太陽系第三番惑星『地球』
途方もない時間をかけてその地上に生命を産み、それを見守ってきた母なる青い星である。
そんな地球での長い長い歴史の中で、ある一人の人間と一人の巨人が自らの体を顧みず、大いなる意志に立ち向かった誰にも語られない神秘のストーリーがあった。
これは、そんな二人の繰り広げてきた激闘の数々を記す物語である・・・
◆
そう遠くない未来、人類は科学を発展させ近くの惑星、第四番惑星『火星』にまで宇宙開発の手を伸ばしていた。宇宙的に見ればまだまだ狭い距離だがついに人類は宇宙進出を果たしていたのだ。
火星には探査基地が作られ、日々研究が進められている。
近年では深刻であった資源不足の問題も宇宙開拓のお陰で解決されつつあり、人口増加も度重なる調査の結果、火星は人類の生存できる惑星という事がようやく解明されたため、実行することが出来るようになった火星移住計画により解決されるだろう、と言われている。
文明は進化し、人は新たな時代へと足を踏み込み始めているのだ。
しかし、その反面新たな問題が浮上してきていた。
それは地球各地に『怪獣』と呼ばれる正体不明の巨大生物が突如として出現し始めたこと、太陽系付近で謎の宇宙生命体が観測されたことである。
『怪獣』はなんの予兆もなく、本当に突然その姿を現し始めていた。その多くは出現すると人間の領域に侵入し、膨大な被害を出したあと、まるで遊びを終えた子供のように地中の中に帰っていった。今でもその被害は世界中で後を絶たない。
そのため世界政府は急遽として怪獣対策組織を世界中に設置した。
その名は、
『Universal Multipurpose Agency(国際的軍事組織)』
通称、『UMA』である。
彼らは怪獣の調査・対策をし、人々の生活を守ることが使命である。世界中の優秀な人材が集められて防衛チームとして世界中で日々、調査・観測を続けている。同時に、惑星の調査なども彼らの仕事でもある。
その隊員の一人、日本支部所属、惑星調査員の一人として派遣された『新導飛鳥』。若くして『UMA』に入った心優しく、そして熱い魂を持った青年である。彼は昔から宇宙に憧れを抱いていたため、将来は『UMA』に入隊する事が夢であった。そして彼は必死の努力の元、『UMA』に入隊することが出来た。怪獣の脅威から人々を守るため、また、何度でも宇宙を飛ぶために隊から外されないよう、日々精進している。
そんな彼は同じく隊員である『音村真』、『倖田想』は前述した謎の宇宙生命体の調査のため、宇宙戦闘機『ハマービートルα・β』で火星を訪れていた。
『ハマービートルα』に搭乗した倖田隊員は火星の表面に見えて来た巨大基地を見てボヤく。
「いつ来てもこの土地に不相応な基地だな。こう、もっとなんとか出来なかったのか?こんなメカメカしい如何にもって感じじゃなくてさ、景観に合わせたものとかに。」
「はぁ・・・毎回毎回うるさいわね。なら上層部にでも交渉して来たら?見た目が嫌なので改修して下さいって。」
「いやそれはちょっと・・・伊手山隊長に殴られそうだし。」
「ならいちいち言わないで。喧しいのよ。」
「うす・・・」
「あ、あははは・・・」
ボヤいた小言を同じくβに同乗している音村隊員に叱られ、見るからに落ち込む倖田隊員。そしてそのコントじみた会話を無線越しに聞いて一人αに搭乗している飛鳥は苦笑いを零す。彼らにとってはいつも通りの会話が繰り広げられている。
基地近くに着陸した三人はそれぞれのハマービートルから降り、基地内部へとヘルメットを外しながら入っていく。中にある研究室へと向かい、歩き続けると巨大な金属ドアが姿を現す。
『ピピッ』
音村隊員がドアの隣にある認証装置に隊員カードを差し込むと重々しい音ともにドアが開いた。それと同時に倖田隊員がある人物を見つけて声を上げた。
「あっ!博士!」
「やぁ、久しぶり。よく来てくれたね三人とも。」
三人を出迎えたのは火星基地にて調査をしている研究者の一人である『浜田 昌』。特徴的な天然パーマをしているメガネにくたびれた白衣を着た三十代くらいの男性だ。その見た目から付いたあだ名が『博士』である。まぁ実際にそれほど頭が良いので彼にピッタリのあだ名だろう。
「いやー最近は研究ばっかで体が鈍っちゃってさー。全身バッキバキだよー。」
「それは大変ですね。トレーニングルーム使ってないんですか?」
「うーん、ここ最近はあそこを使う時間もなくてさー。ぶっちゃけ碌に風呂入る余裕すらないんだよ。あの謎宇宙生物のせいでね。あ、そういえば────」
「浜村博士、そんなことよりも例の宇宙生命体についての話を詳しく。」
飛鳥と浜村が最近のことについて楽しく談笑していると、音村隊員が鋭い目つきで二人を睨みつけ、本題に入るように目で訴える。彼女の十八番の鬼睨みだ。彼女の睨みの前では地球の怪獣ですら動きを止める、と噂されている。二人はその鋭く尖った目に怯み、無駄な会話を止めて本来ここに来た目的の話に入った。
「お、おほん。オーケー分かった。本題に入るからそんなに睨まないでくれよ音村君。綺麗な顔が台無しだよ?」
「余計なお世話です。」
浜村博士は必死のお世辞を間髪入れずつっけんどんに返され少し落ち込んだ様子で話はじめる。
「相変わらず冷たいなぁ・・・さて、切り替えて、と。例の宇宙生命体についてだが、まずはこれを見てくれ」
そう言って目の前のパソコンをカタカタと手馴れた動作で軽く操作し、モニターに何かを表示する。
「これは・・・」
