GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
どうも混沌の魔法使いです、今回はマタドールとの一応の決着まで書いて行こうと思います、ゴーストではなかった眼魂の2個使いには賛否両論あると思いますが、そうでもしないと魔人とかに勝てないですし、オリジナルの要素と言う事でご理解いただければ幸いです。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
リポート7 鮮血のマタドール その4
なんだこれは!?私は横島の心の中でそう叫んだ。普段の横島の心の中を良く澄んだ青空だとすれば、今の横島の心の中は嵐の中だ。凄まじい怒りと憎悪の感情が逆巻いている
【横島!止めろ!!それ以上そちら側に踏み込むなッ!!!】
横島は力を求めている。それは神宮寺に施された封印を力尽くで解除する程に強烈な願望……だが今の横島はもしそちら側に踏み込めば自力で戻ってくる事が出来ない。マタドールの言った通り、横島もまたあやつと同じ存在になってしまうかもしれない。そうはさせないと何度も横島に呼びかけるが、反応が何も帰ってこない。恐らくこの殺意と憎悪に嵐にかき消され、私の言葉が横島まで届いていないのだ
(もしもあの2つの眼魂に小竜姫様とメドーサの意思があれば!)
眼魂の中には2人の神通力と魔力しか込められていなかった。これがもし牛若丸や、信長のように眼魂に小竜姫様やメドーサが入った状態で変身していれば、ここに小竜姫様とメドーサが居た筈だが……そうではない。私に出来ることと言えば横島が正気に戻る事を祈りながら、必死に呼びかける事だけだ
(なんだ!?なんだ何が起こっているッ!?)
横島の心に必死に呼びかけていると、ふと気付いた。横島の心に別の何かが流れ込んで来ている事に、そしてその別の何かが横島の憎悪と殺意を増幅させている事に今初めて気付いたのだ
「こ、これは……別の横島の記憶……?」
ありえない話だが、そうとしか言いようが無かった。色んな場所、場面……そして時間。その全てが異なっているが、共通している事がある。それは美神達が負傷もしくは死亡しており、それは奇しくもつい先程までの光景と合致していた。地面に倒れ、動かない美神達と
「止めろ!これ以上横島の中に入ってくるなッ!!」
この記憶が原因だと、即座に悟り。小竜姫様、そして天竜姫様から譲渡されていた竜気を開放する。このままでは横島が狂ってしまう、そして本当に戻ってくる事が出来なくなる。私が竜気を放出した事で、濁流のように流れ込んでいた記憶の勢いを緩める事は出来た。だが完全にその流れを止める事が出来ず、少しずつだが、何者かの記憶は横島を蝕んでいく
「くそっ!これはどうなっていると言うんだ!」
私も横島も知りえるはずの無い記憶。それなのに、拒絶される訳でもなく横島の記憶として、一体化していく。それを必死に阻止しながら、私は理解出来ないこの現象に思わずどうなっているのだと怒鳴りながら、なんとかして横島の意識を呼び戻そうと必死に横島の名前を呼び続けるのだった……
マタドール……魔人と名乗ったその骸骨の圧倒的な強さの前に、私達は完膚なきまでに叩き潰された。私達がどれだけ意識を失っていたのかは判らないが、その間たった1人でマタドールと戦っていた横島君の体は間違いなくボロボロの筈だ。いや、それだけでは済まされない事態になりつつある。マタドールの圧倒的な力に対抗するために横島君は2つの眼魂を同時に使った……1つでも信じれない負担を掛けるそれを2つ同時に……それがどれだけの影響を与えるのか?考えるだけでも恐ろしい早く止めないといけない、そう判っているのだが……
