GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回はだいそうじょうとの2戦目を書いて行こうと思います。次回でだいそうじょうとの戦いの決着と後日談を書いて、別件を1つ入れてからリポート14に入っていこうと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その6

 

 

リポート13 常世のだいそうじょう その6

 

夕暮れの光の中。不可思議な力で浮かび上がるだいそうじょう。その空虚な瞳はどこを見ているか判らないのだが自分を見ているのでは?と言う恐怖に駆られる

 

「英霊とは言え、霊。我が法力に耐えれるかな?」

 

澄んだ鈴の音が響くと同時に駆け出そうとしていたノッブの動きが止る。それを確認しても私は止らない、だいそうじょうの術を封じる最大の術は接近戦を仕掛ける事だ。人間・魔族・英霊と3つの種族が揃っている、どれか1チームはだいそうじょうへと接近戦を仕掛ける。正直言って特攻としか言いようの無い戦術だけど、装備・戦力などを考慮して私達が取れる戦術はそれしかなかった

 

【ぬっぐう……厄介な術を使うなッ!!】

 

「その程度で止ると思うッ!!」

 

ノッブはだいそうじょうの鈴の音で動きを止めているのだが、マルタは違う。両手を組んで祈りを捧げるように目を閉じる。数秒で力強く目を見開き駆け出す

 

(これが聖女の力……)

 

祈りだけで竜退治を行ったと言うのも嘘ではないと思う。ただその戦い方を見て、聖女?って言う疑問はどうしても頭に浮かぶけれど

 

「ハレルヤッ!!」

 

「……おっと、危ない危ない」

 

拳を繰り出してから数秒後に聞こえる拳を振るう音。その物理法則を無視した攻撃に、本当に祈りだけでドラゴンを倒したのだろうか?と言う疑問が脳裏を過ぎるが……

 

(エミも唐巣先生も無理だったから、あの強さは正直頼りになるわ)

 

魂を失った肉体を狙って悪霊が大量発生している事もあり、エミも唐巣先生も東京に戻ってきてくれていたが、もしかしたら生き返るかもしれないだいそうじょうの犠牲者を護る為にと琉璃から依頼が出ており協力を頼む事が出来無かった。そして幽霊としては規格外でも、戦う能力の低いおキヌちゃんも危険と言う事で、2人に協力すると言う三蔵法師の手伝いをするようにと指示を出し預けてきた。戦力の低下に道具の運搬に不安が残るのは琉璃も判っていたのか、かなり強引な方法を使った様だが廃れた神社や有名な神社の神主に事情を説明し、借りることが出来た御神体や有名な霊具を借りて私達や横島君の霊的抵抗力を上げている。並みの悪霊の攻撃はもちろん、下級神魔の攻撃も無効に出来る。それこそ規格外の装備だが、それでも相手が相手なので不安ばかりが脳裏を過ぎる

 

(本当なら横島君もこの場に連れて来たくは無かった……)

 

くえすや蛍ちゃん、そしてもちろん私も反対していたのだが柩の言葉で決断せざるを得なかった

 

『君達が戦いに出て、だいそうじょうを探している内にだいそうじょうの仲間が動いたらどうする?』

 

だいそうじょうにマタドール。遭遇した魔人は2体だが、数は特定出来ていないがまだいると聖奈に聞いて陽動や囮の可能性が浮上した。何故か魔人は横島君を同胞と呼び、仲間にしようとしている。横島君を家に残すほうが危険だと思ったのだ

 

「神宮寺さん!大丈夫ですか!?」

 

結界の中から横島君がそう叫ぶ。チビやうりぼーは当然ながら留守番である。その代わりに横島君の護衛として

 

「下手に大声出さない!向こうの注意を惹きつけるんだから!」

 

【心配なのは判りますが、自分の心配をしてください】

 

精霊石で人化しているタマモと沖田ちゃんの2人だ。タマモは九尾の狐なので言うまでも無く、霊体攻撃に強い耐性を持ち、沖田ちゃんは最悪の場合……つまりだいそうじょうが横島君の前まで来た時。シズクがミズチタクシーで横島君を連れ出すまでの時間稼ぎとして配置している

