GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回はだいそうじょうへの対策の話を書いて行こうと思います。後は横島君の後遺症についても書いて行こうと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします



その4

 

リポート13 常世のだいそうじょう その4

 

琉璃さんの好意で用意して貰った車で家に戻って来たのだが、そこでまた1つ大きな問題が発生した。それはシズクとタマモ、それにおキヌちゃんとノッブちゃんの力を借りなくては、俺は車から降りる事が出来なかったのだ

 

「な、なんだ……これ」

 

自分の意思を関係無しに痙攣する手足に自分が初めて重症だったと言うことを知った

 

「……無理をするなよ?数日は動くのも大変なはずだ」

 

「すまん」

 

まさかここまではとは思っても見なかった。シズクとタマモに肩を借りて家に入ると流石に時間も時間なので、昼寝から起きたチビとうりぼーがフローリングを走って来たのだが……今の調子では受け止める事が出来ないと思い思わず引き攣った顔をした瞬間

 

「みむうううう!!!」

 

「ぷぎゅ?」

 

飛びかかろうとした瞬間チビが踏み止まり、自分の横を駆け抜けていこうとしたうりぼーの尻尾を掴んで静止する

 

【流石チビじゃな、横島の体調不良を見抜いたか】

 

「みむう!」

 

マジで?チビ俺の体調不良に気付いて止ったのか?チビを見つめると真ん丸の瞳が俺を見つめ返してくる。その視線からは俺を心配しているのがよく判った

 

「チビの知性は相当な物だからね、気配とかで感じ取ったんだわ」

 

それよりも早く、身体を休ませる事に集中するべきだわと言うタマモに連れられ、俺の部屋ではなくリビングに連れて行かれる。

 

「えっと俺自分の部屋で良いけど?」

 

【駄目ですよ?横島さん。何があるか判らないですし、心眼もまだ返事をしてくれないでしょ?何かあったら直ぐ判る場所の方が良いですよ】

 

自分の部屋で眠ろうと思ったのだが、おキヌちゃんに制止され、シズクが運んでくれた来客用の布団に横になる

 

「みむぅ……?」

 

「ぴぎ?」

 

大丈夫?大丈夫?と言わんばかりに俺の回りを動くチビとうりぼーに大丈夫だよと笑うが、直ぐにノッブちゃんに頭を叩かれる

 

【大丈夫な訳あるか。かなりの重症なんじゃから大人しくしておれ】

 

その強い口調と眼差しに何も言う事が出来ず、はいっと俺は弱弱しく返事を返し

 

【のーぶー?】

 

チビノブが運んできた雑炊をゆっくりと口に運び。食べ終わると同時に今日はもう寝ろと言われ、眠くないのにと思いながら布団に寝転がる

 

「いや、そんなに見られると寝づらいから」

 

【でも何があるか判りませんから】

 

いや、ここまで来て心配することなんてないと思うんだけどなと思っていると、シズクも同意見なのか俺を見つめているおキヌちゃんの頭を叩いて

 

「……馬鹿は連れて行く。チビとうりぼーとタマモは置いていくから、ゆっくり休め」

 

【うむ。そうじゃぞ、横島。今日はワシもシズクの部屋で寝る、ゆっくりと休むのじゃぞ】

 

【ひーん……横島さーん……】

 

涙を流しながらシズクとノッブちゃんに引き摺られて行くおキヌちゃんを見て、溜息を吐きながら横になる。すると眠くないと思っていたのだが、目を閉じると同時に俺の意識はぷつりと途絶えそのまま深い眠りへと落ちていくのだった……

 

なおおキヌが馬鹿をやり、横島をリビングに残す理由を作り。シズクとノッブが部屋を出たのは、横島を殺しただいそうじょうに対する激しい怒りと憎悪に満ちた表情を見せまいとするシズク達の配慮であり。そして鬼神のような威圧感は横島だけを避けて発せられており、横島の家の前を通った近所の住人が慌てて歩き去ると言う異様な気配を放っていた。3人がどんな顔をしていたかは……3人以外知る者はおらず、横島も朝まで目覚める事が無かったので誰も知らないままとなり、お互いにその時の事を口にしないのだった……

 

 

 

深夜、ブリュンヒルデの攻撃によってクレーターが出来た広場の中心の瓦礫が音を立てて崩れ落ち、その隙間から生気の無い細い腕が現れる

 