「あぁ、つい先程確認した謎の宇宙生命体の位置と大まかな姿だ。奴は今冥王星と天王星の中間をゆっくりと移動している。」
モニターに表示されていたのは、まるで生物とは思えない姿をした緑色をした粒状のアメーバのような物体であった。形は地面にぶちまけたスライムのような形をしている。
「・・・これ、生きてるんですか?」
「恐らくね。確認したところ、微弱だが生物反応がした。正真正銘、宇宙生命体だよ。表面を確認すると少しずつ分裂を繰り返してるが事がわかる。」
至極真っ当な感想に浜村博士はあっけらかんと答えた。
様々な怪獣を見てきた三人でも、見たことのない摩訶不思議な生物に目を見張り、モニターを見つめる。と言っても、アメーバ自体そこまで珍しくもないが、これは大きさが桁違いだ。下手したらこの基地並に大きいのではないだろうか。
そのアメーバ状の生物はゆっくり、ゆっくりとモニターでは動いているのか動いていないのか分からないほどの速度だが、現在進行形で移動している。
「でも、このまま行くと火星に到着しますよ?それどころか地球にも着いてしまうんじゃ・・・。」
「大丈夫大丈夫、本当にのろのろと移動・・・てか飛行してるだけだからこれがここに来る頃には地球や火星は違う所にあるから素通りしてしまうよ。回収出来ないのは残念だけどね。」
ケラケラと笑った後にコーヒーを一飲みする博士。能天気にも程がある。事実、本当にその速度は遅いのだから心配をすることもないだろう。そう思い、音村隊員と倖田隊員はモニターから目を離し博士と報告の為に話を始める。
飛鳥も問題ないか判断し、モニターから目を外そうとする。だが・・・
「あれ?」
異変に、気づいた。
先程まで反応を示していた宇宙生命体が突如として、その反応を消した。まるで忽然といなくなってしまったように、いきなり消えてしまったのだ。明らかにおかしい。あんなに遅かったのに、急に姿を消すなんて・・・パソコンを操作し、もう一度宇宙生命体を探す。
そして、モニターが再び宇宙生命体を確認した時、それがいた場所は・・・
「なっ・・・!?」
『バゴオォオオオォオンッッ!!!』
「うおぉっ!?」
「な、何!?」
「な、何が起こってるんだー!?」
それと同時に、爆音が響き基地全体が大きく揺れた。ガタガタとデスクが揺れ、書類などがこぼれ落ちる。さっきまで浜村博士が飲んでいたコーヒーもコップごと床にぶちまけられていた。少しすると基地内部全体に緊急事態を知らせるアラートがけたたましく鳴り始める。
飛鳥達は一瞬パニックになったが鍛え上げてきた持ち前の精神力で何とか平常心を取り戻し、すぐに浜村博士へと指示を仰ぐ。
「博士!外部モニターを!」
「あ、あぁ!分かった!」
未だ爆音が鳴り止まぬ中、指示を出された浜村博士は高速でコンソールを操作をして、中央の巨大モニターに外の様子を映し出す。
そこに映し出されたのは・・・
「こいつは・・・!」
『ギュオオォォオオォオッッ!!』
さっきまでいなかったはずの巨大な怪獣がそこにはいた。その怪獣は異様な見た目をしていた。剥き出しの脳に人の顔のようにも見える顔面、そして特に巨大な触手と、その他にも無数にある小さな触手にまるでナメクジのような巨大な胴体。あまりにもグロテスクな見た目をしたそいつに、飛鳥達は思わず吐き気を催す。
怪獣は口や触手から緑色の光弾を発射して基地を攻撃している。先の爆発はこいつの仕業だったのかと飛鳥は納得する。頑丈な造りをしているこの基地がちょっとやそっとで爆発するはずが無い。だが、相手が怪獣ならばそう出来るのも頷けるからだ。
そして、浜村博士があることに気付く。
「・・・あの怪獣、さっきの宇宙生命体の反応と全く同じだ・・・!」
「え?」
「それってつまり・・・!」
「今基地を襲ってるのが『あの』宇宙生命体って事だよ!」
有り得ない、と飛鳥は言いたかった。だが、実際に自分の目で見たためそうは言えなかった。自分の目の前で生体反応を消し、いつの間にかここにいた怪獣を。まるで瞬間移動でもしたのではないかと思う程一瞬でここにやってきた怪獣を。モニター越しとはいえ、見ていたのだから。
「マズイぞ!このままだと基地を完全に破壊される!それに研究員達が逃げる暇もない!」
半狂乱しながら浜村博士が爆発から発生した火を食い止めるためにそのポイントに防壁を下ろしていく。
「なら私達が!想!飛鳥!ハマービートルで怪獣を食い止めるわよ!出来るだけ長く、皆が避難できるまで!博士!地球に救援要請を出してください!」
「分かった!任せてくれ!」
「頼んだわ!こっちも行くわよ!」
「「了解!」」
博士に敬礼をした後、三人は急いでハマービートルに搭乗、これ以上の進行を食い止めるため謎の怪獣の元へと向かう。
走りながらヘルメットを装着してハマービートルβに倖田隊員と音村隊員が搭乗し、それと同時に飛鳥もハマービートルαへと搭乗して離陸する。
「これ以上やらせるかぁ!」
「くらえ!」
倖田はハマービートルβに搭載されている大型レーザー砲やバルカン砲で、飛鳥はαのミサイルで怪獣に攻撃を開始する。それにより、怪獣の意識は基地からハマービートル達に向けられ、一時的に基地の破壊は止められた。
しかし、怪獣はハマービートルの攻撃を平然と受けている。少し鬱陶しそうに触手で顔を撫でるだけであまりダメージを負っている様子はない。
「なんて奴だビクともしないぞ!」
「なら貫通弾で!」
怪獣がミサイルやレーザー砲をものともしないのを見て飛鳥は武装をミサイルから装甲貫通弾へと変更し、怪獣の頭部へと発射する。
バグォォオン!
