人間と宇宙人の絆、いいよね・・・
※ガバガバ超展開注意
文才を僕にください(白目)
美しい夜空の下────
「おぉ〜!すごい綺麗!」
そう感動の声を上げるのはまだ小学生高学年ほどの少年。近くには自分で立てたであろう少し形の崩れた小さなテントに望遠鏡が置いてある。
今、少年がいるのは家から遥か遠く離れた秘境・・・では無く、家の近くにある星が綺麗に見えると有名な広い公園内の人気のない場所。少年は百年に一度見えるという珍しい流星群を見るために夕方から夜中までずっとここで張り込んでいた。
「やっぱ流星群じゃなくてもここで見る星は格別だな〜!ここで流星群なんて降った日には・・・くぅ〜!」
ベンチの上で足をじたばたする少年。流星群が楽しみで楽しみで仕方なく興奮しているのがよく分かる。
少年の名前は『星野武蔵』。この街一番の宇宙好きを自称する学校の皆には変わり者扱いされる少年である。
武蔵は自分のカバンを漁ると一枚の写真を取り出す。その表面のテカリ具合からまだ最近現像ものだと分かる。そこに映っていたのは街の中に雄々しく立つ大宇宙からの使者『ウルトラマン』であった。
「ここにウルトラマンがいたらもっと最高なのにな〜!」
目をつぶって想像するのは深い夜の満天の星空の下で胸の宝玉とパール色の瞳を輝かせた美しいウルトラマンの姿・・・
「ムフフ・・・これだけでご飯三杯いける・・・!ぐへへへ・・・おっとヨダレが。」
その肉体の雄々しさと究極的なバランスを持った美しさが交わり素晴らしい美を感じる。妄想が膨らみ、だらしなくヨダレを垂らして笑う武蔵。少年ながらその変態度は高いようだ。
ヨダレを垂らして拭うと写真を丁寧にしまい、親に誕生日に買ってもらった腕時計で時間を確認する。時刻は11時55分。夜も更け、日付が変わる時間。武蔵のような子供が外にいるには危険すぎる時間帯だ。
本来なら許可されるはずもないが、彼は寝たフリをして布団の中にダミーを入れるなど手の込んだことしながらこっそりと夜中に抜け出してきていた。テントなどの重い物は先に来て隠しておいたのだ。恐ろしい、かなり頭の回る子供である。
「宇宙人・・・宇宙人かぁ・・・会ってみたいなぁ・・・。さて、そろそろ流星群の時間だ。準備しないと・・・!」
そう呟くと武蔵はガタガタと望遠鏡を引っ張り、その後ろに折りたたみ椅子を設置、胸元には父の机からこっそり取ってきた一眼レフカメラ、右手にはビデオカメラという対流星群完全体勢を取った。
これならば肉眼、写真、映像の全てに一気に焼き付けることが出来る。武蔵は己の知恵に思わずドヤ顔が漏れ出す。頭は回るが少し残念なところがあるようだ。
そして、時刻はとうとう11時59分。もうすぐ流星群がこの星空に降り注ぐ時間だ。今からあの幻想的な光景が生で見れると思うと胸が高鳴ってくる。
静寂の中、ドキドキと鳴る心臓の音がやけに大きく聞こえる。
ジッと待つこと一分。時計の針が完全に重なり、丁度0時になった時、その瞬間はやってきた。
「・・・ッ!来たッ!」
糸のように細い細い線が一瞬夜空を駆ける。そしてそれに続くような形でもう一つ、もう一つと夜空を堕ちて行き、最終的に夜空を埋め尽くすような流星群が現れた。その余りにも幻想的な光景はまるで流れ星のカーテンのよう。
武蔵は感動に打ち震えながらカメラのシャッターを連写し、ビデオカメラを構え、望遠鏡で見たり肉眼で見たりを繰り返していた。
「はぁぁぁ!すげぇすげぇ!」
これには武蔵少年大興奮。目を見開き、笑顔を浮かべ、足は絶えずじたばたして喜びを全身で表現している。
連続で撮っていた為最早カメラのフォルダは一杯になってしまった。
