GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
その1
リポート29 新しい生活 その1
~横島視点~
おキヌちゃんを氷の結界から救出して麓の病院に運んでから2日。おキヌちゃんの意識が戻る事は無く、そして俺達が氷室神社に滞在できるのも今日が限界だと琉璃さんと美神さんが俺達に告げた。
「心情的にはおキヌちゃんが起きるまで氷室神社にいたいんだけど……東京の後処理の事もあるし、それに報告の事もあるから今日の夕方には東京に戻るわ」
「ごめんなさいね。私も何時までも西条さんにGS協会の事を押し付けるわけにも行かないの」
美神さんと琉璃さんの言う事はもっともだ、むしろ直ぐにでも東京に戻らないといけないはずなのにそれでも2日の待ってくれた事に感謝しかない。何よりも苦渋に歪められた顔を見れば、美神さん達にとっても苦渋の決断と言うのは明らかで俺達がその決定に文句を言う事は無かった。
「お姉ちゃん、横島君。おキヌさんが起きたらすぐ連絡するから」
「舞ちゃん、ありがとう。よろしく頼むな」
おキヌちゃんが記憶を残しているかと言う不安はある、それに無事に目を覚ますかと言う保障も無い。それでも起きたら直ぐ連絡してくれると言ってくれた舞ちゃんには感謝しかない。
「とりあえず今日一日休んだら東京に戻るわ、休みと言っても外出は禁止だからね。特に横島君」
「うっす」
俺を名指しする美神さんに反論など出来るわけもなく、俺は氷室神社の縁側で日向ぼっこをすることになった。
「ぷぎゅーぷぎゅうう……」
日当たりがいいので俺の膝の上で丸くなって眠っているうりぼーの背中を撫で、庭で駆け回っているチビノブとチビを見つめる。
「息はしてるし、心音も安定しているからそんなに心配しなくても直ぐに目を覚ますわよ」
「そうでござるよッ!おキヌ殿なら元気に戻ってくるでござる!」
俺を励ましてくれているシロとタマモ、自分では普通のつもりだけど……やっぱりシロ達には判るんだな。
【なに、心配する事はないさ。おキヌには死の気配がない。むしろ強い生の気配がする】
【あの手の者は殺しても死にませんよ、主殿ッ!弁慶と同じ気配がしますから!】
武蔵坊弁慶と同じ扱いをされているおキヌちゃんはきっと複雑な気分だろうなあと思い、思わず笑ってしまうとシロ達は俺を見て満足そうにしている。
【お前は笑ってる方が良い、そのほうがお前らしいよ】
心眼の俺らしいという言葉が妙に頭に残った……その言葉が何か大事な言葉のように思えたのだ。
「どうしたの?」
「せんせー?もしかして眠いでござるか?」
シロとタマモが俺の顔を覗き込んでいることに気付いて違う違うと手を振る。
「いや、誰かに……ううん。ずっと前に……そんな事を言われたような気がするんだ。俺は俺らしくって言葉を……さ」
上手く説明出来ないし、勿論そんな言葉を言われた事も無い。だけど……「俺らしく」って言葉は何か、とても心地良い言葉のように思えた。
【それは前世の記憶かも知れんな】
俺達の話に急に割り込んできたシズが俺を見ながら楽しそうにそう呟いた。
「前世?」
【お前のように莫大な潜在霊力があるものは稀にあるのだよ。つまりお前の前世にお前らしくという言葉を言ったものがおるのだよ】
前世かぁ……俺の前世って平安時代の陰陽師高島かもしれないとか聞いているけど、証拠も無い。だけど、神霊のシズが言うのなら本当の事なのかなと思っているとシズが地面に手を当てた。
「何してるのよ?」
「急に神通力を高めて何をするつもりでござるか?」
【何、チビがユミルの剣を欲しがっていると聞いたのでな、それにお前にも頼まれていただろう?】
シズが手を当てていると地面から急激に芽が出て、枝となり、そして樹木になった。
【ワシからの今回の件の報酬じゃ、是非持って行ってくれ。神通力を込めているから色んな物の触媒になるだろう】
見上げるような樹木、シズの神通力が込められたそれは間違いなく最上級の素材だろう……持ち帰る事が出来ればの話だが。
「これどうやって持って帰ろう?」
【ぬ……すまぬ、そこまで考えていなかった。斧があるから、それを持って来よう】
そして俺達は想定もしないところで、樵の真似をすることになった。
【ふんぬうッ!】
【せいッ!!!】
気合満天の声でノッブちゃんと牛若丸が斧を振るうが、その体表に弾かれる。
