配せをしても横島さんがそれに気付く事はない。
【さよう、お前ほど面白い存在は見た事が無い。お前は、自分がどれほどの偉業を成したか理解しておらんだろうがな】
口元を押さえ楽しそうに笑う乙事主様は手にしていた剣を神通力へと分解する。
【我は山だ、山そのものだ。人を裁き、神を裁き、そして災厄を持って人を、神を間引く者。それが我だ、言葉を持たぬ地球の代弁者。それが乙事主、怒りの化身である我だ】
ころころと楽しそうに笑う乙事主様。その姿に私は初めて違和感を覚えた、怒りの化身、地球の代弁者。その通りだ、本来怒りの感情しか持たないはずの乙事主様が笑っている事の異常さに今気付いたのだ。
【生まれ変わった我にお前は優しさを与えた、愛を与えた、日常の素晴らしさを教えた。それは我ににきみたまとさきみたまを与えた、我が化身は我になることはあらず、既に別の神性を手にしたのだ】
「……すいません、どういうことか判りません」
横島さんの頭の上に?マークが大量に浮かんでいるのがわかる。だが、私達は何を言っているのか理解した、理解してしまった。
(横島さんは新しい神を生み出したんだ)
荒神としての側面しか持たない乙事主様の神性から穏やかで幸せを与える神性を作り出したのだ、それがうりぼー……神の少ない現在に生まれた新しい神の姿。
【判らぬならば、判らぬままで良い。己のあり方を見失うな、お前が己を見失えば我が化身もまた我になるだろう。それと……我が化身をこれからも頼むぞ】
何かの弾ける音と共に乙事主様の姿は消え、小さな何かが上空から落ちてくる。横島さんは弾かれたように立ち上がり、両手を伸ばしながら前に飛び込み、落ちてきた小さな何かを抱き止める。
「うりぼー、良かった。」
「ぷー……ぷぎい?ぷぎーッ!!ぴぎーーーッ!!!」
落ちてきたのはうりぼーだったらしく、横島さんが抱きとめると閉じていた目をゆっくりと開き、横島さんを見て感極まったように鳴きだし、その頭を何度も何度も擦り付ける。
「ありがとな、うりぼーのお陰だ」
「ぴぐう?」
何のことか判らない様子のうりぼー、恐らく乙事主様のときの姿の記憶は無いのでしょうね……。結界が消えた事で私達もゆっくりと立ち上がる。
「どうするんですか?小竜姫様?」
「どうも何も、何もしませんよ。ガープに操られていた神は倒されて、めでたしめでたしです」
乙事主様の写し身が人間界に居る……この情報は隠さなければならない。特に過激派の神魔には絶対に知られてはいけない、ガープが見ている可能性はありますが……ガープを持ってしても御せないことは明らか、そんな相手にガープが進んで手を出してくるとは思えないですし……後私達がやるべき事は1つ……これから行われる反魂の儀を見て見ぬ振りをするだけだ。
~舞視点~
氷室神社に何度も響いていた地響きが消え、遠くの方からお姉ちゃん達が戻ってくる姿を見て私は思わずへたり込んで、涙を流し続けていた。神社からも見えていた巨人と、空を飛び交う昆虫の群れにお姉ちゃん達が戻ってこないのではと不安に思ってしまっていたからだ。無事に帰ってきた姿を見て泣き崩れてしまったのは恥ずかしいけれど、それだけ本当に不安だったのだ。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「うん、ちょっと疲れただけだから」
戻って来たお姉ちゃん達だったが、疲労困憊で神社に入ってくるなり倒れこんでしまい、その日1日目を覚ます事は無かった。そして翌日平気そうにしているお姉ちゃん達だったけど、その顔は険しくて何かまだ問題があるのだと判った。
「反魂については俺とブリュンヒルデも目を瞑るが……リスクは承知しているのか?」
「はい、それに関してはちゃんとおキヌちゃんには説明してあります」
反魂……氷室神社が御神体を祭っていた洞窟の中の洞穴、その奥におキヌさんの氷漬けの遺体があって、状態が良いから蘇れるという話だったけど、やっぱり問題があるらしい。
【何とかワシの方で尽力するが……記憶が残るのは五分五分じゃな】
