原作をリスペクトしながら書いて行こうと思います。
プロローグという名の未来の話
□カルチェラタン伯爵領東部 国境地帯 【地神】ファトゥム
私はカルチェラタンの東部、カルディナと王国との国境地帯へと来ています。
しかも、私が乗っているこの竜車には私以外に二人の<セフィロト>のメンバー……【撃墜王】AR・I・CAと【神獣狩】カルル・ルールルーが控えています。
というのも、戦争……
「《魔法継続時間延長》……《魔法範囲指定拡大》……《魔法精度拡大》……《魔法隠蔽》……各スキルにMPを30万ずつ。《サンドフロート》」
小声で詠唱をしながら、探査魔法を放ちます。
《サンドフロート》は細かい砂を浮かべて辺りを探る魔法です。
ふむ、異常なし、ですか。そろそろ仕掛けてくるかとも思いましたが……。
こうして探査魔法を撃っているのは、戦争が始まる前とはいえ闇討ちしてくる連中がいるかもしないからです。むしろ、シュウなどは『それが可能性をつかむための方法だ!』なんて言いながら【破壊王】としての力を喜々として振るってきかねません。
しかも、あちらには初撃隠蔽の効果を持つ特典武具もあるようですし。厄介なことです。
この戦争に参加するカルディナ側の<超級>は五人。
<セフィロト>からはこの竜車に乗っている三人に加えて【殲滅王】のアルベルトが来ています。
もう一人はフリーの<超級>を今回の戦争のために雇った形になります。
一方であちらの<超級>は推定で六人。
【獣王】ベヘモット
【破壊王】シュウ・スターリング
【女教皇】扶桑月夜
【大教授】Mr.フランクリン
【狂王】ハンニャ
【車騎王】マードック・マルチネス
ただし【超闘士】フィガロは、参加するかどうかは不明なもののログイン自体はしているはずであり、王国のもう一人の<超級>……レイレイはログインした場合は参加するだろうと予測されています。
【戸解仙】迅羽の参戦もどうなるか分かりません。
準<超級>の数を合わせればこちらが有利ではあるはずですが、<超級>の数で負けているのは不安です。
その上、あちらには超級武具の存在もありますし。
ふう……かなり厳しい戦いになるかもしれません。
むしろこの中に【魔将軍】ローガン・ゴッドハルトと【盗賊王】ゼタの二人がいないことを喜ぶべきなのかもしれませんね。
あの二人は皇国を抜けて、フリーになっているという情報があります。そのためこの戦争には参加できないはずです。
こちらももっと<超級>を派遣できれば……。
レジェンダリアとグランバロアの<超級>がカルディナに来ていて、UBMの珠の奪い合いをしてさえいなければ<超級>の数を増やすこともできたのですが。
とはいえ、こちらに勝算が無いわけではません。
こういっては何ですが、私自身、”魔法最強”の【地神】という切り札があります。
今回の戦争の勝敗条件は国境地帯から最も近くにある町まで侵攻すること。
つまり、戦争に参加する<マスター>は侵攻のために国境付近に集まっているものと防衛のためにそれぞれの拠点にいるものの二つに分かれます。
二つに分かれているとしても、かなりの規模の<マスター>が集うため、戦端は大きく広がります。
しかし……私にとって、この地帯付近は全て射程圏内です。
国境地帯に集まってきたマスターはみな、埋葬してさしあげましょう。
なお、戦争に参加していいのは<マスター>のみ。
ティアンはすでに避難してあります。ので遠慮なく魔法を撃てるというものです。
というより、あちらから提示された条件が、私にとって有利すぎる条件なのです。もちろん、カルディナを戦争に引きずり出すためでもあるのでしょうが……。
こちらに【地神】がいると分かっていながらのこの対応。それこそ、奇襲で盤面から排除してくると思っているのですが……。
来ているメンバーも、『死なないこと』を重視して選ばれてますし。
しかし予想は外れ、戦争まであと少し、といったタイミングまでなんのアクションも起こりませんでした。
そうして、そのタイミングで。
「あー、結局
———《
直後、世界が暗転して———
□??? 【地神】ファトゥム
「ここは……。」
どうやら私たちは閉じ込められてしまったようです。
さきほどまでいた国境地帯ではなく、今は鬱蒼と葉を茂らせる一本の巨大な大樹の下へと場所を移されているのですから。どうも境界が曖昧になっているようで、まっとうに出られるようには思えません。その外側も見ることすらできませんし。
ジョブだとは……考えにくいですね。つまりこれは<エンブリオ>によるもの。
カテゴリーとしてはtype:テリトリーもしくはワールドでしょうか。対象を閉じ込める<エンブリオ>のスキル、それによって相手の<超級>を引き離す自信があったからのあの提案ということですか。
カルルの無敵も、AR・I・CAの危険予測も、ただ閉じ込めるだけであれば意味がない。
悪くない、そう悪くない一手です。ここに私がいないのであれば———!