『ギィイィイイ!?』
頭部へモロに命中した装甲貫通弾は怪獣の皮膚表面を貫通し、怪獣へダメージを与えることに成功する。気持ち悪い紫色の血液が辺りに飛び散る。
「やった!見ました?僕のファインプレー!」
ダメージを負わせたことで飛鳥は調子に乗ってガッツポーズをとる。
だが、これが怪獣の怒りを買い、今度は飛鳥の乗るハマービートルαへとヘイトが向けられてしまった。
『ゴォオォアアァアァアッッ!!』
まるで地鳴りのような恨みの声をあげながら、ハマービートルαへと光弾を吐き出して撃ち落とそうとする。
「ぐっ!くぅ!?」
飛鳥はなんとかそれらを躱していたが、全ては躱しきれずに光弾がハマービートルαの翼に当たり、制御不能になってしまう。
「く、クソッ!・・・ハッ!?」
なんとか体勢を維持しようと操縦するが、顔を上げて怪獣の妖しく光る緑色の目と目が合うと、咄嗟に緊急脱出レバーを引いた。コックピットが開き、凄まじい勢いで射出される飛鳥。それと同時にハマービートルαは怪獣の光弾を受けて木っ端微塵に爆破されてしまった。
「あ、危なかった・・・」
なんとか危機から脱した飛鳥だが、重要な攻撃手段兼飛行手段であるハマービートルを失ってしまった。彼に残されているのは腰に装備している旧型、『UMAガン』の改良型である『スーパーUMAガン』しかない。威力が上がってるとはいえ、これだけでは装甲貫通弾でやっとダメージを与えられたあの怪獣にはあまり効果は期待出来ないだろう。
ハマービートルαを撃墜したことに満足したのか飛鳥には目もくれずに今度はβを狙い始めた。
『キュイィイィイイッッ!』
まるで駄々をこねる子供のように触手を振り回してにβ向かって光弾を連射する怪獣。それに対してβは光弾の雨あられをなんとか躱し続けている。
「クソッ!キリがねぇ!」
「まるで隙がないわ!」
そう言いながらも光弾を掻い潜っているのは倖田の操縦技術の高さを表している。しかし、流石に終わりのない嵐を躱し続けてることは出来ずに、ハマービートルαと同じように翼を撃ち抜かれてしまう。機体が大きく揺れて内部機器が火花を散らす。
「ぐうぅううっ!?」
「まずい!堕ちるわよ!想!」
「わーってますよチクショウ!」
堕ちるにしてもハマービートルβを爆破しないようになんとか体勢を維持して地面に不時着する。ハマービートルβは火星表面をカーリングのように滑っていく。エンジンを切り、少しでも慣性を殺すようにする。岩石の柱をなぎ倒して機体を少しずつ傷つけながらも、一回り大きな岩にぶつかることでなんとか止まることが出来た。
しかし、その衝撃でβの機能は停止し、中にいた二人も意識を失ってしまった。残ったのはただ一人、飛鳥だけとなってしまったのだ。
『ゴブォオォオオオ・・・!』
邪魔者が消えたことに歓喜し、再び基地へと攻撃をしようと体をモゾモゾと這うように動いて基地の方に向く。
このままでは火星基地は完全に破壊され、まだ避難できずに中にいる研究者達や研究データが消失してしまう。怪獣撃退用の砲台も最初の爆破により殆ど使い物にならなくなっている。つまり、基地は完全に無防備というわけだ。
その事を危惧した飛鳥はなんとか意識をもう一度自分へと向けさせ、少しでも時間を稼ごうとスーパーUMAガンで怪獣の顔にレーザーを撃ち込む。
『グウゥウ・・・?グゥアァ・・・』
「そうだ・・・!こっちを向け!」
やはり大したダメージは与えられてないようで、本当に意識が少し向く程度、人に例えるなら目の前で虫がプンプンと飛んでいる程度の、攻撃とも捉えられないようなものだろう。
だがダメージを与えるのが目的ではなく、あくまでも意識を基地から離すために撃ち込んでいるだけなのでダメージは二の次である。
『ゴォアッ!』
「!やっば!」
ついにチクチクと来る微妙な痛みに耐えかねたのか飛鳥に向かって光弾を放つ怪獣。
あまりなも巨体な怪獣にとってなんでもないようなそれは、その何十倍も小さい飛鳥にとっては戦車の砲弾どころかミサイルを受けるようなものだ。
急いでその場から離脱し、光弾の直撃を避ける。だが爆風までは避けられずに呆気なく吹っ飛ばされる。
「うわぁあああ!!」
ゴロゴロと地面を転がり、その拍子にヘルメットが外れる。人の身で受けるにはあまりも強すぎる攻撃は簡単に飛鳥を戦闘不能の状態までもっていく。
「う・・・ぐ・・・なんて、威力だ」
スーパーUMAガンも最早使い物にならない程大破してしまった。最後の攻撃手段を失い、最早何の抵抗も出来なくなった。
絶体絶命
そんな言葉が飛鳥の脳裏に過ぎった。
「これまでか・・・!」
拳を握りしめ、俯いて今まさに破壊されようとしている基地から目をそらす。
『グゥウオォオォオオォオオッ!!』
そして、怪獣の巨大な触手が基地を木っ端微塵に押し潰す────!
ダッダダダンッッ!!
『デュウアッ!』
『ピキュウゥウウゥウウッ!?』
しかしその瞬間ッ、空から一筋の赤い光が怪獣に向かって堕ちてきて、その巨体を吹き飛ばした!
ズズンと地面を揺らしながら悲鳴を上げて倒れる怪獣。貫通弾でも倒れなかったそれを、赤い光はあっさりと倒してしまった。その衝撃で土煙が舞い上がり、辺りを包み込む。その付近にいた飛鳥も土煙に巻き込まれ、視界を遮られた。
「一体何が・・・?」
腕で顔を覆って風を受ける飛鳥。理解が追いつかない頭で状況を把握しようと怪獣と赤い光が堕ちた場所を見る。
少しすると、土煙がゆっくりと晴れていき、中の様子が見えるようになる。
そこにいたのは────
『デュアァ・・・!』
赤と銀色のカラーリングをした巨人が、怪獣の目の前に悠然と立っていた。
「銀色の・・・巨人?」
飛鳥がポツリと呟くと、巨人は空手に似た構えをとり、触手を器用に使って起き上がった怪獣と対峙している。
呆気にとられながらも彼は一体何者なのか、敵なのか?味方なのか?様々な疑問が浮かんでは消えるが、今の飛鳥は彼らの戦いを見守ることしか出来ない。
立ち直した怪獣は忌々しげに巨人を睨みつけ、威嚇するように触手をブンブンと振り回す。対して巨人は特に反応もせずにその場で構えて動かない。彼の纏う雰囲気は達人のそれである。一見、ただ構えてるだけのようで、一切の隙がない。ジッと怪獣を見つめるばかりである。
『ッギュアァアァァアァッ!』
ついに何もしてこない巨人に耐えかねたのか、飛鳥に向けたのと同じように巨人に向けて触手から光弾を数発発射した。
「危ない!」
簡単に砲台や基地を破壊するそれを受ければあの巨人とてひとたまりもないだろう。そう思った飛鳥は未だ動かない巨人に叫ぶ。
だが、それでも巨人はピクリともしない。そして迫っていた驚異の光弾が巨人に被弾する・・・しかし、その瞬間に巨人はついに動き出した!
