GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
その1
リポート8 戻って来た日常 その1
原始風水盤の起動を阻止する為に香港に向かい。そこで魔人と名乗る人外に遭遇し、横島君が眼魂を2つ使い、痛覚障害と味覚障害を発症……美神さんとくえすからの報告書を見ながら心の中で呟く
(休暇よ……さようなら)
舞ちゃんが東京に来たら一緒に観光旅行とか考えていたけど、また新しい問題。勝手に動いている神代家の一部に、魔人……どう考えても長期休暇を取る事は不可能だろう……もう観光旅行は諦めて、私の家に泊まって貰おうかな?とか考えていると私の部屋の電話が鳴る
「もしもし?何か急用かしら?」
『神代会長。美神令子様が尋ねて来ましたが、アポイトメントが無いので時間が無いなら引き返すと仰っていますがどうしますか?』
受付の女性からの言葉に少し考えてから通してくれる?と返事を返す。美神さんもくえすも一流のGSなのでリポートは正確だ、だがこうして尋ねて来たと言うことは……2人のリポートの1番最後の所を見る
(厄介な事になってるしね)
横島君が変身して戦っている所を映画の撮影スタッフに撮影されてしまった。映画のシーンとして使うと強硬姿勢を崩さない監督。しかもその監督は日本や海外の政治家と交友が深い上に、自身が台湾の有権者が親族であり、それを盾にして断固としてGS協会と事を構える姿勢を崩していないと聞く、だが映画のスポンサーや、撮影スタッフは命を賭けて戦っていたGSに対して失礼だと反対しているとあるが、それに関しての問題だろうか?そんな事を考えていると扉がノックされたのでどうぞと声を掛ける
「ごめんね琉璃。忙しかったでしょ?」
「いえ、大丈夫ですよ」
丁度一区切りついた所ですからと笑いながら、どうしたんですか?と尋ねると美神さんはやはり私の考えていた通り
「映画の事をお願いしたいんだけど……」
「ああ、それですね。大丈夫ですよ、動く準備はしています」
GS協会としても圧力は掛けるつもりですし、どんなシーンを撮影したのか判らないが、美神さんやくえすがここまで危惧するのならそれは決して公開していい物ではないだろう。
「でもあの監督意地でも公開するって言っていたけど?」
「それなら冥華さんにも協力してもらいましょう。前の六道女学院での模擬戦の事でも緘口令とか色々やってくれましたし」
別の世界から訪れた人達との戦いを六道女学院で生徒に見せている。その時も色々と協力してくれた、流石に日本の映画の撮影会社にそのシーンを使う事を禁止するくらい、六道女学院の全員に緘口令を敷くよりももっと簡単な事だろう。政治家との関係を盾にしたとしても、冥華さんと喧嘩する事を選ぶ政治家なんている訳ないし
「でもその事なら、電話でも済みましたよね?直接尋ねて来た理由は何ですか?」
この程度の内容なら電話でも済んだはずだ。こうして尋ねて来たのは盗聴対策や絶対知られたくない何かがある筈だ
「私とくえすは香港で明けの明星に会ったわ」
その言葉に大きく目を見開く。明けの明星……それが意味する神魔の存在は霊能に関係する者ならば直ぐに理解できる
「その明けの明星が自分の部下を日本に配置すると言ったわ。その部下の名前は「真の蠅の王」……横島君が関係してるわ」
その言葉に本気で泣きたくなった。どうしてこんな大事ばかり続くのだろう?しかもその全てに横島君が関係している……どうして横島君の周辺にこんな事ばかり重なるのだろうか?私達も知りえない、何かが横島君にあるのだろうか?そうでなければ、これだけ大きな事件が続く事に対して説明がつかない……だがその何かが何か判らない。ただ判っているのはこれからも横島君が中心になって今回のような事件が続いていくという事だろう……そしてこのままでは人間はその力に飲み込まれていくだけ、神魔でさえも抗う事の出来ない何かが起きようとしている
