GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド   作:混沌の魔法使い

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その2

リポート29 新しい生活 その2

 

~横島視点~

 

氷室神社から戻って来て2日。俺は毎朝の日課である散歩とランニングをサボってリビングで仰向けに寝転がっていた。

 

「なーチビー、いつの間にか俺がメイド好きでコスプレさせてるってさー、やばくね?」

 

「みむう?」

 

そうだよな、チビに言っても判らないと思うんだけどさ……昨日チビノブとノッブちゃんのメロンパンを買いに行った時俺の家にメイドさんが出入りしているらしいけどどうしたんだい?とパン屋のおじさんに言われた。

 

「?」

 

庭の掃除をしてくれていたルキさんと目が合って、手を振ってくるので振り返す。俺は良く判らないけど、オールドスタイル?とか言う古いメイド服で、コスプレとも程遠いのが良かった。もしそうでなければ、歳近い少女にメイド服を着せて働かせているとかとんでもない奴になっていたと思う。

 

(まぁその誤解は直ぐに解けたんだけど……やっぱりなんかやるせない)

 

これが中学の時みたいに女の人にナンパを繰り返していた俺ならそういう悪い噂も広がったかもしれない、だけど自分で言うのもなんだけどかなり落ち着いたから親父とお袋が俺を心配して海外から頼んだハウスキーパーと言う話になっていた。シズク?シズクは従兄妹だろうという噂だ、シズクもそれを知っているが修正するのもめんどくさいと言う事でそのままにしている。でもその内、シロとタマモの話も出てきそうで、その時はどうするかなあと思っているとふとあることが脳裏を過ぎった。

 

「あのさ、シズク。やっぱりルキさんも神魔?」

 

「……当たり前だろ?」

 

ですよねールイさんのメイドさんだから間違いなく神魔だ。外見は歳近くても実際は俺よりも遥かに大人……窓の外からメキリと言う音がして、視線を向けるとルキさんが信じられないほど優しい顔で箒をへし折っていた。俺は慌てて何度も頭を下げた、するとルキさんは笑ってくれたが、目は全く笑っていなかった。

 

(……殺されると思った)

 

やはり女性に年齢の話題はタブーだ。頭の中で考えるだけも駄目だと悟り、俺は2度と女性の年齢を詮索するのをやめた。

 

「みーむーうー」

 

「ぷぎ」

 

散歩ー散歩ーと言わんばかりに鳴くチビ達、普段より少し遅い時間だけど……どうせ学校に行くことは禁止されている。

 

「シズク、ちょっと散歩に行ってくるわ」

 

「……余り遠くまで行くなよ」

 

心配そうなシズクに判ってると返事を返し、ジャージに着替えているとリビングの扉が勢いよく開いた。

 

「散歩なら拙者も行くでござるッ!!」

 

「はいはい、じゃあシロも準備しろよー?」

 

まだ寝巻き姿なので着替えて来いよと言って、チビの首輪にリードを繋ぐ。そして続けてうりぼーには首輪ではなく胴体に付けるハーネスを付ける。

 

「チビノブはー……聞くまでも無いな」

 

【ノッブウ!】

 

準備完了とピースサインをするチビノブも散歩に参加っと、ランタンは弱っているようなので机の上に置いて置く事にする。そのかわりにまだ寝ているようだが、牛若丸眼魂をGジャンの胸ポケットの中に入れて持っていくことにする。

 

「みー♪」

 

「ぷっぎーッ!」

 

【ノーブーッ!】

 

河原まで軽いランニングをして、リードを外すと楽しそうに追いかけっこを始めるチビ達。悩みとかそういうのも一切なさそうで楽しそうで、見ているだけで楽しくなってくる。

 

「せんせー、もう少し遠くで良いと思うでござるよー」

 

「俺病み上がり」

 

俺の言葉にあっと言うシロ、木の枝が太腿を貫通していたのだから一応重症人だ。今日も昼間からナイチンゲールさんのいる病院に行く予定なのだ。

 

「……せんせー、拙者。あの先生苦手でござる」

 