 

「私の心配をするよりも、自分の心配をしなさい!」

 

「絶対戦おうなんて思ったら駄目だからね!」

 

くえすと蛍の怒鳴り声に横島君の顔が悔しそうに歪む。確かに霊力はある程度回復している、むしろ陰陽術を使えるレベルには回復している。だけど横島君の仕事はだいそうじょうをこの場に誘い出すことで完了している、これ以上は横島君に負担を掛けるだけだ

 

(でも安全を確保できるなら、横島君をこの場に連れて来たくは無かったわね)

 

横島君は臆病だが、その癖。度胸と思い切りがある。私達の誰かが命の危険だと思ったら迷わず戦いに出るだろう、そしてまた霊体に過度の負担を掛ける。今はまだ若いし、霊体も強靭だから大丈夫だが、そのうち取り返しのつかない事になるかもしれない、そしてまだ未熟な横島君にそんな心配をかける自分が情けない

 

「だいそうじょう!私があんたを極楽に送ってあげるわ!」

 

「カカカカ!!吼えるな小娘、拙僧が代わりにお前を天上楽土に導いて進ぜよう……む?」

 

私に向けて鈴の音を鳴らそうとしただいそうじょうだが、広場の床の隙間から伸びた水の触手がその腕に巻きつく

 

「ブリュンヒルデ!蛍ちゃん!」

 

「はい!判っています!」

 

この広場を選んだのは理由がある。それは噴水だ、水がこれでもかとあふれている。それはシズクが最大の力を発揮する為のフィールド……だいそうじょうが困惑した素振りを見せたその一瞬の隙を見逃すわけには行かない。私と蛍ちゃんの背中に刻まれたルーン文字……車輪を意味する「ラド」これは移動を意味し、私達の速さを強化する。そして雹を象徴する「ハガル」これは強い魔除けの力を持ち最後に戦士を意味する「テイワズ」人間に複数のルーン魔術を施すのは危険と言う事で3つのルーンで速さと身体能力、そして魔除けの3つが大幅に強化されている私と蛍ちゃんはさっきまでのだいそうじょうを油断させるための走りから全力の走りへと切り替え、アスファルトに足跡を残しながら、大きく地面を蹴る。

 

「ぬっ!面妖な……」

 

一番おかしいお前に言われたくないと心の中で言いながら、10メートルちかい距離を一気に縮める。だいそうじょうがこれはいかんと自由な左腕で印を結ぼうとするが

 

「せいッ!はっ!!!」

 

「お主!本当に聖女か!?」

 

そうはさせないとマルタが正拳から飛び膝蹴りへと繋ぎ、だいそうじょうの驚愕の声には同意するが、そのおかげでだいそうじょうが発動しようとした術の詠唱が中断される。右腕をシズクに封じられ、左腕はマルタの攻撃を防ぐのに使用し、隙だらけのだいそうじょうの胴体に私と蛍ちゃんと神通棍がめり込み、だいそうじょうの枯れ木のような体を大きく吹き飛ばす、間合いを放す……それは当初の予定と異なるが、これでいい。地面を大きく踏みしめ、もう1度駆け出す準備をする

 

「アンサズ!」

 

「吹っ飛べッ!!」

 

「ぬ、こ、これは!?」

 

ブリュンヒルデのルーン魔術による炎。そしてくえすの放った氷弾……氷が炎によって急激に溶かされる。その温度差で生まれた霧を突っ切り再び私とマルタ、そして蛍ちゃんはだいそうじょうへと肉薄するのだった……

 

美神達がだいそうじょうと戦っている頃。白竜寺では……

 

「……すまねえ、お師匠様」

 

三蔵法師の部屋に隠されていた、優太郎から託された眼魂と試作ゴーストドライバーの納められたトランクケースを持ち出す何者かの姿があるのだった……

 

 

 

直撃すれば拙僧の頭蓋など簡単に打ち砕くであろう豪腕を首を傾けて回避し、そのまま後退しようとするが……そうはさせないと緋色と黒髪の女が踏み込みながら棍を振るう。

 