カメラをカバンに素早くしまい、流星の一つ一つをじっくりと見ようと望遠鏡を覗き込む。調整したレンズの先には墜ちていく綺麗な星々が映る。そして流星の動きを観察していると、何かに気が付く。
「・・・あれ?なんだこれ?」
流星群の中にやけに輝く星がある。その輝きは他の星のそれは比較にならないほど激しく、キラキラと言うよりはギラギラと輝いている。
「おー・・・綺麗だなぁ。」
その輝きに感動の声を漏らす武蔵。しかし、ここで更なる異常に気がついた。
「あれ・・・なんか、でかくなってね?」
そう、星の輝きがむくむくと膨張し、一回りほど大きくなっている。こんな急速な成長する星など有り得ない。まさか超新星爆発か!?と思ったがこれだけ大きいということは地球にも確実に影響を与える。
「大変だ!」
焦りに駆られて慌てて顕微鏡から目を離し、顔を上げる。そしてその瞬間、その考えが間違いだったと思い直した。
夜空に輝くその星は大きくなっていたのではなく、そう見えるように武蔵にぐんぐん近づいて来ていたのだ。
「えぇ!?」
それに気づいた頃にはもう遅い。その星、いや『光球』は武蔵のすぐ頭上まで接近して来ていた!最早回避は不能!このまま武蔵にぶつかってしまうのか!?
「うわぁぁぁぁぁ!」
武蔵は本能的にしゃがみこみ、頭を抱えて叫んだ。すると、どういう事だろう。
『光球』が武蔵に接触するギリギリの所で止まり、ふよふよと滞空しはじめた。そして、ゆっくりと武蔵から離れある程度距離をとるとまたその場で滞空し始める。
「あ、あれ?」
いつまでたっても衝撃が来ないことに疑問を抱き、恐る恐る顔を上げた武蔵もそれに気づいた。
「な、なんだぁ・・・?」
武蔵が予想だにしない事態に困惑していると光球が更に輝き、周りが光に包まれる。
そして、それが晴れるとそこには────
「初めまして!地球の人!急に驚かせてごめんね!余りにも急いでたからここしか降りる所が無かったんだ。」
綺麗な紫色のボディに三本指、そしてクリスタルのように美しい頭部をした、有り体に言えば地球人が恐れる『異形の宇宙人』がいた。
「ぎゃあああああああああっっ!?」
「うわぁぁぁぁぁああああっっ!?」
武蔵はその宇宙人の姿を目にした瞬間少年に有るまじき凄まじい顔芸と絶叫を発した。それと同時に宇宙人の方も悲鳴をあげる。
武蔵はワタワタと慌ただしく動き、テントに置いてあった木製バットを持つと一本足打法の構えをとる。何故そこで一本足打法。
「な、ななな!なんだお前!う、宇宙人!?地球を侵略しに来たのか!?」
足を高速でガクつかせながらも素晴らしいバランス感覚で立ち続け宇宙人に捲し立てる武蔵。それに対して宇宙人は・・・
「ご、ごめんなさいごめんなさい!」
武蔵以上に体を震わせて縮こまっていた。完全に怯えている様子だ。まさかの立場が逆の状況。まぁいきなり出会い頭に一本足打法で脅されれば誰だってこうなる。それに気づいた武蔵は困惑した頭でゆっくりバットを下ろす。自分以上に怯えるその様子に恐怖よりも心配が大きく出た。
武蔵は宇宙人に優しく話しかける。
「え、えっと・・・大丈夫?」
「ごめんなさい・・・脅かすつもりじゃなかったんだ・・・」
その弱々しい姿に敵意が無いことを察知し、武蔵は完全にバットを手放して恐る恐る宇宙人に近付くとゆっくりと背中に手を回す。一度試すようにちょんっと触ってから、その背中を摩り始めた。
「いや、こっちこそごめん。いきなりバット構えて。えっと、平気?」
「うん・・・大丈夫。」
宇宙人の方もある程度落ち着いたようで震えも収まっていた。武蔵はもう怖がる様子を持たずに宇宙人の三本指の手をとると立ち上がらせた。
「あ、ありがとう」