幽霊として300年生きたおキヌさん、幽霊と言うのは存在自体が薄い、仮に蘇れたとしてもその記憶が消えてしまうかもしれないと言う事だった。
「小竜姫様、何とかなりませんか?」
「横島さん。私としても何とかしてあげたいのですが……武神なので、術的なのはあんまりお力にはなれないんです」
神様にも得て不得手がある、それは当たり前の事だが神様の奇跡に頼りたい時にそれは余りにも残酷な事実だ。
「……私も何とかしてみよう、あれだけ清らかな霊脈だ。それに水も近い、私も力になれるだろう」
ミズチで竜神様のシズク様が協力してくれると言っても、やはり100%ではないのだろう。
「もう少しだけ、様子を見てみる?」
【いや、それは止めておいたほうがいい。あの馬鹿が無理やり霊脈の力を引き出そうとした弊害が何時出てくるかも判らん】
あの馬鹿……多分私達を生贄にしようとした導師の怨念だろう、正直あんな怨念と10年近く居たとか恐怖しかない。
【……あの私、生き返れるなら生き返りたいです。私、忘れません。絶対に忘れませんからッ!!】
記憶を失うかもしれないと言う事を誰よりも恐れている筈のおキヌさんの叫び……涙を浮かべながら叫ぶ姿に誰も何も言えなくなったのか、正午からおキヌさんの復活が行われる事になった。
「お姉ちゃんは行かないの?」
「そうね、言っても良いんだけど……多分居ない方がいいのよ、きっと……」
祠に向かったのは、美神さんの事務所のメンバーだけだった。神卸しが使えるお姉ちゃんが居た方が成功率が上がると思ったんだけど……お姉ちゃんは黙って美神さん達を見送ったのだ。
「ただ力だけがあれば良いと言うことではないのですよ、霊力とは想いの力。ずっと一緒に居たと言う方が強い力になるんですわよ」
「くえすがそんな事を言うなんて珍しいわね、どういう気持ちの変化?」
「別にですわ、ただ……そうですわね。そういう気分だったとでも言っておきましょう」
お姉ちゃんとくえすさんは仲がいいのか悪いのか、良く判らない。だけど、多分……仲は良いんだと思う。喧嘩友達と言うか、じゃれあうというか……多分そんな感じなのだと思う。
「では近いうちにこの土地の霊力と近い神を派遣する事になりますので」
「はい、よろしくお願いいたします」
お養父さんが小竜姫様に頭を下げている、おキヌさんが生き返れば祭神が居なくなり、この土地の霊脈が廃れるかもしれない。それを防ぐ為に穏健派の神様が新しくこの土地に祭られるらしい。
「とっちゃも大変だべ」
「そうだね。早苗お姉ちゃん」
霊能者としての格は落ちていて、そして早苗お姉ちゃんの霊力も僅かに残るだけ……恐らく次代の神主か、その次を最後に氷室の霊能者は消えてなくなるだろう。
「最後に聞きますが、未練は無いのですね?」
「ありません、先祖様の悪行、そしてあの恨みで変化した禍々しい姿を見て確信しました、やはり氷室は霊能を捨てるべきだと」
お養父さんは霊能を捨てる事を決断した、完全に捨てる事は難しいけど、そういうことが可能になる神様もいると言うことだ。そして新しく祭られる神様はそれを可能にする神様らしい。
「判りました、後の事は私に任せてください」
「はい、よろしくお願い致します」
深く深く頭を下げるお養父さん、自分は既に霊能が途絶えているが早苗お姉ちゃんが霊能を使えることを喜んでいた。だが霊能が齎す恐ろしさを知り、霊能を捨てる決断をしたのだろう。それは決して間違いではないと思う、異能は異能を呼ぶ……それを知った今、霊能を捨てる決断をするのは当然の事だった。
「その代り、私の方のお願いも守ってくださいね?」
「はい、おキヌが蘇りましたら体が回復するまでは氷室神社で養生させます、もし記憶が無ければ養女として迎え入れます」
勿論お養父さんも守らなければいけない事はあるが、それでも霊能を捨てると言う条件と比べれば地主としての立場もあるお養父さんの方が楽な条件だ。それをあえて提示したのは、きっと横島君の事を考えての事なんだろう。
「そろそろな、舞も祈ってやるといい」
「うん、判ってるよ。ナナシ」
