神世紀300年。四国ではとある化け物が脅威として存在していた。
その名をスマッシュと呼び、人間が何者かの手によって化け物へと変化させられた姿だった。銃弾が効かず、人間では到底勝ち目のない化け物相手に人々は怯えていた。
しかし、そんな化け物相手に真っ向から立ち向かえる者たちがいた。それが勇者と仮面ライダーである。
これを見た諸兄らは何を言っていると思うかもしれない。しかし、神樹様に誓ってこれは決して嘘ではない。人々の平和を守るため、彼ら彼女らはスマッシュたちと戦っているのだ。
――――それが仕組まれた物であるとは知らずに
――――【大赦検閲済】
「スターク、いつまで俺はこんな所にいれば良いんだ?」
何処かも分からない部屋の中、サンドバックを殴っている青年がそう言った。同じ部屋の中には蛇の意匠が刻まれた赤色のボディースーツを身に纏った誰か――――ブラッドスタークがソファに座り込んでいた。
『おいおい、何度も言ってるだろ?ビルドの成長には時間がかかるんだ。少しぐらい待ってやれよ」
「そんなもの、チマチマとスマッシュを送ってるからだろ。あんたの目測でどれくらいまで行ったんだよ。葛城さんのデータも俺たちが持っていたってしょうがないだろ。さっさと渡しちまえよ」
『まぁ、待てよ。物事には順序ってもんがあるんだ。今のあいつにあのデータを渡しても操りきれる訳ないだろ?』
「俺たちが持ってても一緒だろうが。俺は完全に戦闘向きだってのに、いつまで経ってもこうして裏方だ。ビルドを成長させたいなら、俺をぶつけりゃ良いだろうに。要望通り、トランスチームガンの方を使ってやるからさ」
『順序があるって言ったろ?ビルドにいきなりお前さんをぶつけてもしょうがない。そもそも、お前さんはそれだけしてれば良い訳じゃねぇだろ。ビルドに関しては俺が全部やるから、お前さんは黙って見てろよ』
ブラッドスタークがそう言った瞬間、青年が放った拳がサンドバックの紐を千切りながら吹き飛ばした。青年が肺に溜まった息を吐きだしながら、ブラッドスタークを睨みつけた。その眼光にはふざけるなと言わんばかりの想いが籠められていた。
「……あぁ、ビルドに関しては俺だってどうでも良いんだよ。でもよ、あんたらは俺に『ライダーシステムを取り入れれば勇者たちが戦わずに済む』、って言ったから協力してるんだぜ?その辺り、現在進行形で破られてるんだが……どう思う?」
『……まぁ、それは申し訳ないと思ってるがね。しかしな、仮面ライダーシステム――――ビルドは初の取り組みだ。となれば、自然と手探りになっていくもんだ。順調以上に予想外の速度で強くなったお前さんと一緒くたにはできないんだよ。お前さんだって分かるだろ?』
「だから?それなら、仮面ライダーの候補者を選び出して、一緒くたに鍛えちまえば良いだろ。なんで態々一人だけなんだよ。スマッシュを作るのだってタダじゃねぇんだぞ。あんただって、それぐらい知ってるだろ。ビルドにしたって野に放つ意味が分からん。地下で延々とスマッシュと戦わせた方が、よっぽど有意義ってもんだろ」
『お前さんの勇者たちに対する溺愛ぶりは相変わらずだな。だがな、無茶を突き通して道理が引っ込む訳じゃない。ビルドだって素体は特別なんだ。同じような奴なんて早々……』
「……スターク、俺を侮るのもいい加減にしろよ。あんたが独自に行っている人体実験、俺が知らないと思ってるのか?この組織に出資させてるのが誰なのか、あんたに態々教え込まなきゃならんのか?」
青年は懐から銃とボトルを取り出した。それを見たブラッドスタークは慌てて落ち着くように告げる。彼が暴れればどうなるか、知らないブラッドスタークではない。何故なら、以前ストレス全開だった彼をおちょくった事で、
『ちょっと落ち着けよ。俺たちの目的は同じだろ?だから、もう少し長い目で』
「……蒸血」
『ミストマッチ!バット…バッ・バット…ファイヤー!』
黒い蒸気が青年の身体に纏わりつき、雷光が迸り火花が散るとそこには蝙蝠の意匠が刻まれた黒いボディスーツ━━━━ナイトローグとなった彼が立っていた。その姿を見たブラッドスタークはその中で頬を引き攣らせていた。何故なら、この姿になった時の彼の過激具合は他ならないブラッドスタークが一番理解しているからだ。
『スターク、有用な情報を言う気がないならお前を殴る。俺たちにはそれほど多くの時間はないんだ。分かってるだろ』
『……確かに、さっきのは言い方が悪かった。謝ろう。だが、俺が言ったことも嘘じゃない。ビルドに関してはまだ時間が必要なんだ。ここまで育てたビルドだ。無駄にはしたくないのは、お前さんもそうだろう?だから、もう少しの間は俺に任せてくれ……な?』
『……そうかい。あんたがその気なら、俺も好きにやらせてもらうまでだ』
『だから待てって……ガッ!?』
ナイトローグがブラッドスタークの胸元を力任せに殴ると、ブラッドスタークの身体はいとも簡単に壁に吹き飛ばされた。その姿を見ることもなく、ナイトローグは実験場から実験体の中でもそれなりのスマッシュを選び、野に放った。そこにビルドと勇者たちが現れ、戦闘が始まった。ナイトローグは戦闘が一番見やすい場所に陣取り、戦闘を眺めていた。
『さて、ビルドのお手並み拝見といかせてもらおうか。想定した値かそれ以上ならよし。そうでなければ……少々手荒い歓迎を受けてもらうとしよう』
そう言いながら、駆けつけてきたビルド━━━━桐生戦兎と共に戦う勇者たちの戦いを見ていた。その中に見覚えのある人物がいたことに眉を潜めつつ、戦いを見守った。