『ジュワッ!』
巨人は力強い雄叫びと共に体を捻り、空手の型のように勢いをつけて右腕を振るって光弾を明後日の方向へ弾き飛ばす。
『ダァッ!』
そして、腰に留めていた左腕に精神波を集めて光線に変え、正拳突きをして拳から放つ『ナックルシューター』を怪獣の腹にカウンターとして叩き込んだ。
『ギュイィイイッ!?』
まさか反撃されるとは思わなかったのか悲鳴を上げて後ろに下がる怪獣。ナックルシューターが直撃した腹は焼け焦げている。
怪獣が怯んでる隙に巨人はその懐へ潜り込み、追い打ちとしてその腹に右手で一発、左手で一発、両手で同時に二発、計四発の正拳突き及び双拳突きを放つ。巨人の拳は怪獣の腹に深く抉りこみ、その巨体を更に後退させた。
後退した怪獣に対して逃がすものかと放たれた右の裏拳が怪獣の顔面に炸裂し、次に半身を捻り肘打ちで僅かな顎を捉える。見事、としか言いようがないほどの連撃であった。
「凄い・・・なんてパワーだ」
その光景を呆然と見つめる飛鳥。逃げることも忘れて巨人達の戦いに見入ってしまっている。
『グ・・・ギ、グゥ・・・!』
顔を歪めながら苦しみ呻く怪獣。
その間に、巨人は更に追撃を放とうとするが、そうはさせるかと怪獣がその巨大な触手を鞭のようにしならせて巨人に攻撃する。
『ハァッ!』
巨人は慌てずに触手の軌道を見極め、その下をくぐり抜けるようにして避ける。
しかし、一撃目をさけると続けて二撃目が避けた先に振るわれてくる。流石に避けきれないと判断したのか巨人は両腕を使って触手を受け止めた。
だが・・・
『ギュイィッ!』
『ヌゥッ!?』
「あっ!?」
怪獣がニヤリとほくそ笑むと動きを止めた巨人に対して無数の触手が絡みついた。巨人の体は完全に拘束されてしまい、抜け出そうと体を動かすも締め付けられた触手がそれを許さない。
『ギュアァッ!』
『ヌオォアッ!?』
しかも拘束して動きを封じただけでなく、絡みついた触手から巨人に凄まじい高圧電流を流し込みダメージを与える。
あまりの苦痛に声を漏らす巨人。それを見て更に笑みを深め、愉悦に浸る怪獣。完全に形勢逆転だ。
このままでは、巨人は怪獣にやられてしまうだろう。
「・・・ッ!頑張れ!負けるな!」
それを見た飛鳥は堪らず巨人に応援を送った。攻撃手段がない無力の自分には彼を援護することは出来ない。こうして、頑張れと応援を送ることしか出来ないのだ。どうかその怪獣を倒してくれと、少しでも彼の励みになれば、と。
『・・・・・・!』
そして、それを聞いた巨人は声を上げる飛鳥に顔を向ける。
少しの間、本当にほんの少しの間に目を合わせた二人。飛鳥には巨人の言葉は分からない。しかし両者の間には確かに通じあった何かがあった。
そして、飛鳥の意思が届いたのか、巨人はゆっくりと頷いた。
『ハァアァアアァ・・・』
『ギュイ?』
巨人は動きを制限されながらも、拳を握り締めた腕をゆっくりと胸の前にクロスさせる。何をしているのか分からない怪獣は電流を流しながら首を傾げる。
そして────
『ディイヤッ!』
『ピキイィイィイッッ!?』
巨人が閉じていた手を開き、顔を上げると眩い閃光が走り、怪獣とその触手を弾き飛ばした。
《ボディスパーク》
巨人は流されていた電流を自らの中に取り込み、自身のエネルギーへと変換した後、それを全身で思い切りスパークさせ、触手を通じて怪獣へと倍増して逆流させたのだ!
あまりのショックで巨人の体から触手を全て外してしまった怪獣。それにより自由になった巨人は直ぐにその場からバク転で下がり、距離をとる。怪獣はついでに体もスパークの影響で痺れて上手く動けないのか、動作がぎこちなくなっている。
その隙に素早く体勢を立て直した巨人は、腰を落とし両拳を合わせて構える。そして、大きく右足を前に出し、その両拳の空間に凄まじいエネルギーを溜め込んでいく。それは瞬く間にエネルギーは膨れ上がり、高熱火球として膨張していった。
『ハァァァ・・・ディイヤァッ!』
そして最大限までエネルギーを溜め込んだそれを、拳を上下に開き、その間から発生した光り輝くプラズマボールを勢いよく放った!
彼の最強の必殺技《バーニングプラズマ》である!
