だけどこのタイミングで進化してもらわないと・・・。
フランクリンが起こした事件の翌日。
『マスター。僕たちは第四形態に進化しました。しかも、これまでと違ってかなり大きく変化したようです。』
『TYPEも変わったし、必殺スキルも覚えたんだよー!』
とのことだったので、その確認のために町の外へと出かけることとなった。
「しかし、どういう風に変わったんだ?」
道すがらに、話だけは聞いておこうとする。
「まず初めに、TYPE:アポストル・メイデンwithガードナーがTYPE:アポストル・メイデンwith
「アナザーワールド? なんだそれ、聞いたことないんだが。ガードナーの派生先はガーディアンかレギオンじゃなかったのか。」
「もともとがガードナーというにしては異質でしたからね。初期からTYPE:テリトリーでもおかしくなかったとは思いますが、僕の小ささゆえにテリトリーではなくガードナーとして扱われたのでしょう。」
「それでねー、アナザーワールドになったから、私達はまったく別の
空間そのもの?
「小さな異世界、ということですかね。リアルを知っているマスターからしてみれば、この世界も異世界みたいなものかもしれませんが・・・。」
うーん、よく分からん
ま、聞いても分からんものは体験してみるしかない。あとに回すしかないな。
「それで、必殺スキルはどんなのだったんだ?」
必殺スキル。
上級・・・第四形態以降となった<エンブリオ>は、自身の名を冠したスキルを持つことになるという。それはその<エンブリオ>の特性が発揮された、<エンブリオ>の持つ最大のスキル。
<マスター>と<エンブリオ>にとっての最高の奥の手。
ゆえにそのスキルは必殺スキルと呼ばれることになる。
・・・ぶっちゃけ、このままだと必殺スキルも出ないんじゃないかなーなんて思ってたのだが、無事に獲得することができてよかった。
「スキルの名前は《
「なんていうか、私達の端末を作り出すスキルなのー!」
うん、さっぱり分からん。
街中じゃ使っちゃダメなスキルだというので、こうして外に出てきているわけだが・・・使ったところで果たして理解できるのか。
さて・・・これくらい離れれば大丈夫か?
かなり町から離れたところで足を止める。
さて、この必殺スキルだが、使う段階で消費SPを自由に決められるらしい。
今の俺のSPがだいたい7000くらい。【生態師】と【高位生態師】カンストすれば1万に届くかな? くらいだ。
他の戦闘職と違ってSPを回復させるようなスキルもないから、あんまり無駄遣いはしたくないんだが・・・。
「しかし、マスター。少ないとそこまで効果を発揮することはできません。2000ほどは使ってほしいのですが。」
言われてしまったからには仕方がない。消費SPは2000に設定。さあ、その効果を見せてもらうぞ。
「―――《
そして生み出されたのは
・・・まあ確かに、アダムはリンゴの木っぽいなとは思っていたが。しかし、モチーフ通りだとするならばアレは禁断の果実ということになるのだが? だいたいこんな果実を生み出すのが必殺スキルなのだとしたら期待外れもいいとこなのだが。
しかし、それで終わりではなかった。
空中に生じた黄金の林檎はゆっくりと落ちてゆく。そして地面へと触れ―——芽吹いた。
俺の目の前であっという間に育ち、成木となったリンゴの木。アダムのガードナー体であった木とそっくりだ。
これがアダム自身でないというのは、その本人がすぐ横で見ていることから分かる。なるほど、これが端末を生み出すということか。
「―――で、これ、何ができるんだ?」
「「え!?」」
リンゴの木があっという間に生えた。うん、すごいな。で、それで?
「えっと、必殺スキルの効果はここまでなんですけど。」
「私たちが持ってるスキルを、この木たちも使うことができるのー。一応。」
え。こいつらが持ってるスキルって・・・なけなしのHPを消費してほとんど役に立たないような葉を生み出すスキルとか、範囲内にいる生物(植物限定)にHPを譲渡するスキルじゃなかったか?
うわ、聞くのが怖い・・・でも聞かなきゃ始まらないしな・・・。
「で、この木にあるHPってどんくらいなわけ?」
さてさて。これで200とかだったら・・・必殺スキルすらも産廃ってことだよなぁ。
「1000万です。」
そーかそーか。1000とは思ってたよりは多かったな。よかったよかった・・・じゃない!?
「え!? 1000万!? 1000の間違いじゃなくて!? 桁四つくらい間違えてないか!?」
「この必殺スキルを使うと、消費したSPの半分の二乗の十倍がこの木自身のHPになるんです。」
消費したSPは2000。
それの半分の1000を二乗すれば1000000。100万になる。
そのさらに十倍だから、うん、1000万になるけど。
俺の<エンブリオ>が有能に見えてきた。そんな馬鹿な。こいつらが有能なわけがあるか。今までのことを思い出せ。
・・・そういえば、<エンブリオ>の持ってるリソース量は一定説っていうのがあったな。どんな<エンブリオ>も各形態ごとに見ればばらつきはあれど、最終的にたどり着く場所・・・つまり<超級>になってしまえばリソースとして与えられている量はおんなじだっていう説。
あれって、弱い<エンブリオ>を当てたやつを慰めるためのものだと思ってたんだが・・・まさか真実だったのか?
しかし・・・このスキルがあればいろんなことができるぞ。とりあえず、アダムに足りなかったHPを補うことができるようになったのと、ほとんどアダム専用になっていたイブの能力を他にも適用できるようになったわけだろ?