「み、美神……動けますか……?」
「ご、ごめん……無理みたい……」
最初の横島君とマタドールのぶつかり合い、それで発生した凄まじい衝撃波によって弾き飛ばされた私達はプラットフォームの壁に2度目の追突をした。酷い脳震盪と、打撲で起き上がる事が出来ない。くえすの言葉に無理だと返事を返しながら、必死に瓦礫を掴んで体勢だけでも立て直した私の目の前では私だけではない、くえすや蛍ちゃん。ドクターカオス……ほぼ全員が意識を失っているか、動く事が出来ずその場に倒れていた。ノッブやおキヌちゃんの姿が見えないのは、凄まじい魔力と神通力のぶつかり合いで周囲の磁場が歪んで存在を維持出来ないからだと推測する。もしあの2人がいてくれたら真っ先に私達を助けに来てくれるだろうから、それが無いと言う事は今この場所に干渉出来ないという証拠だった……
「シズク……さん……治療は……無理……ですか……」
「……無理を言うな……今の私の……身体を……見てみろ」
小竜姫様とシズクの声が聞こえて、自分の身体とは思えない身体を必死に動かして声の聞こえた方向に視線を向ける。そこでは上半身と下半身が瓦礫で分断されたシズクが横たわっていた
「ちょっ!?……シズク……あんた、それ……大丈夫なの!?」
大声を上げた事で全身に再び痛みが走る。だが重症所か死に掛けとしか思えず、自分の口から出たとは思えない上擦った声で尋ねるとシズクは顔を歪めながら
「……み、水が足りない……身体を……再構築……出来ない」
水が足りなくなって身体を維持出来ないと呟くシズク。水を何とかしてやりたいが、自分自身もボロボロで動く事が出来ない。横島君だけを戦わせる訳には行かない。師匠として弟子にだけ負担を掛けるわけには行かない、そう思っているのに私の意思に反して動く事の無い身体に苛立ちだけが募っていく。そんな中私の耳に飛び込んできたのは横島君に対する罵倒
「だーっ!なにやってんだあ!そうじゃねえ!もっとあるだろうが!このトーシロがぁッ!!!」
自分でカメラを抱えて走り回っている監督。どうしてこんな所に居るのか?ここら辺は立ち入り禁止にしたと政府は言っていたのに……しかしなによりも良い画が足りないと怒鳴る姿に本気で殺意を覚えた。もし身体が動くのならば、殴り倒している
「ぐっ!ふっははははッ!!良い!良いぞ!ニーニョッ!!!これほどまでのダメージを受けたのは何時振りかッ!!」
「お、おああああああああああッ!!!!」
マタドールは楽しそうに笑っているが、横島君は絶叫しながら動いている。肩や足から火花が散っているのを見ると恐ろしい激痛が横島君を襲っているのを想像するのは容易い。早く止めさせなければと思うのだが、満足に動かない自分の身体に苛立ちばかりが募っていく
(早く、早く止めないと大変な事になるッ!)
見ているだけで判る。今の横島君は神通力と魔力を同時に扱っている……ピートとは比べるまでも無い、圧倒的な光と闇の力……そんな力を人間がいつまでも制御出来るはずが無い。早く止めなければと判っているのに身体が動かない……仮に動けたとしてもあの戦いに割り込んでいく事ができるなんて思っていない。だが横島君を止めないと、ここで止めないと横島君はきっとマタドールの言った通り、あちら側に踏み込んで戻る事が出来なくなる
「ぐっくう……動けえ……」
くえすが歯を食いしばって立ち上がろうとしている、私も立ち上がろうと身体に力を入れるのだが私の意思に反して身体はぴくりとも動かない。かなりの時間が経っているのに動かない事を考えるとダメージだけではない、何か別の要因があるのかもしれない……そう考えると私達を助けようとしてくれた撮影スタッフと雪之丞とピートが意識を失っている事を考えるとその理由は容易に想像が付いた