「でや……あだだだ……」
「て、手がしびれるでござるよお……」
俺とシロも斧を振るうが弾かれ、手がしびれてその場に蹲る事になったし、タマモの狐火も弾かれた。
「シズ、あんたちょっと気合入れすぎじゃない?」
【……奪われた神通力が戻ったのが原因かも知れんな……しかし、参った。ユミルもナナシもおらんしな】
舞ちゃんは普通に学校だ。そしてユミルとナナシはその護衛だから今氷室神社にいない、俺はもう1度その巨大な樹木を見上げてどうしようかと頭を抱える事になるのだった。
~琉璃視点~
東京に戻るまでに2日の猶予を取ったのはおキヌさんが心配なのも理由だったが、もう1つ。この場で何となしなければならない問題があったのだ。
「横島君の件ですが……小竜姫様、ビュレト様、ブリュンヒルデ様。何か妙案はありますか?」
私の問いかけに3柱の神は口を開かない、いや、開く事が出来ないのだった。本来荒神の側面しかない乙事主様から温厚な御霊を召喚し、それを新たな神とした。横島君が行ったのは新たな神の誕生の手助けと人間……いや、神でも不可能な偉業を成し遂げたのだ。
「正直、横島の能力がここまでとは想定していなかった」
「そうですよね、英雄としての側面は確かに認めていましたが……」
「現代に新しい神を誕生させるなんて事をやってのけるなんて想像も出来ないですよ」
神魔としてもありえないという奇跡を横島君はやってのけた。やってしまったのだ……文珠、霊力の物質化、英霊との合体……数え切れないほどの異能が横島君には集まっている。だが今回の件は危険だ……危険すぎる。
「もし横島がガープに捕らえられたら全く新しい神が大量に生み出される事になることになるでしょうね」
「……そうなるのよね、やっぱり」
うりぼーが乙事主様の別の側面の神であると言うのは乙事主様本人が認めた。次世代の新しい神がうりぼーと言うことだろう、横島君は今までの通りペットみたいな感じで可愛がっているけど……。
「まず、その前提がおかしいんじゃない?確かに横島君は神を生み出した、だけど、チビ達は神になっていない。何か特別な条件があるんじゃないの?」
「む、その可能性はあるか……」
簡単に神を生み出せるならばチビやチビノブもまた神になっているだろう……本人の素質なども関係してくる可能性は十分にあるか。
「判りました、今回の件はヒャクメに分析を頼み、竜神王様にのみ報告させて頂きます」
「では私もお父様だけに」
神魔の軍部の指導者、それだけにうりぼーが乙事主様に変化した事を伝えるという事で話は纏まった。横島君の異能は余りに異質すぎる、今回の事は要観察と言う事になるのだろう……しかし、今回開眼した横島君の能力はなになるのだろうか。
「うりぼーが乙事主様の転生だから、神になれたって事ですかね?」
「考えられるのは其処ですね。しかし、そうなると……ちょっとまた厄介な事が生まれますけど」
小竜姫様が引き攣った顔でそう告げる、厄介な事……正直今まで以上に厄介な事なんてそうないと思うんだけど……。
「日本の古い神は殆ど自身の由縁のある動物に転生している」
「「「「それ最悪なんじゃ?」」」」
私と美神さんにくえすと蛍ちゃんの声が重なった。横島君の特性と言えば人外ホイホイとも言える人外との遭遇率だ、しかも、転生して小動物になっている神様とエンカウントする可能性は極めて高い……。
「美神さん、今ふと思ったんですけど」
「お願い言わないで、私に物凄く思い当たる事があるの」
「……やっぱりですよね、私も実は思い当たる節があります」
あるのッ!?横島君一体貴方は何をしているのか……悪い子じゃないんだけど、ちょっと横島君が苦手になりそうだ。
「……クマゴローって神様の転生態なんじゃ?」
「何だそのクマゴローって?」
「妙神山で横島さんが見つけてきた、神獣の赤ちゃんです。今は、天竜姫様が面倒を見ていますが……元々は横島さんが発見して来ました」
ネーミングセンスが独特すぎるけど、問題は神獣の赤ちゃんと言う事と横島君が見つけてきたという所だ。
「熊の神様って何がいたっけ?」
「私も専門ではないですが、アイヌ民族と北欧関連に多くいたと思いますわ」
……大変な事になっているかもしれない。その神獣の赤ちゃん……クマゴローも乙事主様と同じ神に進化する可能性があるとかちょっと冗談じゃない。
「小竜姫、ヒャクメに一応見てもらっておけ」