おキヌさんが蘇れるように、無事にまた横島君達に出会えるように……私は氷室神社から反魂の術が成功する事を心から祈るのだった……。
~蛍視点~
肌寒い洞穴の奥……氷漬けのおキヌさんの遺体、横島や美神さんは反魂が成功するかはらはらしていると思うけど、私は多分成功すると思っていた。
(これは歴史で必要な事)
どんなに世界が変わっても、どれほど出来事は増えても、どうしても避けられない事はある。多分、おキヌさんが生き返るのはこの世界では約束された1つの事なのだろう。
【お前の霊波刀が必要だ。霊波刀を刺してあの氷の呪術を解除する、そしてその直後に反魂を行う。これでおキヌは蘇る】
「せ、責任重大ですね。で、でも頑張ります」
横島が右手首を掴んで霊力を集中させている。いつでも霊波刀を作り上げる事は可能だろう、その姿を見て若干複雑な気持ちになる。
(やっぱり私性格ブスだなあ……)
生き返ってくれることを喜ぶべきなのに、それを素直に喜べない自分に複雑な気持ちになる。
【蛍ちゃん、生き返ったら今度はちゃんとお友達になりましょうね】
「おキヌさん……うん、そうね。ちゃんと今度は友達になりましょう」
そんな私の気持ちに気付いたのか、おキヌさんが私の両手を握って笑ったと思うと、私の背中に腕を回して抱きついてくる。
(蛍ちゃんの気持ちは醜くなんかないですからね、きっと皆そう思っています)
自分が好きな人に自分だけを見て欲しいと思うのは当然の事ですからと私の耳元で告げたおキヌさん。それはきっと嘘偽りの無い、おキヌさんの本心で……多分、ううん……仮に自分が同じ立場だとしてもきっと同じ事を口にしていたと思う。
「おキヌちゃんの言う通りね、記憶が失われると決まった訳じゃない、それに仮に記憶がなくなっても……また友達になりましょう」
「……お前が横島の事を忘れるとは思えないしな、少しの別れとでも思っておくさ」
美神さんとシズクがおキヌさんを励まし、泣きそうな顔で笑う。
「……おキヌ殿、また会うでござるよ。拙者待ってるでござる」
「その言い方だと、忘れる前提じゃない。私を忘れたらひどいんだからね」
次々におキヌさんに皆が声を掛けて行く、おキヌさんも不安に思っているし、仲間が減るかも知れないという恐怖は全員が感じていた。それでも泣き出す者も不安を口にするものも居なかった。
「みみーむ」
「ぷーぎゅー!」
【ノッブブー!】
チビも珍しくおキヌさんに擦り寄り励ますように頬を舐める。その姿におキヌさんは驚いたように笑い、チビの頭を撫でる。
【生き返ったら、友達になってくれますか?】
「みむう」
それは嫌と言う感じで首を振るチビに暗い雰囲気が一掃され、薄暗い洞窟の中に少しの間笑い声が広がる。
【幽霊同盟も一時解散じゃな、いや、生き返るから完全解散かの?ま、生き返って楽しく過ごすがいいさ。姿を消して横島の部屋に侵入できなくなるのを名残惜しいと思っているじゃろうしな】
【ちょっとノブちゃーんッ!?ち、違いますからね!?私そんな事してませんからね?】
【いえ、けっこうしてますよね?丑三つ時とか】
【止めてーッ!!!】
……おキヌさん何をしてるのよ……だけどノッブと牛若丸の暴露で暗い雰囲気は完全に消えて、いつも雰囲気が戻って来ていた。
「おキヌちゃん」
【あ、いえ!?違いますから!別に寝てる間に侵入とかしてませんからねッ!?】
横島に声を掛けられうろたえるおキヌさんの手に、横島が何かを握らせる。
「なんて込めればいいか判らなかったけど……「繋」がるって込めた、俺達の絆がまた繋がるって信じて」
【横島さん……】
横島が渡したのは文珠だろう……全員がそれを気付いていたが、それを指摘する事は無い。
【そろそろだ】
【霊力も最大まで高まった、後は霊力が低下していくだけ。今が最初で最後のチャンスだ】
心眼とシズの言葉に横島は無言で霊波刀を作り出して、私達から背を向ける。
「おキヌちゃん、さよならは言わないから、だから……またなッ!!」
【はいッ!私、忘れませんからッ!絶対、絶対!!皆の事を忘れませんからッ!!!!!】
氷の結界に霊波刀が突き刺さり、氷の結界が中から砕け散る。そして横島に向かって倒れ掛かってきたおキヌさんを横島が抱き止める……