「ボルテック・フィニーシュッ!」
最後はビルドの必殺技によってスマッシュは倒され、スマッシュもその成分を抜き取られた事で普通の人に戻った。これにて一件落着━━となる筈だった。そこにブラッドスタークが現れ、あわや戦闘かとビルドと勇者たちは身構えた。しかし、ブラッドスタークはそれどころではなかった。姿を現さないナイトローグに戦々恐々としていると、生身の彼が現れた。
突然現れたその人物にビルドと勇者たちが頭を傾げていると、立ちはだかるようにブラッドスタークはその人物に向かい合った。その人物は納得したような、呆れかえったような表情でブラッドスタークを見た。その瞬間、ブラッドスタークは自分の嫌な予感が当たったような気さえした。
「スターク、ようやく納得できたぞ。道理でお前が俺にビルドを見せたがらない訳だよ」
『理由が分かったなら、さっさと帰らないか?これ以上ここにいても仕方ないだろ?』
「仕方ない?何を言ってるんだよ、スターク。まったく、あんたも中々に人が悪い。分かってたならさっさと言ってくれれば良かったのにな――――ビルドは中途半端な失敗作だってさ」
「え?」
「まったく……誤算だったよ。あの程度のスマッシュ相手に、勇者の力を借りなければならないほど弱いとは思わなかった。ビルドがこんな様ならさっさと見切りをつけて、他の奴を鍛えた方が手っ取り早かったな。まったく無駄な時間と資源を使ったもんだ。そうは思わないか?スターク」
『やっぱりそういう結論になっちまったか……もうちょっと待てないのか?』
「待つ必要がどこにある?プロジェクト・ビルドはこれにて終了。有用な価値を見出だせないプロジェクトにこれ以上出資する気はない。という訳で――――破壊させてもらうよ、ビルド」
そう言うと、青年はビルドが嵌めている物と同じベルトを腰につけ、懐から二本のボトルを取り出した。それに驚いている勇者たちを他所に、青年は二本のボトルを振り始めた。本気でビルドを破壊しに来ていると判断したブラッドスタークはビルドに声をかけた。
『そういう訳にはいかないんだな、残念ながら!おい、桐生戦兎!さっさと構えろ!』
「え?な、何がどうなってるんだよ?」
『いいから早く!相手は――――現時点で最強の仮面ライダーだ!』
ブラッドスタークの言葉に応えるように、青年はベルトに降っていたボトルを挿した。そしてベルトに付随しているレバーを回し、宣言するように告げた。
「ウルフ!ビースト!――――ベストマッチ!」
「――――変身」
「月下の狼王――――ウルフビースト!」
目の前に現れたのは今はもう滅びたとされる狼、その中でも王という言葉が相応しい威容の仮面ライダー。謎多きブラッドスタークをして、最強の仮面ライダーと断言してのける程の仮面ライダーがこの地に現れた。
「さぁ━━━━狩りの時間だ」
主人公紹介
名前:我堂満
経歴
大赦と関わりの深い家の生まれであり、生まれながらに身体に大量のネビュラガス(モドキ)が存在している。
ただし、仮面ライダービルドとして活動するには決定的な欠点が存在していた。その欠点を埋めるため、大赦の有する研究所に属していた葛城巧の手によって特別な改造が施されている。
小学生時代、園子や銀に須美たちと共にスマッシュ退治をしていた。それが当時の勇者にとってのお役目であり、満もその事実を疑うことなく信じていた。しかし、とある一件により自分たちのしていたお役目が偽物である事を知る。
そして、自分が当主の座を父親より引き継ぎ、本来のお役目を継承する。それによって、須美たちとも疎遠になった。しかし、それを怪しまれた園子らによって本来のお役目を知られてしまう。この事実の漏洩を防ぐため、ブラッドスタークの手を借りて満の存在ごと本当のお役目に関する記憶を封印する。
その後、満にも分からない『何か』によって西暦の時代に飛ばされる。そこで乃木若葉らその時代の勇者たちと共に、本来の敵――――バーテックス退治に参加していた。この時、使用していたドライバーが破損してしまい、代わりに持っていたスクラッシュドライバーを使用し続けた事でハザードレベルが急上昇した。戦いが終わっても数年の間は西暦の時代にいたため、肉体年齢は高校生ぐらいまで上がっている。
戻って以降は、我堂家の本分である『必要悪』を為すためにファウストを運営している。ブラッドスタークから葛城巧が作り上げたプロジェクト・ビルドの話を聞き、その成長に協力する事にした。ただし、ブラッドスタークが情報を小出しにするためにビルドの必要性に関しては懐疑的。
ちなみに、ハザードレベルは5.3と作中屈指の物。これはスクラッシュドライバーを使用したことに加えて、ハザードトリガーを自分の意志で制御するために無理矢理使用していたために上昇した。本人の適性に加えて、無理をし続けた結果とも言える。常人は普通ここまで行かない。
そこまで無理をするのは、いつか勇者が戦わずに済む世界を作る事。そして、外敵であるバーテックスとその大元である天の神を打倒して本来の土地を取り戻し、一族の者たちをお役目から解放するという夢を叶えるため。
・道具
ビーストドライバー
葛城巧が満のために開発したドライバー。
満は生来、非生物系のボトルを使う事ができない。つまり、生物系のボトルでしか戦えない。その欠点を埋めるため、片一方を必ずビーストフルボトルを使わなければならない代わりに、動物系であれば必ずベストマッチするように改造した。もちろん、ハザードトリガーにも対応している。