生命の理   作:ゆきうさ

7 / 12
完全に第三者から見た原作第三章の話です。
主人公に心情を語ってもらいます。
が、だいぶぶっ飛んだことを言い出すので賛否両論分かれるというか、『何言ってんだコイツ』みたいに思われるかもしれませんが、それが主人公の個性だと思ってください。


フランクリンのゲーム

 ☐<ブリティス伯爵領>港町 【生態師】風月

 

 その後も何事もなく、数日かけて港町にたどり着いた。

 正直PKグループの一つや二つは出るもんだと思ってた。考えていた命乞いのセリフが無駄になってしまったじゃないか。

 

 ・・・今のパーティーだとホントに命乞いしかすることないから、早く何かしらの戦闘手段を見つけたいんだよな。

 

 

 そういえば、シュウもこのゲームやってるはずなんだよなー。一緒にパーティー組んでくれねーかな。従魔のレベル上げしてくれるのでもいいけど。

 

 しかしアルターにいるって言ってたのにそれらしい姿をまるで見ていない。あいつだったら見ればすぐわかると思ったんだけどなー。変なオーラあるし。

 

 でも今のところ見てて気になったのはクマの着ぐるみとかなんだよなー。さすがにあいつもあんな格好しないだろうし・・・。

 

 

 

 

 さて、時刻は昼。目当ての海も見てみたいし海産物も楽しみだ。当面はこの町を拠点にするつもりとはいえ、やりたいことは多い。

 

 さて、とりあえずはこの町の<【生態師】ギルド>に顔を出すとして・・・。

 

 

 

 ◇

 

 

 港町の雰囲気を満喫しているうちに夜になった。

 せっかくなので外の屋台で潮風を浴びながら晩御飯を取ってみた。食べていたのはイカスミのスパゲッティ。しかし何故か黒ではなく真っ白の。

 

 見た目は完全にカルボナーラなんだが味はイカスミ。解せぬ。この世界のイカは白い墨を吐くらしい。

 

 

 そしてアダムも食事をしている。海の近くだからできること・・・シロウオの踊り食いをしている。なんだかんだで食事を楽しんでるよな、こいつ。

 タマとクロには、悩んだ結果いつも通りの食事となっている。海産物食べられるのかね、こいつら。

 

 イブも食べられそうなのが無かったから、アメ細工を渡している。

 

 ・・・いや、食べ物だからな? マスターからもらった大事なものですとか言って保管しなくていいからな?

 

 そんな穏やかな夜、だった。

 

 

 

 

『《喚起―――【RSK】》』

 

 この声が響くまでは。

 

 

 

 ◇

 

 

 それは【大教授】フランクリンが起こしたテロだった。

 ギデオンで行われていた<超級激突>、その直後を狙って。

 

 さらにあろうことか、こいつは自身が起こしたテロの映像を王国の主要都市に流しやがったのだ。

 映像はフランクリンが【RSK】なるモンスターを呼び出したところから。それに対峙するは近衛騎士団。全員が【聖騎士】のジョブに就いた、この国でも有力なティアンの集団。

 

 

 

 その映像を見た人の行動は様々だった。

 今からでもギデオンに駆けつけようとする<マスター>や近衛騎士団の強さを信じて『フランクリンのモンスターごときには負けんさ!』などと騒ぐティアン。

 

 とはいえマスター、ティアン問わず一番多かったのは静観を決め込む者たちか。ギデオンから遠く離れたこの場所ではかなりの割合で対岸の火事だと思ってる奴がいた。港町であるここなら、いざとなれば簡単にグランバロアへと亡命できるのも大きいかもしれない。

 

 

 

 それでも、最初のうちはまだ半分くらいは信じていたように思う。近衛騎士団の強さを、そして勝利を。

 映像越しでもわかる。フランクリンの出したモンスター・・・【RSK】はせいぜい純竜級のモンスター。ならば勝てる、と。

 

 

 しかしその信頼が音を立てて砕けるのは早かった。

 

 近衛騎士団・・・おそらくはこの国のティアンで最強の集団が、まるで手も足も出ずにたった一体のモンスターに蹂躙されているのだから。

 

 

 これによって静観する者、というより言葉を失ってお通夜のような状態になっているものが増えた。

 『もう王国も終わりかもな』なんて言葉があちこちでささやかれていた。

 

 

 

 

 しかし、その状況を打ち破った一人の<マスター>がいた。

 ソイツはいまだレベル100にも満たない状態で彼自身の天敵・・・【レイ・スターリング・キラー】を倒した。フランクリンの仕掛けていた対策を超え、王国にまだ希望はあるとその掲げた拳で示した。

 

 

 それに応え、その努力を無為とあざわらうかのように全力を出すフランクリン。56826体のモンスターの群れを呼び出し、ギデオンを襲わせた。

 その戦力は圧倒的で、個人の奮闘むなしく結局はフランクリンの勝ちで終わるかと思われた。

 

 

 そこに登場したのが【破壊王】。

 

 破壊王の名にふさわしい破壊っぷりを披露し、フランクリンもその配下のモンスターも全て殲滅させきった。

 