バーニングプラズマは周囲に熱波を撒き散らしながら進み、身動きのとれない怪獣にぶち当たった。その瞬間にバーニングプラズマは勢いよく爆ぜ、凄まじい爆発が怪獣を包み込んだ。
『ギュビァァアァアァアッッ!?』
これまでで一番の悲鳴が辺りに木霊する。血飛沫が辺りに飛び散り、地面に血がぶちまけられる。バーニングプラズマをモロにくらった怪獣はプスプスと黒焦げた箇所から煙を出し、血を吐き出す。無数にあった触手は殆ど焼け焦げて使い物にならなくなっており、腹部が抉れ血が溢れ続けている。
大ダメージを受け、致命傷を負った怪獣はよろよろと揺れ、そして・・・
『ギュウウゥ・・・』
目から光を消して力無く地面へと倒れ伏した。
「や、やった!」
この戦い、巨人の勝利であった。
『フゥゥ・・・』
巨人は動かなくなった怪獣の前に立ち、両手から原子破壊光線、《ディゾルバー》を放ち、せめてもの弔いとして怪獣を土に返そうとした。
『グジュグジュ・・・グジュ・・・』
『ムッ!』
だが、怪獣の亡骸はディゾルバーを受けるとたちまちその体を崩壊させ、空の彼方へと飛んでいってしまった。
それを見つめる巨人と飛鳥。ひとまず、危機は去ったのだろう。そう思うと飛鳥は緊張が解け、ドッと疲れが襲いかかった。今だけは、この疲れが生きてる証拠だと感じて安堵した。
深呼吸をして呼吸を整え、顔を上げる。すると、それと同時に巨人がゆっくりと飛鳥の方に振り向いた。
さっきとは違い、しっかりと向き合い、目が合う巨人と飛鳥。パールホワイトの瞳が、飛鳥を見つめる。
すると・・・
『・・・ありがとう』
「え!?」
巨人が、飛鳥の頭に直接テレパシーを送り、語りかけてきた。
『君の声が、聞こえた。君の応援が、私に力をくれた。ありがとう。』
「そんな・・・救われたのは僕達だ。お礼を言うのは僕の方だ。ありがとう。」
『・・・そうか。』
巨人は少し嬉しそうに頷いた。
『遅くなったが、自己紹介をしよう。私は、M78星雲からあの怪獣、《ゴーデス》を追ってやってきた使者、《ウルトラマン》だ。』
「ウルトラマン・・・僕は新導飛鳥だ。君はゴーデスを倒しに来たんだね。なら、奴はもう・・・」
『いや、まだ終わってないんだ』
飛鳥の言葉にウルトラマンは首を左右に振る。あれだけ粉々にしたのに、まだ終わっていないとはどういう事だろうか。
「?何故だい?奴は君が倒した筈だろう?」
『奴は、ゴーデスはまだ生きている。あの時、奴は自らを細胞状に変え、逃亡した。その行き先は・・・
『地球』だ。』
「!?なんだって!地球に!?」
あまりに衝撃的な事実に飛鳥は驚きを隠せない。あれほどの攻撃を受けても生きており、あれだけ強大な力を持つものが地球に向かってしまったなど、驚くなという方が無茶なことだ。
「そんな・・・一体どうすれば!」
『・・・そこで、どうか君の力を借りたい。』
「・・・俺の、力?」
『あぁ、太陽系では私の生命エネルギーであるプラズマスパークが届きにくい。仮のエネルギーとして、太陽光などで補充できるがそれでも充分ではない。地球上では、長くは戦えないだろう。』
巨人は胸にある特徴的な形をした『カラータイマー』を手で擦る。
『地球で活動するには、エネルギーの消費を抑えるために誰かと同化しなければならない。』
「なるほど、それで・・・」
『勿論、君が嫌ならば構わない。どんなに言い訳を付けても、結果として戦いに巻き込むのだ。無理強いはしたくない。』
申し訳なさそうに言う巨人に、飛鳥は────
「構わない。」
すぐにそう答えた。
『・・・本当にいいのか?』
「あぁ、地球が危機にさらされているんだ。それを救おうとしてくれている貴方に協力しないわけが無い。僕は防衛チーム所属だ、守るべきものがある。それに、貴方には命を助けてもらったんだ。恩に報いるのは当たり前だろう?」
飛鳥はその目に確固たる意思を宿しながらそう言った。彼の覚悟を読み取ったウルトラマンは一度頷き、手を差し出す。
すると、光が辺り一面に輝き、飛鳥とウルトラマンの体が重なり始め・・・
やがて、一つとなった。
『すまない、そしてありがとう、力を貸してくれて。私達はこれから二人で一人だ。どうかよろしく頼む。』
「あぁ、こちらこそ。共に戦おう、ウルトラマン。」
笑みを零す飛鳥の手には三角形のペンダント、『デルタプラズマー』が握られていた。
────
ウルトラマンと同化を果たした飛鳥は基地をウルトラマンの修復能力で修復した後に倖田隊員と音村隊員が気絶して搭乗しているハマービートルβを抱え、火星を飛び立って地球に戻って来ていた。
「ウルトラマン、ゴーデスとは一体何者なんだ?」
現在、精神世界にて意識を共有している飛鳥が宇宙空間を飛びながらウルトラマンに問う。
ウルトラマンはゴーデスの恐ろしさを十二分に説明してくれた。
『ゴーデス、別名邪悪生命体とも呼ばれている。奴は極めて危険な奴だ。他の星の者を喰らい、星そのものを喰らい、最後には銀河を喰らう。全てを喰らい尽くし、全てを我が一部としようとしている底知れぬ悪意を持つやつさ。』
「銀河すら・・・」
スケールが膨大すぎてイメージがしにくかったが、それでも鳥肌が立つ。銀河すら喰い尽くしてしまうなんて恐ろし過ぎる。ゴクリと喉がなった。
『私は奴を止めなければならない。でなければいずれこの宇宙全てを喰い尽くしてしまうだろう。』
「宇宙全てを・・・」
スケールのデカさに思わず反復してしまう。それほどまで凶悪な奴とは思わなかった。今から戦うのはそれほどまでのスケールの敵なのかと少しばかり不安になった。
「でも、なんというか。奴は・・・」
奴に殺されかけたのに何故か、飛鳥はゴーデスを心の底から《悪》だとは思えていなかった。なんというか、奴に対して憎いだとか、恐ろしいだとかそういう感情の代わりになにか違う感情が湧き出ていた。
『?どうしたんだ?』
「・・・いや、なんでもないよ。」
モヤモヤと正体を現さないそれを心の中に押し込んで、別のことに意識を集中させる。
さっきゴーデスが向かった先、母星の地球に向けて精神探知を行った。
すると、ウルトラマンと同化したことで分かるようになったゴーデスの気配に近しいものを感じ取れた。
「これは・・・」
『マズイ。既にゴーデス細胞で生み出された怪獣が日本の都市で暴れ始めているぞ。』
「何だって!」
『急ごう、飛鳥』
「あぁ!ウルトラマン!」
早くもゴーデスの魔の手が地球に、日本に牙を向いていた事に驚愕した飛鳥はウルトラマンと共に飛行速度を最高値まで上げて全力でその怪獣の元へと飛んでいった。
────
その日の昼時、何の変哲もない日常が突如として崩れ去った。
『ギャァオォオオォオッッ!!』
世界中の空が緑色に光り、一瞬眩く光ったと思うと日本の都市である東京に突然、なんの予兆もなく怪獣が現れたのだ。
怪獣は上と下に二つの顔を持つという奇怪な姿をした両生類に近い姿をしており、上の頭には二本の触手が生えている。
《双脳地獣 ブローズ》
地上に降り注いだゴーデス細胞が地下にいた両生類と同化して生まれたブローズは上下の頭からけたたましい咆哮を撒き散らしながら都市の中をその巨体を活かして蹂躙する。
体当たりでビルをなぎ倒し、巨大な口で車を喰らう。全身に空いた孔からガスを巻きながら念力波で建物を破壊する。目の入るものを全てを敵とみなし、破壊の限りを尽くしながら前進する。
「こちらハマービートルα!目標確認!」
「こちらハマービートルγ、同じく目標を確認!」
『了解、それ以上の被害を許すな!全力でぶっ飛ばせ!攻撃開始!』
「「了解ッ!」」
ビシュンッ!ビシュンッ!