「それと魔人の復活で私は実感したわ、私もくえすもだけど……このままじゃ、これからの戦いに私達は足手纏いになる。暫く東京を離れるかもしれないわ」
美神さんも私と同じ考えなのか、真剣な表情でそう告げる。目的地は言うまでも無く、妙神山だろう……目的地と強くなると言う意思、それらを全て知り、その上で聞いた美神さんの言葉に頷き、私は断言した
「それは流石に許可出来ないですね。美神さんの考えも判ります、神魔が動いている事も理解しています。そしてその上で言います、今は許可出来ないです」
「……ちなみに理由は?勿論ちゃんとした理由があるのよね?」
美神さんの言葉にちゃんとした理由がありますと言いながら机から極秘と印の押された書類の束を取り出す
「本当は国際GS協会と、バチカンの関係者にしか閲覧許可に出ていない物ですが……どうぞ」
世界レベルの極秘の書類……美神さんが真剣な表情をしてその書類を手にし、それを目を通していく。読み進めるに連れてその顔色を変えていく……私だってこの書類を見た時は同じ様な顔をしていたのでその気持ちはよく判る
「……これは確かに、今東京を離れる訳には行かないわね」
声に出して言う訳にも行かない。それほどまでに深刻な問題が今日本で起きているのだ
「すいません、美神さん達の気持ちは判りますが、今は我慢してください。その変わり、先日日本に天界から2人目の英霊が派遣されました。彼女に話を聞いてみるのも、なにか言いヒントになるかもしれませんよ」
「彼女?女の英霊って事?……ちなみにその英霊は頼りになるのかしら?」
美神さんの言葉に間違いないですよと返事を返しながら、その英霊の名前を口にする
「聖マルタ。ドラゴン退治の聖女様です、今は六道女学院で教員とし、人間に紛れて行動しています。時間を見て会いに行ってみてください」
英霊として活動すれば、人が集まり思うように動けなくなると言う事で、神通力や霊力をかなり制限して人間に化けている。それでも英霊としての実力も、知識も本物だからきっと頼りになると思います
「……判ったわ。時間を見て会いに行ってみるわ、それで今回の事は少し時間を置いてから、引き受けるわ」
「すいません、負担ばかりを掛ける事になります」
今回の事件の事は間違いなく、美神さんや唐巣神父にしか頼む事が出来ない。小笠原さんは今フリーだけど、呪術師と言う除霊スタイルでは無理だし、冥子さんでは暴走して終わり、調べる物が破壊されて情報を得る事が出来なくなる。唐巣神父も今はフリーだけど、今は自分を鍛えなおしている段階で依頼は全て断っている、だから無理に依頼を頼む訳にはいかない
「別に良いわ、今動けるのが私だけって言うのは判っているから。琉璃もあんまり無理をしないでね」
そう笑って会長室を出て行く美神さんを見送り、私は机の上の書類を捲り溜息を吐いた
「本当、これからどうなるのかしら」
その書類に記されていたのは、日本のとある山の中で感知された膨大な魔力反応が2つ、そしてその2つよりも遥かに強い神通力の反応……神魔も把握していない荒神としての側面が強い神……しかも規格外の存在がそこにいた。しかし出現反応から数時間後に周囲に響き渡った断末魔の雄叫び……それは土砂崩れや、地震と言った災害を起し、その周辺は今は立ち入り禁止区域になってしまっている
「まぁあの山を開発しようとしていた企業が撤退したのは幸いだけど……それでも、マイナスが大きすぎる」
その山の土地の所有権を強引な手段で手にした黒い噂の多い企業が撤退したのはプラスだけど、神獣が倒れた事で周囲の霊力のバランスがおかしくなっている……そこで何が起こっているのか調べるという危険すぎる仕事を美神さんにまた押し付けてしまった。彼女にしか頼む事が出来ない今の状況に私は深く溜息を吐くのだった……
私は今日一部の最上級神魔との話し合いの場に召集された。私は過激派と言うことになっているので神魔の両方から追われる身だ。更に言えば、私の事を知られれば、どこにガープによって操られた神魔が居るか判らず。ガープ達に私が敵と知られてしまうリスクが高く、手紙や通信による連絡が主になっていたが、今回はそうも言ってられなくなったのだろう