「やれやれ、危ないところじゃった……」

 

それは胴体に風穴の開いただいそうじょうの右腕だった。拙僧は瓦礫から這い出しながら風穴の開いている己の身体を見て

 

「修行が足りぬな……カカカカ」

 

神魔と戦っている時もこれほどまでのダメージを受ける事は無かった。救済と言う使命を果たす為に生き長らえて来たが、いやはや、1000年所ではまだ修行が足りぬらしい

 

「さてさてどうしたものか……」

 

身体が修復するまでの間。手にした数珠を見つめる、これには拙僧が救った人間の魂が封じられている。だが転移魔法で逃げる寸前だったバンダナの小童の魂が無い

 

「おかしいな」

 

確かに魂の緒を切った手応えはあった。だが魂は手元に無い……拙僧が思うよりも深くダメージを受けていたのか、それとも転移が拙僧の術を邪魔したのか……少しばかり気になるな

 

「ふむ。まぁ良かろう」

 

確実に成功する術ではない。姫様に試練を与えよと言う事で試しただけ、術の決まりが浅かったのか、それとも何らかの加護か……どちらにせよ決まりが薄いと言うのならば

 

「力づくじゃな」

 

姫様に捧げなければならぬ存在だ。拙僧の独断を許して貰っている以上、なんらかの土産が無ければ4騎士殿に何を言われるか判らぬわ

 

「未熟な同胞……か。さてさて、どうなる事やら……」

 

魔人は生まれたときに既に完成している。未熟な同胞と言うのは初めてやも知れぬ……白騎士殿の話では珍しい能力を持っていると聞く、今度合間見えるときはその能力とやらを見ることが出来ればいいのだが……

 

「なんにせよ、今は休むとするか」

 

身体の修復は済んだが、神通力と魔力を相当消耗している。このまま戦えば敗れるのは自明の理、なればこそ身体を休めるとしよう……

 

「すこし気がかりな事もあるからな……ゆっくりと休むとしよう」

 

この街には色々な神性が集まっている……下手に動けばそれらが出張ってくる可能性もあるが、それもまた良し。この身は魔人なればこの身に敗北などありえないのだから……

 

 

 

やはりだいそうじょうは大きなダメージを受けていたのか、昨晩は深夜の大量死の報告は一切無かった。だがこれに安心する事など出来る訳も無く、だいそうじょうへの対策を確かな物とする為に早朝から私はくえすと共に白竜寺を訪れていた。蛍ちゃんを呼ばなかったのは、横島君の様子を見てきて貰う為だ。今回は横島君が一番の被害者となっている。今まで以上に警戒し、護りを強固にする必要がある

 

「神代会長から話は聞いています。どうぞ、お師匠様が待っています」

 

山の頂上と言う事もあり、朝靄に満ちた境内の中。掃除をしていた少年が私とくえすを見て頭を下げ、境内の中を案内してくれる

 

「しっかりと行き届いていますね」

 

「そうね。しっかりと白竜寺は再建されてるみたいね」

 

雪之丞も仮GS免許を交付されているみたいだし、まだまだこれからだけど、英霊である三蔵法師がいるのだから栄えていくだろうし、弟子も増えるだろう。その中で味方が増えるのは良い事だと思いながら、案内された部屋に足を踏み入れる

 

「マルタ……貴女も来てたの」

 

三蔵法師ともうひとり英霊の姿があった、六道女学院で教鞭を振るうマルタだ。だがジャージ姿ではなく、白を貴重にした法衣を纏っており、これが英霊としてのマルタの姿だと理解する

 

「英霊マルタですか……竜を鎮めた聖女……ですね」

 

魔女であるくえすはマルタを怪訝そうな顔で見つめているが、マルタは人の良い笑みを浮かべながら

 

「今はそういうのは無しで行きましょう。魔人をどうするか?そこが重要でしょう?」

 

異教徒とか、魔女とか聖女とかは今は関係ないわとマルタは笑う。サバサバした性格なのは知っていたが目的の為には相反する相手とだって手を組む。この柔軟性に少し驚きながらも頼もしいと思い用意された座布団に座る

 

「早朝から申し訳ないですが、早急に対策を練りたいので伺わせて頂きました」

 