『グゥウゥッ!』
その時、空の向こうからUMA日本防衛基地から出撃命令を受け離陸した飛鳥達が乗っていたものと同じ『ハマービートル』α、そして新たなγの二機が現れ、怪獣に向かって攻撃を開始した。
レーザーが怪獣の体に直撃して僅かに巨体が傾く。本体であった《 ゴーデス》よりも頑丈ではないのか、レーザーでも効果アリと見られた。
「これ以上街を破壊させてたまるか!」
「ここで倒す!」
しかしレーザーを受けても尚、進み続けようとする怪獣にハマービートルに搭乗している『雁夜鉄平』隊員と『中島悟』隊員はありったけの武装を叩き込む。
『ピキィイィイッ!』
ハマービートルから連携して放たれるレーザーや貫通弾が全弾総攻撃が怪獣に命中すると怪獣は進行を止め、その場で悲鳴をあげる。
「どうだ!この野郎!」
「効いてる!いけるぞ!」
『よぅし!どんどんやってやれ!お前ら!』
「「おう!」」
彼らの隊長である『響木孝介』隊長の鼓舞によって活気づいた二人は更なる連携で怪獣を倒そうと更に攻撃をぶつけんとする。
だが・・・
『ギュオオォオォォオッ!』
「なっ!」
「そんなっ!?」
怪獣が雄叫びをあげると自らの周りに緑色のエネルギー膜、所詮バリアを張り始め、彼らの攻撃を全て防いでしまった。
こうなっては、最早ハマービートルの攻撃はバリアに阻まれて効果が薄くなってしまう。現にαとγのレーザーやミサイルはブローズの皮膚表面に着弾する前にバリアに当たり、ブローズ自体にダメージを与えられていない。
「野郎ぉ・・・卑怯なもん出しやがって・・・!」
「鉄平!合体光線だ!あの邪魔なバリアぶち抜いてやろうぜ!」
「よしきたァ!」
鉄平と悟の二人はブローズのバリアを破るために合体光線を放つ事にした。抜群のコンビネーションを発揮し強力な怪獣を退ける為に何回もやったフォーメーションで同時に、お互いの赤と黄色のレーザーが螺旋状に混じり合うように放つ。
それぞれの角度から放たれたαとγの合体レーザーは一直線にブローズのバリアへとぶち当たり、少しの間バリアに阻まれるが徐々にバリアにヒビが入り・・・
バリンッ!
『ギュオォオォオッ!?』
バリアをぶち抜いてブローズに強烈な一撃を叩き込んだ。流石にこれには堪えたのかその場から後ずさる。結構なダメージを与えられたらしく、レーザーが当たった場所はぐじゅぐじゅと溶けている。
「うっしゃあ!見たか!俺達のコンビネーション!」
「ざまぁみろ!」
大ダメージを与えたことに歓喜する二人だが・・・
『グルルルルッ・・・!!』
「・・・あらら。」
「怒らせちゃったみたい・・・」
四つの目を見開き血走らせながら怒りの形相でハマービートルα、γの両機を睨みつけるブローズ。その目には凄まじい敵意がギラギラと輝いている。
『グルゥオオォオォオォオッッ!!』
二つの口から雄叫びをあげるブローズ。その大音量の雄叫びでビリビリと揺れるαとγ。
すると、悟がγの機体に違和感を抱く。
「なんだ?エンジンの調子が・・・ッ!」
ブローズの周りを旋回していたγのスピードが段々落ちていく。いくらエンジンを動かしても速度が上がらない。そこまで来て悟は機体に起こっている事態に気が付いた。
「まさか、この怪獣の仕業か!」
「おい!何やってんだ!そこを離脱しろ!」
「違う!機体が、動かないんだ!」
どれだけ動かそうとしてもまるで標本の様に空中に固定されてしまい、動かない。
そう、悟の言う通りこれはブローズの仕業だった。自らの能力の一つである念力でハマービートルγを空間に固定するように捕獲したのだ。
「くそ!そいつを離せ!」
念力に捕まってない鉄平が乗るαはブローズに果敢に攻撃するが、耐性をつけたのか全く動じなくなったブローズは上の頭に付いている角に似た一本の長い触手を鞭のように振り回してαを撃墜した。
「うわあああ!!?」
『鉄平!』
黒煙を撒き散らしながらαが街へと堕ちる。残すはγだけだか、そのγもブローズに捕まって身動き一つ出来なくなっている。もはや手も足も出ない状況であった。
αを堕としたブローズは次にγに狙いを定めた。固定されて動けないγを狙い、上の口に腹の中に貯めていた火炎が溢れ出してくる。
恐らく、というより確実にあれでγを完全に破壊するつもりなのだろう。怪獣の一撃など受けたら機体は容易く爆発して鉄屑に成り果てる。
それを見た悟は慌てて離脱しようとするが、依然として機体は動かない。
「ちくしょうちくしょうちくしょう!動け!動けよ!」
何度も脱出レバーを倒すが、無情な事にどうやってもそこから動けない。
そして、ついにその時は来てしまった。
『ゴバァッ!』
ブローズの口から放たれた豪火球が、眩い閃光と共にγを飲み込み、破壊しようと迫る。
「う、うわぁぁぁあぁあッ!!?」
数秒後にはハマービートルγはバラバラの鉄屑として地面に転がることになるだろう。
UMAの隊員達とその場にいた多くの人が最後の希望が砕かれようとして深い絶望飲まれた時・・・
《それ》は現れた。
『デュゥゥウアッ!!』
ボゴォォオオォォオォンッ!!