「言うな、俺も苦手だ」

 

殺してでも治療するって目的と手段が逆転していると思う。でも親身になって相談に乗ってくれるし、薬も出してくれるし言動は過激だけどそう悪い人じゃないと思う。

 

【文句を言うな、あれほど腕のいい医者はそうはいないぞ?】

 

「でもさ、怖いんだよ」

 

心眼も認めるほどに良いお医者さんと言うのは判るんだけど、腕を折るとか、足を折るとか普通に言うから怖い。

 

【英霊だからな、戦争当時の記憶が強いんだろう。治療しているのに、戦場に戻ろうとする軍人を止めるには足を折るしかなかったんだ】

 

「俺はそこまでやらないけどなあ」

 

「ポチが逃げようとするのが原因ではないでござろうか?」

 

病院に行く度に逃げようとしているポチさんか……確かにその姿と記憶の中の兵士が合致して強攻策に出ているのかもしれない。

 

【とりあえず、病院に行ったら大人しくしている事だ】

 

それは言われるまでも無い、ナイチンゲールさんがいる時に無茶をすれば物理的に曲げられかねない。あ、でも1つ気になる事があった。

 

「ナイチンゲール式医療術を教えてくれるって言ってたけどどう思う?」

 

【それは少し考えさせてくれ】

 

「拙者はプロレス技を使うせんせーはちょっと嫌でござる」

 

確かになぁ、でもプロレス技に似ていても人型には有効かもしれないなら、覚えておいて損は無いのかなと思っていると背後から声を掛けられた。

 

「おや、横島君。おはよう」

 

「あ、唐巣神父。おはようございます」

 

首にタオルを巻いてランニングをしていた唐巣神父に声を掛けられ、頭を下げる。唐巣神父はタオルで汗を拭い、後ろを振り返る。

 

「ピート君!ペースが遅れているぞッ!30キロ程度で息が上がってどうするッ!」

 

「す、すみませんッ!」

 

その怒号にピートの謝罪の声が聞え、少し遅れてピートが公園に入ってきた。

 

「はぁ……はぁ……お、遅れました」

 

「霊力と魔力に頼りすぎだよ、身体強化を使う事を当たり前と思ってはいけない」

 

【確かにそのとおりだな、元々膨大な霊力と魔力を持つピートだ。基礎がおろそかになっていないとは言えないな】

 

唐巣神父と心眼の厳しい言葉にすみませんと謝罪するピートはその場にへたり込んでタオルで汗を拭っている。

 

「随分絞られてるみたいだな」

 

「あ。横島さん……ええ、東京にも木人と昆虫が出たんですけど……身体強化を阻害されまして」

 

阻害?俺達はそういうのは無かったけどと首を傾げていると唐巣神父が教えてくれた。

 

「妙神山で鍛え上げたからね。美神君達レベルの身体強化を崩す事は相手にも出来なかったのさ、だけどピート君や雪之丞君達は駄目だったよ。今頃三蔵法師様に鍛えなおされているだろうね」

 

そっか、俺達の方も大変だったんだけど……ピート達も大変だったんだなとしみじみ思った。

 

「横島さんは今日は学校は?」

 

「ナイチンゲールさんの所に診察の予約が入ってる」

 

俺の言葉に沈鬱そうな顔をする2人にやっぱりナイチンゲールさんは危険人物って言う認識なんだと改めて理解した。

 

「まぁ余り無理をせず、今は身体を休める事だよ。さ、行くぞ。ピート君、後10キロだ」

 

「は、はい!横島さん体調が回復したら、学校に1度顔を見せてくださいね。愛子さんが心配してましたから」

 

ピートの言葉に判ったと返事を返し、軽くストレッチをしながら立ち上がる。

 

「シロ、霊力組み手やろうか?」

 

「拙者は良いでござるが……心眼殿はどうでござるか?」

 

【……余りやらせたくはないが、霊力の循環と言う意味ではいいか。正し2分だけだぞ】

 

心眼の許可を得てから、俺とシロは朝の澄んだ空気の中、妙神山で学んだ霊力組み手を始めるのだった……。

 

