GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド   作:混沌の魔法使い

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その6

リポート29 新しい生活 その6

 

~シズク視点~

 

家の前に止まっている2台のバイク。1つは蛍の物で、もう1つはヘルズエンジェルの時に使った横島のバイクなんだが……。

 

(なんだ、これ)

 

バイクから感じる神通力と魔力、間違いなく全うな物ではないことに気づいて思わず溜め息が出る。一緒に乗ってきた優太郎はバイクのキーを渡すと、散歩して帰るとのんびりと帰って行ってしまった。せめて、このバイクがどういう風に出来ているか位は説明しろと心のそこから思ったが、もう歩いて行ってしまったので文句を言う事も出来ない。

 

「……お弁当と飲み物。暗くなる前に帰ってくること」

 

「うん、ありがとう。シズク」

 

横島は安静を申し付けられていたのだが、蛍がナイチンゲールから許可をもぎ取ってきたらしい、あのバーサーカーから譲渡を得るとか案外蛍もやる物だと感心する。

 

「せんせー、せんせー、拙者も行きたいでござるよー」

 

「動物モードなら大丈夫じゃない?」

 

シロとタマモが横島の周りをちょろちょろしながら、自分達も連れて行けと言っているが横島は手で×マークを作る。

 

「俺は初心者だから、あんまり荷物が多いと怖いから駄目。慣れたら、連れて行くから」

 

お前は気付いていないけど、蛍が超勝ち誇った顔をしてるからな?それを見てシロとタマモが必死だって理解しろよ?と言いたくなった。

 

「みむうー♪」

 

「ぷぎ♪」

 

【ノブノブー♪】

 

「よーしよし、大人しくしてるんだぞー?」

 

横島の言葉に楽しそうな鳴き声を上げるチビ達、サイズが小さい事もあり連れて行くらしい。あの3匹がいれば、大概の事は問題なく解決できるだろう。

 

「横島ー、そろそろ行くわよー」

 

「おーう、じゃあ、行ってくるなー」

 

弾ける笑顔の横島と蛍を手を振って見送り、今にも追いかけていきそうな馬鹿2匹の襟首を掴んで家の中に戻る。

 

「……お前達にはやる事があるのが判ってるだろう」

 

「そりゃ判ってるけどさー」

 

「拙者も山の中で遊びたかったでござる」

 

横島と蛍の邪魔する気満々のタマモと子供みたいな事を言っているシロに溜め息を吐いた。

 

「……今の状況を判っているのか?」

 

少しだけ殺気を込めて睨むと2人とも肩を竦めて、申し訳なさそうにわかってると返事を返す。

 

「……陰陽寮なんて所に横島を行かせるのは私は反対なんだ」

 

「それは私も同じよ」

 

私と同じで平安時代を知るタマモも私の意見に同意した。あの時代の陰陽寮でも酷い物だったのに、陰陽術の廃れた今の時代に横島をつれて行くことが心配でならない。

 

「罠の可能性もあるわよね」

 

「……横島を監禁する可能性もある」

 

横島は男だから女を宛がって、その血を残そうとする可能性も十分にある。美神も琉璃もそれを警戒しているのだ、陰陽寮は何でもやる。高島を冤罪で処刑したのだから、それは間違いない。

 

「……一度捨てた者をまた取り戻そう何てするなんて許さない」

 

「それね。もうあれじゃない?陰陽寮潰しても良くない?」

 

「……それは悪事の証拠を見つけてからだ。清姫も召喚してやる」

 

「それ良いわね、あいつ危険だけどこういう時は役立つわ」

 

シズクとタマモが真っ黒いオーラを出しているので、シロはソファーの後ろに避難する。そこには先にいた、牛若丸とノッブの姿もあった。

 

「タマモとシズクがめっちゃ怖いでござる」

 

【龍は情が深いからなあ、いや、あいつは半分へ……ふぶあっ!?】

 

