GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド   作:混沌の魔法使い

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その3

リポート30 陰陽寮 その3

 

~美神視点~

 

明朝躑躅院からの連絡で陰陽寮の一部が暴走して行っていたと言う霊犯罪の現場が見つかったと聞いて、私と琉璃と西条さん、そして小竜姫様と躑躅院の5人で現場に乗り込んだのだけど、想像以上の現場に私達は顔を歪めた。

 

「酷いわね、横島君達を連れてこなくて正解だわ」

 

「だね、これはトラウマになりかねない」

 

壁にめり込んだまま絶命している男に、床に散らばっている肉片に廊下を染め上げる鮮血の海。凄惨な殺害現場にこういう現場を除霊などの霊視で見たことがあるとは言え、私達は顔を歪めていた。

 

「私達の不手際で本当に申し訳ないです」

 

「躑躅院のせいとは言えないでしょう」

 

自分の責任でと躑躅院は言いはするが、今回の事は躑躅院の責任ではないだろう。山の中に隠蔽されていた研究施設、妖怪を培養するガラスのポッドが何個も並んでいたが、それは砕け散り気味の悪い色の培養液と殺されたであろう人間の血液で異臭が漂っている。

 

「妖怪の方はどうなったのかしら?」

 

「周囲を捜索し、半径1キロほどで死んでいるのを発見しました」

 

「半径1キロとなると市内も範囲になっていますね」

 

山の中ではあるが、それでも決して交通の便が悪いという訳ではない。半径1キロほどとなると京都市内にもぐりこんでいる可能性はゼロではない、むしろ京都市内で多発している神隠し事件それに関係している可能性も浮上してきた。

 

「神隠しの件も合わせて、ここはしっかりと調査した方が良いね」

 

「西条さん、お願い出来るかしら?」

 

「大丈夫だよ、ここは僕に任せておくれ。躑躅院君もそれで良いかな?」

 

「よろしくお願いします、一応躑躅院の人間を何人か派遣しますが……信用出来る部下です。西条さんに従うように言っておきます」

 

死人が出ているのでGS免許だけでは対象外だ、警察の管轄に入ってしまうのでGS免許では調査が出来ない。ここはオカルトGメンの西条さんに任せて警察が間に入らないようにするべきだ。オカルトGメンの西条さんが間に入れば、警察から捜査権は西条さんに移る。そうなれば、施設の中で見つかった資料を私達も見る事が出来る。

 

「陰陽寮は良いのかしら?」

 

「馬鹿が自爆してくれましたからね。やはり1度陰陽寮は解体するべきだと改めて思いましたよ」

 

躑躅院が手にする紙には陰陽寮の役員名簿がある。この施設に携わっていた人間の名簿だろうが自分の部下に足を引っ張られるとは躑躅院、中々不憫に思えてくるわね。

 

(予想が違ったかな?)

 

躑躅院が何かを企んでいると考えていたんだけど……どうもこうも立て続けに事件が起きると私達が躑躅院を警戒しすぎているだけのような気がしてきた。

 

「厄介な病気の菌などがあると困りますので、1度施設を後にして準備を整えてからもう1度訪れると言う事でよろしいでしょうか?」

 

「そうだね、そうしようか。人造妖怪だと厄介なウィルスを仕込まれている可能性もある、詳しく調査する前に防護服などを準備した方がいいからね」

 

簡易の防護服は着ているけど、これ以上先に進むのに簡易装備では危険だと言う事で私達は1度施設を後にする事となった。

 

「琉璃、それに小竜姫様。私達は1度横島君達と合流しましょうか?」

 

横島君達には神隠しにあった人達に一度話を聞いて欲しいと言って調査を頼んである。子供と言う訳ではないが、大人が行くよりも年齢が近い、もしくは自分の子供の年代の横島君達が行く事で話を聞きやすいと思ったのだ。

 

「そうしましょうか、正直この施設は管轄外ですしね」

 

「横島さんの事だから何かヒントを見つけているかもしれないですしね」

 

妖怪だけなら私達も調査権があるが、人死が出て警察が動いている。西条さんに捜査権が移るまでは神隠しの事件の方を調査するべきだろう。

 

「躑躅院はどうする?1回街まで戻る?」

 

「いえ、私はここに残ります。部下が来たら車で戻りますので心配ないですよ」

 

施設に残ると言う躑躅院と西条さんを残し、私達は横島君達と合流するべく車に乗り込み街へ向かって走り出す。

 

