GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート13 常世のだいそうじょう その3
横島が死んだ。動いていない心臓、温もりの無い身体がその現実を嫌と言うほど私に突きつけてくる。私達が無事でどうして横島だけがと言う思いが脳裏を埋め尽くすと同時にだいそうじょうへの抑えきれない怒りが込み上げて来る。後で思えばこの時の私は正気を失っていたのだと思う、横島が死んだ。それだけに完全に捕らわれてしまった……そしてそれは、普段押さえ込んでいなくてはいけない魔力を抑えると言う事さえも完全に私から忘れさせるには十分すぎる物だった……
だいそうじょうから逃げることが出来た……私はそう思っていた。だけど実際は横島君だけがだいそうじょうの攻撃によって命を落としていた……
(大丈夫……大丈夫なはず……だいそうじょうさえ倒す事が出来れば……)
だいそうじょうを倒せば肉体から魂を切り離された人間も生き返るはず……だから大丈夫。大丈夫なはずだ……自分に言い聞かせるように何度も何度も繰り返し心の中で呟く
「美神さん。もしかして横島君が……?」
動かない横島君を見て琉璃がそう尋ねてくる。私が返事を返そうとした時……それは起きた。いや、良くここまで爆発しなかったと言うべきかも知れない
【あ……あ……アアアアアアアアアアーーーーーーッ!!!!】
「タマモ!?」
暗く澱んだ霊力を発しながら叫びを上げたタマモ。慌ててその名を呼ぶが反応が無い。いや、あるはずが無いのだ。横島君が死んだ、その事を深く理解しているのは加護で魂同士が繋がって……繋がって?
「まさか!?」
タマモでさえこの状態だ、となれば間違いなくシズクも怒りに囚われて暴走する!
「……許さない、許さない、ゆるさないゆるさないゆるさない……殺す、コロス、コロスコロスコロス……殺してやるッ!!!」
シズクもまた暗い神通力を放ちながらその瞳を真紅に輝かせる。完全に正気を失っているのが一目で判る
「み、美神さん!?これ不味いんじゃないですか!?」
「ま、不味いに決まってるでしょう!!!」
九尾の狐のタマモと水神のシズクが怒りのまま霊力を発すればどうなるか?そんなのは考えるまでも無い、属性が反転する。神族から魔族へと、善から悪へと反転する。そうなればだいそうじょうを殺すまで2人が正気に戻る事はありえない
「ちょっと!2人とも!落ち着きなさい!お願いだから!!」
おキヌちゃんとノッブはその2人の圧倒的な霊力の前に存在を維持出来ないのか、ノイズ交じりの姿になっている。何か言っているのだが、声も何も聞こえない、下手をすればこのまま消滅しかねない勢いだ
「くえす!琉璃!聖奈!蛍ちゃん手伝って!このままじゃ大変な事になる!」
私1人では抑えきれない、そう判断しみんなに手伝ってくれと叫ぶが
「今はそれ所ではありませんわ!芦蛍は……先祖がえりだったんですの!?」
「え!?」
くえすの悲鳴にも似た声に振り返ると、蛍ちゃんからもどす黒い霊力が発せられていた。それには魔力が混じっていて、蛍ちゃんが先祖がえりだと言うのをこれでもかと示していた
「くっ……これは私でも抑えきれない……!?」
くえすと聖奈の2人掛りでも抑えきれないほどの圧倒的な魔力の混じった霊力……シズクとタマモの暴走だけでも厄介なのに、蛍ちゃんまでも……このままではGS協会が崩壊するだけではなく、だいそうじょう以外にも恐ろしい脅威が生まれる事になる……
「琉璃!精霊石!精霊石を持ってきて!!」
言葉では抑える事ができない。だから精霊石で封印するしかない、そう思って琉璃に精霊石をくれと叫んだ瞬間。信じられない声が私の耳に届いた。それはもう聞こえる筈の無い声だったから……
「う……ううう……」
荒れ狂う霊力と魔力の中でもその小さな声は確かに聞こえた。まさか……そんな……!?
