GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート6 原始風水盤を発見せよ その6
満月を明日に控えた夜。前祝と言う事でアスモデウス、アスラと共に酒宴を開く事にしたのだが……
「何故手ぶらで来た。アスラ」
諸事情で参加出来ないセーレでさえ、少しは酒などを用意してからアジトを出たのだが、アスラが手ぶらで来た事に気付きそう尋ねるとアスラは腕組しながら
「……散々酒と食料を提供しただろう?それなのに我にも用意せよ?と言うのか?」
むう……それを言われると辛いのだが、アスラは酒をかなりのハイペースで飲む。あのペースで飲まれたら私のコレクションが……
「アスラ。ガープの集めている酒はとても稀少な物だ。普段のような飲み方をするのなら控えて貰おうか?」
「……判っている」
アスモデウスの言葉に顔を顰めながら返事をするアスラ。正直心配だが、これから私達が本格的に動くその前祝いだ。飲みすぎるからと言う理由で仲間外れにはしたくなかった、まぁ約一名滝の様な涙を流しながらアジトを出て行った馬鹿が居るが……
「セーレは残念だった」
「ああ、私も予想外だったよ」
あの馬鹿蠅が動き回った事で神魔混成軍も厳戒態勢。それに伴いセーレも召集されたのだ、一応セーレの分のワインは置いておいてやるか……泣くかも知れないからな
「GS試験で動いたのが良かったな。必要以上に警戒してくれている」
「ああ。そうで無ければ意味が無い」
GS試験でアマイモンの腕を奪った、それだけの能力を持つと神魔が警戒した。それは本来警戒しなければならない所にむける意識を別の所に向ける事になり、私達が余計動きやすくなるだけだ。向こうが勝手に警戒し、疲弊してくれる。これほど都合の良い事は無い
「香港には神魔は派遣しないんだな……まぁ何故か真の蠅の王が香港に居るらしいが、それはどうする?」
ある程度は戦力を送ってくる筈と予想していたアスラが拍子抜けと言う感じで呟く。私ももしかすると魔界正規軍辺りが何人か送ってくると思っていたが、それも無かった。予想外と言えば1つ。ルシファーが香港に現れた事と真の蠅の王ベルゼブルが香港に居ることだが、正直言って向こうから干渉してくる事は無いと予想しているので、それも大した問題ではない。どうせルシファーの悪ふざけにベルゼブルが巻き込まれている。大方そんな所だろう……
「ああ、それか。正直真の蠅の王に関しては不安要素だが、向こうも魔界の重鎮だ。下手にちょっかいをかけなければ大丈夫だろう」
自分の名を騙る愚か者の制裁。それで動いていると言う話は聞いている。だから下手にこちらから手を出して、敵対しなければ今の所は問題無い。それが私の出した結論だ、そもそもベルゼブルは今の情勢に全く興味が無く、不干渉を宣言しているしな……
「そして神魔混成軍の増援だが、恐らくそれも無い。小竜姫とメドーサがいれば大丈夫だと考えているのだろう?いくらオーディンや竜神王が増援を送ると言っても馬鹿共がそれに反対する。なぜならば人間を見下しているからだ、人間など死んでも痛手ではない。そう考えている神魔が多いのは言うまでも無いだろう?」
ボトルのコルクを空け、グラスに注ぎながら私の考えを口にする。私が今最も恐れているのは神魔混成軍などではない、GS試験で対峙した人間達の方がよっぽど脅威だと思っている……だが今死んで貰って困ると言う非常に厄介な立ち位置にあの人間達はいる
「どうするつもりだ?あの馬鹿は間違いなく殺しに掛かるぞ?」
ああ。ベルゼバブか、あれは正直どうでも良いんだが……狂神石で増長し、私達を殺し自分が我々の一団のトップになる。なんと言う分不相応の野望を抱いているのも知っている……だが、だからこそそれで良いと言うと怪訝そうな顔をするアスモデウスとアスラに全部計画通りだから気にするまでも無いと言い切る
「あの馬鹿が裏切る事も想定の内、最初から切り捨てる事を前提で計画を進めている。もっと言うとだな」
ここでワインを呷り、1度気分を落ち着ける。あんな馬鹿を一時的でも自分達の陣営に迎え入れる。それは苦渋の決断だった、なんせ私の計画にはある程度の魔力を持つ生贄が必要だった、しかしそれで私達の目的に賛同し、集って来てくれた部下を使うのは流石に心苦しい、適度な権力欲を持つ馬鹿がいないか?と考えているときにきたのがベルゼバブ。あいつは正しく飛んで火に入る夏の虫と入った所なのだ