「話は聞いてるわ。其処まで硬くならなくていいから、私もマルタも天界から横島君の事は気に掛けるように言われてたけど、今回は完全に出遅れたわ。まさか横島君が1度殺されてしまうなんて……これについてはこちら側の不手際でした。申し訳ありませんでした」

 

お互いに謝り、そこからだいそうじょうに対しての話し合いが始まった

 

「攻撃が効かないかぁ……多分だけど、特殊な瞑想状態で外界からの干渉を遮断していると思うわ。そもそも即身仏を行った高僧でしょ?功徳は足りているんだと思うんだけど……」

 

だいそうじょうと言う名乗りは伊達でもなんでもなく、そのまま大僧正と言う密教の最高峰の存在だったらしい、現に各地の寺の文献を調べたらだいそうじょうと同じ袈裟と法衣を来た老僧が即身仏を行ったと言う記録が合ったらしい

 

「でもそれだけの高僧が何で魔人なんて物になるのよ?」

 

その記録の人物とは別人じゃない?と私が言うとマルタは確実に同一人物よと断言し、そしてその上で魔人になった理由についての意見を教えてくれた

 

「即身仏が何かは判らないけど、多分殉教者と同じね。神の教えの為に命を捨てる、それは私の信じるキリスト教にも良くある話だわ。そしてその上で言わせて貰うけど、多分その人は見てしまったと思うの、そしてそれを見て狂ってしまった」

 

見てしまった?私とくえすが首を傾げていると三蔵法師がマルタの話を引き継ぐ

 

「私自身何度も死んで、何度も転生して、やっと天竺に辿りついたわ。その過程で私も見たんだけど……死んだ魂や、焼かれた村に飢饉で死んでいく子供達……そう言った者を何度も見たわ。そして気高い理想を持つからこそ、その現実を知った時その魂は容易く闇に落ちる」

 

強い精神力を持たなければ即身仏を行ったとしても失敗すると言う事なのだろうか?だがもしそうだとしたらなんと皮肉な話だろうか

 

「ではだいそうじょうは苦しむ民の姿を見て、苦しむくらいならば安楽死と考え、人間の魂を刈り取っていると?」

 

「多分だけどね、生きていても苦しいのならば死後の世界で救済を、かなり偏った考えだけど、救済したいという思いはそのままだと思うわ」

 

ただその方法が致命的に間違っているけどねと三蔵法師とマルタは沈鬱そうな顔で告げた。救済を願って、破壊を行っている、なんと皮肉な話だろうか……もしかすると他の魔人もそういう経歴があるのかもしれないと思うと少し複雑な気分になった

 

「たとえ生前がどうであれ、今は敵として立ち塞がっている。私にはだいそうじょうの経歴なんて何の興味もありません、打開策があるのか。どうなのか?そこだけですわ、何も無いのなら私はここにいる意味が無いと判断します」

 

横島君を殺された事に強い怒りを抱いているくえすがだいそうじょうの経歴なんて関係ないと断言し、対策はあるのか?と尋ねる。かなりきつい言い方だが私も同じ意見だ、だいそうじょうの経歴には同情するし、その願いが間違っていないと言うのも判るが

 

「それでも救済を謡い人を殺すのは間違ってるわ。何か対策があるのなら教えて頂戴」

 

そうでないのなら帰ると言うとマルタは推測だけどと呟いてから

 

「高密度の霊子で身体を構築していると思うわ、だから放出する魔法や魔術、それに霊波砲とかの効果は多分望めない」

 

自分の体の構築を即座に変換して攻撃に対応するから、遠距離攻撃は目晦まし程度の効果しないと断言したマルタは拳を握り

 

「霊力を集束した拳や武器で攻撃するしかないわ。とは言え、これも劇的な効果があるとは言えない。何度も何度も攻撃を繰り返して、だいそうじょうの霊子の結束を破壊する事で、やっと攻撃が有効になると思う」

 

「つまり武器を使った攻撃をするしかないと?あれだけの波状攻撃と回避能力を持つだいそうじょうに対して?」

 

くえすの問いかけにマルタは頷く、昨日対峙したがだいそうじょうの回避能力は驚異的なレベルだった。そんな相手に対して接近戦を挑むなんて正気とは思えない、それこそ事前に準備をして結界などで向こうの機動力を落とさない事には接近戦に持ち込むのは不可能に近い

 

「もう1つ方法はあるわ。だいそうじょうの霊的防御を貫くほどに高密度に圧縮した攻撃なら、だいそうじょうの防御を貫ける」

 