「急急如律令ッ!業炎よッ!我が敵を喰らえッ!!!」
「ぬっおおおおおおッ!?!?」
普段横島君が使っている炎の陰陽術がマッチの火に思えるような、業火がマタドールを包み込む。その熱波に肌が焼かれるのを感じながら、私やくえす、蛍ちゃんだけが意識を保っている理由。それは霊力の有無……マタドールと眼魂を2つ使った横島君の霊力はそれこそ神魔に匹敵する。それだけ膨大な魔力がぶつかり合えば、人間なんて意識を保っていられるわけが無い。私達が意識を保っていても動く事が出来ない理由としては十分だろう
「ぐっ……くっ……おい、シズク。血でも……水は水だよな……?」
「その手が……ありま……したか!」
メドーサと小竜姫様がシズクの元に這って向かいながらそう呟く声が聞こえる。恐らく血液に含まれる水分と竜気を与えてシズクを回復させて自分達の傷の治療を行い横島君に加勢するつもりなんだろうけど……あんな状態のシズクが回復するのにどれだけの血液と竜気が必要だろうか?シズクが回復する前に2人が死んでしまう可能性が高い
(ぐっ!あそこにあるのに……)
除霊具をつめた鞄の中に入っている水のペットボトル。たった数メートルの距離だが、それが果てしなく遠くに見える。
「くっ……なんとか……あそこまで」
立ち上がる事ができないのなら無様でも良い、這ってでも……痛む身体に顔を顰めながら水のペットボトルの元へ向かう。蛍ちゃんも同様で瓦礫にあちこちぶつけながら向かっている
「がっ!?ぐっ!がはあッ!!!」
「アアアアアアアッ!!!」
炎に包み込まれ、動きが鈍ったマタドールの懐に飛び込んだ横島君が紫電を放つ両拳を凄まじい勢いその身体に叩き込む。マタドールの身体がまるでピンポールのように左右に弾け飛ぶ、剣と布が弾かれたタイミングでその頭に剣を突き出そうとしたが……
「おおおおおおッ!?!?う、うがあッ!?」
「くっふははは!!!ニーニョ。巳に余る力は身を滅ぼすぞッ!!」
突然聞こえた爆発音と横島君の苦悶の悲鳴に咄嗟に振り返ると、横島君の全身から火花が散っていて、限界が近いのが一目で判った。マタドールは当然そんな隙を見逃すわけも無く、手にした剣を振り上げ、そこから放たれた衝撃波が横島君を吹き飛ばす。このままではシズクが回復する前に横島君に限界が来てしまう……だが私達には出来る事が無い。その事に気付いてしまい、目の前が暗くなるのを感じた瞬間
「うっきゅううううッ!」
「みっむっ!」
「コーン!」
モグラちゃんが地面から飛び出してきて、その後からチビとタマモが姿を見せる。横島君の危機に結界の中に隠れてられず、地面に穴を掘って結界から脱出して来たのだろう。よく見ると、モグラちゃんの頭に短いがしっかりと存在感を放っている2本の角がある事に気付いた。だから結界を破壊できたのかと呟き、震える手で首から下げた精霊石のペンダントに手を伸ばす。これが最初で最後のチャンスだと……そして良く私の目の前に来てくれたと思いながら首から外して、タマモに向ける。横島君から聞いていた、精霊石を与えれば、タマモは人に変化できると……まともに動ける面子がいない中。タマモに頼るしかない
「タマモ、人化……したらシズクに水を運んで……そうすれば皆……動けるようになるから」
その精霊石のペンダントを首から下げるとタマモはぽんっと言う音を立てて、中学生程度の姿になったタマモは精霊石のペンダントをしっかりと首から下げて
「任せなさい。横島をこのまま見ているつもりなんてないわ。行くわよ、チビ、モグラ」
「みむっ!」
「うっきゅー!」