「正直原始風水盤で魔界を人間界に呼び出すなんていう名目は正直どうでも良い。破壊されても良い、起動さえすれば良いんだよ……あれはな……鍵なのだから」
鍵?と尋ね返してくるアスラとアスモデウスにそうだと返事を返し、ワインを呷る。それだけで2人は私がこの事について私がこれ以上喋る事は無いと理解したのか、同じ様にワインを呷る
「ふむ。悪くない、良い味だ」
「……我には合わんな」
アスモデウスは気に入ったようだが、アスラは眉を顰めている。これは西洋と東洋の魔神の味覚の違いと言う事で我慢してもらうしかないな。なんだったら自分の酒蔵から自分の味覚に合う酒を持って来れば済む話だ
「では今回はあの人間達は殺さないと?」
「ああ、殺すつもりは無い。危険と判断すれば適度な所で邪魔に入るさ」
私の目的の為には今はまだ死なれては困る人材だからなと笑い、私はワインのボトルに手を伸ばすのだった……明日が来れば私達の計画を更に進む。何の支障も無く、自分の計画通りに物事が進んでいる。故に失敗はありえない、必ず成功する。そう確信するのだった……
カオスは予定した時間丁度に私達が滞在しているホテルに大量の装備を持ってマリアとテレサと共に尋ねて来てくれた。これなら今日の内に原始風水盤の場所に乗り込めるかも……っと思っていたんだけど……私達は手分けしてあちこちの水を汲みに行っていた。原始風水盤の場所を特定する為らしいけど……これに何の意味があるのだろう?
「うーむ……こっちは外れじゃな。おーい、次の水をくれー」
次の水をくれと言うカオスに横島君が汲んできた水の入ったフラスコを手渡しながら
「なーカオスのじーさん、これ何の意味があるんだ?」
「ん?ああ、お前も水の陰陽術を使ってダウジングをしていたじゃろ?水にはの、魔力や神通力と言った力が染み出しやすい性質がある。原始風水盤ともなればその魔力量は文字通り桁違いじゃ、ならば水を調べる事で場所を特定できるんじゃよ」
錬金術の初歩じゃなと横島君に話しながら、渋い顔をするカオス。この反応を見ると場所の特定はやはり難しいのだろうか?
「誰かA-7・A-8の水をくれんか?Aー5に反応があった。ここから特定に入る、次にB・C・D・Eの5・6・7・8も頼む」
カオスの指示にしたがって、フラスコを手渡していく。その反応を見ながらカオスは地図の前に待機しているマリアとテレサにも指示を出していく
「A-7・B-8・D-7・C-5・E-6の地点を線で繋いでくれんか?」
「了解しました」
地図に線が引かれる。そしてそれはかなり歪だったが線で繋がれ囲いを作り出した
「ふう、この囲いの中に原始風水盤がある」
場所は特定できた。それは良いことなんだけど、私達全員の表情が曇る。場所は香港の地下鉄の整備用の地下プラットホーム……政府に許可を取れば整備用の通路を進む事が出来るだろうけど……
「正規の通路じゃ間違いなく通じてないですよね」
蛍ちゃんの言う通りだ。場所は地下鉄の整備用のプラットホームだろうけど、人間が出入りする場所に原始風水盤を設置しているとは思えない。あの辺りは周囲がコンクリートで覆われているが、あちこちの空間がある。その何処かに人間が知らない通路があり、そこに原始風水盤が設置されているのだろう
「悪いがこれ以上の詳しい事は判らんぞ?」
カオスでこれ以上調べる事が出来ないのなら、恐らく横島君も同じ。しかしこれだけの範囲を調べて今日中に突入するのは明らかに無謀だ。原始風水盤を見つけたとしてもその前に体力も霊力も相当消耗してしまう筈、そうなれば原始風水盤の破壊はまず不可能だ
「とりあえずその周辺に監視用の使い魔を飛ばしましょうか。もしかすると出入りしている馬鹿を見つける事が出来るかもしれませんから」
「……無いよりはましだと思いますけど、今はそれに頼りましょうか」
くえすと小竜姫様が溜息を吐きながら使い魔の準備をしているのを見ながら、私もこうしてはいられないと準備していた書類を封筒に入れて
「小竜姫様。私は香港のGS協会と政府の方に周辺の立ち入り禁止要請に行ってきます、少しの間横島君達をよろしくお願いします」