・・・あれ、意外とできることは少ないか? アダムのスキルも結局タマとアダム自身の飯を作るためにしか使ってなかったし。
「あとねー、私には《果実生成》っていうスキルが増えてるのー。」
「僕には《成長促進》という一般スキルが増えてますね。効果は対象のHPを消費させ成長を早めることができるといったところです。」
アダムの《果実生成》は前の《葉生成》の進化版か?
確認してみたところ、一つ一つを作り出すペースは葉に比べて落ちるものの、変換効率が上昇したスキルだった。
「そういや、これってどのくらいこのままなんだ?ずっとこのままか?」
「いえ、消費したSPの半分の時間だけです。今回は1000秒。約17分ですね。」
「そんなしかないのか。だったらさっそく新しく獲得したスキルを見せてくれ。」
そうした検証の結果、イブの《成長促進》はかなり使えるスキルだということが分かった。《育成》のおかげでHPを供給しながら行えるので、1000万のHPを余すことなく使える。そのせいでスキルをつかった辺りだけ植物がすごいことになってるが。
一方でアダムの《果実生成》は使いづらかった。というのも、作ってもらってる間にスキルの終了時間が来てしまい、何も作ることなくってしまったのだ。ここら辺は消費SPを増やせれば解決できる問題ではあるので今までに比べればかなりの成長をしたんじゃないだろうか。
そして一つ、気になってることが。
「結局、お前らのガードナー体、じゃなかったアナザーワールドだっけ? そっちの方を見れてないんだが。」
「ああ、そうでした!」
「すっかり忘れてたのー。」
「あちらは完全な別空間なので普通の方法では行けません。」
おい待て。だったら俺もいけないとか言い出さないよな。
「いえ、そんなことは。しかし、あちらに行くには一ステップ踏まなくてはならないのです。」
「必殺スキルを使わなきゃいけないのー。」
必殺スキル? 今使ったやつか?
「違います。必殺スキルである《アダム・イブ》を
「待て。ちょっと待ってくれ。必殺スキルってそんな風に分割できるものなのか?」
そもそも、スキルを分割して使うことができるっておかしくないのか?
「普通はできないはずなのー。」
「おそらく、必殺スキルが二つの工程に分かれているからこそできるのでしょうね。」
「ちなみに
こいつらが急に優秀になりすぎてて、少し怖いと思った今日この頃。
・・・こんなんだとUBMにでも出くわすんじゃねーか? と不安にもなった。
そんな予感は見事的中することになり、俺はこの数日後、神話級にしてレベル100まで到達したUBM【隠形樹海 カラトナル】に遭遇することになるのだった・・・。
【生命樹 アダム・イブ】
TYPE:アポストル・メイデンwithアナザーワールド
“大地とりんごの木が生えた空間”という<エンブリオ>
テリトリー系列ではあるが、結界のようなものではなく本当に全く別の異空間である。どちらかというと監獄が近いと思われる。
現状、出ているTYPE:ワールドがカグヤのインベンションワールドしかなかったので判断できなかったが、“浸食する世界”がカグヤなら、“独立した世界”があってもいじゃないか、と思う。
<エンブリオ>としての特性は『生命の増幅・守護』。
風月の蹂躙される他者に対しての危機感と、それらを守りたいと思う自身の使命感が重なったゆえにアポストルとメイデンの両方を発現。
生命の増幅をアダムが担当し、守護をイブが担当するがゆえに、実質的には二つの必殺スキルを得た。
風月の願いを叶えるためにリソースの大半は必殺スキルに注がれている。それ以外のスキル(<エンブリオ>としての固有スキルは)生じない予定。
《
黄金の林檎を生み出すスキル。単独で使った場合、回復アイテムとして存在することになる。
食べることで消費したSPの半分のHPを毎秒回復し続けるようになる。
持続時間は消費したSPの半分の時間(秒)。
消費SP2000で毎秒1000回復するようになるという壊れスキル。必殺スキルだし、多少はね? まだ、首をはねたり状態異常にしたり、そもそもHPの上限量以上のダメージ与えたりといくらでも対処できるしね?
なおクールタイムは15分、さらには効果は重複する。
まだ第四形態ではあるけれども、今後進化するたびに倍率は上昇していく模様。第六で等倍、<超級>になれば10倍にまでなる予定。
《
【アダム・イブ】の世界を一瞬だけ現実とつなげ、《アダム》で作り出したリンゴを自らの端末とするスキル。
《アダム》なしで使った場合、対象が存在しないことでエラーが起こり、空間を繋げる効果のみが発動。対象領域にいたものを強制的に【アダム・イブ】の世界に連れ込む(もしくははじき出す)スキルとなる。
相手の同意なしに自前の空間に引きずり込めるという点で、プロローグにて悪用されていたが、本来は守るべき対象を自分の用意した空間へと連れていくスキルであった。
二つとも並の必殺スキルくらいの効果があると思われるが、その二つを同時に使うことで現実に【アダム・イブ】の端末を生み出すことのできるスキルとなる。
ぶっちゃけ戦闘しようと思ったら個別につかった方が強いわけだが、主人公の願いである『守りたい』という願いを叶えるために世界を変えようとこのスキルの形になった。
・・・これが超級被害担当もとい環境担当管理AIキャタピラーさんにとっての不幸かどうかはさておき、植林だったりモンスターの保護だったりができるようになった。これ一台あるだけで世界中の環境問題解決できるんじゃねーかな? っていう<エンブリオ>を目指してみた。
作者的には『必殺スキルが二つだったらすごくない!?』みたいな軽い気持ちだったのだが、書いてみたらいつの間にかこうなっていた。
まだ“生命最強”を名乗るには程遠いが、あとは【生命神】に就くだけで完成する(予定)。
それまで拙作を楽しんでいただけたら幸いです。