「お疲れ様です。アシュタロス」
「すまんなぁ、呼び出すことのリスクは承知しとるんやけど、今回ばかりはなぁ……」
神魔の最高指導者に大丈夫だと返事を返しながら、会議室を見渡す。そこには大体予想通りの面子が揃っていた
(ハヌマンに龍神王。オーディンにビュレトか……)
GS試験の時以来魔界で療養していたビュレト。今もまだ壁に立てかけられている松葉杖や、包帯が巻かれているのが見えるのでまだ本調子ではないだろうに……
「おい、アシュタロス。話すなら早く話せ、座っているだけでも俺は辛いんだ」
だったら来るなよと思いながら、原始風水盤そして魔人について私が知りえた事を纏めたリポートを全員に配ってから口を開くのだった
「原始風水盤何をするつもりだったか?それがずっと疑問でしたが、ガープの目的は魔人の復活だったようです」
私の時は魔界を呼び起こし、神族の力を削ぎ、魔族や悪霊の力を強化すると言う事を目的としていたが、ガープは魔界を呼び出すのではなく、その膨大な魔力を全て空間に干渉させる事で、亜空間に封印されていた魔人全ての開放。魔人を復活させる事ができなければ、その魔力を用いての英霊召喚や、魔界の召喚、そして日本のある山での神殺し……考えられるだけでも4通りの利用方法を考えていたようだ
「規格外だな。流石にこれだけ策を用意されては読みきれんな」
「失敗しても、そのままの流れで自動的に他の策が起動する。厄介すぎるの」
オーディンとハヌマンが眉を顰めながらそう呟く、原始風水盤はある意味囮だったというのが正直な所最大の驚きだ。起動しようがしまいが、ガープにとってはマイナスではなく、起動すればそれで良し、失敗しても原始風水盤なんていう規格外の魔導具の起動を阻止するために神魔が動き、更に言えば日本の有力なGSも香港へ向かう。何重にも策を張り巡らせ、幾つ物の布石を打ち、最終的には最大の戦果を上げた。恐ろしいほどに有能な軍師であり、策略家と言わざるを得ない。誰が原始風水盤を囮に使うなんて考える?あれだけの魔導具を囮にするなんて誰も考えない、だからこそ有効な一手として動き、GS試験に続き再び神魔の対応が遅れてしまった
「それと日本で殺された神ですが……特定は出来ていません。そちらのほうでは何か判りませんか?」
ガープが周囲にいるかもしれないので私は動く事が出来ていない。神魔のほうで情報を得てないですか?と尋ねると龍神王が完全に特定は出来ていないがと前置きしてから
「凄まじい神通力を伴った断末魔の叫びと、周囲の霊力のバランスの変化から相当長い年数を生きた神である事は判っている。そしてその神通力の分析だが、祟り神としての面が強い事までは判明している」
長い年数を生きて、祟り神としての側面が強い神……当然ながら日本には該当する神が多いので特定など出来る訳もない。そもそも日本は八百万の神と言う通り、かなりの数の神がいるのだから特定など出来る訳も無いか。となると……ガープの目的としては、どこにあるのか?神が死んだことであの土地は霊脈としての効力を失っている……
「神殺しに意味があったんですかね?」
「いやあ?意味無いやろ?人間が神殺しをするのは判るわ、その権限を手にするからな?でも神が神を殺しても特に意味は無いやろ?」
神殺しをした意味が判らない。霊脈を1つ潰し、神の権限を手にする訳でもない。どう考えても神殺しにかかる労力と手にする物の釣り合いが取れない……
「その神が動物だったらどうだ?横島に力を貸すことを阻止しようとしたんじゃないのか?」
ビュレトがそう呟く、確かにその可能性は僅かにあるが、その神が横島君に力を貸すとは判らないし、何よりもそんな不確定な事のために動く意味が判らない。
「考えても判らない、この件は保留にして真の蠅の王についてはどうなっている?」
「ああ。日本のどこかにいることは判っているよ。どこに居るかは判らないけれど……」
