GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート30 陰陽寮 その5
~琉璃視点~
横島君の神隠し事件の次の日の早朝。高島の屋敷の広間ではなんとも微笑ましい光景が広がっていた。
「んーんー♪」
「むにゅー」
鼻歌交じりで紫ちゃんの長い金髪に櫛を通している横島君。そしてそんな横島君の膝の上で目を細めて気持ち良さそうにしている紫ちゃん。見ているだけで思わず微笑んでしまう、そんな微笑ましい光景だ。
「ぷぎゅ」
「みー」
「順番、判ってる」
【ノブノブ♪】
更にうりぼーやチビもその近くで行儀良く座ってブラシをしてもらうのを待っているのを見ると、その微笑ましさが倍になるのが本当に不思議だ。とは言え、いつまでも微笑んでいる余裕は無いので横島君におはようと声を掛け美神さん達の元へ向かう。
「おはようございます。少し寝過ごしてしまいましたね」
「ううん、私達も起きたばかりだから、蛍ちゃん」
蛍ちゃんが差し出してくれた湯のみを受け取り、机の上に広げられた資料が見やすい位置に腰を下ろす。
「今日は壊滅した製造場にあった地図や資料を元に調査を行うつもりなんだけど……」
ちらりと西条さんが横島君達に視線を向けた。それだけで何を言いたいかと言うのは私だけではない、全員が理解していた。
「横島さんは残すべきだと思うのです」
「あの紫ちゃんの事も考えるとね、横島君は屋敷に残すべきだ」
高島の屋敷で記憶の混濁が見られる。今は安定しているが、何かのきっかけで再び記憶が表に出てくるかもしれない、可能性としては戦いの中で起きる可能性が高いと思う。高島は陰陽師だった、つまり戦いの中こそが彼の記憶をより刺激する事になるだろう。
「……もしも生き残りがいて、紫を操作されると困るというのもあるな?」
「はい、彼女は人造神魔ですから。詳しい所はヒャクメに見てもらう必要がありますが……リスクは避けるべきでしょう」
横島君のそばでにこにこと笑ってる紫ちゃんは幼女にしか見えないが、空間に穴を開けて自由自在に移動する能力を持っている。恐らく調整してその能力を与えられたと思われるから、そんな紫ちゃんを敵の拠点かもしれない所に連れて行くのは余りにリスクが大きすぎる。
「誰が残りますか?」
「理想的なのはシズクか清姫のどちらかと、くえすか蛍ちゃんだけど、私としては2人には付いてきて欲しいわね」
黒魔術のエキスパートのくえすと幻術と幻術破りのエキスパートの蛍ちゃん。そのどちらも今回の調査では必要になる能力だ、横島君の護衛に残しておきたくはあるが、それと同じ位同行して貰いたい。
「僕は清姫とシズクの2人に残って貰うべきだと思うよ」
「その理由は?」
「京都の霊能者にとって2人は悪夢のような存在だからね、その場にいてくれるだけで威圧を与えてくれる筈だよ」
平安京を焼き尽くした清姫と大蛇のシズクは確かに東京よりも京都で有名な竜神だ。西条さんの言う事も最もだと思う、となると清姫とシズクの2人を屋敷に残して、信長と牛若丸もいるから横島君の守りは鉄壁と言えるだろう。過激派が来たとしても、英霊2人、竜神2人を前に横島君に害を与える事が出来るとは思えない。
「悪いけど、タマモとシロも同行してくれるかしら?」
「……ま、良いわよ。私もやりたいことがあるし」
「止めるでござる、タマモはせんせーに害を与える連中を不能にする呪いを掛けると」
……それはそれで危険だとは思うけど、横島君を守ろうとする意志は感じられる。
「その呪いは駄目だから、でも幻術は許可するわよ?」
「OK、生きてるのが嫌になるくらいの悪夢を見せてあげるわ」
「……頼んだぞ、タマモ」
「私達の変わりに横島様に害を与える存在を消し去ってくださいね?」