チビとモグラちゃんを頭の上に乗せて、飛んで来る衝撃波を交わし、瓦礫の上を跳ねるように飛んでいくタマモの姿に、頼んだわよタマモと呟くのだった……
強い……私はニーニョを見て素直に感心していた。今の姿ではない、その心の強さにだ……
「あ、うあああああああッ!!」
自分の中で荒れ狂う力に身体が耐え切れていないのか、苦悶の叫び声を上げながら振るわれる2振りの刀をエスパーダとカポーテで弾く。さきほどまで時折混じっていた奇妙な魔法は既に使われない、使えるだけの余裕が無いのか、持てる力の全てを斬撃にまわしている、その破壊力は凄まじく、受ける度に、打ち合う度に全身に走る重い衝撃に思わず顔を歪める
(これは受けるだけでも危険だな……)
私の核へと直接響く衝撃。光と闇の混じったその波動は本来私にとって心地の良い物なのだが、今は違う。私の核を侵食しようとするその魔力は文字通りの猛毒。打ち合う度に、攻撃を防ぐ度に身体の自由が利かなくなってくる
「その程度かね?その程度ではお前は何もかもを失うぞッ!!」
「だっ!!!!まれええええええッ!!!」
実際私にはそこまでの余裕は無い、だが敢えて余裕を保ったまま挑発を繰り返す。怒りそして憎悪……ニーニョにはそれが足りない、だから私への殺意そして憎しみ、憎悪……ありとあらゆる負の感情を抱かせねばならない。そうでなければニーニョはこちら側に堕ちて来ない
(魔人姫に渡すのも勿体無い……これは……私の物だ)
魔人へと堕として魔人姫に献上する事を考えていた、だが惜しいと思ってしまった。ニーニョが魔人へと堕ちれば記憶を失う、それは魔人となった者の共通の特徴だ。私とて生前の記憶は無い、ただどこまでも強さと名誉を渇望した事だけは覚えている。もしニーニョが魔人となればどうなるのか?そしてどの様な魔人へと変貌していくのか?それを目の前で見ていたいと思った。戦いとは私が存在する理由、こうして考え事をしていたとしても私の身体は勝手に動き続ける
「ぐっぐうううううううう」
獣じみた咆哮を上げながら振るわれる2振りの刀。それはがむしゃらで技術も何も無い。ただ私を倒すと言う一念だけに突き動かされた攻撃。自暴自棄になった神魔が何度も行って来た特攻によく似ていた。本来なら見るに耐えないと一蹴する所だが……剣を通じて感じていた、それは誰かを護ると言う強い意志、自分の中で暴れまわる神魔の力にも耐え。今も激痛で意識を失ってもおかしくないというのに……自分の為ではない。誰かの為に振るわれる剣に私は魅せられ始めていた……
(4騎士が相手だとしても、渡さない)
魔人姫を護衛する4柱の魔人。彼らも元は人間であったが、魔人へと変貌した際に特異な能力を身につけ、何処かの時代でヨハネの4騎士と呼ばれそれを自らの名前とした。私よりも霊格の高い魔人……決して勝てない相手だと判っているが、それでもニーニョを渡したくないと私の手元で魔人とし、そしてどうなっていくのか?それを見てみたい。戦いだけを望んでいた私が執着する存在など今まで居なかった。私を脅かす強敵をこの手で作りあげる、満足出来る強敵に巡り合う機会が減り、ただ敵を倒すだけだった。私と脅かす強敵などいないとそう思っていた……
「ッ!っぐうっ……素晴らしい!素晴らしいぞ!!ニーニョッ!!!」
剣が突然変形した槍が肩を穿つ、その傷から流れ込む力はまるで毒のようだ。今ここで殺してしまうには惜しい、ニーニョはもっと強くなる。攫って、育て上げていつかは私を殺せるだけの力を手にする。それは確信めいた思いだった
「ははははっ!!はーっはははっ!!!楽しい!楽しいぞ!ニーニョ!!」