「小竜姫様、今回の件。何処が絡んでいると思いますか?」

 

「……神魔ではないと断言出来ますね。神魔が絡んでいたらあんな中途半端な妖怪は生まれません」

 

「となると人間側ですか……美神さん、なにか思い当たる節はありますか?」

 

「そうね……人造妖怪などを研究してるって有名なのは南部グループと難波だったと思うけど……違法って事で研究は中断させられてるはず」

 

GS試験のガープ強襲、次に隕石落としと大きな事件が続いている。人造魔族や妖怪のプラントを奪われたら大変な事になると政府の方で研究の廃止が決定したはずだけど――

 

「研究者がそれで止まっているとは思えないですね」

 

「そうなのよね」

 

政府の決定だからとそれで止まるとは思えない、表向きは研究を中断していてもまた研究を再開している可能性もある。施設の調査でどこが陰陽寮の一部と手を組んでいたかが判れば良いんだけどね。

 

「それより小竜姫様、頼んでいた件は大丈夫そうですか?」

 

「はい、大丈夫です。私は横島さんの護衛だけじゃなくて、メンタルケアの件も任されていますから」

 

高島の屋敷を見て前後不左右に陥っていた横島君。一応心眼が見てくれているけど専門家のヒャクメの診断を頼んだのだ、早くても陰陽寮の見学が終わってからになるけど、それでも専門家が見てくれるというだけで安心感がある。

 

「でもこれ絶対予定してた日程で終わらないですよね?」

 

「……そうね。1回横島君の学校に電話しておかないとね」

 

2泊3日の予定だったが、神隠しの件に加えて人造妖怪と厄介な事件が舞い込んでしまった。これが終わるまで東京に帰るのは難しそうね……横島君の学校に電話を入れて、ここまで来たら発想を変えてみるのもいいかもしれない。

 

「安倍晴明神社とかも見に行ってみましょうか」

 

「そうですね、どうせ長くなるなら勉強旅行って感じにしましょうか」

 

長くなるなら長くなるでそれなりの方法もある。本当はマリア7世が来日する前に戻りたかったけど、それも難しくなりそうだ。

 

「まぁ何にせよいつも通りって事ね」

 

「大忙しって事ですね。判ります」

 

本当にばたばたしていて落ち着ける時間なんて無いわね、私はそう苦笑しながら琉璃に横島君達と連絡を取って欲しいと携帯を使うように頼んだんだけど、琉璃が電話をするよりも先に携帯が音を立てた。

 

「……美神さん、凄く嫌な予感がします」

 

「奇遇ね、私もよ。小竜姫様は?」

 

「……私もです。凄く嫌な予感がします」

 

3人が3人嫌な予感を感じながら、琉璃が代表して電話を取る。

 

「もしもし琉璃だけど、はぁ!?横島君がいなくなった!?目の前で急に消えたって!?今何処!?すぐそっちに行くからッ!金閣寺の近くね!?シズクやタマモに横島君の気配を探して貰って!でもあんまり深追いはしないでよ!近くに横島君の気配があるかどうかだけ探してちょうだい!」

 

……まだ何も解決していないのに続けざまに起きる事件、しかも横島君が消えたと聞いて私達は蛍ちゃん達がいる金閣寺に向かって車を走らせるのだった……

 

 

 

~くえす視点~

 

神隠し事件の調査は予想通り難航していた。その理由は被害者が何も覚えていないというのもあったが、陰陽寮側がまともな捜査をしていないというのが大きかった。

 

「もう滅べば良いと思いますわね、陰陽寮」

 

「落ち着いてくださいよ、ね?神宮寺さん」

 

横島が落ち着いてくれと言わなければ私は勿論、シズクと清姫がぶちきれていた可能性だって十分ある。

 

「なんでどこの陰陽寮の派出所も助兵衛爺しかいない訳?」

 

「……凍らせたが問題なかろう」

 

「髪を燃やしてやりましたわ♪」

 

私は自分の美貌に絶対の自信がある、相手に劣情を向けられた事も1度や2度ではない、だがあそこまで堂々と人の身体を嘗め回すよう見て下卑た笑みを浮かべる連中は始めて見た。あれで一応陰陽寮所属のれっきとした職員だというのだから驚きだ。

 

「あれで一応国から認められてる霊能組織なんだよな?」

 

「認めたくは無いけどね、と言うかここまで腐敗しきってるとか思ってなかったわ」

 

