GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート29 新しい生活 その5
~柩視点~
横島の家に行くわーと鼻歌交じりで服を用意しているゴモリー、愛の女神だけあってそのセンスは間違いなく1級品だとは思う。
「あのさ、ボクこういうの嫌なんだけど」
「なんで?凄く似合うわよ?」
ふわふわとしたドレス……くえすがよく着ているドレスに似ているけど、それよりももう1段階ふわふわしている……世間一般的にゴシックロリータと呼ばれるそれはボクにはとてもじゃないけど似合わないと思う。
「こんな隈だらけでぼさぼさの頭で?」
「隈はお化粧で隠してあげるわ、髪の毛も私が綺麗に整えてあげるからね」
嫌だというボクの気持ちは完全に無視しているゴモリー、これはもうどう足掻いても着替えさせられると理解してしまいボクは深く溜め息を吐くのだった。
「……死にたい」
「あら、死にたいなんて言ったら駄目よ?柩ちゃん。美しいって言うのは周りの視線を奪うのよ」
普段と同じ道を歩いているのにあちこちから聞こえる声がうるさい、声を掛けろよとか言う声が聞こえてくる。だからこんな服を着るのは嫌だったんだ。
(横島君が可愛いって言ってくれるわよ?)
小声で言うゴモリーにうっと呻く、周りの人間がこれだけ反応するのならば確かに横島も可愛いと言ってくれるかもしれない。
(違う違う)
横島の事は確かに好いていると思うけど、彼氏とか、彼女とかそう言うのになりたいわけじゃなくて……。
「……何?」
「べっつにー♪」
ニマニマと笑っているゴモリーと回りの声に苛々としながらボクは横島の家へ向かう足を早めるのだった……。
「横島に迷惑を掛けないと約束しろよ」
「だいじょーぶ、大丈夫」
1回横島とも会っている筈だけど、その時は隕石が迫っていて禄に話している時間が無かった。だからゆっくり話をしたいというのは判るけど、この頭の中がお花畑のゴモリーがなにをするつもりか心配でしょうがない。
「はーい、あれ……柩ちゃん?今日は随分と可愛い格好してるな」
チャイムを押してすぐに姿を見せた横島がボクを見て可愛いと声を掛けてくる。その言葉を聞いて胸がバクバクして、顔が赤くなるのが判る。
「でしょー♪柩ちゃんは可愛いわよねー。貴方見所があるわ」
「……えっと、ゴモリーさんでしたっけ?」
「あら私の事もちゃんと覚えててくれたんだ。嬉しいわ、所で……家に入っても良いかしら?」
どうぞどうぞと家の中に招き入れてくれる横島。玄関に入るとうりぼーがこっちを見つめていた……いつもと同じ可愛い姿なんだけど、妙に威圧感があるように感じる。
「別に貴方のご主人様をどうこうしようなんて思って無いわよ?」
「……ぴぐう」
短い尻尾を振りながら横島の後を追って跳ねるように歩いていくうりぼー。その姿が見えなくなってやっと一息つけた。
「ゴモリー、今のは一体……」
「どうも本当の意味で神獣になったみたいね、今はまだ不安定だけど……神殺しの猪って知ってる?」
「……乙事主」
「せいかーい、賢い柩ちゃんは褒めてあげるわ」
偉い偉いと頭を撫でられる、少しだけ満更でもないと思ってしまった自分に苛っとしながらその手を振り払う。
「前の予知じゃそんなことは無かった」
「判らないの?今のこの世界は不安定、未来なんて簡単に形を変えるわよ?」
うりぼーが乙事主の転生である事は判っていた。だけど、まさかあんな威圧感を持っているなんて思っても見なかった。
「まぁ変な事をしなければ大丈夫よ、あれ半分寝てるみたいなもんだし」
「一番変な事をしそうなゴモリーに言われたくない」
寿命を延ばす為のチョーカーだけど、もしかしたらこれ外した方がボクの身を護ると言う意味では良いのかも知れないけど……。
(寿命が縮むのはなぁ……)
どうせすぐ死ぬと諦めていたのが、寿命が延びると知ってそれをむざむざ自分で手放すのはと悩むのと、横島の贈り物だから付けていないのは横島にも悪いし……。
「やっぱり横島君に飼われたい?」
「……死ねッ!」
耳元でとんでもない事を言ってくれたゴモリーの尻に照れ隠しの蹴りを叩き込む。た、確かにそう言う気持ちが無いとは言い切れないけどそれを他人に言われるのは耐え切れないのだった……。
~ゴモリー視点~
柩ちゃんを少しからかい過ぎてお尻を蹴られてしまったけど、それが照れ隠しと言う事は判っている。
(やっぱりこの年頃の女の子は複雑怪奇だわぁ~)