握り拳をぶつけ合う3人、その姿は誓いを新たにしているように見えた。だけど、それは横島君を傷付けるすべてを排除するという余りにも物騒な誓いだ。
(横島君の警備が凄い)
下手に手を出せば殺される。広間で紫ちゃんと天魔ちゃんの前で歌いながらお手玉をしている横島君を見て、後ほんの少しでも良い自分の身を守ろうとする意思があれば良いのにと思わざるを得ないのだった……。
~横島視点~
人造妖魔の研究が京都で行われているのでそれの調査に行くと言う美神さん達を見送り、俺は言いつけられたとおり屋敷で紫ちゃんと天魔ちゃんの面倒を見ていた。
(紫ちゃんが……か)
天魔ちゃんは今の天狗の長の娘で、凄い妖力を持っている。そして紫ちゃんも人造妖魔、いや、人造神魔とも言える存在で凄い力を持っているので連れ回すのは危険と言う美神さんの言葉を思い出す。だけど、俺から見るととてもそうとは見えなかった。
「えい、えい、みゅーっ!」
「今度は私、えーい「みぎゃあッ!?」ああ!?チビごめんねッ!?大丈夫」
お手玉に失敗して口を×マークにしている幼い女の子と、気合を入れすぎてお手玉を高く投げてしまいチビを迎撃してしまい慌てている外見相応の少女にしか見えないのだ。
「チビ大丈夫か?」
「み、みむう……」
よほど当たり所が悪かったのか苦しそうなチビを頭の上に乗せる。
「ご、ごめんなさい」
「大丈夫だよ、チビも俺も怒ってないから」
ちょっと油断していただけだろう、普段のチビならば軽くかわしていただろうから。多分ここまで飛んでくる事は無いと思っていたのだと思う。
「そんなに力いっぱい投げなくて良いんだよ。軽く、これくらいの感じで」
紫ちゃんと天魔ちゃんの前に座って、軽い力でお手玉を投げて見せる。高く投げないと落ちてしまうと思うのが失敗の理由だ。
「ほいほいほいほいっと」
「「おおーッ!!」」
ぱちぱちと2人の拍手の音が響いて、なんだか気恥ずかしい気持ちになる。
「まぁこんな感じで軽くやってもいいし、こうやって2人で並んでっと」
紫ちゃんに右手のお手玉を投げてもらい、俺は左手のお手玉を紫ちゃんに軽く投げ渡す。
「こうやって2人でやっても面白いだろう?」
「3人でも出来る?」
「出来るよ、順番を決めてやろうか」
3人で三角になるように座って順番にお手玉を投げ合う、時々落としてしまうけれど楽しそうに笑う姿を見ていると俺まで楽しい気持ちになる。
【主殿ー物置で鞠を見つけましたよ】
【蹴鞠やるぞーッ!!】
広間でお手玉で遊んでいると物置を捜索していたノッブちゃんと牛若丸が蹴鞠を頭の上に乗せて走ってくる。
【ノーブブウー】
そしてその後ろを籠を頭から被って走ってくるチビノブを見て、思わず噴出してしまった。
「じゃあ、今度は外で遊ぼうか?」
「「遊ぶー♪」」
「ぴぎいー♪」
家の中で遊ぶよりも外で遊ぶほうが好きなのか笑顔で返事をする2人。縁側においておいたスニーカーを履きながら何をして遊ぶか考える。
(籠があるから投げ入れて遊んでもいいかもしれないし、サッカーみたいにしても面白いかもな)
何はともあれ、2人が遊べる内容を考えないとと思いながら俺はうりぼーと紫ちゃん達を連れて庭に出るのだった。
「……死ね、失せろ」
「ええ、本当に目障りです事」
そして楽しそうな庭での横島達と違い、玄関近くでは陰陽寮所属ではない陰陽師崩れの襲撃があったりしたのだが、清姫とシズクに追い返されていた。いや、半殺しにされていた。
「……愚か者は何時の時代も変わらないな」
「そうですわね、全く私達がいるのに横島様に近づけさせる訳がないでしょうに」
穏やかな口調、そして普段の幼い少女の姿ではあるが完全に瞳孔が開き、竜気を全身に纏う2人にとって横島が逆鱗なのは明らかだ。それれなのに僅かな希望を持って死地に飛び込んでくる愚か者に清姫とシズクは鼻を鳴らす。
