GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回はヒャクメの登場と、少しずつ日常の話を書いて行こうと思います。ヒャクメの分析能力で横島に何が起きているのか?を書いて行こうと思います。そしてピート・タイガー・雪之丞の話も書いて行こうと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その2

 

 

 

リポート8 戻って来た日常 その2

 

蛍やシズク達にリハビリを見て貰っている間。美神さんは自分1人で除霊をやると言って蛍やシズクを俺の側に置いてくれていたのだが、今日はどうしても蛍達の助けが居ると言う事で香港から戻って初めて俺1人になっていた

 

「ごめんなー、散歩とか、抱っことかしてやれなくて」

 

「みーむ!」

 

猫じゃらしで遊んでやったり、リンゴを与えるのがやっとでモグラちゃんが居なくなって寂しい思いをしているチビに構ってやれない事を謝るとチビは大丈夫だよと言う感じで前足を振る。その姿を見ると早く手の感覚だけでも戻らないか?と思っていると頭を叩かれる

 

「そんな事を考えても仕方ないでしょ?チビは賢いから判ってるわよね?」

 

「みっむ!」

 

俺が1人だと無理なリハビリをするかもしれないと言う事で、精霊石を貸し与えられ人化しているタマモがどこから取り出したのかハリセンを手に悪戯っぽく笑っている

 

【タマモの言う通りだ、チビは恐ろしく賢い。確かに寂しくは思っているだろうが、お前の体の事を心配している。いらぬ事を考えるな】

 

心眼にもそう言われ、俺を見てにぱっと笑うチビに心眼とタマモの言っている通りだと判り

 

「じゃあ調子が良くなったら一杯遊ぼうな」

 

楽しみにしてると言わんばかりに両手を振るチビを見て笑っていると、牛若丸眼魂が光ながら

 

【早いといえば天狗殿の薬を分けて貰えれば、回復は早くなると思いますよ。この牛若もそれで生死の境目から脱しましたから!まぁ、天狗殿の腕試しで挑んでその状態に追い込まれたのですが……】

 

……いや無理やん?今霊力も使えない俺じゃ天狗のおっさんには勝てないし、美神さん達にそんな話をする訳にもいかない

 

「とりあえず、それは最終手段と言う事で」

 

【はい!心の片隅にでも留めておいてくだされば結構です】

 

恐らくはじける笑顔をしているであろう牛若丸。悪い子ではないと思うのだが、こういうと何だがどこか抜けてる気がする。心眼も何も言わないし、タマモも呆れたような表情をしているし……悪い子ではないが、ちょっとアホの子。それが俺達の中の牛若丸の評価となりつつあることに少しだけ苦笑する。英霊と言う凄い存在をアホの子と言うのは流石に罰当たりかなぁ……俺が苦笑していると、チャイムが鳴る

 

「お客さんかしら?まぁ良いわ、私が見てくるから、大人しくしてなさいよ」

 

「判ってるよ」

 

俺を指差して大人しくしてなさいよと言うタマモ。狐の時は良く甘えてくるけど、人化するとなんと言うか、少し背伸びしている妹の様に見えるんだよなぁ、タマモに言ってたら怒りそうだけど、そんな事を考えながら、猫じゃらしでチビと遊んでいるとタマモが誰かを連れて居間に入ってくる

 

「誰?」

 

【む?お前は……】

 

それは見覚えの無い女性だった。眼を連想させるアクセサリーを見につけた、民族衣装を着込んだ明るい雰囲気の女性……見覚えなんてある訳も無く、誰?と呟く。心眼はその女性を知っているようだけど、どこか困惑したような表情でそれ以上を口にしない。知り合いなら教えてくれれば良いのにと思っているとその女性は手にしていた鞄を机の横に置いて

 

「小竜姫から聞いてると思うのね~、貴方の魂と霊体の様子を見に来た神族のヒャクメなのね~よろしく」

 