(1戦目の反省と言う所かの)

 

拙僧の術はどれも基本的に詠唱や指の印を必要とする。こうして間合いを詰められ攻撃を繰り返されると印を結ぶ時間も詠唱する時間も無い

 

「悔い改めろっての!!!」

 

「言ったはず、拙僧に一切の揺らぎなしとな」

 

風を切る豪腕を受け流しながら聖女の懐に潜り込む。本当ならここまで潜り込んだのならば詠唱と共に掌底打ちを打ち込み霊気をかき乱してやるんじゃが……ちらりと噴水に視線を向ける

 

(あやつが厄介じゃな)

 

噴水の中に隠れている水神。この広場全体を掌握しているのか、どこからでも水の触手を伸ばしてくる。そんな状況で詠唱をしている時間は無い

 

「ぐっ!」

 

「すまんの」

 

距離を取れば魔法、かといって間合いを詰めて戦うには時間が無い。ならばと聖女の首を絞め棍を振るっている女2人に投げつける

 

「嘘!?」

 

拙僧がこんな力任せの術を使うと思っていなかったのか、足を止める2人。だがそれは隙とはなりえない

 

「はあッ!!」

 

「戦乙女殿か……やれやれ拙僧は1人だと言うのに」

 

拙僧の頭蓋を打ち砕かんと振るわれた槍を片手で受け止める。こやつらの狙いはわかっている拙僧の身体を構築している霊子の結びつきの破壊……拙僧はマタドールやヘルズエンジェル、そして4騎士殿と比べて戦闘に関しては生前に近い。マタドールのような卓越した剣術を持つ訳でもない、ヘルズエンジェルのように一芸に特化しているわけでもない。拙僧の武器は一定上の霊力・神通力を超えなければダメージを受けないこの特異な身体とかつての戦の時に身に着けた乱戦に対する戦闘技術

 

「やれやれ、仕方あるまい」

 

このままでは姫様に更なる失望を抱かれるかも知れぬ。いやそれよりも早く何処かから見ている赤騎士殿に粛清されるやも知れぬ……

 

「安らかな救いは止めじゃ、ここからは……死をもって汝らに救済を与えよう。喝ッ!!!」

 

苦しまぬよう天上楽土に送ってやろう。そう思っていたのだが、どうも拙僧の想いは届いていないようじゃ。ならば甘い理想は捨てるとしよう……己を律するように喝と叫び拙僧は頭の中を一瞬で切り替えるのだった……安らかな救済から、死と言う名の救済へと……

 

 

 

だいそうじょうの気配が一変した。今までは私達に向けての殺意や殺気は無く、哀れむようなそんな気配を発していたのだが、今は肌を突き刺すような殺気が放たれている

 

「では参ろうか。ここからは救済などではない、命の奪い合いだ」

 

だいそうじょうの空虚な瞳が私に向けられた。その瞬間、私の身体は何かに殴り飛ばされたように大きく吹き飛んだ。その凄まじい衝撃に意識が飛びかける

 

「蛍!?」

 

結界から横島の私を呼ぶ声がする。その声のおかげで途切れかけた意識を何とか繋ぎ止める。神通棍を広場の床に叩きつけるようにして態勢を立て直す

 

「え……嘘!?なんで!?」

 

何かが砕ける音と共に首から下げていたお守りがありえないほど粉々に砕け散る

 

「その程度で拙僧の法力を止められると思うか?となれば、愛い事よ。子供の児戯は何時見ても愛らしいものよな」

 

カカカカっと笑うだいそうじょうにマルタさんと美神さんが殴りかかるが

 

「うっ!?な、何これ……」

 

「か、身体が動かない」

 

一瞥。その一瞥で美神さんとマルタさんの動きは完全に止められる。だいそうじょうが両手を持ち上げると2人の身体が浮かび上がり

 

「先ほどまでと拙僧は違うぞ、安らかな救済は仕舞いじゃ」

 