GS試験と同等かそれ以上の被害が出る可能性もある。それならば最初から周辺を立ち入り禁止にしてしまったほうがいい。巻き込まれた民間人なんて洒落にならないからだ。日本のGS試験の事はこっちにも伝わっているので、話を進めるのはそう難しい物ではないだろう
「判りました。ドクターカオスが持って来てくれた霊具などの確認をしながら待っています。美神さんも気をつけて」
小竜姫様の言葉にありがとうございますと返事を返し、私は香港のGS支部へと向かうのだった……
「すんなり行ったわね……ま、当然よね」
周囲の立ち入り禁止は2つ返事で了承してくれた。やはりGS試験の事があったので、ガープ一派が動く可能性があると言えば2つ返事でOKだった。丁度今日までその周辺で映画を取っている日本と香港のクルーが居たらしいが、それも今日の昼間に撤収しているので何の問題も無い。どうか香港を護ってくださいと言う香港の市長とGS協会の会長……応援に出せるほどのGSがいないので許してくださいと言っていたが、足手纏いは居ない方が良いのでそれはそこまで気にしていない。後は……横島君をどうするか?と言う問題は、ホテルに帰ってから話し合えば良いかと思い、私はホテルへと急いで引き返す事にするのだった……
だが美神は知らない、美神がGS支部を後にしてから数分後。映画のシーンの撮り忘れがあると言って映画の撮影チームが訪れた事を、そしてその場は引き下がった撮影チームが何かを企んだような顔をして、その場を後にした事を……
ドクターカオスとか言うジーさんが持ってきた霊具それを確認していたんだが、これめちゃくちゃ面白いな!!
「お、これなんかお前に丁度良いんじゃないか?横島」
「なんでヌンチャクだよ?お前俺なんだと思っているんだ?」
面白いと思ったんだがな、横島には不評だった……こいつ目が良いから使えると思ったんだけどな……
「それ美神さんに良いんじゃない?神通棍とか好きだし」
そうなのか?それならこれは美神用だな……机の上にヌンチャクを置いて次の霊具を確認する
【ワシ、幽霊だからなあ……自前で武器は用意できるが……面白い物ばっかじゃなあ……】
……GSの集団なのに、なんで普通に幽霊が混じっているんだろうな……俺の知っているGSとかとは全然違うな。横島の回りだけがそうなのかもしれんが……なんかその異常になれてきている自分が居るのが何か怖い
「これは僕が使わせて貰います。精霊石で出来たロザリオ……僕にぴったりです」
ロゼリオを手にして笑うピエトロ。だけどこいつ吸血鬼だよな……大丈夫なのか?
「ピエトロはハーフだから大丈夫なんだよ。普段反発する光と闇を同時に使って力を増幅させる。普通は出来ない事なんだぞ?力同士が反発して身体が弾け飛ぶ」
メドーサの説明に俺と横島の顔が青くなり、2人でピエトロの顔を見る。こいつそんな危険な事をしていたのかと
「あ、いや。そうらしいんですが、僕はシルフィーと違って人間の力の方が強いので出来るんですよ。同じハーフでもシルフィーは吸血鬼の力が強すぎるので出来ないらしいですし……ハーフとしても出来損ないの僕だからこそ出来た事かもしれないですね」
でもこの力があるから出来る事も多いので、別にハーフとかが嫌って事じゃないですよ?と笑うピエトロ。こうして話して見るとピエトロも案外苦労しているのかもしれないな……両親がいなくて白竜寺に拾われるまでは生きる事にやっとだった俺と似ているかもしれない
「皆さん、武器の確認も良いですが防具の確認も大事です。順番にこっちに来てください、ドクターカオスが作ってくれた防具の調整をしますので……まずは横島さんからです」
「そうだぞー、特に横島。思いつきで行動するお前は特に強力な防具だからなー」
カオスのジーさんの娘だという2人が横島を呼ぶ。横島は判ったと返事を返し2人の方に歩いていく横島の背中を見ながら
「結局横島も連れて行くのか?」
原始風水盤の破壊作戦に横島を連れて行くから防具を装備しろと言っているのだと思い、メドーサ達に尋ねる。
「……仕方ない。原始風水盤を囮にしている可能性もある。横島を奪われる訳には行かないんだ」
シズクが眉を顰めながら呟く。それに小竜姫やメドーサ、それに神宮寺まで同意しているのを見て
(横島には俺達も知らない何かがあるのか?)