にこにこと笑いながら手を差し出してくるヒャクメ……様の手を握り返しながら

 

「えっとヒャクメ様「あ、ヒャクメでいいのね~私は神族って言っても元妖怪上がりだから様付けは好きじゃないのね~」……じゃあヒャクメさん……よろしくお願いします」

 

神様にもこんな軽い人が居るんだなっと思いながら、今日はよろしくお願いしますとヒャクメさんに頭を下げるのだった……

 

 

 

ちょっと新鮮なのね~私はトランク型のPCから伸びたコードを横島さんに額や腕に貼り付けながら心の中で呟いた。前の記憶では飛び掛られた記憶があるが、今の横島さんにはそれがない。

 

(大分落ち着いているって感じなのね~)

 

私の知っている横島さんで言えば、結婚して直ぐの横島さんに似ていると思った。それと比べるとまだ荒いが、それでも助平なのが大分収まり、好感を持ちやすくなっていると言える

 

(んー周りに女の人が多いから~?それとも美神さんも大分変わったからなのね~)

 

蛍さんが逆行して横島さんの側にいるから、こんなに落ち着いているのかな?と考えながら

 

「はい、これで準備は終わったのね~じゃあここから魂を調べるから、ちょっとピリッとするけど我慢してなのね~」

 

「わ、判りました」

 

引き攣った顔で返事を返す横島さんにそんなに怖がる事ないのね~と返事を返す。大体、タマモちゃんが私が何かすれば排除する気満々だし、心眼も警戒しているような目をしているし、それに何よりも

 

「みむう」

 

放電しているグレムリンがめちゃくちゃ怖いのね。下手をすればこのPCが壊れるかも、と怯えながらキーボードに手を伸ばす

 

(え?な、何これ!?)

 

画面に映った横島さんの魂の状態を見て、思わず叫びそうになるのを必死に耐えて、キーボードを叩き続ける。そして解析が進めば進むほどに自分の顔色が悪くなっていくのが判る

 

(こ、これやばすぎるのね)

 

横島さんの感覚障害・味覚障害・痛覚障害の3つの原因……

 

(魂が侵食されてる……!)

 

眼魂と言う霊具で神魔や英霊の力を使うというのは聞いていたし、私も見ていた。だけど香港で使ったというマスタードラゴン……それが最悪の結果をもたらしていた。小竜姫の神族の魂の欠片と、メドーサの魂の欠片が今もまだ横島さんの魂の中に残っており。それが横島さんの魂を侵食していたのだ……横島さんの障害は全て神魔と人間の感じ方の違いが魂の差異を生み出し、それが感覚・味覚・痛覚の3つの障害を巻き起こしていたのだ

 

(と、とりあえず、このレベルなら)

 

調薬のボタンを押して、その症状を抑制できる薬の調合を始める。そしてそれと同時に眼魂の危険性……しかも神魔系の眼魂の危険性を知った。今はまだ良い、それほど酷い症状も出ていないし、横島さん自身の魂の抵抗力で、小竜姫とメドーサの魂が少しずつその侵食範囲を狭めているから……だけどいつかはそれでも抵抗出来なくなる時が来る……そして横島さんの魂の防衛本能が弱くなれば……眼魂からの侵食に耐え切れなくなり……

 

(横島さんは人じゃなくなるのね……!)

 

人間の魂は弱い、神魔の力にいつまでも耐えれる物ではない。眼魂の中の魂はそれほど強い物ではないが、何回も何回も使っていれば、侵食は進みいずれは耐え切れなくなる。これは最高指導者に必ず報告しなければならない、神魔の眼魂は危険度が高すぎる、たとえ神魔からの協力する手段だとしてもリスクが高すぎると進言する必要がある

 

「えっとどこか不味いんですか?」

 

「あ、ううん!大丈夫なのね!ちょっと魂が弱っているだけだから、薬を出しておくから、朝・昼・晩って3回食前・食後に飲んで欲しいのね!」

 

私の顔色を見てなにか大変な事になっているのでは?と青い顔をしている横島さんに大丈夫なのねと笑いながら、キーボードの操作を続ける

 

(初期段階でよかったのね~これくらいなら!まだ全然大丈夫なのね~!)