振り向きもせず投げられた氷柱がノッブの額に突き刺さり、ノッブはその場に昏倒した。牛若丸とシロは触らぬ神に祟り無しと言う事を目の当たりにし、2人の悪巧みをソファーの後ろで隠れ、震えながら聞いていた。

 

「呪いって言ってるでござる」

 

【幻術とも言ってますね】

 

「更地!?これ美神殿に言った方が……」

 

【方法は過激でも、主殿を守るほうが……】

 

「……1000年呪う」

 

「馬鹿ね、不能でお家断絶」

 

「……ありだな」

 

「【駄目だ、ストッパーがいない(ござる)】」

 

止めなければならない、そう判っているのに2人の暗黒の瘴気が恐ろしく、何もいえないシロと牛若丸なのであった……。

 

 

 

 

~蛍視点~

 

邪魔者無しで横島と2人きり……チビ達がいるから完全に2人きりとは言えないけど、邪魔者が入らないのは凄く良かった。

 

「蛍の方が運転上手だなあ」

 

「横島はまだ慣れてないからよ」

 

修理がやっと終わって横島の元に来たばかりなのだ。運転に慣れていないのは当然、それにツーリングのコースも初心者向けで非常になだらかなコースを選んだ。

 

「この先に自然公園があるのか?」

 

「そうそう、オープンしたばかりらしいわ」

 

日帰り温泉とお父さんと蓮華が提案してくれたけど、それは流石に早すぎる。夏場なら海とかプールとかも選択肢に入ったけど、冷えてくる時期にプールとか温泉はありえない。少し寒いかもしれないけど、自然公園を目的地にしてツーリングをすることにした。

 

「みーむう♪」

 

「ぴっぐぴぎー♪」

 

【ノッノー♪】

 

初めてのバイクに興奮しているチビ達の頭を撫でている横島。その姿を見ているだけで私も楽しくなってくる、バイクはモータースポーツと言うほどに体力を消費する。今は休憩しているけど、この調子ならお昼前には目的地の自然公園に着きそうだ。

 

「じゃあ、そろそろ行きましょうか」

 

私の言葉に横島が笑顔で返事を返し、横島を先導して再び自然公園への道を走る。ライダースーツにヘルメットと温かい服装をしているので、寒い時期なのにじっとりと汗が出て来るのが判る。

 

(バイクとなれば妨害できるのはくえすくらいだし)

 

空を飛んで追いかけてくれば偶然と言うのは明らかに無理な話だ。となれば、違和感が無いのは車かバイクになるが、オープンしたばかりの自然公園で徹底的に除霊されているので仕事で偶然と言うのもありえない。つまり今日は邪魔されずに横島と過ごせるのだ。

 

「どう?結構良い所じゃない?」

 

「おー緑が綺麗だなあ」

 

自然が豊かな公園で、木で作ったアスレチックや、川に魚を放流しているので魚釣りも楽しめる。それに、ハイキングコースなどもあり東京都内とは思えないほどに自然に溢れている。

 

「みむう♪」

 

「ぷぎゅ!」

 

自然に興奮しまくりのチビとうりぼーに素早くリードを付け、2匹が勝手にどこかに行かないようにする横島。その動きは実に手馴れていて、思わず苦笑してしまうレベルだ。

 

【ノー】

 

「チビノブも離れすぎたら駄目だぞ?」

 

【ノッ!】

 

横島の言葉に敬礼で返事を返すチビノブは横島の隣にぴったり付いて短い足を一生懸命動かして歩いている。

 

「じゃあ、ハイキングコースに行って、お昼にしましょうか」

 

「おーう!」

 

横島が楽しそうに返事を返すのを見て私も笑いながら2人でハイキングコースへ足を向ける。

 

「みみー♪」

 

「ぷっぎゅぎゅー♪」

 

リードがあるので遠くに行く事はないが、普段散歩の時は緩く弧を描いているリードが張っているのを見るとチビ達も楽しくて興奮しているのが良く判る。

 

「お、あれか、アスレチック」

 