【お手伝いしましょうか?】
「……牛若丸、横島は?」
【いえ、じゃんけんに負けてしまいまして、人数的に混ざれないのでこちらのお手伝いをしようかと】
「それはいいですねえ、見せしめで首を刎ねましょうか!」
ひっと息を呑む襲撃者達。自分達はとんでもない所に来てしまったと悟ったようだが、それは余りにも遅かった。生きていたいのならば、横島の陰陽術や妖使いの技術を奪おう何て分不相応な思いを抱かず、隠れていれば良かったのだ。
「……さて、知っているか?酷い凍傷になると……死ぬほど熱いんだぞ?」
「大丈夫ですよ、殺しはしません。殺しは……しませんよ……?」
目が全く笑っていない竜神2人と無言で抜刀する牛若丸。その殺意に満ちた顔に愚かにもこの屋敷を襲撃した者達は悲鳴を上げたのだった
「今変な声聞こえなかった?」
【気のせいじゃろ?と言うかうりぼーガードかてえッ!!】
「「「ぷぎぷぎー♪」」」
「むむむ、えーいー!」
「てやー♪」
【ノッバアッ!】
籠に蹴鞠を入れるという遊びをしていた横島達。横島は悲鳴が僅かに聞こえたようでノッブにそう尋ねていたがはぐらかされ、増えたうりぼー3匹とチビノブと言うディフェンス相手にどうやって蹴鞠を籠に投げ入れるのかと言う事に意識を向け始める。
(もうちょい結界を強くしておくかの)
そんな中ノッブは笑顔の中に鋭い獣のような光を宿し、横島に悟られないように結界札を使う。横島に人との戦いは早い、そう判断したノッブの優しさである同時に、狂笑とも取れる声を上げている清姫の声を横島に聞かせない為の配慮なのだった……。
~西条視点~
最初に壊滅していた人造妖魔プラント。それがどうも京都中に隠されているプラントの中で一番巨大だったらしく、他のはプラントとも呼べない小さな研究施設だった。
「己ぇ!躑躅院!貴様のせいでええッ!」
「これさえ成功すれば陰陽寮の発展は約束されたと言うのに!」
聞くに堪えない罵詈雑言を上げる研究者をどんどん拘束する。正直これは令子ちゃん達GSの仕事ではないが、相手が霊能者であると言うこと、そして横島君に害をなす可能性があると言う事で率先してくれている。
「躑躅院。もう判っていると思うが、陰陽寮の単独の霊能権は今回の事で完全に剥奪になる」
「しょうがない事ですね、覚悟はしていました」
この研究施設で4件目、そのどれもが培養用の溶液と人間では用意出来ないであろう素材の山。これらは全て証拠として徴集するが、ここまで来てしまえば、国家反逆罪や霊能法違反を初めとした10以上の罪科が問われるだろう。
「一応貴方達には感謝していますよ」
「僕に出来るのはこれくらいだからね」
躑躅院をこの調査と強制執行に同行させる事で躑躅院を罪に問わせないと言うのが僕に出来るやっとだった。
「陰陽寮は解体後、GS協会、もしくは六道の傘下になることになるだろう」
「言われなくても大丈夫ですよ、ここまで腐りきっているなんて私も思ってもみませんでしたから」
人造妖魔なだけでもアウトなのに、そこに更に人造神魔……陰陽寮を追放された面子が復讐を兼ねて計画していたようだが……これは明らかに人間だけの仕業ではないだろう。
「西条さん、狂神石を発見しました」
「……やっぱりか、僕も行こう」
奥の調査をしていた令子ちゃんからの連絡を聞いて、躑躅院と共に研究所の奥へと足を向ける。
「西条、来ましたか。道中はもう処理をしてしまいましたが問題ないですね?」
「ああ、構わないよ。ありがとう」
砕け散ったカプセルと撒き散らされている培養液、どす黒い血液は恐らく中に入っていた妖魔を処理した痕跡だろう。人間の手が加えられた妖魔が開放されればどんな二次災害が起きるか判らない、手早く処理してくれただけでもありがたい。