 

とりあえずこのレベルなら薬を飲んでいてくれれば、近い内に収まる。今も魂を調整したから感覚障害とかも徐々に収まっていく筈なのねと笑いながら、心の中で溜息を吐いた……折角横島さんに会えたのに大変な事になってしまった。それに……

 

(他のみんなには気付かれるのね)

 

心眼とタマモは私の様子を見て何か不味いことになっていると理解している。だけど横島さんに聞かせる訳にはいかないと思っているのか問い質して来ない事に安堵の溜息を吐く。そして後で蛍さんとかも集めて、神魔眼魂の危険性の話だけしておこうと決めた。話す前に最高指導者に話を通す必要があるので、後で話をする時間を取って貰おうと考えているとPCから薬が出されたと同時にPCを元に鞄の形状に戻して

 

「薬の飲み忘れをしないようにするのね~調子が良くなっても薬が無くなるまではずっと飲むのね」

 

「判りました、ありがとうございます」

 

薬を受け取って頭を下げる横島さんを見ていると嘘をついているような罪悪感を感じて、私は慌てて話題を変える事にした

 

「今回の香港の事件の事で神魔から褒美が出るのね~横島さんは何が欲しいのね?」

 

手帳を開き褒美に何が欲しい?と尋ねると横島さんは質問いいですか?と尋ねて来る。何なのね?と尋ねると

 

「神様の中で未来視とか、予知能力を持ってる人でそれを抑えれる人とかいませんか?」

 

「ん~いるのね。ヒャクメ族はそう言う能力持ちが多いけど、子供の時は制御出来ないから抑制の道具はあるのね~?それがどうしたのね?」

 

私がそう尋ねると横島さんは少し考える素振りを見せてから、何かを決めた表情をして

 

「じゃあその道具をください」

 

「ちなみに聞くけど何で必要なのね?」

 

私がそう尋ねると横島さんは内緒ですよ?と前置きしてから

 

「柩ちゃんって言う未来視とか、予知能力とか持ってる子が居るんですけど、それが暴走してるから寿命が長くないって聞いたんです。なんとかしてあげたいと思ってて、それでその道具で能力を抑制出来るなら……柩ちゃんも人並みの寿命をもてるんじゃないかって思って」

 

その言葉に横島さんは変わってしまったと思っていた自分が恥かしくなった。彼は何も変わっていない、どこまでも人の痛みに共感出来る優しい人のままだ。いや、私の知っている横島さんよりももっと優しくて、思いやりに溢れている人だと思った

 

「横島?それで本当にいいの?神界からの褒美を自分の為に使わなくて?」

 

【後悔しないか?】

 

タマモちゃんと心眼が横島さんにそう問いかけると、横島さんは全然と言い切り、笑顔で告げたのだ

 

「俺は知り合いが死んじゃうのが凄く悲しい、それで今何とか出来るならそれを何とかしたい。柩ちゃんにも色々助けて貰ってるし、俺結構あの子の事好きだから。死なれるのは悲しいからさ」

 

好きだから、そこに異性が好きと言う意味は込められていない。知り合いだから、助けて貰ったから今度は俺が助けてあげたいと言う善意だけがそこにあって、私は笑いながら

 

「判ったのね~横島さんの褒美はそれで行くのね。アクセサリーの形になるから、柩ちゃん?にどんな形がいいか聞いて欲しいのね~この紙に書いてくれれば、私の方に来てくれるのね~判ったら書いて欲しいのね!」

 

簡易使い魔を作る紙を横島さんに手渡した所で、ただいまと言う声とお邪魔しますと言う声が聞こえる

 

「……誰だ?」

 

「え?」

 

【横島ーワシ疲れた~メロンパンくれえ】

 