ふらりと酷く疲れた顔で訪れて、胃の辺りを押さえて暫く探さないでくれと言って消えて行ったよと言うと全員が神妙な顔になり、全員の声が重なった
「「「「そっとしておこう」」」」
穏健派と名乗っていたが、実際は傍観派で、今回動いたのだって自分の名を騙る痴れ物を潰す為だったと言うのに、ルイ様に横島君を護れと命令され、魔界に帰りたくても帰れないベルゼブル。きっと有事の時には協力してくれると思うので、それまではそっとしておこうと全員の意見が重なった
「さてと、ではここからは原始風水盤について蛍さんからのリポートを受け取っていますよね?」
キーやんの言葉にはいっと返事を返し、蛍のリポートを鞄から取り出し、先ほどのリポートと同じ様に全員に配る。魔人の復活は全員が知っている、今知りたいのは香港で何があったのかだ。私は蛍から預かっていた記録用の通信兵鬼を取り出し、会議室の椅子に座りながら
「映像はそれほどいい物ではないですが、ここに戦闘の一部の記録データがあります。そちらのほうを再生しますね」
会議室の面々にそう声を掛けてから、私は目の前のスクリーンに香港での戦いを映し始めた。画質は悪く、音声にもノイズが混じっていたが横島君が相当な無茶をしたこと……そしてマタドールが横島君を同胞と呼んだ事を含む、戦いの結末を見終えた面々は無言で私が提出したリポートに目を通す。2つの眼魂を使い、しかも神族と魔族と相反する力を取り込んだ横島君は魂に過負荷が起き、大分ましになったとは言え、まだ感覚障害や味覚障害が残っている。だからヒャクメの派遣し、横島君の状態を調べて欲しいと頼むとキーやんは真剣な表情のまま頷き
「判りました。近い内にヒャクメを派遣します」
「よろしくお願いします」
私の方でも調べる事は出来るが、魂は私の専門ではないし、それに私はあくまで人間として横島君に接している。そこまで専門的な道具を使うことが出来ないと言う事もあり、ヒャクメを派遣して貰える事になって安堵の溜息を吐いていると龍神王が顎の下に手を置いて沈鬱そうな表情で
「馬鹿な部下が暴走しないか不安だ」
「同意する」
魔人が同胞と呼んだ。それだけで危険だと判断する馬鹿もいるだろう、現にルイ様がそれを炙り出し全部捕えるという話も聞いているが、何処にも馬鹿と言うのは存在する。その全てを捕えるのは難しい事だと思うが、それでもやって貰わなければならない
「そこは自分の部下なのでしっかりと手綱を握って下さい」
「そやでー?上司としての責任は果たしい」
最高指導者に言われて深い溜息を吐く龍神王とオーディン。それに続いてビュレトが口を開く
「魔族からも護衛を増やすべきだな。横島は今回の件もそうだが、GS試験の事もある。あいつが鍵となっているだろう」
ガープも一目起き、そして今までの事件に何らかの形で関係している横島君。彼を警護するそのは最重要だが、それに関しては、天界から英霊が2人、魔界からは、メドーサとブリュンヒルデにベルゼブル。戦力的には相当数を横島君の周りに配置している、今重要なのは警護を増やす事ではない。今最も重要なのは横島君達自身が強くなる事だ、それは斉天大聖も判っているのかキセルの灰を落としながら真剣な表情で
「近い内に妙神山に向かわせてくれい、ワシが面倒を見る」
神魔が動いたとしてもどうしても初動に遅れが出る。となれば神魔が動く準備が整うまで人間達で持ち堪えてもらう必要がある。となれば妙神山で修行して貰うのが一番確実だ、当面の動きが決まった所で私だけ先に人間界に戻り、神が死んだと言う山の調査に遠隔操作式の兵鬼を飛ばした後椅子に腰掛け、引き出しの中にしまっておいた物を取り出す
「実験をしている場合じゃないか……」
ドクターカオスから提供して貰ったメタソウルのおかげでやっと複製する事ができたゴーストドライバー。無論変身できるという保証も無く、安定感や使用者の身の安全も保証されていない。今のこの状況で実験する事は出来ないなと溜息を吐きながらそれを机の中に戻すのだった……
