生命の理   作:ゆきうさ

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ようやっとデンドロらしくできたんじゃないかなと思ってみたり。

レベル上げのシーンは八割カットで行きます。


ジョブと決意

 

 ☐アルター王国 首都アルテア  風月

 

 前回の死亡から24時間。待望の<Infinite Dendrogram>の世界へと戻ってこれた。

 ぶっ続けでできるよう準備も万端。リスポーンしたのは死んだ位置じゃなくて、あの城壁の中の町っぽいな。もしセーブポイントに登録されてなかったら”監獄”とかいうところに行かされる羽目になってたらしいからな・・・。ちょっと不安だったが登録されていたようで何より。

 

 

 色々と買い物をしておきたいところではあるが、今の俺の手持ちは5000リル・・・日本円換算での5万円くらいしかない。お金を稼ぐのがどれだけ大変かもわからないうちに使いたくないな。

 

 

 ここはまず、ジョブを手に入れるべきか。

 さて、この町にある<DIN>っていう情報屋の支部はどこだっけなっと。

 

 

 頭の中で、昨日見た地図と今俺がいる位置、見えるものを照らし合わせていく。・・・よし、だいたい把握完了。

 

 

 目的地へのルートが決まったので歩き出す。

 順調に行けば10分ほどでつけそうだ。

 

 

 

 道すがら店頭に並ぶ商品を物色していく。鎧なんかが置いてある店もあれば普通の八百屋もある。驚いたのはモンスターを扱う店もあることか。店主に話を聞いてみたところ、従属キャパシティなるものがあるらしくその範囲内であればモンスターを使役することが可能になるのだとか。

 店の中には昨日見た【リトルゴブリン】なんかもいたが、こいつでも5000リルもする。到底買うことなんてできっこない。

 ま、それにジョブに就いてない今は従属キャパシティが0で、金があっても何も買えないけどな。

 

 

 

 そんなこんなで寄り道をしていたから<DIN>についたのが一時間後になってしまっていた。

 

 

 どういったジョブに就きたいのかを調べていると言うと、専用のカウンターに案内された。

 

「それで、具体的にどのようなジョブに就きたいのですか?」

「そうだな・・・環境に関われるのがいいな。」

「それでしたら【風水師(ジオマンサー)】などはどうでしょう? 魔法職寄りになりますからMPの伸びがよく、地形を利用した魔法スキルを覚えることができますよ。」

「え!? ああ、魔法、魔法ね・・・。そっか、そんなものもあるんだったよな。」

 

 魔法だなんて真顔で口にされたから驚いてしまったが、この世界には魔法があるんだっけか。

 ただ、残念なことに魔法使いになるつもりはないんだよな・・・。リアルの方ではなりそうなのが少し怖いが、うん。

 

「えーと、それ以外で。こう、生物学者とか、地質学者とかそんな感じなのなんだけど。」

「はい。【研究者(リサーチャー)】系列ということですね? それでしたら・・・【生態師(エコロジスト)】というジョブがありますが。」

 

 え、あるのか。こういっちゃなんだが結構意外だ。割とマイナーな分野だと思ってたんだが。

 

「モンスターの数や分布を調べるためにかなり重要なジョブですね。街道の近くからモンスターを遠ざけたり、希少なモンスターを保護できる環境を作り出すなどの試みもされています。【研究者】系統の中でも幅広いスキルを扱うことのできるメリットもありますね。

 専用のスキルは《カウント》、《物質追跡》、それと各種測定・分析スキルになっています。ステータスの伸びはほとんどないですが、強いて言うならばSPとDEXが伸びます。むしろ他がほとんど伸びませんが。」

「おおー!」

 

 機械を使わなくてもそういうことができるようになるんだ! すげえ! 持ってく荷物減らせるじゃん!