「横島君!?」
思わずその名前を呼ぶと横島君がその身体を僅かに動かす。もしかして息を吹き返した!?
「蛍ちゃん!シズク!タマモ!横島君が息を吹き返しかけてるから止めなさい!!!」
聞こえるか五分だと思っただが、私の声はしっかりと届いたようで澱んだ霊力を放っていた蛍ちゃん達の身体から霊力の放出がぴたりと止
り横島君に駆け寄る
「……みゃ、脈が……よ、弱いけど……ある……」
「心臓も……動いてる……こ、呼吸も弱いけど……ある……」
「……横島。戻って来い……死ぬな……戻って来い」
「本当ですわね……脈が戻って……心臓が動き始めてる……」
「ルーンで心臓の動きを活性化させます、少し離れてください」
横島君が生きようとしている。それが暴走していた蛍ちゃん達の正気を呼び戻してくれた……聖奈が横島君の応急処置をするのを見て、私は思わず私は安堵の溜息を吐きながらソファーに腰掛ける
「えっとどういう状況なんですか?」
「ちょっと待って、私も一杯一杯だから……横島君が無事に息を吹きかえすまで待って……」
いきなり琉璃の所に転移してきて、これだけの大騒動を起こしておいて待ってくれと言うのは都合の良すぎる話だが、私も混乱しているので整理しなければとても話が出来る状況じゃない。琉璃も私に余裕が無いのが判ったのか、判りましたと頷いてくれた事にありがとうと呟き、横島君に頑張って、戻ってきてと声を掛け続けている蛍ちゃん達と横島君に視線を向け
(良かった……本当に良かった……)
まだ完全に息を吹き返したわけじゃないが、シズクや聖奈の治療で顔に徐々に赤みが差している。この様子なら大丈夫だろう……私は横島君がまだ死んでない事に心の底から安堵するのだった……
なんだろうか……ここは……なにも見えない、何も聞こえない、寒いのか、暖かいのか……何もかも判らないが……
(気持ちいい……)
何かに包み込まれているような、不思議な安心感がある。適度な振動があるせいか、余計に眠くなってしまう……このまま目を閉じて眠ってしまったらきっと気持ちいいだろうな……そう思って目を閉じようとすると、さっきまで何も聞こえなかったのに俺の近くに誰かが立ったような音が聞こえた
「そう……もう死んでしまったのね」
死んだ?俺が……?いや、でもそれでも良いか……ぼーっとしていて、何も考えることが出来ない
「生きている人間は気持ち悪いけれど、死んでいるのなら……まぁいいわね」
誰かが俺の頬に手を当てる感触がする。冷たいのか、暖かいのか判らないが気持ち良い……
「?まだ誰かが魂を持って行こうとしてるわね。まぁ……今回は特別に助けてあげる」
シャッと言う鋭い風を切る音が聞こえたと思ったら、身体を包み込んでいた温かい感覚が消え去り、うっすらとだが手足の感覚ガ戻ってきて、ぼんやりとしていた思考が纏まってくる
「多分、あの女帝の配下の仕業だと思うけど……私はまだ貴方が何をするのか、何を成し遂げるのか、それを見ていないわ。このまま連れて行ってしまうには、私は貴方を知らない。だから今回は助けてあげるのだわ」
ぼんやりとしていた意識が徐々にだが、はっきりしてくる……顔を上げるとフードを被った誰かの姿が見える
「もう何の権限も無い女神だけど、与えられた恩は返します」
恩?……女神?……何の事だか、判らないし、俺に思い当たる人物はいない……
「だ……れ……?」
「……驚いたのだわ……喋れるなんて……」
俺の言葉に本気で驚いた反応を見せるフードの人物が小さく笑う声が聞こえた
「私の事は蘇れば忘れるでしょう。そういう物ですから、正し無償で助けるのはこの1回だけ……それも特別にですからね。それを努々忘れないように、人間の命は1度きり、2度目は無いのですから」