腕を振り下ろそうとするその仕草を見て、広場から水が飛び出し、聖奈さんがルーン魔術を、くえすが魔法を、ノッブが霊力弾を、恐ろしいまでの波状攻撃が放たれようとした瞬間。だいそうじょうは不可思議な力で捕らえていた美神さんとマルタさんを投げ捨て、鈴を手にする。危ないと思った時はもう遅かった……広場に涼しげな鈴の音が響く……その瞬間激しい頭痛が襲ってきて思わずその場に膝を着く

 

「ぐっ……な、なんですの……こ、これは……」

 

「……強引に……液状化を……解除された……だと」

 

【あ、頭が割れる……】

 

くえすの動揺交じりの苦悶の声に、シズクが姿を現しくえすと同じように頭を抱えている……こ、これはあの時の……でもあれよりも遥かに効力範囲が大きい……

 

「言ったはず。安らかな救済は仕舞いだと……ここからは死を伴う救済を与えようぞ。色即是空……」

 

激しい頭痛の中でもだいそうじょうの詠唱の声が聞こえる。不味い不味い不味い……その詠唱を中断させなければ……だけど身体が動かない……

 

「オッラアアアアッ!!!!」

 

「ぬ!?増援か!?」

 

ここには居ない筈の第三者の声が広場に響き渡り、上空から流星の様に降下してきた何者かの一撃がだいそうじょうの左腕を斬りとばす。そのおかげでだいそうじょうの手にしていた鈴がその手から離れた

 

「おう。大丈夫か、お前ら」

 

だいそうじょうの手から鈴が離れたおかげか、先ほどまで私達を襲っていた強烈な頭痛は消え去っていた。だが消耗した体力は戻らない、ぼんやりとした意識の中身体を起こし、だいそうじょうを攻撃している何者かの姿を確認する

 

「ビュレト様!」

 

くえすの悲鳴にも似た声が周囲に響く、そこにいたのはGS試験で負傷し、魔界へ帰還していたビュレトさんの姿だった

 

 

 

 

だいそうじょうの気配が変わったと思った瞬間。その戦い方が大きく変化した、今までは避けて、防ぎ、時折魔法を放つだったのだが、凄まじい広域に作用する何らかの術に見えない何かによる強烈な打撃。蛍や神宮寺さんが吹き飛び、美神さんと英霊だったというマルタ姉さんが見えない手に掴まれた様に浮かび上がる姿を見て、思わず飛び出しそうになったが

 

「横島!動いたら駄目」

 

【そうですよ、横島君……】

 

唇をかみ締めたタマモと沖田ちゃんに駄目だと言われ、飛び出しかけた足が止る。何も出来ない、自分の無力さを思い知らされているような気がして、拳を握り締めた時

 

「オッラアアアアッ!!!!」

 

上空から響いた誰かの声と共に凄まじい衝撃音が広場に響き渡る。その声には聞き覚えがあった、マルタ姉さんが応援は多分無いと言っていたのに……

 

「おう。大丈夫か、お前ら」

 

砂煙が晴れた時其処にいたのはGS試験でガープと戦ったビュレトさんの姿だった

 

「説明は後だ!まずはこいつを叩く!」

 

「魔界公爵のビュレトか……カカカ!これは予想もしない、大物が釣れたな」

 

「言ってろ骸骨野郎」

 

凄まじい魔力と闘気を放つビュレトさんに対して、涼しい表情のだいそうじょう。だがやはりマタドールと同じく恐怖や嫌悪感ではなく奇妙な安心感を覚える自分自身に腹立ちを覚える。自分が何か別の存在になってしまっているのでは?と言う恐怖が嫌がおうにも脳裏を過ぎる

 

「まさかこうして魔界の重鎮と肩を並べるとは思っても見なかったわ」

 

「はっ!それはこっちの台詞だ。マルタ」

 

ビュレトさんとマルタの姉さんの連続攻撃は流石のだいそうじょうも片腕を失っている事もありさばき切れないのか、徐々に劣勢に追い込まれているように見える

 

「……この隙に一気に決める……ッ!」

 