「……生きてる、呼吸をしてる」
横島がおキヌさんの口元に手を翳し、生きてると安堵した表情で呟いた。
「……私……忘れません……忘れませんから……美神さん……蛍ちゃん……横島……さん」
寝言のように呟かれるおキヌさんの言葉、それは私達の事を忘れていたら決して口にされる言葉ではなく、おキヌさんが私達の記憶を持ったまま生き返ることが出来たという希望となった。
「今はおキヌちゃんを入院させるわよ、起きるまでは私達も待ってられないからね」
直ぐに東京に戻らないといけないので、おキヌさんを神代家の人間が医者をしている病院に預け、私達は東京に戻った……東京での壊滅的な被害、今回の事件の報告……おキヌさんが目覚めるまで待ちたいと思っても待てない理由が私達にはあったのだ。それでも2日はおキヌちゃんが起きるを待っていたけど、流石にこれ以上は無理と言う琉璃さんと西条さんの言葉に私達は後ろ髪を引かれる思いで私達は氷室神社を後にして、東京へと戻っていくのだった……。
『もしもし、私です。おキヌです!ちゃんと、私……私覚えてましたッ!今はまだ入院しないといけないけど……2月までには東京に戻ります!絶対戻りますからッ!待っていてくださいね!』
除霊から帰った私達におキヌさんからの涙交じりの留守電が出迎えてくれて、私達は思わずその場に泣き崩れてしまうのだった……。
~レイ視点~
シズと言う神霊の肉体は破れた、横島が食われ掛けた時は流石に驚いたが……神が降臨した事で横島が助けられたのは正直安心した。
『レイ、そろそろ戻れ、今回の作戦は失敗だ』
「了解です」
戻れという通信に返事を返し、座っていた巨岩から腰を上げて気付いた。私を見つめているフード姿の男の姿に……。
「貴方は誰?」
「私ですか?名乗るほどの者ではないですよ。ただの通りすがりです」
通りすがり……だが私が気付く事が出来なかった事で警戒心は嫌でも生まれる。そもそもこんな山の中を何の目的も無く通るなんてことはありえない。
「そんなに警戒しなくてもいいですよ、私はただ貴女に贈り物を持ってきただけですから」
「贈り物?」
もしかして、私が知らないだけでガープ様の手下なのかもしれないという考えが脳裏に浮かんだ。
「これをどうぞ、いつか貴女の助けとなるでしょう」
「眼魂?これは何の……いない?」
眼魂を受け取ったが、それを投げた男の姿は既にない。投げ渡されたのは無機質な白い眼魂、ナンバリングも文字も刻まれていない眼魂……こんなのはじめて見た。
「……なんの眼魂だろう」
でもこうして渡されたという事は何か意味があるはず、私はそう考え、眼魂を服の中に入れてその場を後にするのだった……。
「因果は少しずつ埋められていく、されどまだ足りぬ」
歩き去っていくレイを見つめるフードの男、レイの目の前にいるのにレイはその男を認識出来なかった。認識させない事……それがこの男の能力の1つだからだ。男が認識させないと決めた瞬間に男は「世界」から認識されなくなる、それがこの男……仮面ライダーフォーティスの能力の1つだった。
「次の舞台は過去の世界、されど醜悪に切り貼りされたおぞましきかぐや姫の歴史……されど、これは私が奪うべき歴史にあらず。運命の必然、なればこそ、それを見届けるのも一興。次はお前も舞台に立って貰うぞ、アシュタロス」
読んでいた本を閉じ、軽やかに男は歩き出す……フードから僅かに見える口元は楽しくて仕方無いと言わんばかりに微笑んでいるのだった……。
別件リポート 魔界での激戦へ続く
今回は短めの話となりましたが、エピローグなのでこんな感じでしょうね。次回は別件リポート、リポート28で不足していた戦闘描写をガープ&アスモデウスVSフォーティスで補完したいと思います。21時の飯を食えの更新時間に別件も投稿したいと思います。リポート29はほのぼの系の話、リポート30でエピローグでセカンドを完結としたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い