「なんでも100くらいの遊具があるらしいわ」

 

「100種類か、凄いな」

 

遠くに見える木で出来たスライダーやターザンローブを見て横島が感心したように呟いた。その姿を見てお昼から行って見る?と尋ねてみると、横島は意外なことに首を左右に振った。

 

「チビ達が遊べないから止めておこうぜ、ボールとかフリスビーで遊ぼうと思う」

 

「判ったわ。今回はあんまり時間もないしね」

 

冬の日暮れは早い、シズクに日が暮れるまでに帰ってこいと言われているのもある。それに今日は横島がバイクに慣れるという目的が最優先だから、あんまり時間を掛けて遊ぶのは良くないわね。

 

「じゃあお昼を食べて休憩したら、そのままピクニックコースに行って遊びましょうか?」

 

「みっむ♪」

 

「ぷぎー♪」

 

横島ではなくチビとうりぼーが返事を返す、今回の計画の2つ目の計画も順調に進んでいるみたいね。

 

(やっぱりチビとうりぼーと仲良くなるのは大事だわ)

 

横島と付き合う場合うりぼーとチビに敵対されていたのでは、良い空気になっても壊されてしまう。横島を攻略するにはまず横島のマスコット軍団を攻略する方が大事だ。

 

【良い森だ、人の手が加わっているが自然の力に満ちている】

 

「心眼にも褒めて貰えるなら私の選択は間違ってなかったみたいね?」

 

【ああ、ここは良い。横島の霊力と合っている】

 

心眼のお褒めの言葉に思わず笑みが浮かぶ、色々考えて何処がいいかなとか頭を悩ませた甲斐があったというものだ。

 

「おおー、これは良いなあ」

 

「ふふ、気に入ってくれたみたいね」

 

ハイキングコースの中腹には広場があって、ここからピクニックコースに行けるようになっている。横島がそこから見える景色に楽しそうな声を上げる。

 

「すげえ綺麗!夕暮れまでいれるなら日暮れを見たいなあ」

 

「それはシズクに怒られるわよ?」

 

私が夕暮れを好きだから横島とよく見るけど、それで横島も夕暮れが好きになっている。確かにここから見る夕暮れは綺麗だと思うけど、シズクにもナイチンゲールさんにも怒られるので、夕暮れ前には帰路に着かなければならないのが残念だ。

 

「そっか、それは仕方ないな」

 

「ゆっくり出来る時に来ればいいのよ。今日は横島のバイクの練習だしね」

 

曲がりや下りが多くバイクの運転の練習コースとしては最適だ。もっと横島が乗りこなせるようになれば、日帰り温泉とかも出来るので横島が早くバイクに慣れてくれることを願うばかりだ。

 

「じゃあお昼ごはんにしようかしら?」

 

「そうだなー、俺腹減ったよ」

 

にこにこと笑う横島達と一緒にハイキングコースからピクニックコースの広場に足を向けた時。横島の側の茂みが動いた、まさかこんなに人の気配が多いのに横島の所にマスコットがと戦々恐々していると茂みの中から声がする。

 

「ぺっぺっ、あーもうッ!草ばっかりで困るわね、あ!見つけたわよ。横島ッ!あんた怪我してるって言うから妹から薬を貰って来てあげたわよ」

 

茂みから現れたのは絹のような黒髪と真紅の吊り目、見た感じ中学生くらいで……あんまり凹凸のない身体つきだ。

 

「あ、イタチちゃん。髪に葉っぱ付いてるよ?」

 

「え!?嘘!ちょっと取ってよッ!!」

 

了解了解と笑って髪の葉っぱをとる横島、その手に気持ち良さそうに目を細めていたカマイタチと目が合った。

 

「初めまして、芦蛍です」

 

「カマイタチの次女よ、よろしく」

 

普通なら邪魔者って思うんだけど……なんか良く判らないけど、この子には凄いシンパシーを感じた。多分カマイタチの方も同じで、手を差し出してくるので私はその手を握り返すのだった……