【ワシ、相性ゲーっとか得意なんだよねッ!!!】

 

「そうですわね。この好機を逃す馬鹿はいませんわッ!」

 

シズクと神宮寺さんの波状攻撃がだいそうじょうを追い立てる。喋っている余裕が無いから黙り込んでいる……そう思いたいのだが、嫌な予感がどうしても払拭できない

 

「行ける!神魔の天敵と言われていても、ここまで流れが変われば!倒せる!」

 

「だいそうじょうの応援が来る前に一気に倒しましょうッ!」

 

蛍と美神さんのその言葉を聞いて、異変が起きている。俺は焦りと共にそれを感じた

 

(おかしい、美神さんと蛍が最初に言っていた事と違う)

 

この結界の中に入れられる前に聞いていた話と違う。だいそうじょうは倒すのではなく、封印する。その方向性の筈だったはずだ、魔人の情報は無い。だから倒すのではなく聖奈さんとマルタの姉さんの力で封印する、その為に純度の高い精霊石を用意した筈……

 

「心眼。何かおかしくないか?」

 

【ああ、これは不味いかもしれない】

 

心眼も俺が感じている違和感を感じていたようで、普段冷静なその声に焦りの色が混じっているのが判る。封印ではなく、倒す方向に切り替えたのか?いやそれならそれでも良いだろう。相手の強さがこっちの想像を遥かに超えているいつ封印を敗れるか判らないのなら、情報を得れないとしてもここで倒してしまう。それも確かに1つの手段だろう……それは間違っていない。そう判っているのだが……

 

(なんだ、なんだこれ……)

 

だいそうじょうはこっちを見ていない、それなのに誰かに見られているかのような寒気が止らない

 

「タマモ、沖田ちゃん。大丈夫だよな?」

 

結界の中から2人に大丈夫だよな?と尋ねる。タマモが心配性ねと笑いながら

 

「術者が腕を失ったら戦力はガタ落ちだわ。確かに封印する方向から倒す方向に持っていっているのは気になるけど……封印だと何時暴れだすか判らないから、倒してしまえばその心配は無くなるし」

 

【沖田さんもそう思いますけど、何か嫌な予感が……】

 

タマモの言っている事は合っていると思う。だが沖田ちゃんの言うとおり嫌な予感が止らない、饒舌だっただいそうじょうが黙り込んでいる事も引っ掛かる……隻腕だから喋って……隻腕だから?

 

「腕は!腕はどこだ!!」

 

ビュレトさんが斬り飛ばした腕はどこだと思わず叫ぶ。落ちていなければならないだいそうじょうの腕を捜すが、その腕はどこにも見当たらない。俺でも気付くんだ、美神さん達がおかしいと思わないのは明らかに異常なのだ

 

「美神さ「……色即是空 空即是色。もう少し早く気付くべきだったな」

 

美神さんの名前を呼ぼうとした瞬間。静かなだいそうじょうの呟きが広場に響く……その後に遅れて響いた鈴の音が響いた。その瞬間ビュレトさんとマルタと聖奈さんを除く全員が地面に倒れる。まさか死んだ……俺が死んだという術ならば美神さん達も死んでいるかもしれないと言う予想が脳裏を過ぎり顔から血の気が引くが、立ち上がろうとしているその姿を見て生きていると安堵したが、状況は最悪と呼べる状況になってしまった

 

「カカカカ。分身と本体を見抜けぬか?いやいや、凶暴化の術を使ったから当然といえば当然じゃが、いささか拍子抜けじゃな」

 

美神さん達が戦っていただいそうじょうが煙になって消え失せ、上空からだいそうじょうが笑いながら姿を見せる

 

「ちっ、このくそ爺。てめえいくつ手札を持ってやがる」

 

「カカカカカ!歳の数と言っておこうかの?」

 

動けない美神さん達を護られなければいけないビュレトさん達は思うように動けない。そうなればだいそうじょうの即死魔法を防ぐのは不可能……

 

「くそっ!こうなったら……」

 