香港から戻って2日。本当なら学校に通っているのだが、俺は自宅療養と言う事で学校を休む事となっていた。その理由は香港でのマタドールとの戦いで眼魂を2つ使ったマスタードラゴン魂の後遺症……つまりは味覚障害・感覚障害・痛覚障害の3つだ。魂に過負荷が掛けられた事により、霊体が麻痺しているのが原因だと聞いている。これは時間を掛けて身体を動かす事で徐々に馴染ませて行く必要があるらしく、カオスのジーさんが出してくれた薬を朝昼晩のみ、ずっとリハビリを繰り返していた。それに感覚障害と痛覚障害よりも深刻なのが味覚障害だ。香港では味が判ると言っていたが、日本で味噌汁を飲んだら味が殆ど判らなかったし、痛覚などもかなり麻痺していてどこかで怪我をしたら危ないと言う事で自宅療養となったのだ。今もリハビリを終え、昼食になったのだが……
「うーん……」
シズクが用意してくれた小さなお椀に入れられた味噌汁を口にする。味噌の香りは感じるのだが、口に残るのは暖かいお湯と言う感じで全く味が判らない。香港での料理は味が濃いから認識出来たようだが、和食関連は殆ど味が判らない……日に日に味は感じるようになって来ているが、それはかなり味の濃い洋食や中華ばかりで、今日こそはと思ったのだが……やっぱり今日も駄目だったようだ
「……やっぱり駄目か?大分濃い目にしてあるんだが……」
【確かにな、これなんか結構辛いぞ?いや、美味いんじゃがな?】
味噌汁を飲んでいるノッブちゃんがそう笑うが、やっぱり味が判らない。自分の感覚ではなんとも無いのに、どうして味を感じる事が出来ないのか?それが不思議で仕方ない、そして食事を用意してくれるシズクに本当に申し訳ないと思う
「じゃあ、横島こっちはどうかしら?」
【和食で駄目なら、洋食です!】
蛍とおキヌちゃんが用意してくれたのはケチャップベースで煮たソースで煮たミートボールと、かなり色が濃い肉じゃが。先にミートボールに箸を伸ばす。良い香りがするんだけど、これで味を感じない最悪だなと思いながら口に運ぶ
「あれ?」
味は僅かに感じるってレベルなのだが、歯に当る食感がやけに強い、それに香辛料の香りがかなり強く、味をあんまり感じないのに美味しく感じた。俺の反応に気付いたおキヌちゃんが笑いながら説明してくれた
【どうですか?ミートボールの中に蓮根とかを入れて食感を強くして、ケチャップベースのソースにも色々と香辛料とかを色々加えて見たんです。美味しいですか?】
ここまで色々工夫してくれた事に胸が一杯になりながら、美味しいと口にする。味を殆ど感じないので、飲み込む形が最近多いので、余計に美味しく感じる
「……なるほど、食感と香辛料か……味を感じないなら、そっちの方向性で……」
【おお!これは行けるッ!食欲が進むな】
ミートボールを味見して、ぶつぶつ呟いているシズクと、美味い美味いと食べているノッブちゃんを見ながら今度は肉じゃがに箸を伸ばす。
「あ、美味しい」
肉じゃがは出汁を使う料理なので味を感じるか正直かなり不安だったのだが、一口目からしっかりと味を感じて驚いていると蛍があんまり体には良くないんだけどねと呟いてから
「水も出汁も使わないで酒と醤油と砂糖で煮詰めたのよ。肉じゃがって言うよりもかなり味の濃いすき焼みたいな感じね」
そっかぁ……だから味をかなり強く感じたのか。とは言え、水も出汁も使っていないので、かなり味が濃いのでそう連日食べれる物じゃないけど、ここまで味を強く感じると食欲が出て来る。久しぶりに強く味を感じる料理を用意してくれた蛍やおキヌちゃんに感謝しながら、俺は食事を進めるのだった……
「焦らないでいいから、ゆっくりね?」
昼食を終えて、少し休憩してから再びリハビリを再開する、今やっているリハビリは物を掴んで、動かすという物なのだが……手の中でめきりと音を立てる割り箸に眉を顰める
「……落ち着け、ゆっくりだ」