「そうしますね」
小熊まで神になるとか怖すぎるので、ちゃんと1度見て貰っておこう……そんな事を考えているときふと顔を上げるとブリュンヒルデ様の顔色が悪い。
「どうかしましたか?」
「……あのですね、アリスちゃんが魔界に横島さんを今度招待したいと言って、ベリアル様とネビロス様が動いているんです」
……魔界の危険な動物の赤ちゃんが横島君に懐きまくって、横島君が連れて帰ってくる未来が全員の頭を過ぎったと思う。
「それは……「ズズン……」何事だッ!?」
ビュレト様が止めに入ろうとしたが、庭の方から凄まじい地響きが響き私達が慌てて外に出ると太陽を覆い隠すような巨大な樹木が庭に生えていた。
「あ、美神さん。シズが今回の報酬って事で神木をくれたんですけど、これ全然切れないんです」
【折れたぁッ!!】
【こうなれば、私の刀でッ!!!】
「止めるでござるッ!刀はそんな事には使えないでござるよッ!」
「ちょっとシズク、これどうにかならない?」
「……水の刃も効かないのにどうしろと言うんだ」
横島君達がシズが用意してくれた神木を伐採しようと奮闘している姿を見て、私達は一気に脱力してしまった。だが、神霊が用意した神木となれば、間違いなく最上級の霊具の素材となるだろう。
「ビュレト試してくれる?」
「……嫌な予感はするがやってみよう」
「私もやってみましょうか」
ビュレト様と小竜姫様の一撃にほんの僅かな切れ込みがやっと入った神木……これどうやって伐採すればいいんだろう?私達が揃って樹木を見上げたのは言うまでも無い……。
~ドクターカオス視点~
横島達が氷室神社から持ち帰ってきた神木の分析を進めていたが、結論は1つ。これは今人間界で手に入る最も優れた霊具を作る素材であると言うことだ、そして問題はこれをどうやって加工するかだった。
「マリア、テレサ。レーザーエッジで何とかなるかの?」
「めちゃくちゃ硬いけど、なんとかなるかなあ……」
「霊力を消費すれば切る速度も上がりますね」
加工が極めて難しいが、この最高の素材を何とか生かしてやりたい。当初の計画では、撃破した神霊の残骸を回収するつもりだった。だが実際はガープの手によって肉体と精神に分かれ、生き残った精神が上質なご神木を生成してくれたのはありがたいが余りにも加工難易度が高すぎるな。
「ねー、カオス。これどうするの?」
「そうじゃなー、霊具の芯などに使えばいいかもしれんなあ」
素材としては間違いなく最高の品だ。問題は加工出来るかどうかじゃが……とりあえず、当面やるべき事は決まった。
「悪いんじゃが、マリアとテレサで正方形に切り出してくれるかの?」
「ミス愛子ですね?」
「そうじゃ、約束はまず果たさねばならないからの」
愛子との約束だから、まず机から離れれるように別の寄り代を作る。これだけ神通力の篭もっている神木なら、寄り代としての能力に不安は無い。本当ならワシが加工出来ればいいんじゃが、切り出す所は流石に無理なのでマリアとテレサに頼んで椅子に腰掛ける。
「……マジなんじゃなあ」
チビノブに頼まれて作った霊具が使われたらしいが、その戦闘記録は凄まじい。サイズ的には小学校低学年ほどの大きさだが、その火力は間違いなく並のGSよりも遥かに高い。
「なんと説明するかの……」
琉璃からどうしてあんな物を作ったのかと言う説明を求める電話があった。製作者として説明する義務はある……だが特撮番組の玩具を真似して作ったと説明して納得してくれるだろうか……。
「いや、しないな」
逆の立場でもお前は何を言っている?と言う感じになるだろう。神通棍や霊体ボウガンの素材は使ったが、正直玩具程度の性能しかないはずなのだ。少なくとも、森を焼き払うほどの攻撃力は無い。
「そもそもそんなのを作ったら小僧の家が消滅するしなあ」
あくまで玩具、子供の玩具程度の気持ちで作った事に間違いはない。問題はチビノブのほうだろう、あんな子供の落書きのような姿でも大英霊といっても過言ではない「織田信長」の分身だ。そのスペックは間違いなくA級下手をしたらS急に匹敵するだろう。
「とりあえず、チビノブが原因と言う事にしておくかの」
もう少し詳しい分析をしないと断言は出来ないが、作った玩具のカタログスペックだけを持参してGS協会に向かう事を決めた。
「さてと、大分良い感じに修復出来たの」
