GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド   作:混沌の魔法使い

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リポート31 サイド東京
その1


リポート31 サイド東京 その1

 

~三蔵視点~

 

横島君達が京都に陰陽寮の見学に行くと言うのは正直反対だった。とは言え、最終的な決定権は本人にしかない訳だ。

 

(なんかあそこ好きじゃないのよね)

 

あたしに是非と言っていた連中が全員京都の人間だったけど、あの人を値踏みするような視線と下卑た視線は好きではない、霊能者ではあるが、完全に霊力が澱んでいて何年もまともに霊力を使っていないのが明らかだったし、正直あんなのが国守とか正気?と思ったレベルだ。何事も無く、無事に帰って来てくれれば良いんだけどと思いながら雪之丞と陰念の組み手に視線を向ける。

 

「ちっ!」

 

「あめえッ!」

 

雪之丞の右拳に自身の右拳によるカウンターを仕掛ける陰念。雪之丞はそれを自身の肘を曲げる事で強引に軌道を逸らし、そのまま地面を蹴って距離を取る。

 

(いい具合に仕上がってきてるわね)

 

魔装術、そして眼魂と言う違いはあるけど、基本的に陰念も雪之丞も徒手空拳の戦いをメインにする。やはり体術の底上げは大事だと改めて確信する。

 

「あんたはなにかトラウマがある。だから、霊力が上手く使えないんだよ」

 

「そ、そうですかノー……」

 

エミさんに言われて預かっているタイガー君だけど、綱手もやっぱりあたしと同じ答えを出していた。彼の根底には何か辛い記憶があり、その辛い記憶が彼の霊能力の妨げになる。

 

【帰るの?】

 

「エミさんに相談しないといけないんじゃあ、お世話になったんですじゃあ……」

 

肩を落として道場を出て行くタイガー君。出来る事ならアドバイスをしてあげたい所だけど、身体能力や霊力ではなく、本人の精神的な問題となるとあたし達よりも師匠であるエミさんが解決するべき問題だ。もしくはタイガー君自身が乗り越えるべき問題。

 

「はい、そこまで、2人ともクールダウンを兼ねて走ってきなさい」

 

「「うっす」」

 

ぱんぱんとクシナが手を叩きながら組み手の決着の合図を出す。決着と言っても終始互角で甲乙つけがたい組み手だったと思える。

 

【でもやっぱりって感じね】

 

「そうですね、特に雪之丞の方が問題ですね】

 

道場の壁を見てクシナと揃って溜め息を吐く、道場の壁は凍てついていて、雪之丞が踏み込んだ床も凍りついている。

 

「あの時からですね」

 

【そうね、うーん、どうしよっかなぁ】

 

東京への隕石落としの件で開眼した雪之丞の氷の異能。コントロールの修行を頑張っているみたいだけど、中々成果が出ない。

 

【やっぱりあたしじゃ無理かなあ】

 

「……メドーサ様に連絡しましょうか?」

 

クシナの言葉に少し考えてからお願いと返事を返す。これが普通の霊能ならばあたしでも指導できるけど、ソロモン由縁の霊能ではいくらあたしでもお手上げだ。メドーサを通じて魔族に連絡を取ってもらって、専門家の意見を聞きたい。

 

「とりあえず、応急処置だけしてくるよ」

 

【お願い出来る?】

 

「良いよ居候の見だし、あんたには言いたくないみたいだしね」

 

雪之丞は氷の異能のせいで手足が相当冷えているのか、よく温かいお茶を飲むようになった。それに日用品の買出しでカイロも買い込んでいるのもクシナから聞いている。

 

【やっぱり焦りからかしら?】

 

「そう思います、横島君の事がありますし」

 

横島君の成長具合は凄まじい、会うたびに別人のようにパワーアップしているけど、それが雪之丞と陰念……それだけじゃない、タイガー君やピート君の焦りをも煽っている。友人同士だからこそ、横島君だけが突出している今の状況が辛くて仕方ないのだろう。それは判るけど、無理をして身体を痛めていては意味がない。でもこればっかりはあたし達が言ってもどうこうできる問題でもない。

 

【男の子って難しいわねえ】

 

「そうですね、やっぱりプライドとかもあるんでしょうけどね」

 

クシナと並んで男の子の指導の難しさを嘆いていたけど、クシナは元々男な訳で……あたしはクシナが入れてくれたお茶を啜りながらなんともいえない気持ちになるのだった……。