だからここまで徹底して横島を守ろうとしている?あのお人よしに一体どんな秘密があるのだろうか?俺が首を傾げていると美神が帰ってくる
「どうでした?周辺の立ち入り禁止のほうは?」
「バッチリ。香港市長とGS支部会長が協力してくれるって、警察による検問と立ち入り禁止令を出すから大丈夫だって」
これで民間人が迷い込んでくる事は無いな。これで少し不安材料が消えたか……後は原始風水盤の場所を特定するだけだな
「終わったー。なんかめちゃくちゃ凄いわ」
【うむ。だがあれだけの物ならば魔族の攻撃を受けても致命傷にはなるまい】
横島の防具のチェックが終わり、今度は俺が呼ばれる。ブレスレットなどを見て思わず
「こんなもんで防具になるのか?」
俺がそう尋ねるとマリアがまぁ見た目は頼りないですがと呟いてから、機能の説明を始めてくれた。精霊石を埋め込んでおり。攻撃に反応して自動的に障壁を展開するらしい
「へーこれはあれか?魔装術を使っていても大丈夫なのか?」
「そう言う風に調整してあります。なので問題無いです」
それはありがたい。この防具を使っているから魔装術が使えないなんて事になるなら断ろうと思っていたが、俺の思い過ごしだったようで何よりだ。差し出されたブレスレットやペンダントを受け取ると美神から
「じゃあ防具の調整が終わったら夕食を済ませて身体を休めて頂戴。いつ出発になるか判らないからね」
早めに夕食を済ませて身体を休めておけと言う言葉に頷き、談話室の隅でチビ達を遊んでいる横島に
「一緒に飯に行こうぜ。1人で食っても詰まらん」
「OK。直ぐ行く」
横島と2人で夕食を済ませ、言われた通り早めに眠りについたのだが……その日の深夜と翌日の朝まで掛かっても原始風水盤の場所は確認出来なかった。
「!美神さん!神宮寺さん!メドーサ!こっちへ!使い魔がベルゼバブの姿を捉えました!」
俺達がやっと原始風水盤の場所を知る事が出来たのは昼過ぎ。日が落ちるまで後6時間と言うかなり不利な時間になってからの事だった
「時間的にはかなり不利ですが、満月まで時間がありません。強行突入となります」
準備を整えてから小竜姫が話し始める。日が落ちると同時に起動するのは目に見えている、その前に原始風水盤を破壊するのは恐らく不可能。それが美神達が出した結論だ
「ドクターカオス。もし起動してしまった場合、機能を停止、もしくは効力を変えるが出来るんですね?」
「まぁな、このワシに不可能は無い。但しそれ相応の時間が必要になるがな」
その話で判った。俺達の仕事は時間稼ぎもしくはカオスのジーさんの護衛だと
「ベルゼバブとの戦闘は私とメドーサが先陣を切ります。美神さんと神宮寺さん、そしてシズクはそれの支援をお願いします。竜神の装備は一応渡しておきますが、竜気は人間には強すぎます。美神さんと神宮寺さんの2人だけの装備だと思ってください」
「狭い空間での戦いとなるとベルゼバブの方が圧倒的に有利だ、背後からの奇襲を防いでくれるだけで良い。雪之丞達はカオスの護衛。こいつがやられたら原始風水盤の機能を停止させるのは無理だから重要任務だよ」
メドーサの言葉にうっす!と返事を返す。前衛で戦えないのは残念だが、護衛も重要なポジションだ。任された以上はベストを尽くすだけだ。だから後衛は俺と横島とピエトロとマリアとテレサ。前衛は小竜姫とメドーサと美神と神宮寺にシズク……戦力的に言えばもしかすると今世界で一番戦力を持っているのはこの集団かもしれないなと苦笑する
「美神さん。ノッブちゃんと蛍はどうするんですか?」
【ワシハブ?】
「私も後衛でいいんですか?」
【私今回出来る事無いんですか?】
横島とノッブが手を上げて質問する。そう言えば、ノッブの名前は言われなかったな。忘れられてたのか?