そう言って俺から背を向ける歩いて行く姿に思わず手を伸ばしながら起き上がる
「待ってく……え」
その何者かを呼び止めようと起き上がり、呼び止めようと両手を伸ばすが、伸ばした手はその謎の人物には届かず、柔らかい何かを鷲掴みにしていて
「うえ?」
ぼんやりとした思考でも蛍と神宮寺さんの胸を鷲掴みにしている事に気付き、顔から血の気が引いたが
「「「「横島ぁッ!!!!」」」」
「うああああ!?な、なんだああ!?」
蛍や神宮寺さんだけではなく、シズクやタマモ、それにおキヌちゃんやノッブちゃんにも突撃され何が何だか判らない内に俺はもう1度意識を失うのだった……
「え?心臓が止ってた?」
意識を取り戻したと同時に胸を鷲掴みにしたことを謝ったのだが、そんなことはどうでも良いと言われ良かったと号泣する蛍達に訳が判らず困惑していると美神さんが教えてくれた
「ついでに言うと呼吸も止ってたわ。完全に死んでたのよ」
……まじかよ……思わず心臓に手を当てて、心臓が動いているのを確認して安堵の溜息を吐く
「考えられるのは……転移する瞬間だったので、魂を完全に切り取られずにすんだのでしょうね、それにしても……よく蘇生してくれました。貴方の生きるという意思があったから私のルーン魔術も効果を発揮してくれたのですよ」
聖奈さんが柔らかく微笑みながらも、良く現世に戻ってくれましたと言う。俺にはまるで実感が無いのだが、ここまで言われると本当に死んでいたのだと嫌でも理解した。蛍に心配掛けてごめんと謝ると蛍は涙をハンカチで拭いながら
「謝らなくて良い……横島は何も悪くないもの……でも……良かった……横島が死んじゃった……って思って……ぐすっ……良かった……本当に良かった……」
「……本当に良かった……お前はまだ死ぬには早い」
涙を拭っているシズクと蛍。タマモは無言で背中に抱きつき、俺の背中に顔を埋めている……本当に死に掛けていたのか……俺……
【良かったです、本当に良かったです。まだ横島さんには死んで欲しくないですから】
【うむ、死んでワシらの仲間になるには早すぎるからな、人生50年も生きてない内に死ぬでないぞ】
おキヌちゃんとノッブちゃんにも死ぬには早いと怒られ、本当に危ない所だったんだと判り、背中に冷たい汗が流れるのが判る
「それで横島。待ってくれと言ってましたが、何かを見たのですか?」
「え、あ……はい。ぼんやりとですけど……」
胸を掴んでしまった事もあり、気恥ずかしくて神宮寺さんの顔を見れないまま、そうですと頷きながら
「心眼?聞こえるか?」
心眼に聞こえるか?と声を掛けるが反応が無いことに若干の不安を抱く、もしかして心眼が俺の身代わりになったとか無いよな……そんな最悪の予想が脳裏を過ぎる
「横島君。三途の川とか見たかしら?」
「いえ……なんか寒いんだが、暖かいんだがよく判らない場所でしたよ?」
琉璃さんの言葉にそう返事を返すと、美神さんと神宮寺さんが思案顔になる。俺が困惑していると美神さんがこれだけ確認させてと俺の方を見る。その目元は赤く、美神さんも泣いていた事が判り。こんなにみんなを悲しませてしまったという事を改めて実感した
「三途の川もおばあさんも見てないのね?」
「はい。見てないですね……あ、そうだ……もう権限も無い女神とか……言ってたような……」
もうぼんやりとしか思い出せないので、絶対とはいえないですけどと言うと美神さんは真剣な表情で
「ありがとう、もう良いわ。琉璃、信用出来る職員で横島君とシズクとタマモを家まで送ってくれる?」
「いや、大丈夫で……あ、あれ……」
送って貰わなくても帰れると言おうと思い立ち上がろうとすると、足に力が入らずその場に崩れ落ちるかけると蛍が危ないと叫んで俺の身体を抱き止める