 

「大丈夫か?」

 

「……問題ねえ」

 

「あんまり無理すんなよ、酷かったらお師匠様から綱手様に相談しろよ?」

 

「……判ってる、だけどそんな事を言ってたら追いつけねえだろ」

 

雪之丞の言う追いつけないが誰を指しているのが痛いほど判る陰念は何も言わず、雪之丞と並んで山道を走る。組み手の疲れは確かにあった、だけどそれでは止められないほどに雪之丞と陰念は焦りを胸の中に抱え込んでいるのだった……。

 

 

 

 

 

 

~ブラドー視点~

 

魔法陣の真ん中に座って滝のような汗を流しているピエトロ。その姿を横目に懐中時計の蓋を開く、後5分で1時間か……。

 

「ピエトロ、そろそろ出ろ」

 

「い、いえ、あと少し」

 

「聞こえなかったのか?我は出ろと言ったのだ」

 

もう少しと言うピエトロを睨みつけると四つ這いでピエトロが魔法陣から出てくる。

 

「はぁ……はぁ……うっ」

 

「その有様で後もう少しなどと言えたな、己の限界と引き際を見誤るな」

 

「あの、お父様、もう少し」

 

「お前は黙っていろシルフェニア」

 

指導をすると言う段階で親子と言う甘い感情は捨てている、むしろ息子が可愛いからこそ、我は冷酷な判断が出来る。

 

「見ろ、指先が炭化している。このままではどうなっていたか判らない訳ではあるまい?」

 

「……っはい」

 

「嫌だろうが、冷蔵庫に入っている輸血パックを飲んでおけ、後遺症が残る。シルフェニア、肩を貸してやれ」

 

「う、うん。お兄様、ごめんね」

 

肩を担ぎ部屋を出て行くシルフェニアとピエトロを見送り、部屋の中央で淡く輝く魔法陣を足で消す。

 

「やはりピエトロには才がない」

 

ヴァンピールではあるが絶望的なまでに才能がない。吸血鬼としてはシルフェニアの方が優れ、人間としても半端者。我が息子ながら、何故こうも過酷な運命を背負うのかと思わざるを得ない。

 

「ブラドー伯爵。お疲れ様です」

 

「唐巣か、疲れてなど居ない。疲れているのはむしろピエトロだろう」

 

我はあくまで魔法陣を維持してただけ、それだけで疲れるような柔な身体ではない。

 

「身体はそうでも、精神はそうは言わないでしょう?」

 

「……まぁ……な」

 

理論上はピエトロは吸血鬼としての闇の力と人間としての光の力。その両方を扱える、だが不幸なことにピエトロには才能が余りにもない。

 

「……光と闇の融合は闇の眷属の中でも一部しか使えぬ超稀少技能だ」

 

「ブラドー伯爵は使えるのでしょう?」

 

「使えるというのと使いこなせるというのは別問題だ」

 

扱えるというだけで使いこなせているとは言い難い、始祖の吸血鬼であったとしても扱い切れないそんな力をピエトロは使おうとしている。

 

「横島は悪い男ではない、だがあの規格外の才を持つ男に追いつこうというのは余りにも酷な事だ」

 

「……ですね。ピート君だけではない、雪之丞君や陰念君、それにタイガー君も苦しんでいるようです」

 

横島と言う男は太陽と称してもいい、遠くから見ている分には良いが近づこうと思えばそれは近づいた者を焼き尽くす。これが異性ならば、それは恋慕になってもおかしくはないが、同性だからこそ追いつきたいと願う。

 

「道を違えなければいいがな」

 

「ですね。それは私も危惧しています」

 

憧れは憎しみへと転化する。そしてそれはガープにとって最も好都合な展開だと言っても良いだろう。そうならぬようにメンタルケアを徹底しなければならないな。

 

「唐巣、ピエトロに聖句を教えてやってくれ」

 

「それは構いませんが……急にどうしましたか?」

 

「本来ならば光の魔術と闇の魔術の合一がもっともリスクが少ない。だがピエトロには才がない」

 

黒魔術の才はずば抜けているといっても良いが、絶望的に光の魔術に対する適性がない。このまま魔法陣の中心で光の魔術と向かい合わせても、光の魔術には決して開眼しない。

 

「聖句と闇の魔術を混ぜるのは難しいが、ピエトロにはそれしかあるまい」

 

「判りました。確かに引き受けました」

 