隕石落とし事件の時に現れたと言う量産型レブナントが使っていた変身ツールの篭手。不幸な事に、眼魂をセットするスロットが崩壊しているので変身ツールとしては使用出来ない。だが、霊力を拳に収束するや、霊波刃の展開能力は健在だったので修理を続けていたがやっと修理が終わった。
「うむ、悪くない」
眼魂をセットする部分には変わりに擬似精霊石を搭載した。これで僅かな霊力でも増幅して攻撃力を上げる事が出来る……筈。後は格闘戦メインのGS……唐巣神父や、雪之丞に渡せばデータ取りも出来るだろう。
「量産の目処が立てばなお良いんじゃがな」
相手の戦力はやはり人間側よりも遥かに高い、だがそれでも負けるわけには行かないのならばこちらの戦力も底上げするしかない。修理する過程でこの武器の構造は大体理解したと言える、後はGS協会とオカルトGメンの許可がでたら量産型の試作を作成してもいいかもしれない。
「ん?」
そんな事を考えながらチラシを見ているとその中にエアメールが入っているのに気付いた。普段はマリアが識別してくれるのだが、木人や昆虫の襲撃でそれ所ではなかったのだろうと思いチラシの中からエアメールを取り出して中身を確認する。
「……そうか、もう直ぐ日本に来るのか」
其処にはマリア7世からの手紙、竜の魔女の旗を持って日本に来日する日程が記されていた。
「小僧はどうなったかな?」
なんせ国宝になっている旗だ。そう簡単に見れるものではない、小僧の幸運なら当たるかもしれないと思ったが……もし外れていたらワシが頼み込んで見せてやるかなと思いながら、便箋に封入されていたワシとマリア達の分のチケットを机の引き出しに入れるのだった。
「あれ?なんだろ、このド派手な封筒?」
「……日本のじゃないな。美神に聞いてみろ、あいつが何か用意してくれていたのかもしれない」
カオスと同様に家を離れている間に届いていた郵便物の山から、赤と青の派手な封筒を横島達も見つけているのだった。
~西条視点~
東京に起こっていた木人と昆虫の襲撃は令子ちゃん達が神霊を倒した事で収まったが、その被害はやはり甚大だった。何よりも東京を守るように配置していた神社の御神体などの消失が余りにも痛かった。
「申し訳ないですがよろしく頼みます」
「ああ、気にしなくてもいいさ。これからもよき隣人であろうじゃないか」
躑躅院にまた借りを作ることになってしまった。この男……いや、女か?隙あらば僕達に恩を売りつけてくる。
(厄介な相手だ)
だが良く考えれば陰陽寮と言う魔窟の当主をやっているのだ、それこそ冥華さん達クラスの狸とやりあっている。年若いが、人生経験は僕よりも遥かに上だろう。
「よき隣人か、それならばオカルトGメン、いや、GS協会もそうだが互いに交流会なんて物はどうだろうか?」
「ふむ、横島君を陰陽寮の見学に来てもらうというのは決めていたが、確かにそういう話の方が良いだろう。では横島君の所属している事務所……美神令子除霊事務所の面子を陰陽寮へと招待しよう」
その言葉に僕は内心安堵の溜め息を吐いた。横島君1人では不安だったが、令子ちゃん達がいればまたその対応は大きく変わってくる。
「僕は表立って提携と言う事は動けない」
「そうだろうね、国際機関だからね」
オカルトGメンは国際組織だ。その都合国に認められている組織以外との連携をとるのは非常に難しいという性質がある、特に陰陽寮は振るいだけの組織でますます表立って提携と言う形をとるのは難しい。無論事件が発生したので民間人の協力を得たという形で処理をすることになるだろうが……本当にこんな厄介なルールは消えてしまえと心の底から思っている。
「神代会長も見学に参加して貰うというのはどうかな?GS協会の会長と言う立場ではなく、神代家当主と言う形で」
「ふむ、私に異論は無いよ」
琉璃君の了承は得ていないが、今ここで琉璃君も参加する事を認めさせておかないと難しいだろう。
「では、東京の後処理が終わったらと言う事で良いかな?」
「それはそちらの予定にあわせるよ。では私もそろそろ京都に戻ろう、被害は小さいとは言え少なくない影響がでているからね。当主とし
て、周りの被害の確認は必要だ」
どの口がそれをいうと思ったが、それを口にすることは無かった。陰陽寮の当主と言う立場にあるが、躑躅院に陰陽寮自体には何の感傷も感じられない。むしろ自分の枷とでも思っているような素振りだ……それなのに陰陽寮に招待する。これは何かあると疑うべきだな……