困惑しているシズクと驚いた表情をしている蛍さん……私を完全に無視視している英霊は気にしないことにして私は笑いながら自己紹介をした

 

「神界から横島さんの様子を見に来たヒャクメなのね~よろしくなのね~」

 

蛍さんとシズクに神界からの褒美の話をし、少し世間話をした後。蛍さんに小声で

 

(明日にでも横島さんの今の魂の状態を説明するのね~美神さんにも伝えておいて欲しいのね。後横島さんには内密で、教える訳には行かないから)

 

判りましたと頷く蛍さんによろしくなのねとお願いし、私は横島さんの家を後にし、魔界から派遣されているブリュンヒルデの所にお世話になろうと思い、そちらの方向に足を向けるのだった……

 

 

 

 

香港での依頼を終えた俺は特例として仮GS免許の交付と白竜寺の取り壊しを白紙に戻すという成果を手に、白竜寺へと戻って来た。だが……俺は結局の所何も出来ていない。香港で活躍したのは横島だ、自分の命を捨てる覚悟で魔人へ挑んだ。その時俺は無様に気絶しているだけで……見っともなくて、情けなくて俺は日が昇っている間白竜寺へ帰る事が出来ず。日がくれ、そして日付が変わる少し前に白竜寺へと戻った。誰にも見つからぬようにママ……いや、三蔵法師様の部屋の扉を叩く

 

「どうぞ」

 

その声を聞いてから三蔵法師様の部屋に入る。机の上には巻物と筆、そして墨が置かれていて、何かの作業をしていたのだと判った。三蔵法師は俺の顔を見た時驚いた表情をした物の直ぐに笑顔になり

 

「おかえりなさい、雪之丞。香港での仕事は終わったのね」

 

無事で良かったと笑う三蔵法師様の前に膝を着き蹲る

 

「どうしたの?どこか怪我をしたの?」

 

心配そうに尋ねて来る三蔵法師様に俺は顔を上げる事が出来ず俯いたまま

 

「俺は……何の役にも立てませんでした。三蔵法師様……香港では横島だけが魔人と戦う事が出来た。そのせいであいつは感覚や味覚障害を起しました……俺はあいつが命を賭けて戦っているとき無様にも気絶していたんです」

 

俺は何も出来なかった。1人に何もかも押し付けて無様に気絶していた。それが情けなくて、みっともなくて、香港で頑張ってくると言って白竜寺を出たのに何も成し遂げる事が出来なかった。それが悔しくて、情けなくて……俺は皆が起きている時に戻ってくることが出来なかったんです

 

「三蔵法師様……お、俺は「ママお師匠様でしょ?」……え?」

 

それは確かに俺が香港に旅立つ前に三蔵法師様をそう呼んでいた。だが俺は今自分が情けなくて、とてもそんな風に三蔵法師様の名前を呼ぶことが出来なかった

 

「で、でも俺はその……」

 

俺がしどろもどろになっていると三蔵法師様は手にしていた筆を机の上において、俺の方に向く。その目は普段の優しい目ではなく、力強い光を放っていた。この時俺は改めて目の前に居る女性が英霊なのだと理解した

 

「貴方は挫折を知りました。自分の無力さを知りました、そして己を情けないと思いました。それでどうするのです?伊達雪之丞。貴方はそのまま逃げるのですか?」

 

俺は投げかけられる言葉に返事を返す事が出来なかった。いや、返事を返そうとは思った、だけど目の前の三蔵法師様の霊力に完全に飲み込まれていた

 

「しっかりしなさい!伊達雪之丞!情けないと、無様だと思うのならば後悔して立ち止まっている場合ではないでしょう!横島君に全てを押し付けたと言って立ち止っていたらずっと彼に全てを押し付けたままよ!それが情けないと思うのなら、何も出来なかった自分が無様だというのなら!貴方は前に進みなさい。無様でも、みっともなくてもいい。前に進みなさい」

 

