GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
その1
リポート9 神の山を捜索せよ その1
ここはどこなんだろう……?判らない判らない判らない……
なにか、そうとてもとても大事な事があったはずなのに……
痛い、身体が痛い……なんでこんなに痛いのか判らない……
お腹が空いた、もう動きたくない。でも動かないと死んでしまう
判らない、判らない、どうしてこんなに苦しいのか、どうしてこんなに焦っているのか、何もかもが判らない
暗い山の中声にならない何かの声が延々と響き続けているのだった……その声は誰にも届く事は無く、延々と深い森の中に響き続けるのだった……
「ふー……ふー……結構きつい運動してるんじゃなあ、横島さんは」
ゴールとなっている広場で蹲り息を整えているタイガーの呟きを聞いて、隣でストレッチをしている雪之丞に
「きついか?これ?」
「いや?普通だろ?」
だよなあ?寧ろ準備運動じゃね?と2人で話をしているとストップウォッチを手にしていた蛍がノートに何かを記録しながら
「タイガーさんはあれじゃないかしら?霊力の循環が上手く出来てないのが原因じゃないかしら?」
まぁでもそれはエミさんの指導の範囲だから私は何も言えないけどと言う蛍。今日は毎朝走りこみとトレーニングをしていると言う話をしたらタイガーがどんな運動をしているのか興味があると言う事で早朝5時に近くの公園で待ち合わせて一緒に走り(本当は蛍と一緒が良かったので嫌だったが、同期のGSと言う事もあり、お土産などもくれたので断るに断れなかった)途中で雪之丞も合流し、結構な大所帯での走りこみとなった
「みーむ!みみーむ!!」
「コン、ココーン!!!」
今日は珍しくタマモもついてきて、チビと追いかけっこをしている。モグラちゃんが居なくて寂しそうなので、励ますために付いて来てくれたんだと思うんだが
「コン」
「みむう!?」
「ココーン」
頑張って逃げているチビに回り込み、尻尾で視界を塞ぎ甘噛みをする。チビが楽しそうだから良いんだが、少し苛めているようにも見えなくも無い……のが正直少し不安なところだ
「うっし、横島やるぞ!」
「ええーやめようぜ?」
拳を掌に打ちつけやる気満々の雪之丞に止めようぜ?と呟く。雪之丞は良く走りこみに参加してくれるが、その代わりに組み手をやろうぜと毎回言ってくる。雪之丞は俺と違い正式に武道を修めているだけあり、俺よりも近接の技術は高い。霊力無しでは分が悪すぎるので断りたいのだが……
「じゃあ、いつも通り時間は3分。使って良い霊力は身体強化のみで良いわね?」
【横島。お前は近接の技能が弱い、これも修行だ】
心眼と蛍に言われては断る事は出来ない。俺は深い溜息を吐きながらベンチの上のリュックからオープンフィンガーグローブを取り出し、雪之丞と対峙するのだった……
向かい合った横島を見ながら軽く右足でステップを踏みながら。小さく舌打ちする
(ちっ……またかよ……)
心眼の補助もない、陰陽術による強化も無い。霊力の篭手による超火力も無いし、眼魂も無い……ベストな状態とは程遠い横島だが、鏡写しの様に同じ構えを取る横島……自身に格闘術の経験が無いから俺の真似をしているのだが、その真似を完全に取り込み自己流に強化していく
(ったく……これだから止められない)
俺だって毎日毎日訓練を積んで強くなっているつもりだ。ママお師匠様にも筋が良いっと言われたのだが……
「うひっ!おっかねえ……」
情けない声を上げながらも俺のリードジャブを的確に弾く横島。距離感を掴む為のジャブなのに、それすらも当らない。技術が無い横島にある物。それは技術のある俺には無い物だった
(化け物め……)
それはその目だ。俺の拳は決して遅くは無い、寧ろプロボクサーと比べても早いと言う自負はある。だが奴は、それを目で見てから打ち落とすと言う化け物じみた事を平気でやっている。それは目の良さも去ることながら、見てから反応できるだけの反射神経を持ち合わせていると言う事だ
「はー、ワッシには全然見えんですのジャー」
【お前はもっと霊力のコントロールを意識しろ。漫然と使うな、己との力として十全にコントロールせよ】
心眼は組み手の間だけだが、タイガーの訓練を見ている。あれだけの体格だと言うのに近接がからっきしって言うのは勿体無い事だな……そんな事を考えながらもずっとジャブを繰り出しているのだが
「よっっと、えっと……こうか!」
「ぬおっ!?」
手の甲で俺のジャブを受け流しながら懐に入り込んで来た横島を引き離す為に、右を打ったがその右を掴れ投げ飛ばされる。決まりが浅かったので片手をついて態勢を立て直す
「なんかちゃうな、こう?いや、こうだったか?」
両手を握り締め、足を動かす横島を見ながら舌打ちする。どうもまた眼魂の中に居ると言う牛若丸か信長に何かを教わっていたのだろう。決まりが浅くて良かったと安堵する、アレは完全に決まっていたらつかまれていた右腕をへし折られていた。
「後1分30秒」
審判の蛍の声を聞いて、このままでは組み手の意味が無い。今までずっとお互いに有効打無しの引き分け。今日こそは有効打を取る
「おっらあ!!」
「とっ!おっおおう!?あ、あぶねえ!?」
連続で放つジャブをパリィやダッキングでかわす横島。完全に逃げに回っているのは判ったが、このまま逃げさせるつもりは無いジャブを放ち、引き戻した瞬間
「シッ!!」
「!!!」
完全に左を戻さず、体重移動と右手を後ろに引く動きを利用しジャブから強引にフックに切り替える。今までのパターンと変わり、当ったと確信したのだが横島はダッキングでそれをかわす
(癪だが、かわされるのは想定の範囲内だ!)