「横島。無理をしたら駄目よ、霊体と魂が無理やり引き離されていたから手足とかに違和感があるはず。ここは大人しくGS協会の人に家まで送ってもらって?」
心配そうに俺を見つめる蛍。それに神宮寺さんやシズクの視線……それに今ので判ったが、多分家まで歩くことが出来ないと言うのも判った
「ご迷惑を掛けますけど、よろしくお願いします」
迷惑なんて気にしなくて良いわよ?と笑う琉璃さんにありがとうございますと頭を下げ、俺はシズクとタマモに連れられGS協会を後にするのだった……
横島君とシズクとタマモが会長室を出て、念の為の護衛として憑いていくと言うノッブとこの場所にいても役に立たないから横島君の家に行きますと言うおキヌさんを見送り、さっきの出来事に関してと美神さん達が遭遇したと言う大量死を引き起こしている犯人についての話し合いを始める
「美神さん、さっきの話どう思いますか?」
「……多分だけど、神性を持っている相手が干渉したのは判るわ」
横島君の身体には僅かだが、シズクとは異なる神性の残滓が合った。本人は夢だと思っているようだが、死んだ時に何らかの神に遭遇したのは間違いない
「ダツエバじゃない存在って何かいましたっけ?」
三途の川なら特定も楽だ。だが横島君は三途の川を見ていないと証言している、それが特定を難しくしているだろう。
「横島を救った神よりも今は考える事がありますわ。蛍、貴女何か隠していますね?良い機会ですから教えなさい」
あえて私と美神さんが話を逸らしていたが、くえすが真剣な表情でそう切り出す。蛍ちゃんは少し考えてから
「その……私は……ちょっと先祖がえりみたいらしくて……ドクターカオスの作ってくれた、この魔力を抑えるブレスレットで押さえ込んでいるんですけど……」
蛍ちゃんが右手を差し出すと、確かに手首に精霊石が加工されたブレスレットが嵌められていた
「先祖がえりはGS免許にはマイナスにもなるから隠してたのね?」
「ええ……まぁそうなりますね」
先祖がえりは強い霊力や特殊な技能を持つがその反面、人間ではないという事でGSや霊能関係に関する仕事に就職しにくいというデメリットもある。それを考えて隠したのは当然だと思うけど
「今度正式に書類を作り直すからね。もし他に隠してる能力があれば今のうちに申告してくれる?」
「霊力と魔力を使った幻術がその……使えます」
幻術系の能力者か……なるほどね、美神さんと同じで道具使いと言う戦闘スタイルを選んだのは自分の能力をカモフラージュするためって事ね。と言うか美神さんが尋ねないという事は、美神さんは蛍ちゃんが幻術使いって知ってたってことよね。思わずジト目で見つめると美神さんは誤魔化すように笑いながら
「GS免許の剥奪はしない方向でお願いするわよ?隠していたのは悪いけど、当然の事だし」
「大丈夫ですよ。ちゃんと考慮します」
むしろそんな事で優秀なGSな蛍ちゃんのGS免許を剥奪するほうがデメリットが大きい。幻術系能力者と言う事で処理してしまえば良いからね
「それで聖奈さん、だいそうじょうでしたっけ?戦った感想はどうでしたか?」
僧の最高位である大僧正を名乗る魔人。その力はどんなものでしたか?と尋ねると聖奈さんは険しい顔つきで
「私は全力で、殺す気で攻撃しました。中級の神魔なら一撃で滅する事が出来る私の最大の力で攻撃しましたが、恐らくほぼ無傷でしょうとは言え、追いかけて来ない事を考えると防ぐのに力を使い果たし、最後の力で使った術が運悪く横島に当たったと考えることが出来ると思います」
神魔の中でも上位存在の聖奈さんの攻撃を無傷でかわす。それを聞いただけでどれだけ魔人というのが規格外なのか嫌でも思い知らされる。しかし最後の力を振り絞った攻撃が命中するなんて横島君はもしかすると運が悪いのかしら?