「ノッブと蛍ちゃんは遊撃。前衛と後衛の両方を勤めて貰うわ、状況次第で前衛と後衛どっちかに入って貰う、厳しいと思うけど任せたわ、おキヌちゃんは後衛から霊具の運搬。但し無理はしない事」
おっと……2人だけ2倍仕事か……南無と心の中で手を合わせるが、正直な所英霊と俺よりも格上の霊能者。俺達よりもキツイ仕事に回されるというのは予想していたので、頑張ってくれと心の中で呟き、俺は俺に出来る事をしよう。そう思い、ピエトロと横島、そしてマリアとテレサを呼び寄せる
「さてと護衛組みでのフォーメーションを決めるぜ。出発の前に役割を決めておこうぜ」
「判った。あ、そうだ。チビ達ってどうする?」
横島の足元のチビ達を見て、少し考える。チビ 電撃 モグラ 巨大化・火炎放射 タマモ 火炎と幻術 心眼は指揮……うん、俺よりもよっぽど強いよな。この小動物……それにあのバンダナ……横島は自分の戦闘力もそうだが、周りにも恵まれていると本当にそう思う
「うっし、そいつらも陣営に入れよう。多分横島の言う事しか聞かないから横島の周りに配置する方向で」
「伊達さん。私とテレサはアンドロイドなので前衛で大丈夫です」
「あかんあかん、マリアもテレサも女の子なんだから怪我したら危ないやろ」
「大丈夫だよ、と言うか、私も姉さんもお前が前に出るほうが心配で心配で……だから今回は大人しく護られてくれ」
「いや、それって男としてはかなり情けないんだけど……」
……うーん。横島の回りはやっぱり女が多いな、あれが横島の人徳なのか?と思いながら、出発までの15分間で簡単にフォーメーションを決め、霊具の確認を済ませ。俺達はホテルを後にするのだった……
そして美神達がホテルを後にした30分後……
「さてと、では私も行くか。我の名を騙る不届き者を成敗する為にな」
高城……いやベルゼブルの身体が一瞬で鎧姿へと変化し、ベルゼブルもまたベルゼバブに制裁を加えるという目的の元ホテルを後にするのだった……
人間達に原始風水盤の場所を知られた。それ自体は大した痛手ではない……問題は今俺が置かれている状況だった。狂神石
……アスモデウス達が持つ神魔の力を増幅させる紅い石。それを手にする為に俺は下げたくない頭を下げ、アスモデウス達に従いこの石を手にした。そして原始風水盤、狂神石と原始風水盤それさえあれば俺は無敵になる。それまでの辛抱だと繰り返し耐えてここまでやって来たと言うのに!
「ちっ!誰がやりやがったぁ!!!」
【【【【………】】】】
俺の目の前を飛んでいる俺のクローン体。そいつらが縦横無尽に飛び交い、俺を攻撃して来る。狂神石で能力が上がっているとは言え、俺と同じ能力を持つクローン……倒す事は出来るが、徐々にダメージが積み重なっていく
「ふっざけんなあ!!俺は!俺こそが真の蠅の王!ベルゼバブ様だ!!俺を舐めるんじゃねえッ!!!」
魔力を怒りに身を任せ放出する。それで向かって来ていた残りの2体のクローンが消し飛ぶが、凄まじい疲労感にその場に蹲る
「ちくしょうが……人間共も来ているって言うのによ」
もうクローンを作り出す余力も無い。不幸中の幸いは日が落ちるまで後数時間と言う事だ、ここに来るまでにゾンビや罠を大量に設置してある。だから時間は稼げるだろうが……起動が間に合うかどうかは正直五分五分と言う所だ……ガープ達に援軍を頼む事も考えたが、そうなれば裏切りを考えている俺を制止出来るガープ達が信用出来る部下を寄越してくるだろう
(俺1人で何とかするしかねえ)