 

 

 大変だったなぁ・・・。砂漠に大型機械担いで行ったとき・・・。荷物のせいで水が目標量の半分しか積めなくて、地獄を見たからな・・・。

 死にかけてたのを助けてもらったときには文明の利器に感謝したものだ。

 

「<マスター>には不人気なジョブですよ?」

「問題ないな! よし行こう! 今すぐ行こう!」

「お客さん!? ちゃんと代金を払ってください!」

 

 

 ◇

 

 

 ☐王都アルテア<【研究者】ギルド> 【教授】風月

 

 

「終わった・・・!」

 

 たった今終わらせたクエストによってレベルアップ音が鳴る。 もう一か月もこの生活を続けてるんだが・・・。しかもデンドロの中で一か月じゃない。リアルの方での一か月だ。

 

 

「よお! 期待のルーキー! 今日もクエストか?」

「ハハハ、ようやっとレベルカンストまで行ったんだ。これからしばらくは休む。」

「はぁ!? お前もう【教授】をカンストしたのかよ!? 合計レベルは・・・350!? マジかよ。・・・なあ! これからも手伝ってくれるんだよな!? な!?」

「うっせー。これまではレベル上げと割り切ってたから手伝ってたんだ。これからはもう手伝わん。自分でやれ。」

 

 

 そう、この一か月の努力によって俺のレベルは350まで上がっている。あとは本命の【生態師】と【高位生態師】のジョブを取るだけだ。

 

 

「というかお前、【教授】に転職したの二週間前だったよな・・・? どうやってクエストだけ(・・・・・・)でそんなに上げたんだよ。」

 

 

 そう、俺が『期待のルーキー』なんて名前で呼ばれる理由。

 それはギルドが滞納していたクエストを、かたっぱしから消化していったからに他ならない。

 

 研究者ってのはどいつもこいつも自分の好きなことしかしないからな・・・。めんどくさい書類作成だの、実験の報告書だの、全部たまってんだから。

 途中から細かいこと全部俺に投げればいーや、みたいな発想で今までしてたことすらしなくなったし!

 

 

 ま、おかげでこっちは簡単にレベリングできたんだがな。わざわざ戦闘やるより効率良いし。

 

「普通にやればできるぞー? ちょっと思考を五つくらいに分割して《念書》のスキルで同時に書いていけばいいだけだぞ?」

「それができるのはお前だけなんだよなぁ・・・。ほんと、お前の<エンブリオ>は羨ましいわ。」

「ふう・・・。」

「なんだよ、その溜息。」

「いや、別に?」

 

 

 この思考を分割するの、<エンブリオ>のおかげじゃないんだけどな。俺がリアルから使える、ただの技術だというのに。

 

 

 なのに、こうして並行思考を見せてみると決まって『ああ、<エンブリオ>のスキルか。』って言われるんだよなぁ。最近じゃごまかすのがめんどくさくなったので否定しなくなったが。

 

 

 

 というか、俺の<エンブリオ>が孵化してないのはちょっと見れば分かるだろうに・・・。

 

 

 

 

 そう、初めて一か月。デンドロの中では三ヶ月も経っておきながら俺の<エンブリオ>は孵化していない。いまだに左手の甲には白い卵みたいなものがくっついてる。

 別に不便でもないし放っておいても良かったんだが、さすがに少し気になったので調べてみると、『デンドロの生活が満たされているほど<エンブリオ>の孵化が遅くなる』という理論があった。なんでも、深層意識を読み取るがゆえに、満たされていると感じている人は<エンブリオ>の方向性が決まらないんだとか。

 

 

 たしかに<エンブリオ>に何かを求めてないしなー、と納得したもんだがこのままずっと孵化しないのは困る。なんの能力を持っていなくても構わないから生まれてきてほしいものだが・・・。

 

 

 

「というよりさ。」

「ん? どうした?」

「なんかギルドにいる<マスター>少なくないか?」

 

 

 さっきまではクエストこなすのに必死で気づかなかったが、いつもはそれなりの数いる<マスター>でワイワイガヤガヤしているギルドの中に人がいない。

 

「ああ、お前は知らないのか。今、王都の周りをPKクランが占拠してんだよ。」

「はぁ!?」

「<K&R>に<凶城(マッドキャッスル)>、<ゴブリンストリート>の三つ。おまけに噂じゃ<超級殺し>までいるって話だ。北の<ノズ森林>にその<超級殺し>はいるって話だが・・・たった一人でPKクランと同じ働きができるって・・・頭おかしいよなぁ。」

「うわ・・・。今日から外に行こうと思ってたのによ・・・。ついてねえ・・・。しょうがねえ、なにか適当なクエストでも受けるか。」

「そうか! じゃあぜひ俺の手伝いを!」

「それは断る。」

 

 今から【生態師】に転職もしてこなくちゃならないしな。【生態師】のクエストで、街中でも受けれるのあるんのかね・・・。

 

 

 

 ◇

 

 

 ☐王都アルテア 城壁の上 【生態師】風月

 