「証拠写真は収めておきましたんで、後で提出しますね」
「うん、助かるよ。所で令子ちゃんと小竜姫様は?」
姿の見えない2人の事を尋ねると薄暗い通路からシロが姿を見せた。
「西条殿、こっちでござるよ。この奥でござる」
シロに呼ばれて壁にしか見えない場所に一歩足を踏み込む。すると広い通路が目の前に広がっていた、振り返ると金属で出来た通路が広がっている。
「これは……転移でしょうか?」
「そうだろうね、それらしい痕跡が見当たらないはずだよ」
転移の魔法陣でここは別の場所、もしくは隔離された異界と言うことだろう。
「確実にガープだろうな」
どう考えても人間の出来る事ではない、これは確実にガープの仕業だ。氷室神社よりも前の段階でここまで日本に根を張っているとは僕も想像していなかったが、自体は思っていたよりも深刻なようだ。
「西条さん、これ、見てくれる?」
「殆ど残っていないんですけど、これは間違いなく狂神石ですよ」
頑丈に作られていたポッドの中に僅かに残されている赤い液体。その禍々しい気配から狂神石であると言うことは明らかだ。
「小竜姫様、これを回収することは出来ますか?」
「すいません、出来ません。私は勿論、美神さん達が触れても正気を失うでしょう」
初めて狂神石のサンプルを入手出来るチャンス。だが触れてしまえば発狂してしまうとなればそうやすやすと触れることは出来ない。
「仕方ないですね、ではこの研究施設を封鎖。後日神魔にッ!」
神魔のこの現場を渡す事を考えていたが、突如背中に氷柱を突っ込まれたような悪寒が走る。
「ちょっとこれやばいわよ、魔力が渦巻いてる」
「防衛装置!やっぱり仕掛けていましたか!皆さんここは撤退です」
もっと集めたい証拠はある、だがこの異様な霊力と魔力の流れ、このままこの場に残っているのは危険だと判断し来た道を走って引き返す。
「急ぎなさい!長くは持ちませんわよッ!」
「早く!飛んでください!」
やはり異次元だったのか、僕達を呼ぶ蛍君達の姿がとても遠くに見える。もといた時空とこの時空を切り離す防衛装置。このままこの場所に残っていては下手をすればガープの元へ移動させられてしまうかもしれない。
「令子ちゃん達から急いで!」
まだ距離がさほど遠くない内に令子ちゃん達に飛ぶように言う。徐々に距離が離れていっているが、この距離ならば問題ない。助走をつけて思いっきり地面を蹴って飛ぶ。
「西条さん!」
「すまない!ありがとう」
令子ちゃんに手を掴まれ引き上げられる。振り返ると遠くに見える通路は闇の中に飲み込まれ、後ろに通路があった痕跡は跡形も無く消し去られていた。
「あ、危ない所でしたね」
「本当だよ」
後一歩遅ければ僕もあの消え去った通路に飲み込まれていたかもしれないと思うと額に冷たい汗が流れるのが判る。
「初めて直で見ましたが、狂神石の名に偽り無しですね」
神を狂わせる魔性の鉱石。さっきのは液体だったが、それでも危険性はひしひしと伝わってきていた。
「令子ちゃん、何か証拠みたいなものは見つかったかな?」
「ごめんなさい、それらしい物はないわ。神魔が関わっていたって言う証拠は見つけたんだけどね」
令子ちゃんの言葉に僕は落胆を隠せなかった。少なくとも神魔……ガープがこの研究所に関わっていたのは確実だ。だがそれだけではない、人間も間違いなくこの研究所に関わっていた。ある程度の絞込みは出来るが、それでも物的証拠と言うのは欲しかったと思う。
「良いじゃない西条、何人か確保したんだからそいつらを尋問でもすれば判るんじゃない?」
「私の魔法で頭の中を覗いても良いですわよ?」