 

 

 

 

~カマイタチ視点~

 

横島が病院とか言う場所にいっているのは知っていた、よく判らないけど……怪我をしているのだと思い、1度妙神山の家に戻って妹から薬を貰って戻ってきたんだけど、横島の家には人狼と九尾の狐がいて怖くて、それとどうやって渡そうかと思い悩んでいると横島の匂いが遠ざかって行ったので追いかけてきた事でやっと横島と接触する機会があった。

 

「はいどうぞ、まぁ、私の作った奴じゃないけどね」

 

「ありがと」

 

この黒髪の女……蛍だっけ、この女にはなんとも言えない奇妙なシンパシーを感じた。横島に抱いた強烈な主にしたいって言う願望じゃないけど、なんか仲良くなれそうな……上手く説明出来ないけど、そんな気配を感じていた。

 

「はい、チビあーん」

 

「みむう♪」

 

チビが横島に林檎を食べさせてもらっている姿を見て、あたしもイタチの姿になればと一瞬思ったけど、人の姿で会っているのに動物になるのはなんか違うと思い、そのまま差し出されたおにぎりを両手で持って食べる。

 

「薬ありがとうな、心配してくれたんだよな?」

 

「べっつに心配なんかしてないけどッ!でも人間は簡単に死んじゃうんだからもう少し気をつけなさいよね!」

 

ああああーーーー違う違う、そんな風に言いたいわけじゃなかったのに思わず攻撃的な感じで返事を返してしまったことに絶望する。

 

「あはは、気をつけるよ。でもありがとう、心配してくれてありがとう」

 

やだ、横島って聖人か何かかしら?普通はこんな風に言ったら怒って当たり前なのに、笑顔を浮かべるとか少し信じられない物を見た気分だ。

 

「ごめん、本当は心配してた。怪我とかしたら駄目だからね、はい、これカマイタチの秘薬。効果はすごくあると思うわ」

 

ひどいことを言ってごめんなさいと謝ってから横島に薬を渡す。

 

「みーむうー」

 

「ぴっぎー」

 

【ノッブ!】

 

「ああ。良いのよ、気にしないで」

 

チビ達がありがとーありがとーと鳴きながらりんごや果物を差し出してくる、ただ1匹いるこの奇妙な生物何かしら?妖精……かしら?本当に良く判らない奇妙な生物だ。

 

「横島に薬を持ってきてくれたのね、ありがとう」

 

「良いの良いの、人間は弱いから簡単に死んじゃうんだから」

 

正直横島が怪我をしているかもしれないと思うと気が気じゃなかったけど、こうして元気な姿を見て本当に安堵した。

 

「貴女優しいのね」

 

「え、えーそうかな?」

 

優しいとか言われた事がないので驚いたけど、そんなに悪い気分じゃないわね。

 

「よっしゃー、遊ぶぞー」

 

「みむー♪」

 

「ぷーぎゅー!」

 

【ノブノブー♪】

 

ボールを片手に駆けて行く横島とチビ達、無邪気と言うか何と言うか見ていて飽きないわよね。

 

「カマイタチって使い魔になりに来たの?」

 

「え?そうだけど?」

 

まず使い魔を道具扱いしない、これは最低限あたしが求める条件だ。次は優しい事、次に思いやりがあること、最後に使い魔に好かれている事。その全てをクリアしている横島は理想的なご主人様と言えるだろう。恋慕は……どうだろう、そこはまだ判らないけど……理想的なご主人と言うことしか考えてなかったし……あたしがそう言うと目に見えて安堵した様子の蛍に気付いた。

 

「蛍は横島と番になりたいの?」

 

「ぶふうっ!?げほっごほっ!!」

 

あたしの言葉に蛍が噴出して、物凄く咳き込む。その姿にあたしの言っている事が正しかったと確信した、蛍は顔まで真っ赤にして目を白黒させている。

 

「な、ななななあなななーーー!?」

 

「ごめん、普通に喋ってくれないとわからないわ」

 