勿論それを私達が許す訳も無く、そう言う馬鹿を叩きのめして、調査報告を奪い取ってきた。道中で障害だ何だのと騒いでいたがシズクと清姫が名乗ったら血の気を引いた顔をして土下座を始めたのだ。

 

「あのさ、シズクと清姫ちゃん。平安時代で何をしたの?」

 

「……知らない方がいい」

 

「横島様が知るべき事ではないですわ♪」

 

デストロイヤーコンビの平安時代でのおお暴れっぷりは現在にも伝わっていて、竜気を開放し名前を名乗ればそれだけで陰陽寮の連中は顔を青褪めさせて自分がどんな事をしたのかを知り、呪わないでくださいと土下座を始める。平安時代で何をしたことやら、まぁそのお陰で今回は無事に切り抜けることが出来たので何も言うつもりはないですけどこの時代にもシズクと清姫と言う竜神に対する恐怖が伝わっているということはそれはそれは凄い暴れようだったのだと容易に想像できる。

 

「それでせんせー、どうするでござるか?」

 

「そうだな、木の枝を投げて傾いた方に向かうって言うのはどうだ?」

 

「あ。それなら拙者の刀を使うでござるよ」

 

「「「「勝手に動き回るなッ!!」」」」

 

「「はひいッ!!」」

 

横島を自由にすると確実に問題が起きるので、勝手に動き回るなと怒鳴る。全くの偶然だが、私と蛍とタマモとシズクの声が重なったので怯えた表情をする横島とシロに内心溜め息を吐く、横島ならば神隠しの元を見つけそうだが、その前に横島が神隠しにあう様にしか思えないのでとにかく動き回らせる訳には行かない。

 

「と、とりあえず。この名前だけの調査報告でも使えないことはないと思うの」

 

「そうですわね。直接尋ねて行くと言うのもありでしょう」

 

あの無能な陰陽寮の人間では面倒ごとになると判断して、まともに調書をとっていない可能性もある。陰陽寮の派出所から奪い取った被害者名簿を頼りに歩き回るのもありだとは思う。

 

「せんせー、牛若丸帰って来ないでござるな」

 

【天狗の所に行くとか行ってからなー】

 

「古い友達に会って話が進んでいるんじゃないか?」

 

……本当に横島達はのんびりとしていると言うか……力が抜けますわね。でも緊張している力が緩むので、そう悪い物ではないと思う。

 

「……今の所それらしい気配も無い」

 

「匂いもね。つまりここら辺で神隠しは起きていないと思うわ」

 

一番最近の神隠しにあった被害者が見つかった十字路ではそれらしい気配は無しですか……京都市内で転々としているのでやはり妖怪か神が動き回っていると見て間違いないですわね。

 

「古い神の知り合いとかはいますか?」

 

「……いるにはいるが、私達がいれば挨拶に来ると思うぞ」

 

「ですね、なんで燃やされる訳には行かないですから命乞いに来るはずですわ」

 

……こいつら本当に平安時代になにをしたのだろうか?だが平安時代の暴れっぷりを知っていれば命乞いに来るというのも事実だろう。つまり、神隠しを起こしているのは少なくとも平安時代の妖怪や神ではないと言う事になりますわね。

 

「しまった!?囲まれたッ!?チビ達何をしたんだ!?」

 

「みむー……」

 

「ぴぎいー……」

 

【ノブウ】

 

【やべえっ!笑える、何これ!?何処から来たんじゃ!】

 

「……まだ増えてるでござるよお」

 

地図と資料を見ていると横島達が騒いでいるのでそちらに視線を向けて絶句した。どこからやってきたのかと言うレベルで横島が鹿に囲まれていた、鹿公園も近くにないのに一体何処から……。

 

「……くえす、私の気のせいかしら?今空から鹿が降りてきたわ」

 

「気のせいではないですわね」

 

「……神鹿だな」

 

空を駆けてきた雪のように白い牡鹿と子鹿が鹿の群れを突っ切って横島のほうへ向かう。

 

【キュウ♪】

 

「なにこれ、可愛い」

 

白い子鹿が横島に擦り寄り、横島はそんな子鹿の前にしゃがみこんで頭を撫で回している。見ていると穏やかになる光景だが、これは何としても防がなければならない事態だ。

 

【キュー!キュウキュー!】

 

