GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート7 鮮血のマタドール その6
横島君の頑張りでマタドールを退ける事が出来た。だがそれは弟子に全てを押し付けた形になってしまったことの証明であり、これからの戦いで私自身が足手纏いになる可能性を如実に示していた。こんな様だから横島君が無茶をしてしまった……だから私達の誰にも横島君を説教をする資格はなかった、本来横島君は助手であり、私の援護が仕事だ。ガープの時とは違う、横島君は私達が危ないから無茶をしたのだ。くえすの転移の魔法陣で地下のプラットフォームを脱出した私達は、自分達の所為で大変な事になったと言う撮影クルーの好意でホテルまで送って貰い。まだ目を覚ます気配のない横島君や伊達達をホテルの部屋で休ませ今後の事を話し合う為に、私と小竜姫様とメドーサ、そしてくえすの4人は疲労も身体の痛みもあったが、まだ眠る訳には行かないと言う事で談話室に集まっていた
「今回はお疲れ様でした。私とメドーサの力不足で横島さんに無理をさせた事を深く謝罪します、申し訳ありませんでした」
神魔であるメドーサと小竜姫様が深く頭を下げるが、私もくえすもその謝罪を受ける訳には行かなかった。その謝罪をこの中で受け入れる事が出来る人間がいるとすればそれは横島君しかいない
「私達も似たような物ですから、小竜姫様もメドーサも頭を上げてください」
魔人と言う存在の復活なんて誰も想像もしてなかった。もし小竜姫様達もそれが判っていれば、もっと戦力を集めて来ていただろう。原始風水盤と言う霊脈を支配する、巨大な霊具。それを隠れ蓑にしたガープの策略を読みきれる訳が無かったのだ
「神魔としての責任を果たさなかったのにかい?」
「責任があるというのなら、今後の対応を気をつければ良いでしょう?現に私達だって役立たずだった、マタドールを退けたのは横島1人。私達には貴方達の謝罪を受ける権利も、貴方達を責める権利も無い。皆等しく役立たずだった、それが事実ですわ」
稀有な力を持つ、未熟すぎるGSに全てを押し付けてしまった。プロのGSである私とくえすも、神魔である小竜姫様とメドーサも、それが唯1つの事実。ここで何を話し合っても、何も変わらない。それなのに今私達が身体の痛みも疲労も我慢して談話室に集まっている理由は1つ
「魔人ってなんなの?神魔の力を後天的に身に付けたとか言ってたけど……」
あのマタドールは自らが魔人と名乗った。そして横島君を最も若き同胞と呼んだ。魔人なんて聞いたことも無い、魔人が何なのか?それを知る為だけに、私達は起きていたのだ
「魔人と言うのは私もそう詳しいわけじゃない。ただ神魔にとっての天敵、本来なら時間をおけば復活する神魔の魂を壊す事が出来る存在としか知らないよ」
メドーサの言葉を聞いて私もくえすも絶句した神魔を殺す存在。そんな存在がいるなんて今まで聞いたことも無かった
「聞いたことはある筈だよ。ヨハネの4騎士、バビロニアの大淫婦、終末の笛を吹く者……それらが魔人さ」
突然割り込んで来た少女の声に振り返ると、美しい金髪を腰元で結んだ、青いドレス姿の少女が居た。どうしてここに?と思う前に私は自分の死を感じた。くえすも同じ様で顔が真っ白だ
「ルイ様。人間には強すぎる力です」
「あ、ああそうだったね。龍神王とオーディンを虐めている感覚だったよ。いや、失敗失敗」
ルイと呼ばれた少女の後ろに控える高城の存在を見てますますこれがどういう状況なのか、理解出来なくなる
「「あ、あああ……」」
小竜姫様とメドーサが目を大きく見開き、滝の様な汗を流しながら震えているのが見える。こ、この少女はいったい何者だと言うの?