「はい、もしもし?」
『ああ、西条君か?私だ、ピエールだ』
「これはピエール参謀。何の御用でしょうか?」
ヨーロッパ方面のオカルトGメンの統括をしているピエール参謀。先生と関係のあるGSで僕のオカルトGメンでの後継人と言っても良いだろう、そんな人物からの電話に思わず背筋を伸ばした。
『そんなに緊張しなくても良い、視察団の後ろの政治家連中を一掃出来た』
「それは何よりです」
電話口越しでガッハハハと豪胆に笑うピエール参謀、その大声に眉を顰めるがこれが彼の良さでもある。
『魔鈴君を日本に送る面倒を見てやってくれ』
「……何かありましたか?」
魔鈴めぐみ、僕がイギリスの大学にいたときの後輩で、今はヨーロッパやイギリスを舞台にして古い魔法の再現をしているはずの彼女に日本に来て欲しいと申請は出したが、余りにも早い。向こうでも何かあったのかと勘ぐってしまった。
『魔界の悪魔の出現頻度が上がっている、それを魔鈴君が行っていると言うデマが広がっていてね。念の為だ』
「……イクサですか?」
『……うむ、あの男はやはり危険だ。だが局長も聞いてくれんからな』
やはりイクサか、あの強烈な選民思想の持ち主だ。魔女である魔鈴君の立場は決していいものではないだろう……しかしオカルトGメンではなくフリーランスの筈だが……何か事件があってピエール参謀が一時的に自分の配下に置いたと見て間違いないだろう。
『丁度マリア7世が日本に来日する。その時にあわせて護衛として参加させる』
「かなりの力技ですね」
『なに、魔鈴君がマリア7世と交流があるから出来る事だ。私はこれからイクサのやってる事の裏付けを取ろうと思う』
「……危険ですよ?」
『危険は承知の上だ。それよりも頼んだぞ』
イクサと言う男は悪魔のような本性を知性で隠しているような男だ。弁護士資格や、医師免許なども持ち合わせているが、それは確実に自分を守る為の表向きの地位だ。そうでなければ、人外専門のバウンティハンターなんて道は選ばないだろう。
「すいません、西条さん。遅れました」
「いや、気にしなくてもいいよ。神代会長、それじゃあ今回の事件の事と、マリア7世の来日についての話し合いをしましょうか」
イクサの事、ピエール参謀の事は気になる。だがそれでも僕達にはまだやるべき事がある、特にマリア7世の件は絶対に問題を起こしてはならない。
「オカルトGメンの上層部が乗り込んでくるっていう事態は避けたいですしね」
「ああ。あの権力欲に塗れた連中が乗り込んでくることは避けたい」
自分達の子飼いの視察団を潰された事で間違いなく僕達を逆恨みしている。だがあの視察団の不運は政治家の孫娘などがいた事で、しかもその孫娘や妻に乱暴を振るおうとした所を不動に発見され叩きのめされたのだ。僕達が何かをしたわけではない、完全な自業自得ではあるが、それで納得する訳が無いのだ。
「とりあえず、美神さん達にお願いして、東京にいる高ランクのGSには全員動いてもらおうと思います」
「そうだね、後はSP達だが……西条家と神代家で用意しよう」
「それが無難ですね」
大きな組織と言うのはどうしても腐敗する。オカルトGメンと言う国際組織でもそれは変わらない、だからこそ僕達は頑張らなければならない、相手に付け入る隙を見せない為に、何通りもシュミレーションを繰り返し、最も堅実なルートと護衛策を作り上げる。
「これからハードなスケジュールですね」
「仕方ない、長と言うのは他の人間よりも疲れるものだよ」
上の人間は下の人間よりも厳しい仕事をするものだ、だからこそ「長」と言う言葉がつくのだろうと僕は考えている。これから毎日話し合いが続くだろう……だがそれも仕方ないと割り切れる。だが、唯一願うのは……。
「ガープがまた動かないといいですね」
「全くだ」
普通の悪霊なら問題もないが、ガープ達が動けば国全体で動かなければならない。出来ればマリア7世の来日はもう少し遅れさせて欲しかったが……そうも言ってられない。願わくば、マリア7世の来日時にガープが再び動き出さない事を心から祈るのだった。
リポート29 新しい生活 その2へ続く
今回は前回の話の補足回となります、次回からはほのぼの、のほほんとした話を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い