まさかここまで動揺すると思っていなかったので、あたしも驚いているのだから、蛍は何度か深呼吸を繰り返し、額に手を当てた。

 

「初対面の人でも判ってくれるのに横島は判ってくれないの」

 

「それは悲惨ね」

 

ボールを投げてチビ達と遊んでいる横島は子供っていうか何も考えていないように見える。相当蛍は苦労しているのだろうと一目で判った。

 

「あたしは何もいえないわね、頑張ってとしか」

 

「……ありがとう」

 

蛍とそんな話をしているとボールが転がってきて、横島が手を振っている。あたしは足元のボールを見てイタチの姿に戻り、ボールを咥えて手を振る横島の元へ走るのだった……。

 

「今度は普通に遊びに来てくれていいからな」

 

「ありがと、でもタマモが怖いから」

 

「大丈夫大丈夫、タマモには薬を持ってきてくれたって事で苛めないように言うからさ」

 

めいっぱい遊んだ後、あたしは横島の鞄の中にチビ達と一緒に入って東京に戻って来ていた。

 

「ま、そう言うことならたまには会いに来るわ。じゃね」

 

横島に手を振り、東京での住みかとしている白竜山とやらに戻る。人間が回りに沢山住んでいる割には、空気も澄んでいるし、霊脈も上質だから住みかとしては本当に最適の場所だ。

 

「今日は楽しかったなー、誘ってくれてありがとうな。蛍」

 

「いいのよ、また今度遊びに行きましょうね」

 

風に乗って聞こえてくる蛍と横島の声を聞いて、あたしは鼻歌を歌いながら楽しかった今日の事を思い出す。今日は横島に遊びに来てもいいって言う許可も貰えたし、友達も増えた。楽しくて良い1日だったなあと思いながら私は半分跳ねるように夕暮れの道を進んで行くのだった……。

 

なお蛍は今日の事をアシュタロスや蓮華に告げて、酷くがっかりされた表情をされて理解出来ないと言う表情をしていた。

 

「もう少しこう、なんかないのかね?」

 

「駄目だよ、父さん。そういう展開にしたいなら横島とチビ達を引き離さないと」

 

「いや、将を射んとする者はまず馬を射よって言うじゃない?」

 

「「言うけど、違う」」

 

横島という将軍を落とす為に、馬(マスコット)を狙ったという蛍に2人の違うと言う言葉が突き刺さったのだった……。

 

 

 

 

~躑躅院視点~

 

横島が蛍とツーリングをしている頃、京都の陰陽寮では中年の男の怒鳴り声が薄暗い通路の中に響いていた。

 

「わ、私を廃除して良いと思っているのか!」

 

「良いと思っているから貴様を首にするのだ、お前はもう必要ではない。退職金を持ってさっさと去ね」

 

私が切った小切手を見ると表情を一転させ、小切手を抱え込んで去っていった陰陽寮統括……いや、元統括に溜め息を吐いた。

 

「随分とばっさばっさ行きますねえ」

 

「道真か、GS協会とオカルトGメンが視察に来るんだ、それなりの準備は必要だろう?」

 

横島の話は陰陽寮でも噂になっている。人の口に戸を立てられぬのは当然だが、馬鹿が暴走して私の責任にされても困るので徹底的に排除する。

 

「で、あっしは馬鹿が馬鹿な事をする前に排除すればいいんですよね?」

 

「そう言うことだ。判っていると思うが、証拠を残すなよ」

 

一度は神代琉璃に発見され、次は神魔に見つけられている。そんなへまをするなよと言うと道真は肩を竦め苦笑した。

 

「巫女姫様に関しては自分の失態を認めますがね、神魔については勘弁してくださいよ」

 

「判っているさ、良く逃げてきたと褒めてやっただろう?」

 

「へーへー、ギャラをきっちり半分にされたのでいやでも覚えてますよーだ!」

 

べっと舌を出しお茶らけた雰囲気をしていた道真だが、目が急に鋭くなる。

 