早朝から話を聞きに来て判ったのは効果は薄いが霊力を通した物理で殴るか、高密度に集束した霊波を伴う攻撃だけか……あまり有益な情報ではないが、だいそうじょうが動き出すまでの時間があるのならその間に準備を整える事が出来る

 

「それと私とマルタ。どちらかは其方の応援に付きます。ただ天界・魔界からのこれ以上の増員および武具などの支援は無理だし、両方動くとガープに東京に集まっている戦力を悟られてしまうので、どちらかだけど」

 

一番最悪なのは、ガープと魔人が手を組んでいる可能性だ。それを考慮しつつ、それでもマルタか三蔵法師がだいそうじょう撃退に協力してくれる。それは私にとって非常にありがたい言葉だった、マタドールで魔人の強さは知っていたつもりだったが、つもりだったのだ。魔人は人間だけでは決して撃退出来ないと言うことを改めて知る事になった。だから協力してもらえる、それだけでも十分すぎる支援だ

 

「それでもありがたいわ」

 

ブリュンヒルデに英霊が2人。戦力的には前回戦ったときよりも充実していると言える。それに急に遭遇するのではなく、対策を練る時間があるというのも非常に大きい。私とくえすは三蔵法師とマルタに別れを告げ、白竜寺を後にした

 

「横島が戦えれば非常に有利な条件ですわね」

 

「でもそれは出来ないわ」

 

話を聞けば聞くほど眼魂を持つ横島君が必要な戦いになる。だが魂の緒を切られ、肉体的にも霊体的にも重傷者の横島君を動かす訳には行かない。だから私達で何とかするしかない

 

「私は文献を見て、新しい魔法の準備をしますが、美神。貴女はどうするのですか?」

 

「私はちょっと強引な手段になると思うけど、どこかの神社とかに祭られている御神体を借りれないか、琉璃に相談してみて、どこで何をしているか判らないけど、柩にも声を掛けてもらうつもり」

 

ドクターカオスや優太郎さんの用意してくれる霊具の質は高いが、相手が相手だ。物自体に強力な霊力が宿っている武器でなければ効果を期待できない。その条件を満たすのはやはり何処かで祭られている御神体を借りるのが一番早い、そして何時襲ってくるか判らない相手に警戒するのは精神的にも肉体的にも辛い。もし可能ならば柩の未来予知である程度の予想を立てたいと思っている

 

「だいそうじょうが何時動くか判らないから、ここからはスピード勝負よ」

 

「判っていますわ」

 

聖奈の攻撃でどれだけのダメージを負っているか?そこが重要になってくる。後は托鉢をしている老僧が何時東京に現れるかだ。柩に協力を得ることが出来ればある程度は大丈夫だが、柩の未来予知は8割とほぼ当たるが、稀に外れる。未来予知に加えて、人海戦術による警戒網。それを用意する必要があると私は考えている

 

「琉璃にGS協会の人員を用意して貰って警戒する必要があるわね」

 

「そうですわね」

 

今の時代に托鉢をしている人物は少ない。人員や警察と協力して托鉢をしている人物がいないか、警備してもらう必要があるわねとくえすと話をし、GS協会の近くでくえすと別れ、私は琉璃の元へ向かうのだった……

 

 

 

だいそうじょうの攻撃で横島が1度死んで1日経ったが、その後遺症は根太く、そして深刻に横島を蝕んでいた。早朝にも関わらず尋ねて来てくれたカオスが深刻な表情で告げた言葉を思わず思い出す

 

「魂の緒だけじゃなく、霊体と魂にも深いダメージを受けておる。とりあえず、霊薬を処方しておく、横島が起きて、霊体が安定していたら飲ましてやって欲しい」

 

「……よ、横島さんが起きたら、マリアとテレサが心配していたとそう伝えてください」

 

「あたしは焦らないで身体を治してくれって伝えてくれ」

 

マリアとテレサも意識の無い、人形のように脱力した横島を見て、小さく悲鳴を上げていた。私もこのまま死んでしまうのではと不安に思ったからこの反応は当然かと思う。横島が起きて意識がしっかりしていたらその伝言を伝えようと思う

 

「私は1度帰るわ。お父さんに霊薬とかの相談をしてみる」

 

「……頼む」

 