子鹿を横島に押し付けようとしている牡鹿を見て、私と蛍が同時にシズクと清姫に追い返すように頼んだのは言うまでも無い……。

 

「可愛かったのになー」

 

「せんせーは動物に好かれるでござるからな!」

 

【いや、アレは動物ではなく神魔なのだが……いや、まあ別に良いが】

 

普通に生きていたら神の赤子を預けられるとか絶対にありえない、だが横島だからそれはありえない話ではない。

 

「あれ、高島様が世話をしていた神鹿ですわね」

 

「……そうだな、まだ生きていたんだな」

 

「きっと自分が高島様に育ててもらったので自分の子供を横島様に預けに来たのですね」

 

「……育てる環境があれば良い使い魔になったんだが、勿体無い事をした」

 

……横島の前世は一体どれだけの人外と繋がりがあったのか不思議で仕方ない。と言うか、育てる環境があれば引き取る気満々だったシズクに私は驚愕した。

 

「……あんまり覚えてないけど、私も昔会ってた気がするのよね」

 

笑えない話だ、九尾の狐と縁があるだけでも驚きなのに前世だけではなく、今世までとかありえない話だ。

 

「とりあえず金閣寺に向かってみましょうか、そこの近くの住職の目の前で人が消えたというので詳しい話を聞けると思いますわ」

 

「そうね、美神さん達が合流するまでにある程度の情報は集めておきたいしね。横島ー、移動するわよー」

 

蛍の呼びかけに返事を返す横島をみていると本当に思う、横島は人間ではあるがその本質は人間とは程遠い。妖怪や神魔と心を通わせるその才能、横島は人間と人外の架け橋とでもいうべき人間なのかもしれない。

 

(今の時代では必要ないものですけどね)

 

時代が時代ならば横島はもっと重要視されただろうと思いながら、金閣寺への道をゆっくりと歩く。車を借りても良かったが、神隠しなどの情報を集める為にはやはり歩き回る事が大事だ。

 

「それにしても凄い物騒な話だったよな」

 

「山奥の研究施設ね、正直何をやってるのよって話よね」

 

「……馬鹿だから仕方ないんだよ、馬鹿だからな」

 

「馬鹿は死んでも治りませんもの、あ、もう死んでますわね。きっと死んでもなおらないのでしょうね」

 

美神達は陰陽寮の馬鹿の暴走で虐殺が起きてそれの調査に行っている。美神達が合流する前にはある程度の情報を集めておきたいと思いながら金閣寺が見えてきた時――唐突にそれは起きた。

 

「ふえッ!?」

 

横島の間抜けな声が聞こえ、それから遅れてすぐに横島を見ていてくれと頼んでいたシロと信長の悲鳴が周囲に響いた。

 

「せんせー!?せんせーが消えたでござる!?」

 

【嘘だろッ!?目の前にいたんじゃよ!?】

 

シロと信長の驚愕の声に振り返ると、2人の間にいた横島の姿は無く横島の手にしていた鹿せんべいだけが2人の間に残されていた。

 

「タマモ!気配は無かったの!?」

 

「何にもしなかったわよッ!どこから!?いや、どうやって!?」

 

「……私の結界もすり抜けただと……!?」

 

「何の気配も匂いもしない……。横島様がいなくなった」

 

混乱するシズクや清姫の声、私達に囲まれている状況で横島は誰の目にも触れず、そして何の痕跡も残さずその姿を消したのだった……。

 

 

 

 

~琉璃視点~

 

蛍ちゃんから連絡があってすぐ金閣寺に向かった。そこでは蛍ちゃんやくえす達が捜査用の器具を使って必死に横島君の痕跡を探していた。

 

「遅れてごめん、何があったか教えてくれる?」

 

まずは状況を把握するべきだと思い蛍ちゃん達にそう声を掛けた。連絡があってから1時間ほど、つまり1時間は痕跡を探していた事になるが――その表情を見れば手がかりらしい物が無いのは判っている。

 

「琉璃さん……はい。金閣寺の近くの寺の住職が目の前で神隠しがあったというので、そちらに向かっている道中に突然私達の真ん中で横島が姿を消したんです」

 

「……結界は張っていたが、それもすり抜けた」

 

シロとノッブがしっかりと護衛をしていたのに、その間をすり抜けて横島君とチビ達だけが姿を消したと言う。残っていたのは横島君が持っていた鹿せんべいだけ……これは正直私達の目算が甘かったかもしれない。シロとノッブが護衛をして、シズクの結界があれば安全だと思っていた私達の失敗だ。