タマモ君と神宮寺君の言う事も最もだ。少なくとも生きている証人を10人近くは確保できた、それだけでも――
「美神殿ー!早く早くこっちに来て欲しいでござるよ!!急に泡を吹いて血反吐をッ!」
シロの声に慌てて通路を抜けて、確保した研究者達の元ヘと向かう。だが僕達が辿り着いた時にはもう手遅れだった。
「死んでる……」
「本当に用意周到ね、嫌になるわ」
蛍君と神代会長が頭を抑えている。予想になるが、あの研究施設の防衛装置……それの起動を合図に研究者の体内に埋め込まれていた魔法か何かが発動したのだろう。
「小竜姫様、死人でも情報を取れるでしょうか?」
「……神族では難しいですね、1度ブリュンヒルデさんに連絡を取って見ます」
魔族のネクロマンシーや死霊魔術で死んだ研究者を操り情報を得る。それは決して人道的ではないが、今はそんな事を言っている場合ではない。僅かでも情報を得れる可能性に賭けたい。
「どうもまた大きな騒動が起きそうだね」
「本当、泣けるわよ」
人造妖魔、人造神魔の研究施設にガープが関わっていた。それが判明した以上再び僕達は備えなくてはならない、ガープによる侵攻に抗う為に……。
(状況は悪い、それでも諦めない。諦める物か)
英霊や神魔を操る技術に加え、仮面ライダーを有するガープ陣営。その力は紛れも無く人間よりも遥かに上だ、だがそれでも僕達は劣勢に追い込まれながらも抗ってきた。どれだけ絶望的でも諦めない、僕は心の中でそう決意を新たにする。
「とりあえず回収した証拠から何か判るかもしれない、手に入らなかった情報を嘆かずに行動しよう」
「そうですね、資料は沢山ありますし、何か判るかもしれないですよね」
後ろ向きになっても何も始まらない、5件の研究所から応酬した証拠の中にこの研究に関わっていた企業などの情報を得れるかもしれない。僕達はその可能性を信じ、1度高島の屋敷に戻る事にした。
「私はここでブリュンヒルデさんかメドーサを待ちます」
どうやら魔族の方とも連絡が付いたようで、遺体の引渡しをすると言う小竜姫様を研究所の跡地に残し、屋敷に戻る事にした。
「……ああ、おかえり。悪いが静かにしてくれるか?」
「横島様が寝ているので」
【思う存分叩きのめしました、もう主殿に害をなす物は京都にはいないでしょう!】
屋敷の外で山積みになってる陰陽寮関係者に溜め息を吐き、京都の警察に逮捕するように連絡を取り屋敷の中に足を踏み入れる。
「ぷぎゅるうーぷぐりゅうー」
「みむうふーみふー」
【ノノブウ……】
「「「すーすー」」」
巨大化したうりぼーにもたれ掛かるようにして眠っている横島君とそんな横島君に抱きかかえられて眠っている紫ちゃんと天魔ちゃんの姿。今まで血塗られた場所にいたからこそ、その穏やかな日常を想起させる光景に僕を含めた全員が安堵の溜め息を吐くのだった……。
~ガープ視点~
「ガープ様、京都の拠点が潰れたようですな」
「そのようだ、まぁ良かろう。所詮は暇つぶしだ」
人造妖魔と人造神魔を作るという神をも恐れないその研究者達に興味を持ち、僅かな技術を分け与えた。成功するとは思っていなかったので、失敗しても特に感じる事は何もない。それに今はそれ所ではないのだから……。
(何者何だ、私は何と戦った)
何かと戦いアスモデウスと共にボロボロの状況で倒れていた時の事を思い出す。だが何と戦ったのか、何故トドメを刺されなかったのか、思い出そうとする度に頭にもやが掛かる。私とアスモデウスにこんな屈辱を与えた相手に対する復讐と報復を心に誓いながらも、その相手を思い出せない事に私もアスモデウスも込み上げる怒りの矛先を何処に向ければいいのかが判らないでいた。
「まぁ良い、南部のほうがよほど成果を上げている」
「南部グループですね、確かに人造魔族の製造には成功していますし、制御も出来ていますね」