「君が横島の師匠だね。君に言っておきたい事があってね。彼は人間にとっても神魔にとっても切り札となるだろう。だから大事に、大事に育ててくれたまえ。これから馬鹿な神魔に彼も狙われる事があるだろう、だから彼の側に護衛を置くよ」
途切れそうなる意識の中。必死のその少女の言葉に耳を傾ける
「真の蠅の王ベルゼブルを日本に常駐させよう。横島を守るためにね?だから任せるよ、高城」
高城が真の蠅の王!?そんな相手に平然と命令出来るこの少女は何者だと言うの?その少女から感じる圧倒的な圧力に意識を失いそうになるのを必死に耐えているとルイはそんな私を見て笑いながら
「私は明けの明星と呼ばれる者さ、まぁルイの名前の方が好きなんだけどね」
明けの明星!?神に匹敵する者と言われた天使であり、神に反逆し堕天使となったルシファー。その2つ名を名乗る少女が穏やかに微笑む。それが私が意識を失う前に見た最後の光景だった……
「美神さん?美神さん?大丈夫ですか?」
「ほ、蛍ちゃん?」
どれほど意識を失っていたかは判らないが、蛍ちゃんの私を呼ぶ声で目を覚ます。慌てて体を起すが、高城とルイの2人の少女は無く、変わりに部屋で横にしていた蛍ちゃんや横島君が心配そうに見つめていて
「大丈夫ですか?」
「え、ええ。大丈夫よ。ちょっと疲れが出て部屋まで戻れなかったみたいね」
高城とルイの話をする訳にはいかず、疲れが出て部屋まで戻れなかったと笑いながら言う
「小竜姫様とメドーサさん、それに神宮寺さんも同じ事言ってましたね。あんまり無理をしたらだめっすよ?高城さんも世話になったって手紙を残していなくなっちゃうし……」
「それは横島。貴方が一番言ったら駄目よ」
蛍ちゃんに怒られてしょんぼりしている横島君。見た所身体に異常が無くて良かったわと安堵の溜息を吐くが、明けの明星が横島君をかなり評価していた事を思い出し、私の知らない何かが横島君にあるのかもしれない……もしそうならば私は強くならなければならない。いつまでも弟子に護られていては師匠としての面目丸つぶれだ
「それよりよー、メドーサさんよ?皆起きたみたいだし、早く飯に行こうぜ?俺腹減った」
「お前はもう少し師匠に対する尊敬の念を持て!この馬鹿弟子がッ!」
メドーサに頭を叩かれて痛いと叫んでいる伊達。その隣でピートが苦笑いしながら
「流石に僕も今日は何かを食べないと不味そうです。話は夕食の後にしませんか?」
「……私もだな。流石に今回は疲れた」
シズクも珍しく早く食事にしたいと苦笑いを浮かべている。そしてその後ろではノッブとおキヌちゃんが浮かんでいて
【あの桁違いの霊力で存在を維持出来ぬとは不覚、もっと霊力を回復させねばな!】
【私はまた横島さんにご飯をお供えしてもらいましょうか】
「ワシは飯よりも酒が」
「カオス?ちゃんとご飯も食べないと駄目だぞ?」
「そうですよ?ドクターカオス」
わいわいとしたいつもの雰囲気があって、私達が起きるのを皆待っていてくれたのだと判り
「よーしっ!じゃあ今日はぱーっと行きましょうか!」
マタドールの事もあり、とても心から笑える状況ではない。だけどここで暗くなっても変わらない、皆で美味しいご飯を食べましょうと笑いながら皆で談話室を後にしたんだけど、元気そうな横島君を見て、私達は完全に油断していたのだ、普段は変身したら横島君を襲う後遺症が無い物だとそう思い込んでいたのだ。だけどそんな事はありえない、横島君の身体は確実に変身の後遺症に蝕まれていたのだった……
ホテルのレストランを貸切にし、今回の事件の事を話しながら夕食を楽しんでいた。
「横島君。今回は良く頑張ってくれたけど、あんまり無理や無茶をするのは感心しないわよ。まぁ……そうなっちゃったのは今回は私達のせいだから、あんまりきつく言うつもりはないけど、皆心配するからそう言うのは本当にやめてよ?」
