説明をだいぶ端折ってるので原作を読んでいないと分からないと思います。
―――生まれる時代を間違えた天才、と呼ばれる者たちがいる。
生きているうちには評価されず、死後、その才能が認められた天才たち。時代を先駆けた天才、先駆者となった天才。
彼らは周りから理解されず、つらく、苦しい生活を送ったのだろう。もっとも、逆にそういったところが後の世で評価されたりもするのだが・・・。
だが、評価されるだけまだマシではないか?
なぜなら———時代を置いてけぼりにした天才がいるのなら、
◆ ◆ ◆
□2045年2月20日
「はああ・・・。」
大学を卒業して数年。私財をはたいて世界中を飛び回ってはみたものの・・・結局俺のやりたいことは見つからなかった。
そんなわけで絶賛ニート生活真っただ中なわけなんだが・・・。
「やることがねえ。」
働け、と言われればそれまでなのだが、もうすでにつつましく暮らしていれば一生何とかなるレベルの金は稼いだ。
ついこないだまではむしろやりたいこと・・・やりたいことを見つけるための旅で忙しかったわけだが、それももう諦めた。
というか、VR技術を使えば家にいながら世界中を歩き回れる(感覚になれる)というのに、わざわざ実際に見に行くとか、よっぽどの酔狂か道楽者くらいしかしないっての。
結局、現地に言って得た感想が『来る前に見た映像と大して変わらねえな』だったのだから無駄に時間をかけてしまった。
データでもなんでもかんでも成り立ってしまう日常ってのは・・・つまらないものだな。できることなら百年くらい前に生まれたかったぜ。
いや、百年前はちょうど第二次世界大戦真っただ中じゃねーか。そんな時期に生まれたくはねえな。
しかしホントにやることがねえ。こうして日がな一日考え事をしてぼんやりと過ごすのにも飽きてきた。
ここは・・・そうだな、ニート仲間にでも何してるか聞いてみるか。
大学の同期で、宝くじ当てやがって「不労所得万歳だぜ! これで働かなくて済む!」とか言ってる友人がいたはずだ。
まあ、そいつはいろんな意味で自分の頭を疑いたくなるような存在なんだが・・・。
とにかく電話してみるか。
「よお。久しぶりだな。」
「・・・いや、ホントに久しぶりだぞ、お前。大学出てから何してたんだ。」
「ちょっと世界旅行にな。」
「・・・相変わらずだな。で? 急に電話してくるなんて何があったんだ?」
「ニート生活の手ほどきをしてもらいたくてな。」
「ふざけてるなら切るぞ?」
「こちらは至極まじめだが?」
「まじめに考えて、数年ぶりに話した友人に『ニート生活ってどうすればいいと思う?』って聞くのだったら俺はお前との友人関係について考えなきゃならなくなるんだが。」
そのあと、上のような押し問答を繰り返し・・・。
「分かった。やることなくて暇だから何かしたいけど、何していいのか分からないってことだな?」
「そういうことだな。」
「なら、最初からそう言えよ・・・。まあ、そんなことなら<Infinite Dendrogram>ってゲームがおすすめだぞ?」
「<Infinite Dendrogram>?」
「そうそう、聞いた事ないか? 一年半くらい前に発売されたゲームなんだが。」
「一年半前か・・・。ちょうどそのころは南米に行っていたな。秘境の密林というから楽しみにしていたのだが、意外と人の手が入っていてがっかりした覚えがある。なんでも十年ほど前に
「・・・。」
「被害の痕も見せてもらったのだが、すさまじいものだったな。大木を何本も力任せに叩き折るなど、象かなにかでも出たのかと思ったぞ。しかし、破壊痕は小柄な動物のものだったし、いったい何がアレをおこなったのやら。」
「・・・その話はよそうぜ。まあ、そのゲームなんだが、お前も絶対気に入ると思うぞ。そんなに高いものでもないしな。」
「ふむ、お前がそこまで言うのなら、やってみる価値はあるか。助言感謝する。」
「いいっていいって。それより、できるならあっちでも会いたいから、最初は『アルター』って国を選んでくれ。