蘆屋の報告を聞いて笑みを浮かべる。同じ技術、同じ設備を与えた。だが成果を出したのは陰陽寮の脱落者よりも後に私の技術を知った南部グループだった。その時点で陰陽寮に興味は無く、南部グループがどこまで行くかに私の興味は移り変わっていた。
「ゴーレムの安定製造、小型の自立の魔道兵器など南部の成果は著しいですよ。ガープ様」
「なるほどなるほど、それならば褒章を与えなくてはならないな」
有能な人間ならば迎え入れる事が出来る。その点では南部グループは単独では決して優れた存在ではないが、集団となるとその能力は極めて優秀になる。だがそれは1人では迎え入れるほどの価値も無いと言うことも現している。
「蘆屋、南部グループにガルーダの羽を届けてくれ、ガルーダを生成出来れば末席に迎えようととも伝えてくれ」
「畏まりました」
神獣であり、魔獣でもあるガルーダ。私でも生成は確実に成功するとはいえないが、もしもガルーダを再生出来ればインド系の神話の相手には有利に出れる。ガルーダの羽はまだ何枚も残っているので1枚くらい戯れで人間に渡しても何の痛手でもない。
「さてと、私は私の作業を続けるか」
忌々しいが記憶改変を受けた事は変わらない事実だ。だがこれによって面白い事を思いついたのもまた事実、それを試してみるのも良いだろう。
「お前は転んでもただでは起きないな、ガープ」
「アスモデウスか、当たり前だ。敗走は良いさ、だが負けて放置された屈辱をそう忘れる物か」
負けて殺されたのならばまだ判る。だが記憶を操作して放置されたと言うのは私達のプライドを痛く傷付けた。もし、今度遭遇したら必ず殺すと決めている。だがそれと同時に記憶改変で面白い事が出来ると思っているのもまた事実。
「試験的だが、やってみる価値はある。成功すれば、現代の有力なGSが殆ど消えることになる」
「それは面白いな、やってみる価値はある」
「だろう?」
前に中世へとタイムスリップした経験を生かし、現代に残ったまま歴史改変を行ってみようと思う。正直実験程度なので成功する保証は無い、あくまで実験だ。仮にその作戦が成功しても現代に影響があるとも確証は無い。だが、だからこそやってみようと思うのだ。
「場所は?」
「日本だ。もっとも怪異に満ちた時代「平安京」あそこで実験をしてみようと思う」
「好きにすれば良い、我は止めぬ」
「ああ、吉報を待ってくれ」
忌々しい事に負傷はまだ完全に癒えてはいない、だがジッとしているつもりもない。この作戦が成功すれば、横島を護る者が少なくなり、攫う事が容易になるかもしれない。そんな可能性を戯れで試してみても良いとおもっていた。
「名づけるならば平安大魔京とでも言おうかな」
時間逆行、歴史改変の有効性を試す実験としては丁度良いと私は笑い、魔術式の構築を始めるのだった。
『ガープ歴史改変を計画する、時代は平安時代』
と刻まれた文字が光り輝き、男の手にしていた本のページから消えていく。その事にフォーティスは計画通りと微笑む、記憶改変を施した際にガープの脳裏に命令とも言える時間逆行計画を残していたのだ。
「これで歴史の大筋は守った。後はどうなるか、これからが私の物語の始まりだ。さてと、役者を集めなくてはな」
ガープだけではない、第3者であるフォーティスの思惑も交わり、現代よりも遠く離れた平安時代に悪意の種が撒かれようとしているのだった……。
リポート30 陰陽寮 その6へ続く
後2話で京都編は終了で、ファイナルの前に「平安編」を単独リポートで書いてみようと思います。原作よりも難易度アップ、話のスケールアップで平安編をお送りしたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い