 

 

~愛子視点~

 

ピート君がボロボロの有様でHRギリギリの時間に倒れこむように教室に入ってくる。

 

「おはよう、また朝からトレーニング?」

 

「愛子さん、ええ……正直今回の事でも、前の事でも僕は……「おはよう……ございます……じゃー……」ふっぐうう……ッ!!!」

 

ピート君が最後まで言う前にタイガー君が教室に入ってきたが、そのまま倒れこんでピート君が苦悶の声を上げる。

 

「はい、男子救出!急いで急いで」

 

手を叩きながら言うと運動部の男子が立ち上がり、タイガー君を起こして、その下からピート君を引きずり出す。

 

「学校の時はもう少しセーブした方が良いと思うわよ?」

 

「……ははは、そんな事を言ってる時間がないですから」

 

「また役立たずでしたけん」

 

東京を何度も襲っていた地震と木で出来た人と巨大な昆虫による襲撃事件。それに2人も参加していたのだが、役に立たなかったというよりも見習いのGSでは出来る事が無かったのだ。

 

「お父様の言う事も聞かないから駄目だよ、自分で納得するまでほっておいてあげて」

 

シルフィーちゃんの言葉に私はこれ以上何もいえなくて、判ったと返事を返すのがやっとだった。

 

「あ、そうそう。朝横島さんに会いましたよ」

 

お昼休みの時に屋上でお弁当を食べているとピート君が思い出したように呟いた。

 

「え!本当?横島君東京に戻ってるんだぁ……そうかあ」

 

目を輝かせるシルフィーちゃんに顔を顰めるピート君。前みたいに横島君の血を吸おうとすることはなくなったけど……色んな意味でやばい方向に進化してしまった気がする。

 

「学校に来ないって事は療養中ですじゃー?」

 

「……ナイチンゲール先生の所だって」

 

その言葉にタイガー君が顔を引き攣らせた、ナイチンゲール先生……クリミアの天使と呼ばれたフローレンス・ナイチンゲールさんが英霊となって東京にいるけど、話を聞くだけでも相当な人らしいので心の中で南無と呟いた。

 

「横島さんはやっぱり怪我を?」

 

「元気そうだったけど、足を引きずっていたから多分足を怪我したんだと思う」

 

ピート君から横島君の状況を聞いて、凄く心配になったけど私は学校から出れないし……机を背負って会いに行くのも迷惑だろう。

 

(まだかな)

 

こんな事を言ってはいけないが、大地震。これを私は待っていた、私が変われるかもしれない大きなチャンス。これを私は待っていたのだが、周りの被害が余りにも大きくてそれを楽しみにしていた私は正直そんな考えを抱いた自分を恥じていた。

 

「元気になったら学校に来るって言ってましたから、近いうちに学校に来てくれると思いますよ」

 

「そう……ね、でもあんまり無理はして欲しくないかな」

 

横島君に会いたいのに、会うのが怖い……なんでこんな気持ちになるのかなと思いながら楽しそうに食事をするピート君達を見つめながらそう思うのだった。

 

「随分と待たせてしまったようじゃな」

 

そしてその日の放課後、ドクターカオスとマリアさんとテレサさんが尋ねてきた、その手には凄まじい神通力を放つ木片がある。

 

「……これで私は机から解放されるんですか?」

 

「それは少し違うかの、机とこの木片がお前さんの寄り代になる。どちらかが砕けてもどちらかが存在していればお前さんは死ぬ事は無い」

 

机から離れることが出来る、自由に歩ける時を待っていたと言うのにいざそうなると怖い。なんと自分の都合の良い話しか考えていなかったのだろうかと地震を待ち侘びていた自分が酷く醜く思える。それでも……それでも私は。

 

「よろしくお願いします」

 

怪我人が増えて欲しいと思ったわけじゃない、ピート君達が自分達の無力さを思い知って欲しいなんて思ってもいない、ただ私は……。

 

(横島君の隣を歩きたいだけ)

 