柩ちゃんの根底には拘束願望があるだから首輪と言う物を欲しいと横島君に言ってしまったのだ。苛められる事を望む被虐体質……彼女にとってはそれが世界との接し方だったのだろう。神魔をも越える予知能力、そんな能力を持っていれば寿命は間違いなく削られる。常に世界を見ていて、そして世界に精神を削られる。それが彼女のこの歪んだ性癖と性格を作り出したのだろう。
(見極めないとね)
横島君がどんな人格で柩ちゃんをどう思っているのか、私はそれを知りたい。
「……神魔か、何をしに来た?」
「柩ちゃんの付き添いよ。別に何もする気は無いわ」
……思ったよりも凄いわね、龍神の圧力が凄い……完全に私達を警戒している。龍神にここまで愛されるってどういう人間かと正直呆れてしまう。
「シズク、お客さんだからクッキーとか出してー」
「……お前は……ああ、もう良い」
横島君は能天気って感じね、もっと私に色々言いたかったんだろうけど、何を言っても横島君が警戒心を抱かないと判断したのか呆れた様子でキッチンに入っていく龍神。
「えーっとじゃあ、改めて横島忠夫です」
「まぁご丁寧にどうも、ゴモリーです」
礼儀正しくはある見たいね、それと胸元を開いているドレスを着ているけど、それに目を奪われかけている所から普通に女が好きそうだ。
「みむう?」
「ぷーぎゅー」
【ノノーブ!】
「ああ、チビとうりぼーとチビノブです」
やーっと短い手足を振る小動物軍団。見た目は可愛いけど、その力は凄まじい。種族的なものは完全に別物ね……
「くひひ、今回も元気そうで何よりだよ」
「心配してきてくれたんだ、ありがとう。やっぱり柩ちゃんは優しいな」
おーっと、無意識の先制ブローだ。人にお礼を言われる事が少ない柩ちゃんには効果は抜群のようだ、恥ずかしいのと嬉しいのと複雑な感情を持て余しているのが良く判るわ。
「……お茶とクッキー」
「ありがとなシズク、っとどうした?」
「……別に?」
クッキーの皿を机の上に乗せ紅茶のポットを載せると横島の隣に座った龍神。その目は鋭く、明らかに私を監視している。
「……むう」
柩ちゃんが面白くなさそうにしているけど、そう言う面では正常に嫉妬しているのよね。
「横島君、柩ちゃん可愛い格好してるでしょ?」
「はい、一瞬誰か判りませんでしたよ。余りに可愛くて」
「……」
おっと、龍神が今度は面白くなさそうな顔をしている。短いやり取りだけど、大体横島君の周りの関係がわかって来た。アシュタロスがトトカルチョなんてやるから女好きの助平かと思ったけどそうではないみたいだ。
「んふふ、貴方も可愛いから今度こういうドレス着て見る?」
「……良いのか?」
「いいわよ~女の子は可愛い格好してないとね」
顔色は少し悪いけど、龍神も凄く可愛い顔をしているので色々服を着せてみる楽しみがある。
「くひひ、そういえば予知で見てしまったんだけど……半裸で会長殿と一緒に1晩過ごしたのに何も無かったんだね?」
柩ちゃんの言葉に横島が噴出して咽こんでいる、半裸で男女が1晩いたのに何も無い……横島君が誠実なのか、それとも……。
「もしかして年下にしか興奮しないとか?」
「ごぼあっ!げぼあぼらーたーああっ!?!?」
やだ、この子面白い(確信)。でも会長殿ってあの子でしょ?神代琉璃。あれだけの容姿の整った子はそうはいないと思うけど、そんな子と1晩半裸で過ごして何も無いとかあれ位の年齢の男の子じゃまずありえないと思うのよね。
【余りからかうのは止めてやって欲しい、横島は初心なんだ】
バンダナから浮かんだ瞳から声がする、初心なんだって言われると私としてはからかいたくなって仕方ない。
「あ、あのですね……そう言うのは、もっとこう……」
ごにょごにょとよく聞き取れない声で何か呟いている横島君。どうも、そう言う行為に関しては結構頭が固い見たいね。
「年下趣味なら、ボクはどうかな?」
「……アノオレデアソンデマス?」
横島君の目がめちゃくちゃ泳いでいる柩ちゃんの流し目にうろたえているのを見る限りでは、年下趣味って言うのもあながち間違ってなさそうに思えるけど……ここは確かめておきたいわね。
「あんまりからかったら……あら?」
意図して無い不測の事故ですよーと言う感じでドレスの紐が解けて脱げてしまったという体を装う。女神の黄金比率の身体と私の色気だ、女に興味が無い男さえも魅了すると自負するこの身体を見て、横島君がどんな反応をするのかを見る。
(切れて襲ってくるかしら?)