シズクが俺の手を取って、握り拳をゆっくりと解いて割れた割り箸を取って、新しい割り箸を握らせてくれる。感覚障害と味覚障害と痛覚障害、3つの障害が今俺を襲っているのだが、1番問題として大きいのが、感覚障害だ。物を掴んだりしても感触を感じないので力を入れすぎてしまい、物を壊してしまったり、何かを壊して、それが手に刺さっていても痛みを感じないので危険だと蛍やシズクがかなり心配しているのがこれだ。さっきの食事では壊れないように金属製の箸を使っていたが、プラスチックとかでも握り潰してしまうので学校に行くわけにも行かず、更に言えば
「みーむう……」
「コン」
チビを撫でたり、抱っこする事ができない。握り過ぎてチビやタマモに怪我を負わせるかも知れない思うと怖くて触る事が出来ないし、チビもタマモもそれが判っているので近寄って来ない。寂しい思いをさせているのが判っているので早く感覚を取り戻したいと思うのだが……
【横島。焦るな、徐々に良くなって来ている。ここで焦って怪我をしては意味が無いぞ】
【そうですよ?前は手に持ったら直ぐに握り潰していたじゃないですか】
心眼とおキヌちゃんに焦る事はないと励まされるが、前は意識しなくても出来ていた事が今は出来ない、それがもどかしくて、焦りばかりが募って行く。あの時マタドールを退ける為に小竜姫眼魂とメドーサ眼魂を同時に使ったことは間違いではないと思っている……だけど俺のせいでシズクや蛍達に負担を掛けていると思うと自分が情けなくなって
「あいたッ!」
思考がどんどん暗い方向に向かっていた時。蛍にでこぴんをされて思わず顔を上げると悪戯っぽく笑う蛍の笑顔が目の前にあって
「だから焦っても仕方ないでしょ?時間はあるんだからゆっくり、身体を治しましょう?」
シズクとおキヌちゃんにもその通りだと言われて、1人焦っていた自分が何か恥かしくなって来た。蛍の言う通りだ、美神さんもカオスのジーさんも時間を掛けなければならないと言っていた。それを2日程度でどうにか出来る筈が無いのだ、時間を掛けて少しずつでも進んでいくしかない
「判った。ゆっくり頑張ってみる」
今度は割り箸ではなく、指先の感覚を掴む為のルービックキューブに手を伸ばし、蛍達が見守ってくれている中必死で手の感覚を取り戻す為。日が暮れるまでルービックキューブを触り続けるのだった……
横島がリハビリに奮闘している頃。神界では1人の神族が人間界に向かおうとしていた、目を模したアクセサリーを身につけた女性……ヒャクメだ
「ふっふっふ、やっとなのねー♪」
愛用のトランク型のPCを引っ張りながらヒャクメは笑う。早い段階で未来の自分との記憶同期をしており、横島に会いたいと思っていたが、今までチャンスが無く。自身の能力でこっそりと見ている事しか出来なかった(人それを盗撮と言う)それがやっと会うことが出来る。そう思うとヒャクメのただでさえ高いテンションは更に高い物へとなっていく
「楽しみなのね~♪」
横島の治療とマタドールを退けた褒賞で何を求めるのか?と言うことを聞く事が仕事なのだが、それを覚えているかも怪しいテンションで人間界へ向かっていくヒャクメ。未来の記憶と同期した事で少しだけ落ち着いた性格になり、そして仕事のミスも少なくなったと評価が上がり始めていたヒャクメだが、今の様子を見られた事でやっぱりヒャクメはヒャクメかと、再び評価が少し下がる事になったのだが、会いたいと思い続けていた横島にやっと会うことが出来る。それしか考えていないヒャクメにはそれは余りに些細な事だった……鼻歌交じりで人間界へ向かって行ったヒャクメが仕事を覚えているか?それで神族の間で賭けが行われている事を知らないのは当人だけだったりする……
リポート8 戻って来た日常 その2へ続く
タイトルが戻って来た日常ですが、まだ戻って来ていません!ヒャクメの魂の調査とかが終わってからになると思います。
その後は3回くらいのんびりとした話を書いて行こうと思います。そしてアシュ様が作成したゴーストドライバー(メタソウル製)誰がそれを手にするのか?そこを楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い