「《魔法発動加速》“ノータイム”、《魔法多重発動》きりよく“200”、《魔法範囲拡大》“3000メテル” 、《魔法射程延長》“1000メテル”――《ボトムレス」
この空間が<エンブリオ>によるものだとするのならば、その<エンブリオ>、もしくは<マスター>を倒してしまえば解除されるはずなのですから。
とりあえず中心にそびえる大樹に向かって魔法を発動しようとします。
しかし、その試みは横から声をかけられることによって中断されてしまいます。
「あー、とりあえず止めてくれないか。【地神】さん。別段それで出られるほど甘くはない作りなんだが、まるで被害がないわけでもねえ。」
その言葉に従ったわけではないですが、この<エンブリオ>の<マスター>がいるのなら、あの大樹を沈めるよりかは幾分か楽かと思い、魔法を中断し声のした方向へと向き直します。
「この<エンブリオ>の<マスター>ですか?」
「ああ。その通り。俺がお前たちを閉じ込めた犯人だな。」
「では———。」
死んでください、と続けようとして、体が思うとおりに動かないことに気づきます。状態異常? 魅了のような<マスター>の意思を無視して体が動くタイプの?
いえ、違います。体はあくまでも自然に動かせます。ただし、目の前のこいつにだけ敵対行動が取れなくなっている———?
「ああ、試したことはなかったけど、<マスター>相手にはそういう風に効くんだな。」
「いったい何を———。」
気を抜くと、そこに誰もいないかのようにふるまってしまいます。確かに認識しているはずなのに。『そこにいない』と感じるのではなく、『そこにいるけど、それがどうした?』と体が勝手に判断しているような。
「これは神話級特典武具の【隠形樹界 カラトナル】の装備スキルだよ。
・・・しかし、このままじゃ会話も大変そうだな。いったん解除するか。
ああ、ちなみに『範囲内の任意の人、物の存在が
特典武具の効果が解除されたからか、先ほどまで使おうとしても使えなかった《真偽判定》のスキルや《看破》も使えるようになっています。
そうして、見なければよかったと後悔することになりました。
それは《看破》によって見えた相手のステータス。
一か所を除いて平均的。いや、超級職に就いていて、下級上級のジョブをすべて埋めているにしては低すぎますが。
問題は一つだけ突出したステータス。
それはHP。《看破》によって十数桁にも及ぶ・・・つまりは千を超え、万を超え、そして億すらも超えて兆へと至った莫大なHP。そして今なお、秒間十億という途轍もない速度で増え続けているのだから……!
「ああ、《看破》したのか。だったら正式に名乗っておこう。
俺は
【隠形樹界 カラトナル】
ステータス半減の効果を持つ代わりに《
《実在証明》の効果は、効果範囲内にあるものに《自然体》の状態異常を付与すること。
《自然体》の状態異常にかかったものはその存在が自然であると認識されるようになる。
<マスター>には精神保護があるので十全に機能しないが(無意識的な部分には多少干渉する。)魅了と同じように、うまく体が動かなくなる。
ドラえもんの『石ころぼうし』に近い。
なお、あくまでも『自然と思わせる』だけのスキルなので、生き物を見たら即殺すような奴に会うと、問答無用で殺される。相手に敵だと認識された場合『敵ならば倒すのが自然』であるので殺される。
何もしない分には使い勝手がいいが、戦闘には向かない。
もともとは【隠形樹海 カラトナル】という神話級モンスターだった。これとの戦闘までが一章になると思います。