襲い掛かってきても組み伏せる事が出来る、どんな反応をするのか楽しみに見ていると横島君は顔が真っ赤になったと思うと、次の瞬間鼻から凄まじい勢いで鼻血を噴出した。
「ぶぼあっ」
「ご、ゴモリー何をしてるんだ!?ま、まさかゴモリーまで横島が欲しいとか言わないよな!?」
「……全く初心にも困った物だ」
下着が丸見えになり、横島君が鼻血を出して昏倒し、柩ちゃんが焦りまくり、龍神がしょうがない奴だと言わんばかりに肩を竦める。
「うふふ、ごめんなさいね。ドレスの紐が少し緩んでいたみたい」
「いひゃいは、そひょ、ひゅいひゃません」
鼻にティッシュを詰めている横島君がぺこぺこと頭を下げる。だけどこれは私から仕掛けたものなので、その反応は正直驚きだ。
「横島の助平さには困ってしまうね。くひひ……」
困ってしまうと言いつつも気が気では無い表情をしている柩ちゃんが可愛い、だけど今の様子だと大人の女性にしか興味が無いように思える。
「ちょっとトイレを借りるね」
そう言って柩ちゃんが立ち上がる、これはチャンスだと思いそのスカートを掴んで思いっきり捲りあげる。ドレスと言う事でガーターベルトと少し大人っぽい下着姿。未成熟な柩ちゃんがこういう格好をしているからこそ、その破壊力は凄まじい筈だ。
「は?」
「ぶふっ……うーん……」
「みみーむう!!」
「ぴぎゅう!!」
【ノブー!】
「……血を出しすぎたか」
捲り上げられたスカートに柩ちゃんが困惑した声をあげ、横島君がまた鼻血を出して引っくり返り、横島君の側の小動物が慌てふためく、そして龍神が仕方ないなと言いながら座布団を半分に折り曲げて横島君の頭の下に入れる。
「良かったわね、柩ちゃん。意識してくれてるみたいよ?」
「……こ、このお、馬鹿魔神ッ!!」
羞恥心と横島君が意識してくれた事が嬉しくて、凄く複雑な表情をしている柩ちゃんの回し蹴りを顔面に喰らい、後ろにひっくり返りながら
(今度は遊園地とか映画に行きましょう)
横島君も柩ちゃんも可愛くてとても気に入ったので、今度はもっと楽しい所に2人を連れて行こうと思うのだった……。
~愛子視点~
都内の一軒家の前に佇む長い黒髪を腰元まで伸ばした少女……「愛子」は手にしている地図と目の前の家を交互に見つめていた。
「き、来ちゃった」
机からやっと開放されたのはいいけど、アルテミス様の巫女とか訳の判らない事になっているけど……歩けるようになって、学校から出れると聞いて私が一番最初にやって来たのは横島君の家だった。
(どうしよう……どうしよう)
訪ねてきたのは良いけど、横島君への課題を渡して帰るのが普通なのかしら、それとも少しだけ横島君の家に上がっても大丈夫なのかしら……。ポストに課題を入れて帰ろうか、チャイムを押すか葛藤していると背後から声を掛けられた。
「あれ?愛子だ、よー久しぶりだなあ」
「……お前、何になった?」
「うわ。頭砂糖菓子が居る」
……辛辣!1人だけ辛辣だけど、私の机の中を見たタマモちゃんならばその反応は判らないでも無い。
「こんにちわでござるよー」
ぶんぶんと手を振るシロちゃんに苦笑し、深呼吸を繰り返して気分を落ち着けてから振り返る。
「横島君も元気そうで良かったわ。それでえーっと散歩?」
横島君の片手には買い物袋、そしてもう片方の手にはリードにつながれたうりぼーと散歩帰りって感じがする。
「そうそう、チビノブがメロンパンを欲しいって言うからさ」
【ノッブー♪】
両手をピコピコ振る妖精……かしら?チビ達は見たことあるけど、この子ははじめて見た。
「まぁ、立ち話もなんだし家に上がってくれよ」
「え?良いの?」
自然な流れで家に上がってくれよと言われ、断るのもおかしな話だと思い。私は横島君のお言葉に甘えて、家の中に入るのだった。
「俺チビの足とか拭いてから行くから、先に部屋の中行ってて、シズクー温かいタオルー」
「……判ってる」
横島君が玄関に残り、私はシロちゃんとタマモちゃんと一緒にリビングに入ったんだけど……。
(空気が重い)
タマモちゃんの中で私は頭の中お花畑認定だから視線が鋭い。