マタドール相手に私達は殆ど何も出来なかった。横島だけがマタドールと戦う事が出来た、だけどボロボロの姿で戦い続ける横島を見て本当に血の気が引いた。マタドールが何の気まぐれで治療したか判らないが、それが無ければ確実に横島は死んでいたのだから
「すいません、今後気をつけます」
「怒ってる訳じゃないのよ?心配してるんだからね?」
美神さんが怒ってる訳じゃないのよ?としょんぼりしている横島に笑いながら言う、寧ろ今回の私達は横島に護られていた。そんな私達が横島を叱る権利は無いのだ
「そうですよ、横島さん。私達は怒っているわけじゃないんです。ただ心配しているんです、横島さんはこれから成長する段階です、ここで無茶をするとどんな障害が残るか判りませんから」
「そう言う事だな。まぁ、役立たずだった私達が偉そうに言えることじゃないが、無理な事をするなよ?ま、これで話は終わりだ。こんな話をしてたら美味いものも不味くなるからな」
小竜姫様とメドーサと話が続き、これでこの話は終わりだとメドーサが強引に話を終わらせて食事をとれと横島に言う
「うーん、でもあんまり腹空いてないんですよね……」
チビやモグラちゃんそしてタマモに食事を与えているが、自分はあんまり箸が進んでいないようだ
「……体力と魔力を使いすぎているはずだから、腹が空いている筈なんだがな?」
「そうですわよね……消耗している分は食事などで補うのが普通ですわよ?食欲が無いって言うのはおかしいですわよ?」
食欲が無いと言う横島にシズクと神宮寺がおかしいと呟く、あれだけ体力も霊力も消耗しているのだから間違いなくかなりの空腹の筈だ
【あ、横島さん。これ結構美味しいですよ?】
「うん、それは良かった」
おキヌさんに料理をお供えしている横島が良かったと笑う。お供え物をしているのを見ているから食欲が出ないんじゃないのかしら?
「ちょっとおキヌさん離れてね」
【え?な、なんでですか!?】
判らないという感じで叫ぶおキヌさんに溜息を吐きながら、料理に突き刺さっている箸や鈴を指差しながら
「流石にこれと一緒じゃ食欲も出ないと思うのよ。横島も良いって言ってるけど、今横島は消耗しているから今だけは我慢して」
はっとした顔をして、判りましたとしょんぼりした様子で横島から離れていくおキヌさん。その姿を見て少し罪悪感を感じたが、おキヌさんよりも横島の方が心配だからこれは仕方ない。それにもう1つ気になっていることがある
(心眼はどうしたんだろう?)
普段なら横島にあれやこれやと言う心眼が無言なのが気になる。普段は横島に関しては饒舌になるというのに、ここまで黙り込んでいるのは珍しいなと思う
「おう、横島、これ美味いぞ?あわびだとよ」
「ええ、僕はあんまり食事は好きじゃないですけど、これは美味しいですよ」
「横島さん。疲れているのなら料理は運びますよ」
「姉さんの言う通りだぞ?疲れてるなら運んでやるよ?」
横島の回りに雪之丞やマリアさん達が集まるのを見て、やっぱり横島の周りには人が集まるのよね……ただノッブだけは1人でもくもくと食事を続けているけど、よっぽど今回の事が気になっているのかしら?と思いながら、手にしていた料理の皿を横島の前に置いて
「さっきから全然食べてないでしょ?少しは食べた方が良いわよ?」
水は口にしているが、料理を食べる素振りを見せない横島に食べた方が良いわよ?と言う。横島は判ってると返事を返し
「モグラちゃんに食べさせている分が終わったら食べるよ、角が生えてから食欲倍増してるんだよ。モグラちゃん」
角?横島の言葉にモグラちゃんを見つめると確かに短いけど角がある……何時の間に角が生えてだろうか?