 

 王国はいまだ健在なり、と示すこの二人の活躍は遠く離れたこの港町でも存分に語られ、静かな夜は一転、騒がしい夜へと変貌した。

 

 

 その間、俺が何をしていたかというと・・・ベッドの上であおむけに寝っ転がっていた。

 

 一人になりたかった。自分の見たことを整理したかった。俺にとっては、とてもではないが『うわーすごい』程度で終わらせていい問題ではなかったのだから。

 

 

 モンスターを・・・生命を作り出すことができるというのは知っていた。研究者系統には《モンスター・クリエイション》というスキルがあり、俺自身は取得していないものの目にする機会があったからだ。

 

 生命を作り出すということに関してとやかく言うつもりはない。そんなものはリアルでだって行われている。大学の実験で俺自身がやったことだってある。

 

 

 問題はその歪さ。

 

 死ぬことを前提に進軍しかしないモンスター。たった一人の人間を殺すために作り出されたモンスター。生殖器もなく、捕食することもなく、ただ戦うことを運命づけられた生命。

 

 生命というよりは機械というべきかもしれない、それほどに生命として破綻したモンスターたち。

 

 

 ああ、歪で、歪で、歪で―——そして、なんと美しい(・・・)

 

 

 美しいというより芸術的、の方が正しいかもしれない。

 

 たった一人の人間に対する天敵、死ぬまで戦うことをやめない好戦的で勇敢な生物、強大な力をその身に有した生物。生命として破綻しているとしても、それは一つの芸術品だった。

 

 そう、完成されていて、洗練されている。その在り方は歪んでいるとしても、その在り方が間違っているとしても、その在り方は輝かしいものだった。

 

 

 それが分かる。分かった。分かってしまった。

 

 俺自身も【研究者】の端くれで、生物に関してはそこそこの知識があるから。

 しかし、だからといってあのようなモンスターが作れるかと聞かれると、否と返すしかない。スキルのあるなしの問題ではなく、生命の設計図を書くなんて真似は俺にはできないから。

 

 

 ま、時間と労力をかければ再現はできるとは思う。その場合あの【RSK】のようなモンスターを一体作り出すのに一生をかけてもいいなら、という条件になるが。

 

 

 

 要するにこの身を包んでいるのは敗北感なのだ。

 俺の方針とはややずれた位置にいるにしても、Mr.フランクリンは俺のはるか先を歩いている。そのことが分かってしまったが故の。

 

 

 

 そしてもう一つ。

 ノズ森林の時に分かっていたことではあるが、この世界の命の軽さはヒドイ。

 

 たった一人で五万の命を作り出した【大教授】

 その五万の命をたった一時間と少しで消した【破壊王】

 

 

 それだけのことができる、まさしく一騎当千とも言える者がいる中で、それらの強者にただ踏みつぶされるだけの命もある。今回だって、ジャンド草原に住んでいたモンスターが戦いのあおりを食らっているはずだ。

 

 理由があって狩られるのではなく、ただ戦いの余波にまきこまれただけなのに、何もすることができず散っていった多くの命があるはずだ。

 

 

 ああ、腹が立つ。

 数万の命が失われるような機械を作った【大教授】が。

 その命を奪った実行犯である【破壊王】が。

 最低五万の命が失われた後だというのに、そのあとすぐに騒げる多くの者の無神経さが。

 

 そしてなにより・・・それをただ見ることしかできなかった自分自身が。

 

 

 

『マスター。』

 

 なんだ。今は話しかけないでくれって言っただろ。

 

『マスターの命令は遵守したいのですが、今回ばかりは破らせてもらいます。僕は・・・マスターにこのことを問わなければならないんです。

 

 

 マスターは、この世界が好きですか?』

 

 はぁ? この世界が好きか、だって?

 

「そんなん決まってるだろ。嫌いに決まってるよ、こんな世界。こんな風が吹けば飛ぶくらいしか命の重さが無いこんな世界なんて、大っ嫌いだ。」

 

『・・・では、どうしてこの世界に来るのをやめないのですか? この世界が嫌いなのでしたら、こっちに来なければいいはずです。現に、そうして二度と戻ってこない<マスター>も数多くいると聞きます。』

 

 この質問、始めたころの俺ならこう返していただろう。

 『この未知の世界を、俺自身の手で解明するため。』と。  

 

 この気持ちは偽りない。実際、今の俺もそう思っている。

 しかし、こちらに来てから気づいた・・・そう、たった今気づかされた願いがある。

 

 

 俺の、わがままで利己的で傲慢な願いではあるが———

 

「―――守るため、だ。」

 

 

 それが軽く散らされる命を見て俺が願ったこと。

 

 

「失われるはずだった命を、脅かされている命を、少しでも救いたい。それが今の俺がやりたいことなんだ。」

 




主人公の主義として命の重さは人間だろうと虫だろうと大差ない、というのがあります。



さて、次回で第四形態に進化します。ようやくエンブリオの能力公開できます・・・。

今回は少し遅れたので次回は早めに投稿しようと思っております。

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