横島君を好きな人は沢山いる、その中に私が入れるなんて思ってはいないけれど……それでも普通に横島君の隣を歩きたいと思うのは人間じゃなくても許されることだと思う。

 

「判った。では始めるぞ、何心配する事はない。直ぐに済む処置じゃ」

 

机の上に置かれた木片から零れる光が机を通じて私に伝わってくる。ずっと感じていた重みが溶ける様に消えて、身体が浮き上がるような感覚を感じたそのとき。

 

「そおいッ!!!」

 

「お前馬鹿!マジで止めろッ!?」

 

この状況で一番聞きたくない、アルテミス様の声とオリオンの声が教室の中に響いた。そして……

 

「あ……」

 

「あって何!?何なんですか!?」

 

「……ダイジョウブダヨ?ツクエカラハハナレラレタヨ?」

 

「なんで片言ッ!?待って待って!パンッ!ってパンって破裂するッ!?」

 

「霊力増大してます!」

 

「霊力安定開始ッ!!」

 

凄い力が私の中に雪崩れ込んできて、マリアさん達の慌てた声を聞きながら私の意識は光の中に消えていき、完全に意識が途絶えるその前にアルテミス様の声が聞えた。

 

「私の巫女ゲットー♪」

 

「いや、すまんね。とりあえず、あれだ。頑張れ」

 

楽しそうなアルテミス様の声と心底申し訳なさそうなオリオンの声を聞いて、私は自分が呪われているのかなと真剣に悩むのだった。

 

 

 

 

~柩視点~

 

閉じていた目をゆっくりと開く、予知に急に割り込んできた映像を見て僕はクッククッとこみ上げて来る笑いを抑えることが出来なかった。

 

「おめでとう、お前はもう逃げられない」

 

「急にどうしたんですの?」

 

くえすが不思議そうな顔で尋ねてくる、満月の予知の日。呼んでもないのにくえすは僕の家を訪ねてきた。まぁ、その理由は判っているけど藪をつついてなんとやら僕は賢い女の子だから黙っておくさ。

 

「はい、どうぞー。コーヒーでいいわよね?」

 

「ありがとうございます。ゴモリー様」

 

「もー様付けなんて硬いなあ、ビュレトと関係者ならゴモリーちゃんで良いわよ」

 

「歳を考えろ馬鹿」

 

「ひっどーい!こんなにピチピチなのに」

 

ピチピチなんて言う死語を使う辺りに年齢が滲み出ていると思うが、外見年齢は20歳くらいだから本当に見た目だけはいいんだよね。

 

「それで逃げられないって誰の事ですの?」

 

「机妖怪さ、アルテミスが割り込んでとんでもない事になってるみたいだよ」

 

でも人を洗脳するような机妖怪にはお似合いの結末だと思う。

 

「ああ。あのスイーツの」

 

「クヒヒ……君に人の事を言えるかな?」

 

「ああ?」

 

「おお、怖い怖い」

 

今完全に目が据わっていたくえすをからかうのは本当に命がけだね。まぁ、楽しいから止めないんだけどさ。

 

「アルテミスは結構良い子だけどね」

 

「……あの机の中が気に入っただけじゃないの?」

 

「そうよ?甘しょっぱい恋愛って私大好きなの」

 

……神魔って皆暇人なんだな、まぁ僕としては家の掃除とか、ご飯も用意してくれるから文句無いけどさ。

 

「それで今回の予知はどうでしたの?」

 

「クヒヒ、心配しなくても大丈夫さ。暫くは大きな事はないよ、暫くは」

 

首に巻いたチョーカーを触りながらそう呟く、満月で力が増幅している時に何も見えなかった。つまり、それは暫くは安全と言う事だ……もしくは逆の発想で僕の予知では感知出来ないほどの大きな事件と言う可能性もあるが……それなら僕は気絶しているから多分それもないはず。

 

「そうですか、ではその……あのですね」

 

「……横島と仲良くしたいなら、率先して動いた方がいいよ。会長殿も動いたんだろう?」

 

「知ってたんですの?」

 