そして原始風水盤の魔力を持って、俺はアスモデウス達を殺し、俺があの一団のトップになるのだ。こんな所で倒れる訳には行かない。俺は身体を引きずる様に原始風水盤の中心へと移動する。既に魔力が集まり始めているので、体力の回復に役立つ筈だ……残っているクローン全てをここの出入り口へと集めてから俺は目を閉じ、少しだけ眠る事にした。この状態で戦いになれば間違いなく起動まで持ちこたえる事無く、殺される。だから少しでも体力を回復させたかったのだ……ダメージの大きさに疲労もあり、俺は数秒で眠りに落ちるのだった……
「……来たか」
クローンからの警告の声が脳裏に響き、目を覚ます。さっきよりかは大分回復しているが、やはり本調子とは程遠い。だが日が落ちるまで1時間……短くて長い時間だなと苦笑しながら飛翔すると同時に小竜姫とメドーサを先頭に現れた人間達目掛け魔力弾を打ちだすのだった……
原始風水盤のある地下通路はコンクリートで舗装されていて非常に走りやすかった。途中にゾンビや罠やパズルのような結界と明らかに足止め目的の罠があったのだが、カオスのジーさんや神宮寺さん、それに小竜姫様にメドーサさんが居れば障害と言えるだけの罠ではなかったのだが、いかんせん数が多すぎた
「美神さん!日暮れまであと一時間です!」
「ああっもう!なんでこんなにギリギリになるかな!!!」
強行突破と速攻で原始風水盤の破壊!それとベルゼバブの討伐!と叫ぶ美神さんに判っていますと返事を返しながら
「美神さん!神宮寺さん!蛍!替えのスプレー!!!」
肩から下げた鞄からスプレーの替えを取り出して投げ渡す。ベルゼバブは蠅の魔族と言う事で殺虫スプレーが非常に効果的らしいのだ。しかもそれはカオスのジーさんが成分を強化しているので余計に強力。魔族ですら殺す殺虫スプレー……恐ろしすぎるが、それと同時に頼もしい武器である事は明白だった
「ジーさん、そろそろ着くぜ。大丈夫か?」
「お、おう……流石にこの年じゃ、走り続けるのは酷でな」
カオスのジーさんは途中で体力切れと言う事で雪之丞が背負って走り続けている。カオスのジーさんの方がでかいのに、よく背負えるなと正直感心する
「横島さん。もう1度言いますが、決して前に出ないでくださいね」
「そう言うこと、危ないからな」
【横島さんは私と一緒に後衛で頑張りましょうね!】
マリアとテレサ、それとおキヌちゃんの言葉に頷きながら走ると、視界が開ける。あそこに原始風水盤があるのか!?と走る速度を速める
「ちっ!!!」
神宮寺さんの舌打ちと共に通路に凄まじい衝撃が走る。どうやら向こうからの先制攻撃のようだ
「横島君達は予定通りカオスの護衛と原始風水盤に接近するための援護!無理をするんじゃないわよ!」
美神さんの怒声と共に風を切る音が響く、多分小竜姫様とメドーサさんが空を飛んだ音だと思う
「横島。今回はお願いだから無理をしないでね?眼魂は出来るだけ使わない方向で」
【うむ、そうじゃぞ?余り無理をすると今後に響くからな】
蛍とノッブちゃんが俺にそう警告して、先に広場に飛び出る。それから遅れて数秒後俺達も広間に出て、うげっと呻いた
「「「「「「はーはっはははは!!良く来たなあ!だがお前達には邪魔をさせない!原始風水盤は起動し、俺は最強の力を手にするんだ」」」」」
狭い空間にベルゼバブの笑い声が響き渡る。その空間全てを埋め尽くす蠅の大群……嫌悪感を流石に感じてしまう
「……氷柱で一掃する。横島!スプレーを投げろ!!」
シズクの怒声での指示に反射的に従う。雪之丞とピートも同じでスプレーを投げると、シズクが氷柱を放ち、スプレーを粉砕する。辺りに充満したスプレーの成分に蠅の悪魔達が地面に落ちていく
「弾けろぉ!!」
それに続くように神宮寺さんの怒声と爆発音が響く、狭い空間でこれだけの攻撃をして大丈夫なのか!?あまりの爆音に足が止まる
「馬鹿!止まってんじゃないわよ!早く原始風水盤へ!起動を阻止するのよ!!」