「どーも、オカルトGメンとGS協会の半端もんと接触してる連中がいるみたいですね」

 

「丁度いい、泳がしておけ。西条と神代には恩を売っておいて損は無い」

 

向こうが私を疑ってくれるの大いに結構。私の目的は陰陽寮の復興ではなく、躑躅院の家の再興である。その為に陰陽寮はただの踏み台に過ぎない。

 

「それは良いんですけどねー、ボスの仕込だと思われません?」

 

「もう除籍した連中だ、知らぬ存ぜずで押し通す」

 

除籍した地点でもう関係者ではない、私としては馬鹿をやって逮捕して与えた小切手が回収できればなおよし。霊能者としての道を諦め……いや、もう霊能を失っているのだから与えた金で余生を過ごせば良いのだ。分不相応の野望など抱かずにな……そうすれば少しくらいは温情を与えることも出来る。

 

「では行け道真。情報を集めておけ、それと見学に来たら姿を隠しておけよ?」

 

判ってますよ~と間の抜けた返事を返し執務室を出て行く道真を見送り、机の上の書類に視線を向ける。

 

「今の段階では、非の内所は無い」

 

横島は調査の結果は非常に誠実な人間だ、女や金で揺らぐ男ではない。ならば、私は横島の信頼を得る。神代琉璃や美神令子を横島が慕うのは、助けられた事や、自分の面倒を見てくれているからだ。そう言う面ではあの2人は信頼を勝ち得ている、その信頼があるからこそ、横島は陰陽寮への移籍に頷くことは無いだろう。

 

「焦る事は無い」

 

何を考えていても、人の心は他人には読めぬ。神魔であっても変わらない、私は自分の心に蓋をする術をすでに習得している。蟲毒ともいえる、陰陽寮で生きて行くにはそれが必要だったからだ。

 

「楽しみだよ、横島」

 

私は歓迎しよう、陰陽寮も歓迎しよう。時間を掛けて、私はお前から信用を得よう。焦ることは無い、時間を掛ければ良い。妻を作るなら作れば良い、彼女を作るのもまた良いだろう、強い霊能者は妾でいてもそれは当然の事だ。そこに対して私に不信感は無い、むしろそうあって当然だと私は考えているからだ。

 

「最終的にお前の血が躑躅院に残れば良い、それだけだ」

 

類稀なる陰陽師の横島の血があれば、躑躅院は復興出来る。足りない五行陰陽術の情報を得ても、私の目的は達成される。私が望む結末に至る場合には複数のルートがある、だから焦る事は無い。時間を掛けて、足場を作れば良い。ただそれだけの話なのだ……時間は有限で、過ぎ去った時間を戻す事は出来ない。だが挽回する方法はいくらでもあるのだから……

 

「何、焦るなよ。時間はある、そうだろう?美弥」

 

「……判ってる。判ってるよぉ……でもね……私……私は」

 

「大丈夫。心配するな、私がお前を傷つけたことは無いだろう?」

 

「うん、うん……判ってる。判ってるよ、依」

 

「良い子だ。もう少しで横島に会える、その時を待っていろ。大丈夫、ちゃんと私が横島に会わせてやる」

 

「うん……判ったよ。私待ってる、良い子で待ってるよ」

 

躑躅院の声が部屋の中に響く、それは独り言にしか思えなかったが……確かに誰かと会話をしているような声なのだった……。

 

 

 

 

リポート30 陰陽寮 その1へ続く

 

 




横島と蛍、横島とイタチちゃん、そして蛍とイタチちゃんのコミュ回でした。イタチちゃんは現在横島の使い魔になりたいと言う気持ちが強いですが、ヒロインになる可能性は微くらいですね。タマモが警戒しすぎと言うのもありますが、同じ動物娘属性だから警戒心高め、シロは良く判っていないという感じです。最後の躑躅院はリポート30で漸く、ちょっと本性が見えつつある感じと言う感じで、不穏なフラグを用意しておこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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