「すまんな、冥華の件で疲れているのに」

 

「はは、貧乏くじは引きなれていますよ」

 

そう笑う唐巣に背を向けて部屋を出るとピエトロが廊下のベンチで輸血パックを咥えていた。

 

「お父様」

 

「ピエトロ、お前に光の魔術は扱えぬ。絶望的なまでにお前に才はない」

 

「うっ……そ、それでも「なればお前が新たな道を作れ、聖句を使いこなせるようになれ。お前にはそれしか道はない」……はいッ!」

 

聖句と闇の魔術の合一、それは今までどんな者でも挑戦したことの無い新たな道。茨の道になるだろうが、ピエトロが横島に届こうとするのならば、それしか道はない。余りに過酷な道だが、我は確信していた。ピエトロならば、かならずその場所に辿り着けると……。

 

 

 

~ゴモリー視点~

 

「ねー、柩ちゃん。愛子ちゃんに会いに行きましょうよ?」

 

「だ・れ・が・い・く・かッ!!」

 

一言ごとに怒鳴るように言う柩ちゃんに肩を竦める。脳裏に過ぎるのは昨日の記憶。

 

「大丈夫、人それ……「だ・ま・れッ!!」あふんっ!?」

 

行き成り頭に鋏、やだ。うちの娘がバイオレンス過ぎる件について、アシュタロスに相談したくなるわ。

 

「ちょっと上級者過ぎるだけで」

 

「もういいから黙ってくれないかなあ!?」

 

頭に突き刺さったまま柩ちゃんの説得を試みるが失敗だ。血が噴水のように噴出すけど、鋏は抜くべきだったかもしれない。

 

「愛子ちゃんもあれじゃない」

 

「あれとボクが同類とか断じて認めないッ!」

 

認めたほうが楽なのに……この高い自尊心と冷静な部分が相まって、今の柩ちゃんは混乱してるのね。

 

「本逆」

 

「~~~ッ!!!」

 

顔を真っ赤にして本を正しい位置に戻す柩ちゃん。うちの娘がバイオレンスではなく、うちの娘が可愛すぎるとでも言うべきかも知れない。

 

「アルテミスも結構いい女神様よ?」

 

「あんなスイーツが!?」

 

ちょっと電波入ってるけど、アルテミスはそんなに悪い女神じゃない。そしてその巫女の愛子ちゃんも結構可愛いのよね。

 

「滅んだ世界で2人きりとか良いんじゃない?」

 

「異常だよッ!?」

 

愛子ちゃんの独占欲の凄さを感じた。愛子ちゃんも必死に否定していたけど、自分の心の奥底の願望だからそれは仕方ないと思う。

 

「飼われる事希望の「黙れえッ!!」あいだああッ!?」

 

今度はカッターを突き刺された。解せぬ……やっぱり家の娘はバイオレンス過ぎるかもしれない。バイオレンスかつ助兵衛なロリィとかレベル高いと……。

 

「いたいいいッ!?」

 

「今失礼な事考えただろッ!?」

 

頭に刺さったカッターをぐりっとされた。ちょっとソロモンの魔神でも物理的に痛すぎる。

 

「大丈夫、私は良いと思う。後は横島君次第」

 

「……ちょっと本気で1回死んでくれないかな?」

 

横島君の倫理観が問題になると思うけど、頑張れば柩ちゃんの拘束飼い犬は多分叶う夢だと思う。ちょっと余りにハイレベルなので、ちょっと引いてるけど、でも性別とか変えれる神魔からすれば多分、うん、まだ正常。もう一線越えてしまうと流石の私でも手に余るけど、今ならまだ可愛いで頑張って押し通せると思う。

 

「とりあえず、横島君が帰るまでにどこに誘おうとか考えた方が良いと思うの?」

 

「……横島、良いって言ってくれるかな?」

 

「勿論、だからその手に持っているナイフとか、包丁をこっちに渡してちょうだい」

 

ちなみに私が攻撃されてもじっと耐えて、説得を試みていたのは愛子ちゃんの机の中で柩ちゃんの願望。目隠し首輪が露見し、ドン引きされたことで目がぐるぐるになってしまった柩ちゃんを落ち着かせるためだった。なんせ家中の刃物を確保して、近寄るなと威嚇する柩ちゃんの説得は本当に大変だった。

 

「……そうかな?」

 

「大丈夫よ。横島君は貴女の事を嫌ってないわ、だから刃物をこっちにちょうだい?」

 