「その前に琉璃。15時ごろ、街中に神通力でも、魔力でもいいわ。その反応は無かった?」
「いえ。何も感知されてません」
秘密と言われているので口にしてはいないが、西条さんのリークで今GS協会は厳重警戒態勢にある。それだから余計に、街中に魔人が現れたと言うのが理解できないのだ
「それは私の憶測ですが……魔人の神通力や魔力は感知しにくいのではないでしょうか?」
感知しにくい神通力と魔力?その言葉に私達が首を傾げると聖奈さんは合流する前のことを話してくれた
「私は横島の護衛をする為に横島の元に向かっていました。だから感知することが出来たと思うのですが、魔人の力が探知できたのは数秒と言う短い時間だったのです」
数秒だったので完全に探知する事は出来ず、近くまで来た所で迷っていたのをおキヌさんと合流出来たので運よくぎりぎりで間に合いましたがと言う聖奈さん。規格外の力を持っていて、探知が出来ない。オカルトGメンが協力するつもりが無いから探知結果を伝えないと思っていたのだが、どうもそれは違うらしい
「美神さん。確かマタドールが言ってましたよね?魔人とは後天的に神魔の力を持った者が転生した存在だって」
蛍ちゃんの言葉に私達の脳裏に最悪の予想が過ぎる。まさか魔人は人間としていれば神魔の魔力を発しないって事?もしそうならばレーダーとかで探知が出来ない?強大な力を持っていると判っているのに対策を練る事が出来ないという事?
「その可能性は極めて高いですわね。幸いな事に、だいそうじょうが変身していた人間の姿はしっかりと私達が見ています。それを手掛かりに、人海戦術などで場所を特定。警備体制を作るとしても……」
「倒す手段が無い」
見つけることが出来たとしてもだいそうじょうを倒す手段が無い。横島君の眼魂ならばダメージを与えることが出来るかもしれないが、無理やり肉体から霊体が引き離された事による体調不良が容易に想像できる以上横島君は出来ればだいそうじょうとの戦いに参加させたくは無い
「くえすから見て、だいそうじょうの無敵の秘密って何か予想がつく?」
「……難しい所ですわね。確かに魔法には相手からの干渉を完全に防ぐものがありますが、あれは高度な術式と魔法陣が必要で実用的ではないですし……私の予想ですが魔法のほうで探すのではなく、密教のほうで探るべきではないでしょうか?」
だいそうじょうと名乗り、法衣と袈裟を身に纏う魔人。その姿から密教の方に力の秘密があるのかもしれない
「恐らくだいそうじょうは今日は動かないと推測します。明日早朝から白竜寺に向かってください、三蔵法師様に何か聞いてみると攻略法を見つけることが出来るかもしれません」
今の段階ではだいそうじょうを倒す手段が無い。だいそうじょうの正体を探り、あの無敵の秘密を探る。一見遠まわしに思えるが、それが最大の近道になるのかもしれないのだから……
「判ったわ。今日の所は私達も身体を休める……あ、後これ……だいそうじょうの持ち物だと思われる何か、一応何かの手掛かりになるかも」
美神さんから差し出された瓶に入れられた紅い塊を受け取ると美神さん達は疲れ切った表情で会長室を出て行った。会長室に1人残された私は目の前の瓶を見て
「なんか恐ろしい気配を感じるわね」
魔力とか神通力と言う話ではない、これはここにあるだけで不吉な何かを引き寄せる……そんな気がしてならず、私は机の引き出しから封印札と精霊石を取り出してその瓶を更に厳重に封印し、これを明日にでもドクターカオスに渡して分析して貰う事にし、だいそうじょうが今日は動かない事を祈りながら、エミさんや唐巣神父に渡す為の美神さん達とだいそうじょうの交戦記録の資料を纏め始めるのだった……