槍とスパーダが何度も交差を繰り返し火花を散らす。お互いに必殺の一撃の交差だと言うのに、それは何度繰り返そうがお互いを捉える事が無い。恐ろしいスピードで成長……いや、これはもはや進化だ
「「あああああああーッ!!!!」」
私とニーニョの叫びが重なる。スパーダとニーニョの2刀が完全に拮抗し、お互いを押し返そうとするがぴくりとも動かない。力だけではない私の魔力のニーニョの2つの力がお互いを飲み込もうとぶつかり続ける
「ぐっぬ!?」
突如背中に走った激痛にニーニョから視線がずれる。振り返ると水神がその指をこちらに向け、その小さな両肩に手を置いた2人の龍神の姿……3人分の竜気が収束した水鉄砲が私のカポーテの守りを貫いていた。いやそれだけじゃない、破魔札や精霊石が炸裂し、大きく体勢を崩す。ニーニョは当然そんな隙を見逃す訳が無く、大上段で構えた剣を振り下ろしてくる
「ああああああああーッ!!!」
「ぬっぐううう!!!この様な終わりを認めるかぁッ!!!」
私を両断しようと迫る刃を無理な体勢で受け止めながら思わずそう叫ぶ。最高の戦いに水を差された、その事に対する怒りが私の胸を埋め尽くす
「シズク!早く次の弾丸を撃て!」
「……無理を言うな……やっと体の再構築が……終わったばっかりで全員の治療をしたんだぞ……余裕なんて無いんだ……」
「ならもっと竜気があればいいんですか!?それとも水ですか!?」
決闘を邪魔した挙句。騒いでいる竜神達にいらつきがつのるがこのままでは横槍と言う余りに納得出来ない結果で終わってしまう。それは私としては本位ではない……心の中で仕方ないと呟き、肩から下げていたカポーテを掴むと同時にその真の能力を開放すると同時に次の動きに入る
「がっはああ!?」
「ぐっふう!?」
使うつもりの無かったカポーテによる絶対防御からのスパーダの一撃と、絶対防御を誇るカポーテを貫いた刃がお互いを捉え吹き飛ばす。今までは額がぶつかり合う距離で戦っていたが、先程の合い打ちで距離が出来た……それは奇しくもお互いが全力で攻撃を行う事が出来る距離
「いいだろう、ニーニョ。これで決着だ」
カポーテを投げ捨て、スパーダを構える。投げ捨てたカポーテはそのまま空中で留まり結界を作り上げる、これで先程の様な横槍は防げる。次の一撃を決着としようと声を掛けるとニーニョは無言で左腕の機械のスイッチを押し、腰のベルトのレバーを引く
【ゲンカイダイカイガンッ!!マスタードラゴンッ!オメガスラッシュッ!!!】
私の言葉に返事を返すのではなく、全身から凄まじい力を放ちながら剣を構える姿。それがニーニョの返事だと悟り、私は被っていた帽子と首に巻いていたスカーフも投げ捨て、スパーダに全魔力を注ぎ込む
「魅せてやろう。我が奥儀……血のアンダルシアの真の姿をッ!」
今まで使っていた血のアンダルシアは私を討ち取ろうとした神魔の雑兵達を薙ぎ払う為に作り上げた、衝撃波を飛ばすだけのただの遊びの技だ。今から放つのは正真正銘、私の奥儀としての血のアンダルシア……超神速で繰り出される8連激……これを見せるのは何時振りか……わが奥義を見せるだけの価値がニーニョにはあった……スパーダの刀身が真紅に染まり、余剰魔力が私の背後で紅い炎となる。ニーニョは背中から翼を思わせる形で魔力と神通力を噴出させて駆け出す準備をしている。ここまで来たら何も語る事はない、ただ全力で目の前の敵と打ち倒すまでッ!私とニーニョの度重なる激突で限界が来ていたのか、崩れ落ちた天井の破片。それが地面に落ちると同時に私とニーニョは示し合わしたかのように走り出すのだった……