美神さんの怒声に我に返り、打ち合わせの通り、マリアとテレサ、そして雪之丞を先頭にし、俺とピートがカオスのジーさんの脇を固めて原始風水盤へと走る。美神さんが破魔札を、神宮寺さんが魔法を、シズクが氷の矢を乱射し、天井を埋め尽くしている小さな蠅の悪魔を消し飛ばしていく。
「大人しくお縄に付きなさい!」
「昔の同僚の好だ。楽に取り押さえてやるよ!」
小竜姫様とメドーサが本体のベルゼバブを左右から攻撃し、動きを拘束する。その間に必死に走り続けもう少しで原始風水盤っと言う所で
「させるかよぉ!!!」
「「「うわっ!?」」」
【地面から蔦が!?】
ベルゼブルの叫び声が聞こえたと思った瞬間。足に何かが絡まり全員同時に転倒する、唯一無事だったのは幽霊のおキヌちゃんと俺の頭の上に乗っていたチビ達だけだ。走るのに自信のある俺は雪之丞達よりも前を走っていたこともあり、蔦に足を取られたマリアとテレサの方に倒れこんでしまったのだが反射的に目の前に手を伸ばして、掴める何かを掴んでしまったのだが、それが何なのかを理解した瞬間。顔から火が出るかと思うくらい熱くなった
「あいたた、横島も大丈夫そうで良かったよ」
「……」
右手がテレサの胸を鷲づかみにしていて、左手がマリアの尻を掴んでいる。テレサは平然としているが、耳が紅くなっているので羞恥心を感じているのだろう、その反応を見て俺自身も罪悪感を感じてしまう。と言うか、背後の雪之丞とピートの無いわーっと言う声と視線が物理的な威力を持っているのでは?と思うくらいで俺を見つめているおキヌちゃん。手を放さなくてはと思うのだが、吸い寄せられているかのようにその手を放す事が出来ない。こんな状態で何をやっているんだよ!と思うが、俺だって健全な男子高校生だ。チビ達の前ではエロは駄目だと我慢していたが、やはりその反応してしまうわけで……
「よ、横島さん。流石に恥かしいので手をどかしてください」
「あわわわ!!ご、ごごご!ごめん!」
マリアの声で我に返り、マリアとテレサから両手を離す。俺を純真な目で見つめているチビとモグラちゃんの視線に罪悪感を感じ、頭を抱えていると
「横島!今はそんな事をしている場合じゃないから!早く原始風水盤を何とかして!、あと、後で絞めるから!!!」
蛍の言葉に我に帰り、足元の蔦を解こうとするが、ギッチリ巻きついていて解く事が出来ない。と言うか絞めるってやっぱりマリアとテレサの胸と尻を触ったからですか!?と泣きそうになりながら、蔦を解こうともがくが蔦はまったく緩む気配がない。あと神宮寺さんの視線もめちゃくちゃ痛い!さっきのは事故だったのに!なんとかして弁解出来ないかと慌てていると今度はシズクとノッブちゃんの怒声が響き渡る
「……ちい!美神!小竜姫!私は横島達の護衛に回る!分身体が横島達を狙い始めた!」
【ああっ!鬱陶しいの!的が小さいから打ち落としにくい!】
動けない俺達を天井を覆い尽くしていた蠅達が一斉に襲ってくる。それをシズクとノッブちゃんが護ってくれるが、それは後衛からの支援が弱くなったと言う事で美神さん達も動きが一気に鈍くなる
「タマモ!炎で何とかしてくれ!」
マリアとテレサが私を先にと言うが、女性に火傷なんかさせる訳には行かない。まず俺からだ、タマモは俺の指示に少し悩んだようだが、俺の目を見て止められないと思ったのか俺の足元を睨みつけ大きく鳴き声を上げる
「コーン!」
タマモの狐火が蔦を焼く、その痛みと熱さに眉を顰めるが、これで動けるようになる。炎が消えたタイミングで立ち上がろうとするが、足は全く動かない。慌てて自分の足元を見て驚愕した
「嘘だろ!?」
蔦は焼ききれる事無く、今も俺の足を締め付けていた。なんで燃えないんだ!?