 

(だけど、残しておく訳にも行かなかった)

 

高島の屋敷に横島君を残せば何をきっかけにして前世の記憶に取り込まれるか判らなかった。だから連れて歩くしかなかったのだが、まさかこれだけの霊能者、そして神魔の警護をすり抜けて横島君だけを攫う能力を持つなんて想像もしていなかった。

 

【言っておくが油断はしていなかった。目を光らせて、周囲の霊力の流れにも注意をしていた。それなのに一瞬の内に横島の姿は消えた】

 

唇を噛み締めながらノッブが吐き捨てるように言った。それは近くにいたのに、みすみす横島君を神隠しに会わせてしまった事に対する怒りと自分への情けなさが表に出た言葉だろう。

 

「ワフウ……」

 

「クウ!コンッ!」

 

シロとタマモは動物の姿で横島君の匂いの痕跡を探しているが、シロが見つからないと言ったのをタマモが叱責している。2人の嗅覚が便りの綱である、横島君の霊力の匂いを見つけてくれれば横島君を見つけれる可能性がでてくるのだから

 

「清姫は?」

 

「横島を探しに行きました。どっちにせよ、あの人は私達の言う事は聞きませんし、無理に留めておく方が危険だと判断しました」

 

清姫の危険性は全員が把握している。正直自由にさせるのは不安だが、無理に留めておいて焼き払うという選択を取られては困る。そう考えれば、蛍ちゃんの判断は決して間違いではない。

 

「痕跡がまるでないですね、隠密に特化した妖怪か、それとも……」

 

「言いたい事は判るわ、小竜姫様」

 

口ごもった小竜姫様。可能性の段階だが、横島君を攫ったのは人造妖怪の可能性がある。半径1キロの範囲ではあるし、神隠しで死亡者がいないのは霊力を吸収して力を蓄え、人間を殺すことで自分の痕跡を残さないようにしていると考えれば一応の辻褄は合う。

 

「何か知っているんですの?」

 

「犯人かもしれないってだけよ、とりあえず1度住職さんの所に行きましょう」

 

完全にくえすの目から光が消えている。あの暗く澱んだ目を見てよく返事を返せると美神さんには正直驚く、私も覚悟をしていれば平気だけど突発的に見ると悲鳴をあげてしまいそうになる。

 

「……ちっ、判りましたわ。このままここにいても何の手掛かりはありませんから」

 

「そう言うこと、1時間探しても無いってことは痕跡は残っていないわ。なら次は何処に現れるか、そこを突き止めるほうが有意義よ」

 

少なくとも神隠しに合った人間は2日の間に元いた場所から遠く離れた場所か、人通りの多い場所に衰弱しきった被害者が発見されるというのがいつものパターンだ。楽観視は出来ないが、横島君も見つかる可能性は十分にある。

 

「まずは目撃者に話を聞くのが一番よ、もしかするとそれを手掛かりに見つけれるかもしれないからね。蛍ちゃん!タマモ、シロ!行くわよ!」

 

美神さんが蛍ちゃん達に声を掛け、私達は金閣寺に向かって移動を始めた。だけど、その道中で聞きすてならない話を聞いてしまった。

 

「え?神鹿?」

 

「……京都の神の使いですね。私も知ってます」

 

「……その神の使いだけどな。高島が一時期面倒を見ていた、その神鹿が自分の子供を横島に預けに来た。一度は帰って貰ったが……あいつなら見つけれるかもしれない」

 

「それ苦渋の決断過ぎるんだけど」

 

「……流石に2匹目の神獣はそう簡単に使い魔として認めるのは……」

 

横島君を見つけれる可能性はあるが、その為に乙事主に続いて2匹目の神獣を抱え込むのは少しと言うかなり問題がある。

 

「それに育てれる環境がないと思うんですよ」

 

「そこよね。だって鹿だし」

 

「鹿ですしね」

 

いくらなんでも東京で鹿の面倒を見るのは無理があり過ぎる、だけど横島君を発見出来るかもしれない方法の1つでもある。

 

「最終的にどうしようもなくなったら、シズク。頼むわ」

 

「……判った、面倒を見れる土地が用意出来るまでは待つように私が説得しよう」

 

出来れば頼みたくは無いけど、最終手段として神鹿に横島君を見つけてくれるように頼むと言う事を私達は決めるのだった……。

 