「クヒヒッ!昨日夢で少しね」

 

洞窟で抱き合ってる姿は正直驚いて飛び起きるレベルだったが、流石にそれは口にしない。しかし会長殿までもが……まぁ、それなりに好意を抱いていたのは知っていたし、好意を抱いて行為に走らなかったから御の字と考えるべきだと思う。

 

「ふーん、横島君って結構モテる見たいね、何もないなら良い加減に紹介してよ」

 

「……まぁ、いいけど暫く待ったほうがいいよ」

 

まだ待つのー?と駄々っ子みたいな口調のゴモリーに少し苛っとする。愛を得る方法を知る魔神だ、男に愛される好かれるという技術を全て持っているゴモリーを横島に会わせるのは正直凄く不安ではある。文句は言わないけど、多分くえすも同じだろう。

 

「明けの明星が横島の家に行く光景が見えたけど……クヒヒ。出会わせたいかい?」

 

予知なのに割り込んできて邪魔をしないでくれと言われたんだよと言うとくえすとゴモリーも納得したようにうなずいた。

 

「止めておきましょう、命は惜しいですからね」

 

「遊び道具にされる趣味は無いし、のんびり時間を見て会いに行きましょうか」

 

誰も好き好んでルシファーに関わる者は……あ、いるわ。横島は多分凄い神魔くらいは気付いているけど、多分全然気にしていないと思う。

 

「ルイ様の遊び道具になってる人間って聞くだけで私は凄いと思うんだけど」

 

「クヒヒ、ポーカーで勝ったらしいよ?」

 

「嘘本当ッ!?私ペンダントとイヤリング取られてるから、横島君取り返してくれないかしら!?」

 

……神魔は本当に暇人なんだね。ゴモリーを横島に紹介すると、ルシファーに会う。邪魔するなと言われているから、会いたくは無い。

 

「クヒヒ、結構横島の家に出入りしているみたいだから今度頼んでみたら?」

 

「そうね、そうしましょうか。また巻き上げられるのは嫌だし」

 

余裕綽々のゴモリーが顔を引き攣らせているのが面白いと思いながら、コーヒーを啜りながら考え事をしているくえすに声を掛ける。

 

「会長殿は肉食系だよ、蛍がへたれている間に動いた方がいいよ」

 

「ちっ、知ってますわよ。でもいざ誘うとなるとどうすればいいのか判らないんですわよ」

 

魔法の事しか考えてないから女子力皆無のくえすだもんねと思ったが、それを言えば殺し合いになりかねないので喉元まで来た言葉を飲み込む。

 

「デートに誘うのね、面白そう。相談に乗ってあげましょうか?」

 

「……柩は良いんですの?」

 

「だって柩ちゃん、拘束されるのが良い「黙れッ!」ちょっと特殊な性癖だから、私の助言意味無いし」

 

くえすがドン引きした目をしているけど、性癖は人それぞれ、口を挟まないで貰いたい物だ。

 

「1度横島君に会った後になるけど……ふふ、アドバイスしてあげようか?」

 

「……お願いしますわ」

 

とりあえずくえすがゴモリーの助言を聞いて、本気になりそうだから暫くそれを見て楽しむ事を僕は心に決めたのだった。

 

 

 

 

~アシュタロス視点~

 

琉璃が横島に好意を表明したから焦って行動に出たくえすだが、それに対して蛍はと言うと……

 

「ふう、お父さん。エンジンの方はどう?」

 

「大分安定しているね、良い感じだよ」

 

気を静める為に横島のバイクの改造を行っていた、こういう所が蛍のへたれたる由縁なのだが、私はそれを口にしない。何故ならば、それを言えばスパナの一撃が待っているからだ。

 

「しかし、琉璃君が横島君に好意を寄せるとはね」

 

「元々そんな素振りはあったけどね」

 

6.2倍から2.5倍と相当倍率が下がっているのでそれだけ本気って事と横島君が好意的に思っている事は言わない方が良さそうだ。

 

「それでデートのプランも考えないでバイクでいいのかな?」

 