 いやー。受けれるクエストがあってよかったよかった。『城壁の上から<ノズ森林>に異変が無いか確かめろ』なんて依頼があって助かった。

 

 話を聞いてみれば<ノズ森林>は国営の森林・・・すなわち木材の供給源らしい。そろそろ大々的な伐採を行おうとしていたところに、今回のPK騒動。ティアンでは怖くて外に出られない———それが例え城壁の上から見るのだとしても———ので、この依頼が残っていたらしい。

 

 それ以外にできそうな依頼もなかったのでゆっくりとやっていくか。

 今からは完全に趣味のようなものだから、必死になってレベル上げしなくてもいいしな。

 

 並行思考なんて、普段の倍疲れるからあんまりやりたいもんではないからな・・・。

 

 

 

 そんなわけで夕方から夜にかけてじっくりと<ノズ森林>を観察していった。

 森のスケッチをしたり、遠くからちらほら見えるモンスターについての考察をしてみたり。

 

 時々、武装した集団が門から出ては森の中で戦闘音が鳴るが、それを除けばかなり平和でのんびりした時間だった。

 

 ・・・あの事件が起こるまでは。

 

 

 

 ◇

 

 

 夜も更けてきて、そろそろ終わりにするかと考えていたころ。

 

 暗闇のなかにソレは現れた。

 ソレは巨大だった、ソレは鋼だった、ソレは兵器だった。

 

 それは———陸上戦艦(・・・・)だった。

 

 

「な———なんであんなものがここに!?」

 

 思わず叫んでしまったが、あることに思い当たった。

 

 

 “正体不明”【破壊王】

 

 

 懐屋系統の超級職に就くその<超級>。何もかもが“不明”で彩られているが、その中でも比較的確度の高い噂がある。

 すなわち、その<エンブリオ>は———戦艦である、と。

 

 

「じゃあ、あそこにいるのは【破壊王】? しかしなんであんなところに?」

 

 そんなことを考えるくらいには俺は暢気だった。

 ・・・戦艦がすることなんて、一つしかないだろうに。

 

 

 

 そのあとに起こったのはその名の通りの”破壊”だった。

 純粋な暴力、それによって<ノズ森林>は跡形もなく焼け落ちた。

 

 

 薄々とは感じていた。

 この世界では、命の扱いが軽い。

 食べるためではなく、自らの身を守るためではなく、他の生き物を殺さなくてはならない。

 

 いや、生きるために、守るために、経験値(・・・)というわけのわからない物のために他者を殺さなくてはならない。 

 

 

 仕方なくは———あるのだろう。 

 これがこの世界の(ルール)なのだから。

 

 

 だが、それでは。弱いものは一生搾取されろということか? たとえ強くなったとしても、待っているのはさらなる強者からの意味なき略奪だというのか?

 

 

 

 

 

 だとすれば俺は———俺は———!

 

 

 

 

『了解しました、マスター。マスターの願いはソレなのですね。』

『マスターの願いは、私達が叶えるの!』

 

 

 

 そんな、声が、聞こえた気がした。

 

 

 

 

 気づけば、その双子は目の前に立っていた。

 

「お初にお目にかかります、マスター。僕たちはマスターの<エンブリオ>。」

「マスターの願いを叶えるために生まれてきたの!」

「名前を【生命種 アダム・イブ】と言います。」

「type:アポストル・メイデンwithガードナーなの! 珍しいの!」

「ちなみに僕がイブで。」

「私がアダムなの!」

 

「「これからどうかよろしくお願いします(なの)!!」」

 

 





アポストルとメイデンの同時発現とか普通じゃあり得ないような気もしますが、主人公の性格的にこうなるのが自然かなと思いました。
あと、せっかくの二次創作だから特別なのを出してみたかったんや・・・。


あと、主人公のジョブですが
【研究者】【教授】・・・各計測・分析スキルを取って【生態師】でも使えるようにするため
数学者(マスマティシャン)】・・・解析系のスキルを得るため
書記(セクレタリー)】・・・《念書》のスキルを得るため。
絵師(ペインター)】・・・スケッチをうまくするため。
測量士(マッパー)】・・・地形の把握をしやすくするため

 という構成になっています。戦闘力皆無です。
 おまけにアポストルなので<エンブリオ>の補正もなしです。超級職取るまで戦闘力は一般人以下です。



 あと、《念書》とは念写の文字バージョンです。思うだけで文字が書けるようになります。
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