朝から尋ねて来て横島の様子を見ていた蛍は、昼前に一度帰ると言って帰って行った。時間で回復すると判っているが、それでも心配になるし不安にもなる。それに蛍が父と思っているのはあのアシュタロスだ、何か効果的な道具をくれるかもしれないと期待し、見送ったのが30分前。それから昼食の準備を始めたが、10分ほどで終わってしまった

 

「……こんなものだな」

 

固形物では喉に詰まらせる危険性があると言う事で、ノッブの事を一切考慮せず。フードプロセッサーとか言う道具で野菜などを細かく切り刻んで作ったスープを作った。そもそも霊なのだから、食事は必須ではないのでまずは横島を優先した。具材は少ないが、味はそれほど悪くないな、スープの味見をしてから、コンロの火を切り、キッチンから横島を見る

 

「……ん、んー?」

 

ぼんやりとしている様子だが、意識はあるようだ。だがその様子ではカオスから受け取った薬は飲ませれそうに無いな、と思い次は掃除でもするかと考えていると突如ごとんっという重い音がしたので慌ててキッチンから飛び出す。横島が糸の切れた人形のように机に突っ伏していた

 

「……大丈夫か?」

 

慌てて駆け寄って身体を揺する。暫く揺すっているとようやく横島が反応を返した

 

「え、あ……あ、うん。大丈夫」

 

焦点の合っていない視線と、何処かたどたどしい口調……だいそうじょうに魂の緒を切られた後遺症は予想よりも遥かに深刻であり、横島を蝕んでいた。

 

(心眼はまだか……)

 

心眼は言葉こそ発していないが、神通力をずっと放出している。恐らく横島の魂の緒の修復に全精力を向けているので話をしている余裕も、具現化する余裕も無いのだろう

 

「みむぅ?」

 

「ぴぎゅ?」

 

チビとうりぼーが心配そうに横島に擦り寄り、タマモが膝の上に丸くなって溜め込んでいた霊力を放出している。チビやうりぼーは身体が小さい事もあるし、力を蓄える事が出来る訳でもない、そして更に言えば横島が無意識に吸収出来るように霊力を放出できる訳でもない。その点タマモは尻尾が8本あり、それぞれに霊力を蓄積している。そして横島と暮らしている時間も長いのでそういう細かい調整をしつつ、横島に霊力を譲渡している。9本目が戻るのが遅くなるが、自分よりも横島を優先した訳だ

 

【ワシの霊力を渡す訳には行かんからなあ】

 

「……私もだがな」

 

横島の今の魂の状態は極めて不安定な状態になっている。何時魂の緒が再び切れるか判らない状態に加え、魂自身の損傷も酷い。そこに竜族であり神霊の私の神通力や竜気。ノッブの英霊としての霊力を譲渡すればどんな反発があるか判らない、出来る事ならば私も神通力を譲渡し、少しでも横島の回復の手助けをしたい所だ。しかしそう願ってもそれが出来ないもどかしさ、そしてそのもどかしさは横島を殺しただいそうじょうへの強い怒りへと変わる、そしてその場にはいなかったが、私達と同様の怒りを抱いている物がいた

 

【私は自分がこれほど情けないと思った事はありません】

 

牛若丸眼魂が光る。長い間霊力の回復に努めているのに今もまだ具現化出来ない。横島を守る事が出来ない、それが牛若丸にとっては己のふがいなさの証拠で、自分自身にもだいそうじょうにも強い怒りを抱く理由となった

 

【じゃが無理は出来んじゃろ。霊核が損傷したら消えるぞ?】

 

【それでもです。それでも私は主殿の為に戦いたい】

 

生真面目な性格の牛若丸がもし具現化出来るようになれば、横島の安全は更に高まると言える。だからその為にも

 

「……今は無理をするな。確実に霊力を回復させろ」

 

【……ッはい……判っております】

 

絞り出すような声でわかっていると返事を返した牛若丸眼魂は沈黙する、ふと視線を上げ、視界に納まった物を見て小さく苦笑した

 

(しかし、あれには助けられたな)

 

机の上に置かれている青い小瓶。私が横島に持たせるべきではないと反対した謎の神の所有物。それが横島を救っていた、溜め込んでいた神通力を全て放出し、今はただの砂となっているがその砂に溜め込まれていた神通力が1度死んだ横島の魂を呼び戻した

 

(死神だったか?)