「タマモー、頭の中砂糖菓子ってどう言う事でござるか?」
止めて下さいお願いしますなんでもしますから、シロちゃんの純粋な視線が痛い。
「恋愛空間なのよ、机の中って言うか……愛子の頭の中」
「お願いします。止めて下さい」
机の中に入れてしまうと強制的に恋愛シミュレーションスタートなのは私でも予想外だったんです。
「愛子殿、面白そうなので拙者も入れて欲しいでござる」
花より団子って感じのシロちゃんも恋愛に興味あるんだとどこか、ぼんやりとそう思った。だけど、スイーツ扱いは私が耐えれなかった。
「態々悪いなあ、本当ありがとう」
「え、あ、ううん。全然いいのよ」
横島君が来て私を吊るし上げる空気は無くなったけど、ジト目のタマモちゃんの視線がずっと背中に突き刺さっていたのは辛かった。
「学校何時くらいから復帰できそう?」
「早くて来週かなあ、ナイチンゲール先生次第だし」
ピート君から聞いてたけどやっぱり横島君の怪我はあんまり芳しくないようだ。
「無理しなくていいからね、皆待ってるから」
無理をして怪我が悪化したら元も子もないからねと横島君に笑いかける。
「ありがと、それとカオスのじーさんが頑張ってくれたんだな」
「うん、これで普通に外を歩けるわ」
ちょっとハプニングもあったけどと笑うと横島君は首を傾げて、何があったのかと尋ねて来る。
「……アルテミス様がちょっと」
「あーなんか判る気がする」
「拙者も判ったような気がするでござる」
悪い人ではないんだけど、頭のねじが少し緩んでいるから……何をしでかすか判らない。タマモちゃんが小声であんた人の事言えるの?って言う声が痛い。
「あの人の巫女になって、なんかこう……神通力的何かが使えるというか……」
机妖怪から別の何かに進化してしまったというか、自分でも上手く説明出来ないけどそんな感じと言うと横島君は酷く複雑そうな顔を一瞬した物のはっとした表情で笑顔になった。
「でもそれで好きに歩けるんだろ?良かったじゃないか、これでまた遊びに行けるな」
「え?良いの?」
まさかの横島君からの誘いの言葉に笑顔が零れる、タマモちゃんは面白くなさそうにしているけど、この誘いは絶対に受けるべきだ。
「まだ暫くばたばたしているけど、それが終わって学校に行った時にでも話し合おうな」
「う、うん。楽しみにしてる!」
アルテミス様の巫女になってしまったのは計算外だったけど、横島君にデートに誘われたのでこれは間違いなく良かった。だけど……その後学校に戻った私にはとんでもない試練が待ち構えていた。
「なんで遊園地でライトアップされた観覧車の前でええッ!!!」
「凄く素敵だと思うわよ?」
机の中でどんな感じになるかなとシュミレーションをしたんだけど、それが完全に私の願望剥き出しで絶望したし、アルテミス様は素敵と言ってくれるけど、そんな事は考えて無いの筈と何回シュミレーションしても大体同じ最後で自分の恋愛脳に絶望した。
「委員長気質は助平なんだよ、うん。間違いない」
助平心の塊みたいなオリオンに言われて、私は本当に悲しくなってしまうのだった……。
~美神視点~
陰陽寮の見学と言うのは仕方ない、今回の件で陰陽寮に向かう事は決まっていたからだ。だけど私としては許容出来ない点が1つあった。
「かなり予定が早くない?」
『向こうにも向こうの都合があるそうだ。マリア7世の来日の件もある、僕も早いほうが良いと思ったんだ』
マリア7世の来日……恐らく横島君が預けたジャンヌの旗の件だろう。あれは確かに国宝ではあるが、所有権は横島君にある。勿論マリア7世達もそう思っている筈だ、それは横島君に招待状が来ていることでも明らかである。
「まだ完全に回復して無いのよ?」
『……それも判ってる。だが、後回しにすればするほど動きにくくなると思う』
躑躅院と言うのは狡猾な蛇みたいな人物だ。下手に弱みを握らると思うように動けなくなってしまう……早い段階で向こうの要求を呑んでしまったほうが良いと西条さんは判断したのだろう。