「ふっふっふ、これが私のデートプランよ。横島とツーリングするの」

 

一緒に遠出するの楽しみだなーと楽しそうな蛍だけど、くえす君もバイクを持っているから追いかけてくる可能性は考えていないんだろうなと思ったが、自分で気付くべきだと思ってそれも口にしない。

 

「ふう、これで良しっと油を流してくるね、お昼から病院だし」

 

横島君達全員もナイチンゲールに診察してもらう予定になっている、時間が掛かるからお昼からの予定なのでこうしてバイクのメンテをしていたが、時間的にそろそろ出発の準備をしないと予約している時間に間に合いそうも無い。

 

「了解了解、ゆっくりお風呂に入っておいで」

 

ヘルズエンジェルとのレースで中破したバイクは今、人間界で手に入る素材ではなく全て魔界産である。そうでなければ、ルイ様から提供されたエンジンに耐えられないのだ、いくつか偽装を施すから大丈夫だと思うが……それでも僅かに不安はある。

 

「ふう、やる事が多すぎる」

 

ドクターカオスと協力して、量産型レブナントが使っていたと言う篭手の複製に、単独では使えないと言うくえす君の眼魂の分析。それにガープ陣営にもぐりこんでスパイ活動に入るまでの人間達に必要だと思われる準備。やる事は山ほどあるのに、どこまで備えればいいのか判らず、思わずぼやきたくもなった。

 

「いや、そんなことを言っている場合ではないな」

 

幸い霊力・神通力・魔力・竜気を混ぜた実験は何も起こらなかった。つまり今の段階では横島君には何の影響も無いということが判明したのだ、それだけでも私としては御の字だ。そんな事を考えていると電話がなる、少し嫌な予感を感じながら受話器を手にする。

 

『もしもし、優太郎さんですか?専門じゃないと思うんですけど、1つ頼みたい事があるんですよ』

 

電話の主は琉璃君だった。結構あの子も可愛い顔をしている割に面の顔が厚いな。普通は、1人の思い人を取り合っている相手の父親に電話しようとか思わないと思うんだけど……それとも会長と言う責務とプライベートを完全に分けているって事かな。

 

『うりぼーが乙事主様になったので1度診てもらえますか?』

 

「了解、昼間に横島君が病院に行くと聞いているから私も其処に同行するよ」

 

『すいません、ご迷惑を掛けます』

 

蛍を病院に送っていくついでだ。それに診察には琉璃君も来るだろうし、その時に話を聞けば良いと思う。

 

『それでは失礼します、あ、それと……私は引きませんからあしからず』

 

その言葉を最後に電話は切れた、プライベートもガッツリ混ぜて来ているじゃないか……。これは恋愛雑魚の蛍には荷の重い相手かも知れないな……まぁ、それで蛍が諦めるとは思えないので大丈夫だとは思う。

 

「問題は横島君か」

 

横島君は押しに弱いからなあ……琉璃君にぐいぐい押されるとうんっと行ってしまいそうで怖いな。

 

「さてと私もシャワーを浴びるかな」

 

病院に行くのに油塗れの格好で行く訳にも行かない、本当は蛍を送っていくだけのつもりだったが……琉璃君に会うならちゃんとスーツを着ていくかなと思い、スパナを工具箱に戻して私も地下研究室を後にした。

 

【……ピカァ】

 

アシュタロス達がいなくなり、暗くなった地下研究室でくえすが横島に渡した「ウィッチ眼魂」の瞼が開き、その目から怪しい光を放つ。その光の先はまだ整備途中の横島のバイクへと向けられているのだった……。

 

 

 

 

リポート29 新しい生活 その3へ続く

 

 




ちょっと怪しいフラグを2つ、3つと用意して今回はここまでとしたいと思います。くえすの眼魂がバイクを狙う、一体何魂に進化しようとしているんだとか、アルテミスにそいやッ!された愛子とか、ゴモリーが横島にロックオンしたとか、不信なフラグを用意しつつほのぼので書いていこうと思います。次回はデンジャラス婦長リターンと言う事で、よろしくお願いします。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

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