タマモが精霊石で変化した事でシズクが水を補給できた。そのおかげでこの異常な力の磁場の中でも意識を保っている。私、美神さん、神宮寺の3人と小竜姫様とメドーサさんは動けるだけの治療を施され、マタドールと横島の戦いの助けになればと攻撃をした。それはマタドールの体勢を崩したが、それだけだった。マタドールは即座に体勢を立て直し、私達の干渉防ぐ為に結界を作り出していた。小竜姫様やメドーサさんがそれを破壊しようとしたが
「駄目だ。1度展開したら、外部干渉じゃ解除出来ないタイプだ」
「くっ、横島さんが戦っていると言うのに……」
神通力も魔力も弾かれ、外から解除出来ないと悔しそうに呟く、私と美神さんも精霊石で解除を試みたが
「駄目だわッ!精霊石の力まで吸収してる!」
「こんな能力まで持ってるなんて、どこまで反則なんですか……」
神通力や魔力は弾かれ、精霊石の純粋な霊力は吸収する。私達や神魔が作る結界とは根本的に格が違う……それならと神宮寺が凄まじい魔力を放つ魔道書を手に結界の解除を試みるが……やはり結果は芳しくないのか、直ぐに呪文の詠唱を中断する
「ちっ……あの骸骨。どこまで万能なのですか」
忌々しそうに舌打ちする神宮寺。マタドールが投げ捨てた赤い布が結界となり、最後のぶつかり合いをしている横島達と私達を完全に隔てていた。今私達に出来る事、それは横島の勝利を祈るだけで、それが自分が何も出来ないと言われている様で嫌で仕方なかった
「「おおおおおおッ!!!」」
お互いに必殺の意思を込めた一撃が何度も何度もぶつかり合う。その度に発生する魔力を伴った衝撃波がプラットフォームの中を駆け回る
「ちょっ……クウン……半端……こん……だけど!?」
「み、みむう……」
「うきゅ……」
ぐったりとしているチビとモグラちゃんに加えて、タマモの人化すらまともに維持出来ていない。ノッブやおキヌさんが姿を見せないのはやはりこの力のぶつかり合いで、磁場が乱れているからだと判った。私自身もさっきから酷い耳鳴りと貧血のような症状が出ているからだ
「がっがあああああ!?」
マタドールと打ち合っていた横島の身体から凄まじい火花が散ったと思った瞬間。鎧のあちこちが爆発し始める、マタドールは当然そんな隙を見逃すわけも無く
「残念だな、ニーニョ。天は君に味方しなかったようだッ!」
「ぐっ!ぐあああああああッ!!!!」
「横島ぁッ!!!」
禍々しい紅い光が8回煌いた……そう思った瞬間横島の身体が吹き飛ばされる。爆発しながら壁に叩きつけられ、崩れたプラットフォームの瓦礫と共にその姿が見えなくなる。横島の名前を叫んだのは私だけではない、神宮寺や小竜姫様もその名を叫んだが、横島からの返答は無く変わりに機械的な音声が響く
【オヤスミー】
それは横島の変身が解除されたという証拠。横島の元へ走りたいが、マタドールの作り出した結界に阻まれ、そちらへ向かう事が出来ない、それでも横島の元へ向かおうとするが
「っきゃあっ!?」
バチンっと火花が散って結界に弾き飛ばされる。そんな私達の様子を見ながらマタドールは優雅な素振りで投げ捨てたスカーフと帽子を拾い上げ
「何度も言わせるなセニョリータ。お前達は敗者、敗者は何も手にする事など……「おおおおおおおおおッ!!!!」なっ!?ニーニョッ!?」
砂煙の中から横島が飛び出してくるが、左腕と右足はあらぬ方向に曲がり、額からは大量の血が今も流れ続けている。だがその目に強い光を宿した横島の右手はあの霊力の篭手で包まれており、背中から放出した霊力でマタドールとの距離を一気に詰める
「くたばれええええええッ!!!」
「くっ!?」
マタドールは剣を鞘に収めていた。紅い布は結界となっており防ぐ事が出来ない、横島は弾丸のような勢いでマタドールの懐に飛び込み右拳を繰り出す……凄まじい衝撃音が響く、そう思ったのだが……ぽすっと言う余りに弱弱しい音が響き