「え?も、モグラちゃんに角が!?」
小竜姫様が慌ててモグラちゃんの方に駆け寄ってくる。つ、角が生えていると不味いのかしら
「うきゅー?」
「た、確かに角です……す、凄いですね。普通土竜変化の竜は角を得ないで一生を終えることが多いんですよ。それをこの歳で得るなんて……」
そうなんだ……竜と言えば角って思ってたけど、そうじゃないんだ……初めて知る事実に驚いていると横島が不安そうに
「それって不味いことなんですか?」
「私ではちょっと判りかねるので、後でロンさんに確認を取っておきますね」
モグラちゃんのおじいちゃんのロンさんなら、今のモグラちゃんの状況が判るわよね。横島は小竜姫様の言葉に安堵の溜息を吐き、皿からローストビーフを手に取り嬉しそうに口に運び……
「ん?」
あれ?美味しいって笑うと思ったのに、横島は不思議そうに首をかしげ、今度は肉まんを半分に割り、口に運び。それを苦しそうに飲み込む。おかしい、この反応はおかしい、あの肉まんは出来たてだから熱いあんなふうに飲み込める筈がない。横島はあわてた様子でスープを口に含み……今度は自分の腕に噛み付いた
「「「横島ッ!?」」」
その突然の奇行に思わずその名前を叫んだのは私だけじゃない、横島を見ていた全員が横島の名前を叫んだ。横島は泣きそうな顔で震えながら
「あ、味も……熱さも……痛みも……な、なにも判らない……」
私はきっと油断していたのだと思う。平気そうに笑い、普段通りの横島の姿に何も後遺症が無いと思い込んでいた。だが今までも遥かに酷い後遺症が横島を襲っている事を今私達は初めて知るのだった……
痛みも何も感じないと言って泣いている横島さんを神宮寺さんの魔法で強制的に眠らせ、食事をしている場合じゃないと眠っている横島さんを談話室に運び横にする
「みーむ……」
「うきゅ……」
「クウン……」
心配そうに横島さんに擦り寄っているチビ達を見つめているとバンダナに心眼が浮かび上がる
「心眼。横島さんはどうなっているのですか?」
【小竜姫様か……申し訳ありません。私にもどうなっているのかは……今の今まで横島の心を安定させる事に集中していた物で】
横島さんの心を安定させる?その言葉の意味が判らず、全員で首を傾げていると心眼は深刻な声色で
【横島の心に別の何かが流れ込んでいたのです。激しい絶望と殺意、このままでは横島が狂う。私はそう判断し、横島の心の安定を全力で行っていました】
横島さんの心に別の何か?その信じられない言葉に思わず絶句していると雪之丞さんが
「じゃああれか?横島が横島じゃなくなるって事か?」
【その可能性はある。今はそうだとは言い切れないが、そうなる可能性は高い】
横島さんが横島さんじゃなくなる、その言葉は余りにも重く私達に圧し掛かった
「それは魔人が関係していると?」
【恐らく、魔人の破壊衝動が横島に強い影響を与えていると思う。魔人と横島を接触させるのは危険だ、横島が壊れかねない】
魔人と横島さんにいったい何の関係性があるというのでしょうか……なにか私達の知らない関係性が、横島さんと魔人の間には存在しているのだろうか?