「……うん」

 

説得時間8時間と42分。やっと柩ちゃんの手元から刃物が離れた事に心底安堵する。

 

(まぁ大丈夫、うん。きっと大丈夫)

 

ちょっと柩ちゃんの中で横島君が占める部分が大きくなりすぎちゃったのよね。でも大丈夫大丈夫と言いながら柩ちゃんを宥める。

 

「柩ちゃんは可愛いから大丈夫」

 

「……」

 

でもちょっとこの目から光が消えかけているのは危ないわね……予知の時に何か見たくないものを見てしまったのかしらと思いながら、私は柩ちゃんが眠りに落ちるまで頭を撫で続けてあげるのだった。

 

 

 

 

~アシュタロス視点~

 

私はこの時尋常じゃないほどに焦っていた、横島君のバイクのライヘンバッハを組み込む事に成功したし、それにドクターカオスが修理している篭手型の変身ツールも比較的計画通りに進んでいる。それにガープに私の事がばれた訳でもない、それでも私の額には大粒の汗が浮かんでいた。

 

「やぁやあ。初めまして、アシュタロス」

 

「……君は誰だい?」

 

ローブを目深に被り、片手にやけに古めかしい本を抱きかかえた青年が突如私の部屋に現れた。冷静に声を掛けたつもりだが、自分の物とは思えないほどに声が震えている。

 

「そう怯える事も恐怖することもない、ただそうだね。お茶を飲みに来たとでも言えばいいかな?」

 

「……そうかい、それならば茶を入れよう」

 

さっき蓮華に運んできて貰ったばかりのティーポットから2つのカップに中身をを注いで、青年の真向かいに座る。

 

「どうぞ」

 

「いや、すまないね」

 

すまないと言っておきながら、全く謝罪の感情を感じられない声。その声を聞きながら、部屋の中を確認するが転移などの痕跡はない。どうやって私の部屋に入ってきたのかが判らず、正直かなり困惑した。

 

「良いお茶だ、ありがとう」

 

「いや、構わないよ。それで君は何をしに来たんだい?」

 

神魔に気付かせずに、部屋の中に現れた。ルイ様とよく似たその術、だがルイ様は程遠い気配にルイ様の変装ではないとわかっていても、警戒心を如何しても緩める事が出来ない。

 

「なに、ちょっとした警告だよ」

 

「警告?私にかい?」

 

「そう、他でもない君にだよ。平安時代の事を覚えているかい?」

 

平安時代?一瞬何を言われたか判らなかったが、次の瞬間激しい頭痛が私を襲った。

 

「がっ!?」

 

「ちゃんと預けた物を持っていておくれよ?忘れていると思うからね。ま、私に出会ったことも忘れるんだがね。お茶ご馳走様、美味しかったよ」

 

「……そうだった、そうだった。これを忘れていた」

 

何で忘れていたのか、とても大事な物だったはずなのにと思い慌てて立ち上がり、引き出しの中からある物を取り出す。

 

「きっとこれが横島君に必要になる筈だ」

 

ずっと前に見つけた物。恥ずかしいことに何時手に入れたか忘れてしまった。だけど、これが横島君の助けになることは判っている。

 

「……待てよ、なんで私はこれを持っているんだ?」

 

机の上に置かれた巨大な白い眼魂。それが大事な物であると言うこと、隠しておかなければならなかったの筈なのに、何故私は今これを躊躇い無く机の上に出したのか?その理由は幾ら考えても判らず、何故か机の上に2つ置かれている紅茶のカップにも訳がわからず私は首を傾げ続けるのだった……。

 

「運命の転機、その1「平安時代」ガープによって歪められた過去、それがこの世界の1つの転機となる」

 

アシュタロスのビルの上で楽しそうに本を捲り続ける男……フォーティス。何を見ているのか、そして何を考えているかも判らないフォーティスはゆっくりと立ち上がり、自身が開いていた本を閉じる。

 

「どうか、悔い無き選択をすることを祈るよ。ふふふふ」

 

強い一陣の風が吹いた時、フォーティスの姿は最初から存在しなかったように消え去っているのだった……

 

 

リポート31 サイド東京 その2へ続く

 

 

 




リポート31はこんな感じで伏線を用意して行こうと思います。柩ちゃんが一線を越えかけているのは……彼女の仕様です。

次回もこんな感じで話を展開して行こうと思いますので、次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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