「ちっく……しょう……」
ガラスの砕けた様な音と横島の悔しそうな声……ゆっくりと倒れる横島を抱きとめたマタドールは横島を横にし
「ふっふはははっ!!!私の負けだ!!くっくっ……勝利を確信し、剣を納めた。ニーニョを侮った私の慢心だ……」
顔を押さえて笑い出したマタドールが手を翳すと、柔らかな光が横島に降り注ぎ、折れていた左腕と右足。酷い切り傷があった額の傷が塞がっていく……回復魔法まで、どこまで規格外の存在だというの魔人って言うのは……私は改めて、マタドールの底知れない力に恐怖した
「神魔よ!私は今ここに宣言する!私は敗れた!ゆえに!この男に勝利するまでは神魔と戦うような無様な真似はしない!」
力強く叫んだマタドールは指を鳴らし、結界を解除すると倒れている横島に駆け寄ると、まるで眠っているような顔と穏やかな寝息に安堵の溜息を吐く
「……動かすなよ、見た目のダメージは回復していても、中に蓄積しているはずだからな」
「そうよね。揺らさないように運ぶには担架が必要かしら」
私は無事な姿を見るだけで安心してしまった。だがシズクや美神さんが脈を取ったり、まぶたを開いて瞳孔の動きを見ているのを見て、まだ安心出来る段階ではないと言う事に気付いた。それにマタドールもまだこの場所に居る、安心するには早すぎたと反省しマタドールに視線を向ける。
「横島さんに勝つまで、だが貴方はそれを何時でも出来る」
「不戦の宣言だとしても信用出来ないね。ここで身を引いておいてまた襲ってくるんじゃないのか?」
確かにその通りだ、横島に勝つまでと言ったが、今回相打ちに持っていけたのは正直運の要素が強い、小竜姫様とメドーサさんもそれに気付いたのか横島を護る様にマタドールの前に立ち尋ねるとマタドールは笑いながら背をそむけ
「ニーニョは強かった、だがまだ未熟。ならばより強くなるのを待ったほうが楽しめる。精々大事に育てるのだな……ニーニョは神を超えるぞ。間違いなくな、そして我らの同胞となるだろう。その時を楽しみにしている、ではアディオス」
神を超える?ありえない言葉に絶句している間にマタドールは紅い布を振るうと最初からそこにいなかったように消え去る。姿を消しただけかもしれないと周囲を警戒するが、マタドールの恐ろしいまでの死の気配は感じない。それでマタドールが完全にこの場を去ったのだと悟り漸く安堵の溜息を吐いたが、実際の所全員がボロボロで負傷者も多い。この戦いを撮影していた監督にも正直腹が立っているし、横島に何もかも押し付けた形になった事で自分達の無力さを思い知り、自分に対しても激しい怒りを感じていた。こんな有様では横島を護る事なんて出来ない、自分の言葉が口先だけだった事に気付き、歯がゆさに唇を噛み締める
「とりあえず今は外に出ましょう。あの映画監督の事は後回し、意識が戻ってない人が多すぎるし、負傷者も多いからまずはこの場所を出る事を考えましょう」
美神さんの言葉に頷いていると神宮寺が頭を振りながら近寄ってきて
「外に転移の魔法陣を刻んできましたから、マタドールがいなければ一気に脱出できますわ。全員を集めなさい」
転移……それが出来るのなら負傷者も一気に外に連れ出す事が出来る。シズクの治療で何とか動ける私達は重い足取りで負傷者を移動させ、神宮寺の転移魔法でその場を後にするのだった……
リポート7 鮮血のマタドール その5へ続く
次回はマタドール戦の後の話を2話を使って書いて行こうと思います。次回は映画の撮影クルーへの対応や神魔の話を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い