その一喝の後三蔵法師様は普段の柔らかい笑みを浮かべながら、俺の頭を撫でて

 

「陰念も自分のせいでって後悔して嘆いていたわ。でも後ろを見ても何も無いの、苦しくても前に進むの。そうすればきっと道は開けるわ、それよりも戻って来たのなら、明日からは厳しく修行をつけてあげる。判ったら、早く休みなさい」

 

「は、はい!判りました!ママお師匠様!」

 

俺は普段通りの呼び方をしてしまい、しまったと思ったがママお師匠様は柔らかく微笑み。厳しく行くからねちゃんと休んでおきなさいと笑うだけだった。俺はそのまま自分の部屋へと戻り、明日の修行に向けて少しでも身体を休める為に目を閉じるのだった……

 

そして翌朝

 

「こひゅー……こひゅー」

 

「おい?雪之丞。生きてるか?水いるか?」

 

陰念の言葉に手を伸ばすと、ペットボトルが渡されその中身を一気飲みすることでやっと落ち着いた。陰念がそんな飲み方をするな身体に悪いと言っているのが聞こえるが、とりあえずそれはスルーする

 

「ど、どうなってんだ。これは」

 

普段と同じトレーニングなのに、疲労感も霊力の消耗も半端無い……俺はタオルで汗を拭いながらどうなってるんだと呟くと、陰念は馬鹿でかいルービックキューブを弄りながら

 

「魂に過負荷を掛けるんだとよ。妙神山と似た空気を結界の中に作ってるらしい。まぁ、妙神山を知らないから、何とも言えないが」

 

妙神山か……霊能者の修行の場って聞くけど、どんな所なんだろうなと思いながら陰念を指差して

 

「お前、楽してね?」

 

ルービックキューブを弄っているだけなのでそう尋ねると、陰念は暗い笑みを浮かべて

 

「だったらやってみろ」

 

差し出されたルービックキューブの面を動かそうとするが、ビクともしない

 

「うぐぎぎいいいい!?な、なんだこれ!?」

 

「霊力を指先に集めて、それでやるんだ」

 

動かし方を聞いたので言われた通りやってみて、直ぐにルービックキューブを落とした。霊力が恐ろしい勢いで吸い取られ、持っていられなくなったのだ

 

「な、なんだこれ……」

 

「俺の魂に負荷をかけて、チャクラの回復と、指先の感覚を取り戻す為の物だ。とんでもないだろ」

 

とんでもないってレベルじゃねえよと倒れこみながら呟く、ずっと座っている陰念の額に滝のような汗が浮かんでいるのを見て、楽してるって言って悪かったと謝ると、気にしてないと返事を返す陰念にそうだと呟き

 

「香港でメドーサに会ったぜ、何にも出来なくて悪かったって」

 

「……そうか、あの人は死なないと思っていたが、こうして生きていると聞くと嬉しい物だな」

 

厳しい人だったが、優しい所もあって面倒見も良かった。何より俺達をここまで強くしてくれた人だから、今でもやっぱり尊敬していると言える

 

「今度機会を見て、会いに来るってさ」

 

「皆喜ぶか、泣くか、悩む所だな」

 

「勘九朗なら泣きながら喜ぶんじゃないか?」

 

違いないと笑いあう、生きているらしいがまだ会うことが出来ない兄弟子。何時になったら白竜寺に戻って来れるんだろうなと考えながら、呼吸が整った所で立ち上がり訓練を再開する。今度は足手纏いにならない、横島の助けになれるようになる。そうでなかったらみっともなくて横島のライバルなんて言えないからな!俺は霊力を放出した事で、一気に空気が重くなるのを感じながら、ゆっくりと地面を踏みしめるように白竜寺の拳法の型を始めるのだった……

 

 

 

オフィスで書類を整理していると扉がノックされ、外から声が掛けられる

 

「タイガー寅吉です、今帰りました、エミさん入っても良いですか?」

 