γに後数瞬でぶつかりそうになった豪火球を空から降ってきた謎の光球が相殺し、空中で爆発した。
「ぐっ!?な、なんだ!?」
その爆風を受けたγはガタガタと揺れるが、機体のどこにも損傷はない。システムにも異常無し、完璧に無事だった。
何が起こったのか、それを確認するために悟隊員がコックピットから外を見てみると、そこには・・・
「え?」
『無事か!?悟、返事をしろ!おい!平気なのか!』
「・・・はッ!はい!俺は無事です!」
『良かった・・・今の衝撃で電波障害が起きていてこちらではモニターがまだ表示されない。何があったか報告してくれ!』
「・・・・・・巨人です」
『・・・なに?』
『戦闘区域に、新たなるエネミーを確認・・・?』
「街に、街に、謎の巨人が出現しました!」
『デュアッ・・・!』
地球に、希望が降り立った。
悟隊員が、脱出した鉄平隊員が、UMAの面々が、避難していた市民達が唖然として言葉を失いながらもブローズの前に立ちはだかる巨人を見つめていた。
銀と赤の模様、胸にある宝石、鍛え抜かれた巨体、優しげな瞳
その立ち姿はとても雄々しく、そして見る者を魅了するほどの美しさがあった、光があった、希望があった。
『なんだ・・・あいつは・・・?』
『ギュウオオオッ!!』
静まり返る人々とは正反対にブローズは巨人の、ウルトラマンの姿を見た途端に怒りの雄叫びをあげ始めた。ブローズの中にあるゴーデス細胞がウルトラマンに反応しているのだ。
奴を殺せ、と。
しかし、そんなブローズに目もくれずにウルトラマンは片手に持っていたハマービートルβを地面にゆっくりと降ろした。
中にいる未だ気絶中の二人の無事を確認して頷いてから、ブローズの方へ向き直る。
『ギギィイィイ・・・!!』
ブローズは一度無視されたのが腹立ったのか唸り声をあげてウルトラマンを威嚇していた。どうやら大層御立腹のようだ。
ウルトラマンはそれを気にすることもなくハマービートルβを戦闘に巻き込まないようにある程度歩き、ブローズに近づいたところで独自の構えをとる。
『ギュィイィイッ!!』
それを見た興奮状態のブローズがウルトラマンに向かって触手を振り回しながら突進する。
『デュアッ!』
対してウルトラマンはそれを動じずに待ち構え、しっかりと地面を踏みしめてブローズの突進を受け止めた。
ブローズの巨体を受け止たウルトラマンは地面を抉りながら数メートル下がる。足元にあった車は衝撃により防犯ブザーを鳴らしながら吹っ飛び、道に架かっていた歩道橋も真ん中をくり抜かれたように壊れてしまった。
『アァアァッ!』
『ギギッ!?』
完全にブローズを受け止めたウルトラマンは逆にその怪力でブローズを押し返していく。負けるかと言わんばかりにブローズは身をよじらすがウルトラマンのパワーには敵わずどんどん押し返されていく。
ある程度押し返すとウルトラマンはブローズを突き放し、胴体に右中段正拳突きを放つ。ドゴンと重い音を出してめり込んだ拳はブローズに強大なダメージを与えた。
だがそれだけでは終わらない。ウルトラマンが腰に拳を構え脇を締めると、同時にブローズが動いた。長い触手をウルトラマンに叩きつけようと振りかぶる。
しかしウルトラマンはブローズの触手の反撃を完璧に間合いを見切り、半歩下がるだけで回避すると反撃の時に下がり、元の位置に戻ろうと上げてる最中の上の頭、その顎に向けて素早く鋭い拳を突き立てる。突き立てた拳は振り切らずに再び素早く腰に戻す。
所謂、上げ突きである。
更に追い打ちでカチ上げられた上の頭に底掌部による掌打をくらわす。これは底掌突きと呼ばれる突きである。
それをモロにくらったブローズは上の頭を思いっきり逸らしながら吹っ飛んでいった。
その影響でブローズの念力に固定されていたγがふと飛行可能になり、全力でエンジンを動かしてその場から離脱した。
「なんなんだあの巨人は・・・」
『あの構えに動き、まるで空手だな。』
驚愕する悟隊員は響木隊長が呟いた言葉になるほど確かに、と納得した。奴の動きは一つ一つが恐ろしく美しく、正確で、凄まじく、静かで気高いものを感じた。
それほどまでの力を持っているものを野放しにしていいのか?そう考えた悟隊員の指は自然とレーザーの引き金に重なる。
今ここで倒した方が・・・
『待て、悟』
「た、隊長?」
悟隊員は響木隊長の言葉に正気を取り戻し、無意識にもう少しで引き金を引きそうだった指を慌てて外す。
『お前の気持ちも分かる。だが、ここは少し様子を見てみよう。もしかしたら、彼は味方なのかもしれん。』
「味方・・・?あんなバカでかいのに味方も何も無いでしょう!」
声を荒らげる悟隊員に隊長は落ち着いて言葉をかける。
『大丈夫だ。それに、彼はお前を怪獣の攻撃から守ったように見えた。』
「しかし・・・」
『俺を信じろ。悟。』
「・・・了解。様子を見ます。」
『よし!』
響木隊長とのやり取りを終えた悟隊員はウルトラマンとブローズが戦う場所から少し離れた所で待機し、様子を見ることにした。
そんな中、先程ウルトラマンの底掌突きを受けて吹っ飛んだブローズはビル群に突っ込んでいた。
情けない悲鳴をあげながら倒れたブローズに砕けたビルの破片が降り注ぐ。どうやら相当効いたようで上の口から血を流している。だが、それでも無理矢理体を起こすと、四つの目に殺意を灯しながらウルトラマンを睨みつける。
『ゴバァッ!』