 

 

 

 

~???視点~

 

やってしまった。近くに怖い人が沢山いたけど、私の近くに来たのでお兄さんを隠してしまった。今は一緒にいた猪達ときょときょととあたりを見回している。

 

(遊んでくれるかな……怖がらないかな)

 

あれだけ沢山の妖怪と一緒だから私も怖がらないでくれるかな?そんな沢山の不安と期待を抱いてお兄さんの前に立った。

 

「こんにちわ」

 

「ん、ああ、こんにちわ」

 

そこで沈黙、普通の人だったら私が閉じ込めたのかとか、化け物と怒鳴るけどお兄さんは小さな生き物を撫でたりしてじっと私を見つめている。

 

「あのさ、君も神隠しにあったの?」

 

「え、えーっと違うかな?」

 

私がこの世界の主とは言わず、お兄さんに首を傾げると頭に巻いている布から目が浮かび上がった。

 

【横島、この少女が神隠しの犯人だぞ?】

 

「んーそれはなんとなく判るけどさ、見てみろよ。悪い事とかしそうに無いじゃないか。なら話し合えると俺は思う」

 

【……お前の考えが最近わからないよ、でもまぁ敵意は無いな】

 

お兄さんが私が神隠しの犯人と判っていても、警戒する素振りも攻撃する素振りも見せなかった。だから私はこの人なら大丈夫と思った。

 

「あのね、私寂しいの、だから遊んでくれる?」

 

「良し!遊ぼう!何して遊ぼう」

 

【お前な?少し考えろ】

 

即座に遊ぼうと言ってくれたお兄さんに一瞬困惑する。お兄さんは不思議そうに首を傾げて、遊ばないの?と尋ねて来る。

 

「う、うん!遊んでくれるの?」

 

「おう、だけど遊び終わったら外に出してくれる?」

 

「うん!約束する!遊ぼう」

 

「おう、遊ぼう!あ、俺は横島。んで、チビとうりぼーとチビノブ」

 

「みむー♪」

 

「ぷぎー♪」

 

【ノー♪】

 

お兄さんの回りで小さな動物達が楽しそうに鳴き声をあげる。お兄さんだけではなく、動物達も一緒に遊んでくれると言っているのが判る。

 

「私はね……えっと、その」

 

「名前が無いの?」

 

「うん、私はずっと1人でここにいたから」

 

だから私は自分の名前を知らない、それに自分が妖怪なのか、神魔なのか、それとも人間なのかも判らないのだ。でも特別な力があるから、人間ではないのかもしれないけど……。

 

「じゃあ綺麗な紫の服を着てるから紫ちゃん!」

 

「紫……うん、私は紫!」

 

【……だから簡単に名前を……いや、もう良い。好きにすればいいさ】

 

紫……私の名前、お兄さんがくれた私の名前。それが嬉しい、遊んでくれるだけじゃなくて名前までくれるなんてお兄さんは本当に優しい人だ。

 

「よっしゃー!紫ちゃん遊ぶぞー!」

 

「うん!遊ぶー♪お兄さんと皆と一緒に遊ぶー♪」

 

初めて遊んでくれる人を見つけて、私は嬉しくて嬉しくてチビ達と一緒にお兄さんの周りを踊りながら、お兄さんがどんな風に遊んでくれるのかを楽しみにするのだった……。

 

「あ、でも遊び道具無いな……どうしよう?」

 

「それならえい!」

 

お兄さんの前に小さな隙間を作って外を見えるようにする。

 

「これで要る道具を外から中に入れればいいよ」

 

「紫ちゃん凄いな!」

 

「えへへー♪私凄い?」

 

「凄い凄い!よっし!これで遊び道具を探そうー」

 

「おーっ!!」

 

美神達が必死に自分を探しているかもと言う事は考えていた横島だが、紫に悪意が無く、純粋に寂しいと感じている事を横島は感じ取り、彼女を退治するよりも、言葉と行動で彼女の事を知ろうとした。横島もまた、自分に出来る戦いを始めているのだった……。

 

 

 

リポート30 陰陽寮 その4へ続く

 

 




今回はここまでになります、次回は紫と遊んでいる横島の視点と陰陽寮の視点などでかいていこうと思います。それとこの紫さんは判っていると思いますが、東方の紫さんがモチーフです。GS世界なので幻想郷無し、生まれたばかりの幼い妖怪と言う事でロリィで出て貰いました。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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