「うきゅー!」
「みむー!」
モグラちゃんの爪とチビの噛み付きでもビクともしない、何だよ!?何なんだよ!これは!!!雪之丞も魔装術、ピートも霊力の刃で攻撃しているがビクともしない、こうなったら心眼に頼るしかない
「心眼!これ何とかならないのか!?」
【今分析している!もう少し待て!!】
心眼でも駄目なのか!?時間が無いって言うのに!焦りだけが胸を埋め尽くしていく……このままじゃ原始風水盤が起動してしまう!俺も必死に足に絡み付いている蔦を攻撃するが微動だにしない。それが余計に俺を焦らせる
【えーい!こっちに来ないでください!!!】
おキヌちゃんも地面に落ちている石を使って蠅の悪魔を攻撃してくれているが、文字通り焼き石に水状態だし、チビとモグラちゃんも蔦を切ることが出来ないと判ると蠅の悪魔の攻撃に入ってくれているが……
「みむうううう!!!」
「うきゅー!!!」
【【【!!!】】】
電撃と火炎放射で蠅の悪魔を攻撃するが、蠅の悪魔の方の動きが早すぎて捉え切れていない。近づけさせないように連続で攻撃を続けてくれているが、何体かは打ち落としているが向かってくる悪魔の勢いが強すぎて効果は殆ど出ていない
「クウ!!」
頑張って蔦を引き裂こうとしているタマモだが、やはり蔦を断ち切るが出来ない。陰陽術で攻撃しようにも、札は転んだ時の衝撃で落としてしまい手が届かない。ピートと雪之丞は霊波砲で攻撃を繰り返しているがやはり大きな効果は出ていない
「くそが!相手の動きが早すぎる!!」
「立ち上がる事が出来れば、近づけさせない事は出来るのですが……」
足を押さえられて動く事が出来ない。それだけでこんなに劣勢に追い込まれるなんて思ってなかった……なんとかして立ち上がらなければ、栄光の手で何とかならないかと思い蔦を攻撃するがやはり効果は薄い。本当にどうなっているんだよ、この蔦は!!!
「さーお前達は人間を見捨てる事ができるかぁ!ひゃーはははは!!やれ!クローン共!動けない奴らを狙え!!!」
【【【【!!!!!】】】】
ベルゼバブの指示で凄まじい勢いで蠅の悪魔が向かってくる。それを見た美神さん達はベルゼバブを追うのを止め、神通棍を手に蛍と神宮寺さんの名前を叫ぶ
「くえす!蛍ちゃん!」
「言われなくても!」
「小竜姫様!メドーサさん!後はお願いします!」
俺達を護る為に引き返してくる。5人で攻撃していたから、追い詰める事が出来ていたベルゼバブだが、3人抜けた事で小竜姫様とメドーサさんだけではベルゼバブを追い詰める事が出来ず……その時が来てしまった。地震のような音が響き、今まで俺達の足を締め付けていた蔦が、何度も俺達を襲っていた蠅の悪魔が何かに怯えるように消えて行く
「はーはっはは!!これで原始風水盤は起動した!これで俺は最強だぁ!!」
原始風水盤から凄まじい光が放たれ、ベルゼバブが狂ったように笑い出し、蛍達を見て更に笑みを深め
「男は皆殺し、女は犯してから殺してやるぜぇ!!!」
下種な笑い声を上げるベルゼバブに本気の殺意を覚える。こいつは生かしてはおけない、駄目だと言われていた眼魂に手を伸ばそうとしたが、それよりも早く動いた人がいた
「まだ力を利用する前なら!」
「……まだ間に合う!」
「メドーサ!」
「判ってる!
神宮寺さんとシズクが飛び出し、小竜姫様とメドーサさんの身体が光に包まれた瞬間。ガラスが割れたような音が周囲に響き渡る
「げばあ!?」
「「「はあ!?」」」
ベルゼバブの背後の空間が裂けて、そこから剣が突き出されベルゼバブを貫いていた。
「下種め、目障りだ。消え失せろ!」
怒りの篭った怒声が響いたと思った瞬間。ベルゼバブは細切れに切り裂かれ消失した。そして空間に現れた裂け目は徐々にその大きさを増して行き、ゆっくりと剣の持ち主が姿を現した。豪華な装飾が施された緑を基調にした衣装に身を包み、紅い布を片手に持った骸骨だった。優雅とも取れる仕草で俺達を見て、骸骨は楽しそうに笑いながら
「ほう、これは良い。目覚めて直ぐ不快な存在を目にしたが、貴殿達はあの下種とは違うようだ。ならば名乗ろう!我が名はマタドール!鮮血と喝采に彩られた最強の闘士!神魔よ!そして人間よ!素晴らしき闘争を再び始めようではないかッ!!!」
手にした剣を振り上げて叫ぶマタドール。その圧倒的な存在感と凄まじい圧力に俺は目の前が真っ暗になるのを感じたのだった……
リポート7 鮮血のマタドール その1へ続く
原始風水盤は特にメインではありませんでした!メインはこっちマタドールの復活。これが香港編で書きたかった事です。
今回はかなり長くなりましたが、次回からは戦闘メインで書いて行きたいと思います。参戦しなかったベルゼブルや神魔の話を前半で少し書いてからになりますけどね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い