「それで、心眼。横島の痛覚障害と味覚障害の原因は?これも魔人なの?」
目を赤くした蛍さんがそう尋ねると心眼は違うと断言し、机の上に置かれている私とメドーサの眼魂を見つめて
【その2つの眼魂のせいだ、横島が受け入れるには容量が大きすぎた。今の横島には小竜姫様やメドーサクラスの神霊を受け入れるだけの器がない。それなのに同時に使い、更には2つの神霊を同時に取り込んだ、その神の魂に横島の魂が圧迫されている状態だ。暫くすれば元に戻ると思う】
マタドールを退けた力。それが横島さんにここまでの影響を……私とメドーサはその眼魂を拾い上げ
「この眼魂は私達が妙神山で預かるよ。横島はきっと持っていたらまた使ってしまう」
「そうですね、横島さんはこれを持っていない方が良いですね」
確かに強力な武器だろうが、今の横島さんには強すぎる力だ。これは持っていない方が良い
「魂の問題なら、私の知り合いにそう言うのに詳しい神族がいるので、近いうちに横島さんに会いに来るように伝えておきます。ヒャクメと言う神族なんですが、分析の専門家なので」
トラブルメイカーなので会わせるのは不安ですが、眼魂の使用で横島さんの魂に負担を掛けているのなら、ヒャクメを頼るしかない
「よろしくお願いします。小竜姫様」
深く頭を下げる美神さんに大丈夫です、任せてくださいと返事を返し、今日は解散となった。このまま集まっていても、暗くなるだけと皆わかっていたから……
「あら?横島さん?」
妙神山にいるときの習慣で朝早く目が覚めてしまい。軽く走ろうと思いホテルの外に出ると横島さんがベンチに腰掛け肉まんを手にしていた
「あ。小竜姫様。おはようございます、早いんですね」
「うっきゅー!」
「みーむ!」
ベンチの上から手を振るチビとモグラちゃんに手を振り返しながら、肉まんを手にしている横資さんを見ていると、横島さんはその視線に気付いたのか肉まんを頬張り
「あふっ……いやー熱いっすけど美味いっす。ぼんやりとだけど味がわかります」
その笑顔にそれが演技ではないと判り、1日で僅かでも感覚が戻ったのが判り、安堵の溜息を吐きながら、横島さんの座っているベンチに腰掛け、さっと横島さんの手にしている肉まんを取り頬張る
「……横島さん。これは辛すぎますよ?喉渇いていませんか?」
その肉まんの味は濃すぎた。食べるには身体に悪い……この辛さでぼんやりとしか判らないのですか?と尋ねる
「……良く判りません。味が判るって事で嬉しくて」
そんなに辛いんですか?と言う横島さんに辛いですよと言って立ち上がり、水のペットボトルをかって横島さんに手渡し飲むように言う。ペットボトルの蓋を開けて水を飲んでいる横島さんに今の状態に成った理由を説明する
「横島さん、昨日味や痛みが判らなかったのは、私やメドーサの眼魂を使用したからです。あれは危険なので、私とメドーサで預かる事にしました。良いですね?」
単体で使うならまだしも、2つを同時に使用したあの姿は最上級神魔にも迫る力を発揮していた。そんな力を人間が持っていると判れば、横島さんにも危険が及ぶ。だからあの2つの眼魂は取り上げますと言うと
「そうっすか、でもまぁ俺も判ってました。あれめちゃくちゃ身体が痛むんですよ……使ってるとき死にそうでしたから」
横島さんもその危険性を判っているので素直に納得してくれた事に安心し、モグラちゃんを見つめて
「ロンさんからですけど、モグラちゃんを一時妙神山に戻します」
「うきゅう!?」
「みみむ!?」
えっえっと驚いているモグラちゃんは嫌々と首を振る。横島さんはそんなモグラちゃんの頭を撫でながら
「ちなみにどうしてですか?」
「角を得たことで竜として成長する段階に入ったそうなんです。竜気の暴走などを押さえる為に修練をする必要があると」
土竜変化の竜は竜としては最下位だが、それでも竜族に変わりは無い。暴走する可能性を考えれば、今の内に修行をする必要がある