「良いわよ。丁度一区切りついた所なワケ」

 

私の声を聞いてからタイガーが部屋の中に入ってくるが、その顔を見て良かったと心の中で呟く

 

(良い面構えになってる)

 

辛い思い出しかないはずの母国へ戻ったタイガー。2週間経つまでに帰れと言っておいたが、遺跡の品の除霊を明後日に控えていたので、何かトラブルがあったのでは?と不安に思っていたが、こうして無事に戻ってきてくれて、そしてどことなく精悍な顔つきになっているのを見て忙しい時期にタイガーを母国に帰した意味があったというものだ

 

「それで何かヒントは見つけることが出来たワケ?」

 

態々墓参りだけに戻ったとは思えない、何か自分の霊能力でヒントを見つけたか?と尋ねるとタイガーは苦笑いを浮かべながら

 

「申し訳ないですケン……まだ触り程度ですのじゃ……」

 

頬を掻きながら言うタイガー。その自信無さげな言葉の割には顔には自信が満ちていて、何か手ごたえを掴んでいるように思えた

 

(母国で何か見つけたワケ?)

 

態々飛行機で戻ったタイガー。きっとそこで自分の霊能に関係する何かを見つけたのだろう。どんな力を見せてくれるのか?を楽しみにしながら、最後の書類に手を伸ばしながら

 

「じゃあ。明後日から除霊だからね、それまではゆっくりしてるといいワケ」

 

「え、エミさん?良いんですのジャー?」

 

今まで休んでいたのに、更に休んでいいのか?と言うタイガーに構わないと笑う。正直な話、明後日の除霊に向けて今日と明日は除霊を断るつもりだった。今書いている書類だって、2週間前の依頼を受けないという旨の書類を完成させるためでそうで無ければ今日だってオフィスに出て来るつもりも無かったのだから、後はこれを琉璃にファックスに送信した後は家に帰ってゆっくりと休むつもりだったのだと説明する

 

「異物の除霊は長丁場になるワケ、明日は学校に行っても良いけど、そこはタイガーの判断に任せるワケ、それと精神感応能力が頼りなんだから、ゆっくりと休んで疲れを取って除霊に備えるワケ」

 

私の言葉に判りましたと返事を返してオフィスを出て行くタイガー。若干拍子抜けしている表情を見る限りでは、多分除霊に連れて行かれると身構えていたのだろう

 

「タイガーのおじいちゃんか……」

 

タイガーがいない間に調べたのだが、タイガー寅吉の祖父はタイガーの母国では相当有名な霊媒師だった事が判った、しかも日本人だったと……しかしタイガーが悪魔憑きとして危険人物にリストアップされた時期に急にその力を失ったとあった。しかもその時期を前後して歩く事も出来なくなったと

 

「力を使いすぎた?」

 

前から思っていたことだが、タイガーの体格はかなり恵まれている。チャクラも手足が発達していて、本来ならば近接戦闘に特化したGSになる筈なのだが、タイガーの霊能力は強力な精神感応……本来の霊能力を封印され、そしてその中で生まれたのが精神感応能力なのでは?と私は推測している。そしてタイガーの祖父はタイガーのその力を封じるのに霊力を使い果たし、急速に衰えたのは?と私は考えている

 

「ま、考えても仕方ないか」

 

タイガーは今成長しようとしている。ならば私があれやこれやと口にして迷わせるような事はしないほうが良い、それにあんなに自信がありそうなタイガーは初めて見た。ならばタイガーが自分オリジナルの霊能力を開眼するのを待ってみるのも一考かもしれない

 

「流石に横島みたいなびっくり箱じゃないだろうしね……」

 

少し目を離していたらとんでもない霊能力を見につけている横島とは違うだろうと呟き、琉璃に小笠原除霊オフィスは少しの間除霊のため東京を離れるという旨のファックスを送り、除霊に備え身体を休める為にオフィスを後にしたのだった……

 

 

 

 