お前がレジェンダリアに行かないか心配なんだが、あとからでも行けるようになるし最初からあそこに行くのはやめた方がいいクマー。」
「くま?」
「・・・なんでもない。ちょっと間違えただけだ! とにかく『アルター』って国だからな!」
「分かったよ。じゃあちょっと今から狩ってくる。」
「お前の発音だとなんか物騒だな・・・。お前今までホントに、どこいたんだ?」
なに、ちょっと未開の地を探して世界中を歩き回っていただけさ。成果はなかったけどな。
・・・そんなわけで、俺は<Infinite Dendrogram>をプレイしてみることにした。
◇
「ようこそ」
「<Infinite Dendrogram>の世界へ~!」
「我々は管理AI11号トゥイードルダム」
「同じく管理AI11号のトゥイードルディーなの~。あなたの来訪を歓迎するの~!」
ログインしてみると、双子にお出迎えされた。
しかし・・・そういえば<Infinite Dendrogram>というゲームが何をするのか知らなかったな。『新世界とあなただけの
「ふむ。つまりここで色んなことができるゲームということか。その割には殺風景のようだが。」
「その発言は間違っているな。」
「ここはログイン画面なの~。あなたにはここでプレイするときのアバターを作ってもらって~」
「そのあと本物の世界へと言ってもらうわけだ。ここはそのための準備場所ということだな。」
あばたー? ゲームなんてほとんどやったことがないから分からないな。
~~説明中~~
「これでアバターの設定は」
「完了なの~。」
「言うのを忘れていたが」
「プレイヤーネーム・・・あっちの世界で活動するときの名前はどうするの~?」
とっさに自分の名前でいい、と言おうとしたのだけどとっさに思いとどまった。
さっきまでいかに現実の姿名前でプレイするかの危険性を説いてもらったばかりのところだからな。ついでと言わんばかりに数々のネチケットとやらも学ぶはめになったが。
この双子、言葉遣いが連続してて、二人で一人みたいな感じだからか変な感じになるんだよな・・・。
とにかく、偽名みたいなものってことだよな? だったら普段使うようなやつがある。
「じゃ、プレイヤーネームは
好きな四字熟語、花鳥風月からとって風月だ。明鏡止水からとってシスイってするときもある。
その後、初期装備や武器、初期費用などの選択をした。一々詳しい説明を求めたからかかなりの時間になってしまった。
武器の装備方法とか細かい物価とか・・・結構大事なことだと思うが、『そんなこと聞くの~? 変わってる~。』と変わり者の烙印を押されてしまった。解せぬ。
ついでに<エンブリオ>とやらの移植を受けた。よく分からなかったので、これまた根掘り葉掘りと聞いてしまった。
結果、<エンブリオ>に関する基礎的な知識は得ることができたと思う。いくつかは教えられないといって秘密にされてしまったがな。ま、それも当然か。
「それでは最後の質問だが。」
「最初に所属する国を選んでね~。」
「補足となるが、この所属国はずっと続くものではない。」
「自分で国を移ることもできるの~。自由なの~。」
七つの国が目の前に表示される。
目の前の双子が色々と言っていたが要するに、
海・・・グランバロア
町・・・ドライフ
森・・・レジェンダリア
河・・・黄河
砂漠・・・カルディナ
それらの複合・・・天地、アルター
こういうことだな。
確かにレジェンダリアには行きたい。こういう未開の森林とはなかなかに心躍るものがあるじゃないか。
しかし、約束は約束だからな。あとで移動することもできると言っていたし、最初の国はアルターにしておこう。
「アルター王国に決めたようだな。」
「それじゃ~最後に一つだけ~。」
「この<Infinite Dendrogram>の世界は全てが自由」
「私たちは何をするのも束縛しない、完全な自由な世界なの~。」
「この世界で風月が」
「己のやりたいことを見つけられるのを祈ってるの~。」
そんな言葉とともに。
俺は青く透き通った空へと投げ出された。
次回もなるべく早く投稿します。