 

横島にあれを渡した神魔が何者かは判らない、だが死者を呼び戻す程の力を持つ物はよほど特殊な神魔で無ければ用意出来ないだろう。まだ警戒している事に変わりは無いが、もし会う事があるのなら感謝くらいはしてもいいなと思っていると再び重い音を立てて横島が机の上に突っ伏す

 

「みむ!みむーみむむー!!」

 

「ぴぎ!ぷぎゅー!!ぴぎ!!」

 

チビとうりぼーが必死に横島の頬を叩くが反応が無い、私とノッブが慌てて横島の身体に触れようとした時。バンダナに目が浮かび上がり

 

【やっと終わった。心配ない、横島の魂の緒と魂の修復が終わった所だ】

 

心眼の言葉に思わず安堵の溜息を吐いて、その場にへたり込む……情けない話だが、安心しすぎたせいか……腰が抜けたのか暫く立てそうに無い。自分らしくないその失態だが、自分でも思っている以上に横島を心配していたと言うことを実感した

 

【タマモの霊力譲渡が役に立った、タマモは横島と暮らして長いからな、横島の霊力や魂と親和性が高かった】

 

だからここまで早く修復できたという心眼。だがそれではなぜ横島は意識を失ったのか?と言う疑問が脳裏を過ぎる

 

【魂の回復がすんだんじゃろ?なんで気絶したんじゃ?】

 

【私が眠らせた。霊体となじませる必要があるからな、起きている時よりも眠っている方が回復力が強まる】

 

心眼の説明に納得すると同時に、やっと足に力が入るようになったのでゆっくりと立ち上がり

 

「……チビノブ、手伝え。横島を休ませる準備をする」

 

【のぶ!】

 

家の掃除をしていたチビノブが敬礼して、その小柄な姿からは想像も出来ないスピードで走り出す。私はその姿を見ながら机やソファーを移動させ、布団を引く準備をしていると美神に横島の状況を報告に行ったおキヌが戻って来たのだが、意識のない横島を見てただでさえ青い顔を青くしている

 

「……大丈夫だ。心配ない、心眼の治療で横島は眠っているだけだ」

 

【そ、そうなんですか……よ、良かった……】

 

その目に涙を浮かべて良かった良かったと繰り返し呟くおキヌに悪いと思ったが

 

「……また直ぐ美神の所に戻ってくれるか?横島の霊体が安定したと伝えて欲しい」

 

【判りました!直ぐ行って来ます!!】

 

壁を抜けて空を飛んでいくおキヌを見送っているとチビノブが布団を担いで戻ってくる

 

「……ご苦労。横島を横にしよう」

 

【ノブぅ!】

 

チビノブに布団を引かせ、私は意識を失い完全に脱力している横島を起こさないように気をつけながら移動させるのだった……

 

 

 

一方その頃。都内の高級ホテルではあるやり取りが行われていた

 

「姫様。進言します」

 

「何だ?」

 

ワインを手に上機嫌で音楽を聴いていた魔人姫にそう声を掛けるレッドライダー。ネロはどうしたと笑いながらレッドライダーの言葉に耳を傾ける

 

「だいそうじょうはしくじりました。やはり自由にさせたのは失敗ではないのでしょうか?」

 

「はは、そんな事か、物事なにもかも思い通りでは面白くない。そして失敗したとしても、その失敗を生かし反省すればそれはそれで良し」

 

愚か者とは失敗をしても反省せず、後悔せず、同じ過ちを繰り返すものだと笑う魔人姫は手にしたグラスに再びワインを注ぎながら

 

「この街は面白い人間が多い、それを見て楽しむのも一興。数日のうちに再びだいそうじょうも動くだろうからな」

 

その時はレッドライダー、お前がその眼で見てきて、余に戦いを見せよと告げる魔人姫。レッドライダーは片膝をつき

 

「仰せのままに」

 

「うむ!それでよい、さてさて……どうなるか楽しみだな!!」

 

魔人姫はその目に喜色の色を浮かべ、窓の外を見つめる。その視線は窓の交差点を歩く人間に向けられていたが、その目はそこではないどこかを見つめているのだった……

 

 

リポート13 常世のだいそうじょう その5へ続く

 

 




次回は少し準備などの話を書いて、だいそうじょうとの2戦目に入っていこうと思います。三蔵ちゃんかナグルーラーが助っ人に入る予定です。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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