ママお師匠様にも褒められた一撃だが、それと同時に言われていた。横島ならそれを避けると、だから避けられるのは想定の範囲内
「ぶっとべえッ!!」
今度は左腕を引いた勢いと踏み込んだ勢いを利用し、右腕を強引に振り上げる。ダッキングで避けた先、立ち上がるにも、避けるにも間に合わないタイミング。完全に取ったと確信したのだが
(て、手応えが薄い!)
当ったはずなのに拳に返って来る感触が余りに弱い。なんだ!あいつは何をした!?
「おーいちち……舌噛んだ……」
痛いと言っているが、有効打とは言い難い。蛍もそれが判っているから有効打と言わない、完全に当ったはずの一撃をいなされ混乱した数秒の間に
「はい、そこまで!今日も引き分けね」
手を叩きながら言う蛍の言葉に悔しい物を感じながら、横島に詰め寄り
「お前。最後何をした?アッパーは完全に入っていたはずだ」
最後の一撃の手応えの無さ。横島が何かをしたのだと思い、何をしたと尋ねると横島は
「こう両手でそれを受け止めて、顔だけを後ろに逸らした?って感じ」
両手で受け止めて、顔を逸らした!?それをあの一瞬でか!?完全に隙を突いた筈なのに横島の目はそれを完全に捉えていたのだ
「そうか、謎が解けたぜ。次は絶対俺が勝つからな!じゃな!!」
もう組み手はしないぞーっと言う横島の怒鳴り声を聞きながら、俺は白竜寺に戻る為に走りだすのだった……とりあえず今度はもっと不意をつけるコンビネーションか……
「霊力ありにして貰うかぁ?」
いつまでも身体強化だけでは埒が明かない。蛍に相談して、霊波砲くらいはOKの組み手にして貰うか?などと考えながら、横島の不意を突けるコンビネーションを必死に考えるのだった……
横島が学校に行っている時間帯に私は美神さんに呼び出された。何事だろうか?と思いながら事務所に行くと神宮寺がソファーに腰掛け書類に目を通していた
「また厄介ごとですか?」
「ええ、しかも超特級品のね」
神宮寺は基本的に誰とも組まないが、横島が居るから美神さんとは協力体制を取る。それが本当に面白くないのだが、必要な事なので我慢する。横島の信頼を得ていて、しかも神宮寺自身も横島を気に入っている。彼女は非常に危険だ
「蛍。貴女も目を通しなさい、横島では理解できないと思いますが貴女なら判るでしょう?」
差し出された書類を受け取り目をざっと通し、直ぐに理解した。それはとある山周辺の霊力や悪霊の発生のグラフ
「これ……どういうことなんですか?本当に同じ場所なんですか?」
とても同じ場所には思えなかった。霊力も激減し、悪霊も増えている。極上の霊地だった筈の土地が、1晩で並以下の霊地になってしまっている
「琉璃の報告によると、私達が香港に居る間日本に強力な魔族の反応があったそうなのよ。ガープともう1柱がこの山で何かをしたって言う話。そして私達に調査の依頼が出たって訳」
「じゃあ神宮寺は?助っ人ですか?」
「そうなりますわね。魔術的な観点から見れる人間も必要ってことですわ」
確かに魔法使いとして神宮寺は最高峰だ。調査に同行して貰えれば心強い事は間違いない
「周辺の都市伝説として、どうもこの山には強力な山の神が居て守護神として祭られていたみたい。だからこの周辺の工事なども出来ないレベルだった事を考えると、規格外かつ、知られていない神、もしくは神獣が居た山らしいわ」
神か神獣か……どっちにせよ。強力な神が居たから護られていた土地……その神の死もしくは、弱体化により周辺の霊力のバランスが崩れたって事ね
「やはり長丁場になりますわね、少なくとも1週間は見積もるべきですが、宿泊施設などは?」
「一応その周辺にも村があるからそこに拠点となる場所を作っているって聞いてるわ」
拠点……少なくとも霊力の調査が出来る施設なども準備してくれているって事ね。流石に持ち込むのは難しい機材が多いはずだから向こうで用意してくれるのはありがたい
「それと横島君が間違いなく鍵になるわ……調査では恐らく、神獣と推測されているから」
「横島を囮に使うということですか?」
私と神宮寺の視線に気付いたのか美神さんが慌てた様子で手を振りながら
「そんなつもりはないわよ!ただね……横島君の今までの事を考えるとね……」
美神さんの言葉に少し考えてみた。チビ、タマモにモグラちゃん……シズクにノッブ……