僕は目の前の光景を見て。暫く絶句していたが、何度か深呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着けてから

 

「父さん?シルフィーに何をしたんですか?」

 

「……シルフェニアは言葉や躾で性格を矯正できるレベルでは無くてな。不本意だが、魔法を使うことになった」

 

「なにしてるんですか!?」

 

シルフィーが暴走しがちなのは知っていたけど、魔法を使うまでとは思っていなかった。鼻歌混じりで掃除をしているシルフィーは僕に気付いた

 

「お兄様。おかえりなさい」

 

笑顔で小さく手を振る……これはもう別人のレベルだ。自分の娘に何をしているんですか!?と怒鳴ると唐巣先生が僕の肩に手を置いて、首を左右に振り

 

「これは正しい処置だったと言わざるを得ない。なんせ……黒魔術と横島君の血を使って何か怪しい儀式を行おうとしていたから」

 

し、シルフィー……お前は何がやりたいんだ?唐巣先生の言葉を聞いて、父さんの処置が間違いじゃなかったと知って思わずその場に崩れ落ちるのだった……

 

「魔法を使ったと言っても、シルフェニアの横島への恋慕を少し抑えただけだ」

 

その言葉にどこか納得する。シルフィーは島ではあんな感じだった。ただ横島さんに出会って、少しその……暴走気味になってしまっただけで

 

「我としてもとても心苦しかったのだが、あんな適当な呪文と魔法陣で異界の神を呼び出してな。あと少し遅かったら危なかった……」

 

「ああ。恐ろしい、蛸みたいな……こう見てるだけで正気を失いそうな……そんな足だった」

 

……それってまさかクトゥルフの旧支配者とか言う奴なんじゃなかろうか……シルフィーは一体何をしているのだろうか……恋をするとここまで暴走してしまう物なのだろうか?なにはともあれ、そんな存在が召喚されなくて本当に良かった

 

「とりあえずは大丈夫だと思うが、ピエトロ。お前も学校ではシルフェニアを少し気に掛けてやってくれると助かる」

 

学校であんなの召喚されたら大変な事になるからなと呟く父さん。唐巣神父は懐から薬の包みを取り出して

 

「私もね、今回の事は賛成しているよ。あれだよ、初恋は拗らせると怖いんだよ。物凄くね……」

 

遠い目をしながら薬を飲む唐巣先生。その言葉には凄い重みがあって、もしかして経験談なのでは?と思っていると唐巣先生はそうだと笑い

 

「胃薬分けてあげようか?これは良い薬なんだよ」

 

今まで見たことの無い笑顔で笑う唐巣先生。僕が香港に行っている間に父さんとシルフィーの間で何があったのかは判らないが、並大抵の事は笑って許せる唐巣先生が胃薬を飲むと言う自体にこれから自分も巻き込まれると判った僕は

 

「お願いします」

 

「うん、直ぐに持ってくるよ。ダンボールで3箱買ったから1つあげよう」

 

……ダンボールで3箱?……いったいどれだけの心労を父さんとシルフィーに与えられたのか?と思いながら振り返る

 

「お父さん。紅茶美味しい」

 

「うむ、前よりも数段良くなった」

 

嬉しいと笑う島に居た当時のシルフィーの姿と、紅茶のカップを手にしている父さんの姿……今はまだ平和だが、もしこれで横島さんを見てシルフィーがまた暴走するのでは?と思った瞬間。胃に鈍い痛みが走るのを感じて

 

(学校では大丈夫でしょうか……)

 

今回の香港での一件で横島さんに対して今まで以上に過保護になっている蛍さん達の事を思い出し、僕は鈍い痛みが鋭い痛みに変わっていくのを感じながら、どうか平和に過ごせますようにと心の底から祈るのだった……

 

リポート8 戻って来た日常 その3へ続く

 

 




次回からやっと日常フェイズです、べスパ事、蓮華との横島との出会いとか、学校でのピートとかタイガーのやり取りを書いていきたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

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