GS協会を後にした美神達はその後、琉璃の好意で呼ばれていたタクシーでそれぞれの事務所や家へと帰る事になった。蛍は帰宅後ベッドに倒れこんで眠りたいのを我慢して優太郎の部屋に向かっていた
「……権限の無い女神……そういったのかい?」
「うん、横島がそう言ってた」
優太郎は蛍達がだいそうじょうと戦っている事はやはり知らず、魔人が神魔の探索結界をすり抜ける能力を持っていることが判明したのだが、優太郎が顔色を変えたのはだいそうじょうと戦っていたという事ではなく、臨死体験から生還した横島の言葉を蛍から聞いたときだった……
「お父さんは何か心当たりがあるの?」
その反応に何か知っているのでは?と感じた蛍がそう尋ねると優太郎は信じられないという顔をして
「心当たりはある。だがそれは決してありえない存在のはずだ……これに関しては私が直に動いて調べる。蛍も今日はもう休みなさい」
精神的、肉体的に疲れているはずだと言われた蛍はこれ以上尋ねても教えてくれないと言うことが判り
「判った……今日はもう寝るわ……あげはの事お願いね……」
「ああ、心配ないよ。早く休みなさい」
ふらふらと出て行く蛍を見送った優太郎は真剣な表情で、暗闇の中浮かび上がる満月を見つめ
「まさかガープが呼び出したのか……可能性は……ゼロじゃないが……」
先日感じた懐かしい古い神通力。そして横島の証言の権限を失った女神……もしも、もしも自分の予想が当たっているのなら、もしもこのガープが霊脈がある山を支配しようとした目的が神霊召喚にあるのならば……
「見つけることが出来るのは私しかいない」
メドーサや、ブリュンヒルデでは見つけることは出来ない。索敵に特化したヒャクメだって見つけることは出来ないだろう、見つけることが出来るのは優太郎以外の神魔では不可能だった。数多いる神魔の中でも優太郎にのみその女神を見つけることが出来る、とある神霊から分かれた霊基が己を作る最も根底に存在しているから、そしてその神霊と今いるかもしれない女神は姉妹だから
「女神エレシュキガル……まさか……本当に……?」
メソポタミア神話に登場する冥界の女神。そして優太郎……いや、アシュタロスを形作る霊基である女神イシュタルの姉妹。絶対なる死の支配者であるエレシュキガル……それが今日本に存在するかもしれない、その可能性が横島の死によって僅かにだが、証明されつつあるのだった……
「うーん……やっぱり感じる、微弱だけど同郷の気配……でもこれは……」
そしてアシュタロスがエレシュキガルの存在を感じているのと同じく、エレシュキガルもまたアシュタロスの存在を感じていた
「イシュタルって感じじゃないわね……本当。今の神魔ってどうなってるのだわ?」
呼び出されたエレシュキガルには現在の神魔の知識が無く、自分と同類の気配を感じるが、それに妙な混ざり物があるような……ノイズのような何かが混じった不明瞭な何かに妨げられ、その存在を感知することは出来なかった
「まぁ良いのだわ。私の冥界が無いのは残念だけれど、こうして日の当たる世界を見ることが出来る。それも悪いものではないし……ね」
そう笑ったエレシュキガルは真紅の瞳で東京を見つめ、そしてそのまま闇の中に溶ける様に消えていくのだった……
アシュタロスとエレシュキガルが出会う日は近い……
リポート13 常世のだいそうじょう その4へ続く
今回はあんまり話が動きませんでしたね、次回は色々と話を動かして行こうと思います。そしてエレシュキガルの登場ですが、FGOの鯖については基本的に私が所持している鯖は出現率UPとなっておりますのであしからず、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い