接近戦では適わないと感じたのか今度はγに向けて放った豪火球をウルトラマンに向けて吐き出した。
大気を焼きながらウルトラマンに迫る豪火球。
『ハァッ!』
しかし、ウルトラマンはそれを避けることもせずに右手を突き出し、豪火球を受け止めた。
しかもただ受け止めただけではない。それを自らのエネルギーに吸収、変換し、一点に凝縮させているのだ。
そうとも知らずにブローズは二発目をウルトラマンに向けて放つが、それすらも受け止められ、吸収されてしまう。
流石に何かおかしいと感じたのか、ブローズは一旦攻撃を止めるが、既にウルトラマンの手には、豪火球二個分と自らのエネルギーが凝縮された光球が出来上がっていた。
『ゴ、ゴバァッ!!!』
それを見たブローズは慌てて三発目の豪火球を放った。相当の身の危険を感じたのか今までのどれよりも強力で巨大な火球を放っていた。
『ハァァ・・・!』
それに対してウルトラマンは溜めに溜めたエネルギーを高熱火球ウルトラストゥリングを発生させ、再び最強技バーニングプラズマとして発射した。
バーニングプラズマはいともたやすくブローズの豪火球をかき消し、ブローズへと直撃した!それを受け、吹っ飛んだブローズはバーニングプラズマが直撃した場所から血と電撃が漏れ始め、そして────
『グルゥオオォオォオォオッッ!!』
絶叫をあげた後に大爆発を起こし、完全に消滅した。
「ガスが、晴れていく・・・」
ブローズが倒されたことで周辺に撒き散らされていたガスも無害化され、その姿を消していった。残ったのは、崩されてしまった街並みとそれを見つめるウルトラマンのみ。
────危機は去った
それを理解した市民達は歓喜に包まれた。誰もが喜び、涙を流しながら感謝した。あの怪獣を倒してくれた謎の巨人に。
『シュワッチ!』
未だ佇むウルトラマンは一度、ハマービートルγの機体を見て頷くと、青空へと飛び立って行った。
▼
「全く・・・いつまでも落ち込んでるんじゃない!二人共!確かに、飛鳥は未だ行方不明だがあいつはそんなに簡単に死ぬたまじゃない。きっと、今も生きている!」
「ですが・・・」
「アイツを信じろ、真。」
「・・・はい。」
そう言って沈んでいる真を励ます響隊長。それに対し真は落ち込みながらも頷いた。
「それにしても彼は、一体何者だったんでしょう?」
「ううむ、全く情報がない未知の巨人・・・か。」
UMA本部基地に戻った鉄平と悟、そしてβから救助された音村と倖田、響木隊長はウルトラマンについて話し合っていた。
彼らの中ではウルトラマンという存在は必ずしも《 敵》ではないと思っているようだが、日本を守る立場の防衛隊として未知の存在である彼にどうしても100%の信頼を置くことは出来ないのだ。
特に直接命を救われた悟や本人の知らぬ間にだが救われていた倖田や音村はウルトラマンを信用しているし、鉄平も響木も通信や情報管理を担当している『緑川唯』隊員も少なからずウルトラマンのことは信用しているようだが・・・
「やはり、《味方》だと判断するのは早すぎるのではないでしょうか。もしかしたらただ目的が一致しただけの可能性もありますし・・・。何より未知の宇宙人です。」
「だけどよ鉄平!俺は!俺達はアイツに救われたんだぜ!」
「とは言ってもなぁ・・・」
「うーむ・・・」
全員でウルトラマンについて話し合っていると、不意に聞き慣れた声が部屋に響いてきた。
「大丈夫ですよ」
「「「「「「!!?」」」」」」
部屋のドアが開き、聞こえてきた声にその場にいた全員が一斉に振り向く。
そこにいたのは、火星で怪獣に襲われ行方不明と報告されていた飛鳥であった。
「飛鳥ぁ!無事だったのかお前!」
「はい、何とか」
あははと笑いながら頭をかく飛鳥に隊長が思いっきり抱きつく。男と男が抱き合うむさくるしい光景である。
「良かった・・・!本当に良かった・・・!だが、飛鳥。お前どうやって地球に来たんだ?お前の乗っていたハマービートルαは撃墜されたんだろう?」
響は首を傾げながら当然の疑問投げかける。
「ええ、確かに僕は移動手段を失いました。でもそんな時に彼が助けてくれたんですよ。」
「彼?」
「はい、皆が話ていたあの巨人です。彼の名前は『ウルトラマン』。僕は彼に火星から地球まで送り届けてもらったんです。」
飛鳥は嘘偽りのない笑みを浮かべてそう答えた。にわかには信じ難いことだが、彼が嘘をつくとは思えないと感じた響は彼の言うことを信じることにした。
「『ウルトラマン』・・・。そうか、何はともあれ良かった!」
「うわっ!ちょ!隊長!やめてくださいよー!」
響は安心からか飛鳥の肩に手を回し、その頭をぐしぐしと撫で回す。飛鳥がしっかりとここにいることに嬉しくなったのだ。
こうして思わぬアクシデントがあったものの全員が生還したことに全員でちょっとしたお祝いをするのであった。
だが、彼らは知らなかった。
この戦いが壮絶な戦いの序章に過ぎないことを。人類の、そして地球の存命をかけた世紀の戦いが待っていることを。
既に、破滅は訪れていることに、彼らは気づかなかった。
ぼちぼち更新するので暖かい目で見て下さい
そして次回予告
かつて5000年前に滅ぼされたバラージ。その伝承にはデガンジャという風の神によって滅ぼされたとあった。ゴーデス細胞と同化し暴れるデガンジャを鎮める方法は壁画に記されたように『ノアの巨神』のようにウルトラマンの手で倒す事。飛鳥とウルトラマンが伝説に挑む!
次回、『バラージの伝説』