「柩に予知をして貰って、それからくえすも同行させるわよ」
『人員についてはある程度の融通は利く、難しいと思うけど遅くても来週の初め、早ければ今週末までには見学を頼んだよ。令子ちゃん』
受話器を元に戻して深く溜め息を吐く、もう少し時間的な猶予があると思っていたんだけどなあ……。
「陰陽寮ですか?」
「うん、遅くても来週の初めにして欲しいって」
今日が火曜日だから時間的な猶予は3日ほどだ、私は溜め息を吐きながら立ち上がりコートに袖を通す。
「ツーリングコースの相談をする約束だったけどごめんね」
「ううん、大丈夫です。お留守番してますね」
本当なら今日は蛍ちゃんが横島君とツーリングをするので、そのコースの話し合いとかをする約束だった。だけどそんな話をしている余裕が無くなってしまったので、申し訳ないと思いながら留守番を頼む。
「戻ってきたらまた相談に乗るから」
「大丈夫ですよ。気をつけて行ってきてください」
バイク初心者用のツーリングの雑誌を手に気をつけてくださいと見送ってくれる蛍ちゃんに背を向けて事務所を後にする。
(まずは柩の所に行って……いや、その必要は無いかしら?)
柩の事だ、自分に関する予知の事と横島君の事に関することは頼まれなくても予知している可能性がある。となれば、まずは琉璃の所に行って……。
「くえすのところにも連絡があったんだ」
派手なエンジン音を立てて停車したくえすのバイクに苦笑する。バイクで来た事に苦笑したのではなく、あの一匹狼気質のくえすが私を呼びに来たってことに驚いた。
「当たり前ですわ。それよりも陰陽寮の事で琉璃に会いに行くのでしょう?時間が勿体無いから早く行きますわよ」
判ってると返事を返しコブラに乗り込む、最近は大勢で移動することが多いからバンをよく運転してるけど……やっぱり私にはコブラの方が性に合っていると思う。
「柩は先にGS協会に居るそうですわ」
「予知を伝えるんじゃなくて、自分で来たんだ。珍しいわね」
柩もくえすと同じタイプで群れるタイプじゃないけど……横島君が関わると積極的に動いてくれる。それは好意によっての物だろう……人を惹きつける横島君が凄いのか、それとも影とか闇を抱えている異性にばかり好かれる横島君の女難が凄いのか……。
(心配になるわ)
そのうち、横島君が後ろから刺されないかなと心配になりながらコブラのエンジンを掛けるのだった……。
美神が横島の将来と言うか、横島が誰かと付き合った時にどうなるかと心配している頃。横島の家では……
「あれ?小竜姫様とメドーサさん、どうかしましたか?」
「いえ、横島さんの様子を見に来たんですよ」
「あたしは横島の家の結界の様子見とうりぼーの観察、それとこれな」
「……魔界レース?」
メドーサが横島に差し出したのはレースのチケットと賭けの倍率表。それを見ている小竜姫は苦虫を噛み潰したような顔をしていた……明らかに何か言いたい事があるが、それを必死に我慢している様子だった。
「そ、ヘルズエンジェルがレースをさせろってうるさいからね、オーディン様と竜神王様が開催する事を決めたのさ。詳しい日程はまだま
だだけど、掛金でレースをするから見に来るといい、息抜きになるしアリスとかも見に来るってさ」
「そう言うことなら見に行くだけ見に行きますね。美神さんに相談してからになりますけど……」
「無理に見に来なくてもいいさ、こういう催物があるって知らせに来ただけだから」
「あ、折角来てくれたんですから少し休憩していってくださいよ」
にこにこと笑いメドーサと小竜姫を家に誘う横島、今日も今日もで横島の家には人外が集まっているのだった……。
リポート29 新しい生活 その6へ続く
次回は蛍のコミュ回、その次のリポートでセカンドは最終回になります。リポート30の内容的には「陰陽寮見学」「白竜寺」本編190話後半、別件含めて200近く続いたGS芦蛍もそろそろ最終回に向けて動いていこうと思います。これからも応援よろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い