「向こうから寄って来そうですわね」
「横島が拾いそう……」
動物に好かれる特性を考えると横島の側に近寄ってくる可能性が高い。いや、寧ろ横島がそこに居れば向こうから飛んで来る可能性が……
「ね?なんかそんな気がしない?」
神だとしても、神獣だとしても人外に好かれる横島の事を考えると、その行方不明の神にしろ神獣にしろ横島が居るだけで解決しそうな気がしてしまうのだった……
「とりあえず仮に神獣を見つけたとしても、他にも調査する事は沢山あるわ。出発する2日までに準備を整えるから蛍ちゃんもくえすもちゃんと準備をしておいて、横島君にはこっちから電話をしておくから」
美神さんの言葉に判りましたと返事を返し、調査のスケジュールや周辺の民謡などからその山に住まう神の特定など、様々な話し合いを行い。厄珍などで霊具を集め、2日後。美神さんの運転する車でその山へと出発するのだった……
足踏みをして苛立ちを隠せないガープ。神獣を捕獲する筈だったのだが、霊力を放出され、ガープもアスラも手痛い反撃を受け逃げ帰ってきてからずっとこの調子だ
「神獣は逃げた訳ではない。また捕らえればいいだろう?」
「違う!そうではない!あいつめ、私に利用される事を恐れ蓄えていた霊力を!神核を捨てた!!既にあの土地にも神獣にも利用価値はないのだ!!」
生きている訳ではないのか?ガープの言っている事を今一理解出来ず首を傾げるとガープは深い溜息を吐きながら
「私にしろ、お前にしろ、存在の基点となる核がある。それがあるからこそ、私はガープであり、お前はアスモデウスなのだ。ところがあの神獣め!その霊格を捨てたのだ!あやつが居たから栄えていた霊脈は機能を失い、あいつ自身も恐らく数千年は力を取り戻すことは無い!それが問題なんだ」
計画が狂った。これだから畜生は計算出来ないんだ!とかぶつぶつ呟いているガープ。これは暫くは不機嫌なままか?と溜息を吐いていると
「ガープ。その失態は我の物だ。ゆえに、詫びの品を持ってきた」
アスラがその巨体を小さくして部屋に入ってくるなり、机の上に何かの液体が入った小瓶を置く
「まさか……それは……!?」
「何なのだ?それは?」
ガープはそれが何か知っていたようだが、我は知らぬ。それが何なのかと尋ねるとアスラはニヤリと笑いながら
「不死の霊薬。アムリタの上澄だ。本来の不死を与える霊薬としての効果は残念ながら無いが……これ自身膨大な霊力を蓄えている。これであの霊脈の代わりになるだろうか?」
こんな小瓶の液体で霊脈の変わりに?幾らなんでもそれは無いだろう。見てみろガープだって肩を震わせて……
「素晴らしい!素晴らしいぞ!アスラ!!アムリタ……まさかそれを手にすることが出来るとは……霊脈の変わりになるところか、あの霊脈以上だ!!!」
今まで見たことが無いくらいに喜んでいるガープ。機嫌が治った用で何よりだが、本当にこれで霊脈の変わりになるのだろうか?
「これで実験が再開出来る。成功するとは言い切れないが、やるだけの価値はある」
アムリタの小瓶を手に立ち上がるガープに何をするつもりなんだ?と尋ねるとガープはにやりと笑いながら
「英霊召喚さ、前々から思っていたが、この軍団には脳筋しか居ない!!!私が不在と言うだけで致命的なことになりかねない!だから軍師が出来る英霊を呼び出すのだ」
……脳筋と言われてアスラと顔を見合わせるが、確かにその通りだとお互いに思い、上機嫌で出て行くガープを見送りながら
「お前知り合いに頭脳派とか居ないか?」
「居たら誘っている」
だよな……とお互いに深刻な表情で頷き合い。これからもし増える人材が居るとするのならば、ガープのフォローを出来る頭脳派が来てくれれば良いのだがとアスラと揃って溜息を吐くのだった……
リポート9 神の山を捜索せよ その2へ続く
今回は導入会なので少し短めとなりました。横島の脅威を身を持ってする雪之丞にくえすを交えた調査班。そして英霊召喚を試みるガープ。なおアスモデウス陣営は頭脳派殆ど居ません、基本脳筋の集まりですのであしからず。アスモデウスは脳筋と言うか戦に関わる頭脳は優秀ですが、それ以外は残念使用と言う感じでご理解ください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
-
サイドまたは視点は必要
-
今のままで良い