「もししなかったら?」
「邪竜となり討伐対象になる可能性があります」
竜と言うのは簡単なことで属性を反転させる。子供のモグラちゃんならなおの事だ、討伐対象となり横島さんの心に酷い傷を与えるのならばと思った
「そっか、モグラちゃん。1回おじいちゃんの所に帰らないとな」
「うきゅー」
ぽろぽろと涙を流すモグラちゃんを抱き抱えながら横島さんは優しく撫でながら
「俺は待ってるから、モグラちゃんが戻ってくるのを皆で待ってるから。頑張って修行しておいで」
「みーむ」
横島さんとチビに言われたモグラちゃんは身体を震わせたが、自分が今力を持て余している事も自覚していたのか
「うきゅ」
寂しそうに頷いた。横島さんはモグラちゃんを抱き抱えたまま
「直ぐにですか?」
「私が妙神山に戻る時に一緒に連れ帰ります。多分今日の夕方には」
私の言葉にそっかと笑った横島さんはモグラちゃんを抱き抱えて
「じゃあ、今日は目一杯遊ぼうな」
「うきゅ!」
寂しいだろうけど明るく笑う、横島さんとモグラちゃんを見ながら辛い事を言う事になったと思っていると、蛍さん達が慌ててホテルから出てくるのを見て
「怒られそうですね。横島さん」
「……フォローお願い出来ます?」
その顔を見て怒られると悟った横島さんが助けてくれます?と笑うので、良いですよと笑いながらどうやって怒り心頭と言う感じの蛍さんとシズクを落ち着かせようかと私は考え始めるのだった……
モグラちゃんを妙神山に戻らせないといけないという話を聞いたその日の夕方、モグラちゃんは小竜姫様とメドーサさんに連れられて妙神山へと帰っていった。別れる前に大きな姿に戻ったモグラちゃんに予備のバンダナをリボンのように結んでやったがあの寂しそうな姿は当分忘れられそうに無い
「みーむう……」
モグラちゃんがいないので寂しそうにしているチビの頭を撫でてから頭の上乗せてやる
「大分寂しそうね」
「だよな……」
精霊石で人の姿になっているタマモとチビが寂しそうだよなと呟いていると、シズクが俺を見て
「……また変なの拾ってくるなよ。ノッブみたいなのを」
何故バレる……なんか山とか歩いていれば、普通に妖怪の赤ちゃんとか見つけそうなのでそれを拾おうかと考えているとシズクに言われて驚いた
【ワシは変じゃないわい!】
変なの扱いされたノッブちゃんがそう怒鳴るが、蛍達に
「「「いや、物食う幽霊の時点で大分おかしい」」」
【横島ー!皆がワシをいじめるーッ!】
泣きながら近づいてくるノッブちゃんだったが、おキヌちゃんがあ、手が滑ったと業とらしく本を落とす。それがノッブちゃんに命中し、ガチで泣きながら眼魂に飛び込んだノッブちゃんを見て
「あんまりいじめないでくれる?」
結構打たれ弱い所があるからと話をしていると、台湾の政府と映画クルーへの対応に向かっていた美神さんと神宮寺さんが1人の青年を連れて帰ってくる
「横島君。近畿剛一が知り合いだから直接謝りたいから連れて行ってくれって土下座するから連れて来たけど、本当に知り合い?今売れっ子のアイドルでしょ?」
「私は嘘だと思ったんですけどね。余りに見っともないので連れてきました。人の通る往来で土下座されたから、私と美神への視線が酷かったですわ」
人気アイドルを土下座させる美女2人。確かに注目されるよなあっと苦笑しながら2人の後ろを見る。それは間違いなく、あの地下プラットフォームで出会った青年で、明かりの下で見るとしみじみと思った
「銀ちゃんよ、金髪にあってないぞ?」
「やっぱ?ワイもそう思うんやけど、事務所の命令やから」
「大変やな、アイドルも」
「そやろー、大阪弁も禁止なんやで?横っち」
息苦しいわーと笑う銀ちゃんに苦笑しながら拳を突き出し
「久しぶりやな、銀ちゃん」
「おう!元気そうでなによりや、つうか横っち、GSになってたんやな、驚いたわ」
お互いに拳を軽くぶつけ合い、久しぶりに会った幼馴染との再会に俺も銀ちゃんも笑い合うのだった