眼魂を手に結界を出ようとした時、顔面に強い衝撃を感じ結界の中に叩き込まれる

 

「半死人が戦おうとするんじゃねえ、馬鹿が」

 

「お前は……陰念ッ!?」

 

俺を結界の中に叩き込んだのは、GS試験でガープに操られていた陰念であり、その手には濃い青色の眼魂が握り締められているのだった……

 

 

手足の自由を奪い、同胞となりえる資質を持つ人間が出てくる状況を作り出したのだがそれは顔に傷のある小僧によって妨げられた

 

「ほほう。この場に来たと言う事は救済を求めてきたのか?」

 

「救済?はっ!んなもんいらねえよ。俺は借りを返しに来ただけだ」

 

借り?あの小僧に何か貸しがあると言うことか……だとしても弱々しい霊力しか持たない人間など拙僧の敵ではない

 

「こっからは俺が相手をしてやる」

 

「吼えるのは止めよ。主は今戦えんじゃろうに」

 

ここから見てもチャクラはずたずた。そんな人間が戦える訳が無い

 

「せっかく拾った命を捨てるんじゃねえッ!」

 

ビュレトがその小僧に怒鳴る。魔界の公爵その威圧感は凄まじい物がある。それなのにその人間はまっすぐに拙僧へと向かってくる……

 

(あれは白騎士殿が言っていた)

 

腰に巻かれていたベルトとその手に握られた球体。それはあの結界の中の小僧が持っている物と同じ

 

【アーイッ!オソレテミーヤー!オソレテミーヤー】

 

ベルトから飛び出した濃い青の服が人間の周りを踊りだしたと思った瞬間。反転し、その紐のような腕を人間の首に伸ばす

 

「うっ!ぐうっ!!!」

 

【ガッハハハハハハッ!!!】

 

高笑いしながら人間の首を締め上げる服。それを見て聖女が駆け出したが

 

「舐めるんじゃ……ねえッ!!」

 

【ガハッ!?】

 

首を絞められていた小僧はその服の頭を掴んで地面に叩きつける。爛々と輝くその瞳が拙僧を捉えたその瞬間、小僧の姿は金属の光沢を持つノッペラボウの姿へと変わる

 

「変身ッ!」

 

【カイガン!ホロウッ!心中ッ!ゲッチュー!ガクガクゴーストッ!!】

 

叩きつけていた服を纏うと同時に凄まじい霊力と魔力が小僧から溢れ出るが、空中に現れた錠前が胸に触れた瞬間、そこから鎖が飛び出し小僧の両手足を締め上げる。その鎖が封印なのか魔力は収まったが、霊力は今も凄まじい力で発せられている

 

「あいつめ……なんて物を作ってやがるッ!」

 

ビュレトの怒鳴り声が聞こえるが、拙僧はそれに対して何の興味も無かった。目の前の小僧の立った一言。そのたった一言で拙僧はその小僧しか見えなくなった

 

「同じ仏門の人間として、あんたの間違いを正してやるぜ。だいそうじょう」

 

「ほほう?ならばその間違いとやら、教えて貰うとするかの」

 

そうなれば他の人間は邪魔だ。拙僧は鈴を鳴らし目の前の小僧と拙僧を覆う結界を作り出しビュレトや聖女をその結界から弾き出し、小僧と1対1で戦う状況を作り出すのだった……

 

リポート13 常世のだいそうじょう その7へ続く

 

 




長くなったのでここで1度切る事にします、本当はこれで決着まで書くつもりだったのですが思ったよりも長くなってしまいましたので、
美神達がかませっぽくなってしまいましたが、今回は直接戦わない、絡め手をメインとするだいそうじょうが相手だったからと言う事でご理解頂けると幸いです。原作よりもかなり早く上位神魔と遭遇し、弱さを自覚し妙神山へ行くのを早くする為なのでこういう演出となっております。出来れば過去編かオカルトGメンのあたりで1度妙神山に行かせたいとは思っているんですけどね。後の流れもあるし、どうしようかなあっと悩んでいる所です。とりあえず上手く書いて行こうとは思っていますけどね、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い

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