「ほー横島のダチか。俺は伊達雪之丞だ、よろしくな」
「あいだだだ!馬鹿力か!?手え潰れるわ!!」
「しかし横島さんは顔が広いんですね。驚きますよ」
雪之丞と握手をして手が潰れると叫んでいる銀ちゃんに、俺の顔が広いと苦笑するピートにそんな訳じゃないんだけどなと笑っていると、蛍が銀ちゃんを見て驚いた表情で
「本当に知り合いだったのね」
「おう、小学生の時の親友やな、アイドルになってるのは驚いたけど」
前なんかの雑誌でみて銀ちゃんやんって驚いたのは記憶に新しい。まぁアイドルだと言ってもこの中に興味のある人間はいないので
「姉さん、有名人?」
「判りません。興味ないですし」
「……たまにTVで見るな。ドラマとかで、つまらないから消すが」
【ですよね。横島さんのほうが見てて楽しいですし】
一応アイドルで有名人の筈なんだけど、ぼろくそに言われている銀ちゃん。と言うかおキヌちゃんの俺を見ている方が楽しいって言う言葉は何か正直言って怖い
「いやーそれにしても……横っち……その頭の上と膝の何?」
だけど銀ちゃんは自分が注目されないこの状況に安心しているようで、心底リラックスした表情をしている。アイドルともなると心が休まる時間が無いんやなあっと苦笑しながらチビを抱っこして
「チビや、グレムリンの赤ちゃん。んでこっちは狐のタマモ、可愛いやろ?」
「みむっ!」
「コンッ!!」
動物に好かれるんやなぁっと苦笑していた銀ちゃんだったが、真剣な表情になり
「本当今回はすいませんでした。あの馬鹿監督、あそこらへんが立ち入り禁止なのは知ってたのに、無理やり進入したみたいで、本当ご迷惑をおかけしました」
深く頭を下げる銀ちゃん。美神さんと神宮寺さんを見るとその事が本当だと判り
「銀ちゃんも大変やったな。怪我してへん?」
「わいは大丈夫やったよ。でもなあ……あそこで命懸けで戦とった皆さんに申し訳なくて」
そうは言うが、それに関しては銀ちゃんも被害者に近い。だからそれに関して責めるのは酷だ
「この通り銀ちゃんも謝ってるんで許してやってください」
「判ってるわよ。撮影スタッフにめちゃくちゃ怒鳴り倒して帰って来たんだけど、どうしても横島君に謝りたいって言うから連れて来たのよ」
銀ちゃんらしいが、そんなに気にしなくていいのにと苦笑しているとポケットベルの音が響く
「うっわ、もう時間かよ!?悪い無理を言って出て来たからもう戻らんと……TVの撮影に間に合わん!」
慌てた様子で叫ぶ銀ちゃん。時間が無いのに会いに来てくれた事が嬉しかった
「そうや!横っち!住所か電話番号教えてくれや、今度OFFの時に遊びに行くから」
銀ちゃんの言葉に頷き、手帳に電話番号と住所をメモして渡すと、おおきにと笑って出て行く銀ちゃんを見送っていると、美神さんが出かけるわよと言って手を叩く
「出かける?除霊ですか?」
「何馬鹿を言ってるんですの?」
「除霊なんか出かける訳無いでしょ?香港にいるんだから観光旅行をして身体を休めるわよ。はい、準備して準備して」
と手を叩く美神さん。そう言えば俺はホテルに缶詰だったし、蛍達も動き回っていたが、それは結界の基点探しでとても観光と言う状態ではなかっただろう。それなら骨休みで観光をすると言うのも納得で、俺達は美神さんの言葉に判りましたと返事を返し、観光に出掛ける為の準備をする為に談話室を後にし、各々の部屋に向かって走り出すのだった……
別件リポート その頃日本では
モグラちゃん一時離脱。銀ちゃんが横島の家の住所で電話番号を入手。ヒャクメの登場フラグとマスタードラゴンの深刻すぎる後遺症が判明した話となりました。ヒャクメの登場で更に詳しく後遺症を書いて行こうと思っています、次回は別件アシュ様やブラドー、シルフィーなどの話を書くつもりです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い