「うん、それで聞きたいんだけど・・・やっぱ宇宙人?着ぐるみじゃなくて?」
「きぐるみ?なんだいそれは?」
武蔵の質問にきょとんとしているであろう顔でその透き通った郡晶の中にある頭を傾げた。その際、瞼(?)がパチパチと開閉されたのでその線は薄いだろう。と、いうことは────
「ほ、ほ、本物ぉぉぉ!?」
「うわぁ!何何!?どうしたんだい!?」
「ナイストゥーミートゥー!マイネームイズ武蔵!イェア!」
「急に言語が変わった!?」
思いがけない未知との遭遇に興奮の余り日本語を忘れ全くネイティブじゃないエセ英語を喋り始め、迷いなく手を取り固く握手をしてぶんぶんと激しく振る。何処からかどこぞの走ってそうな名前の防衛隊に所属する者が「ノンノン!正しい発音はNice to meet you.ダヨ!」とどうでもいい指摘が聞こえてきた気がしたが、多分気の所為だ。
まさかの宇宙人側をドン引かせる武蔵少年。これは大物になる予感がする。
「え!?日本語分かんの!?」
「え、あぁそれは宇宙言語自動翻訳装置で・・・」
「すごいすごい!本当に宇宙人に会えるなんて!ねぇ何処から来たの!?何星人!?名前は!?」
「うわぁ!ちょちょちょ!落ち着いて!ね!」
「落ち着く!?僕は至極落ち着いているよHAHAHA!ハレルーヤ!」
「どこら辺が!?」
テンションが天元突破して最早別人になっている武蔵少年。傍から見ると鬱陶しくて耳血が出そうである。すると、自分が醜態を晒していることに気が付いたのか急に賢者タイムに入った武蔵少年が落ち着きを取り戻した。
「ふぅ・・・」
「やっと落ち着いた・・・」
「いやぁお見苦しい所を・・・つい興奮しちゃって。」
「いや、怖がれると思ってたからそこまで喜ばれると思わなかったよ。なんというか・・・凄いね地球の人は。」
普通に考えてこんな反応を返す者は極小数なので勘違いしないで欲しい。武蔵少年が少年なのに特殊な変態度が高いだけなのだ。普通なら怖がると思います。えぇ、順応して喜ぶその子が特殊なんです。
「あ、そうだ。自己紹介まだだったね。俺、星野武蔵!武蔵でいいよ!」
「ムサシ・・・うん!よろしくムサシ!」
「・・・で、君の名前は?」
「名前・・・?あぁ!名称か!僕は特殊稀少鉱石生命体クリスタ星人!B-7-320!よろしくね!」
「え?B・・・何?」
武蔵は名前を聞いたのにいきなり出てきた暗号のような数字の羅列に思わず困惑に首を傾げる。情報量が多くて何から聞けばいいか分からない。それに気づいていないのかクリスタ星人と言った宇宙人はもう一度これを繰り返した。
「特殊稀少鉱石生命体クリスタ星人B-7-320だよ!」
「とくしゅ・・・くりすた・・・2・・・?あぁぁぁぁ!もう!ややこしいよ!もっとこう、短いのはないの!?」
ここで思い出して欲しいのは武蔵はまだ小学生だという事だ。まだまだ難しいことは分からない彼にはこの文字の暴力は耐えきれないものであった。もっとこう、あるだろう!と言いたげなポーズをしながら覚えやすいものを希望した。
「そう言われてもなぁ・・・」
困ったような声質でポリポリと頬をかくB-7-320。まぁ自分の持つ名前(?)を長いと言われその上短いのはないのかと聞かれれば困惑もする。ピカソなら答えられるだろうが。
「えー・・・んじゃあ俺が考えてやるよ!確かこういうのは愛称って言うんだよな!」
「アイショウ?」
「名前とは違うなんというか・・・そう!友達同士で呼び合うものだ!」
「友達同士・・・」
聞き慣れない言葉にいまいちピンと来ていないB-7-320を置いて愛称を考え始める武蔵。少しの間ウンウンと唸ると唐突にポンッと手を叩いて頭の上に出てきた電球の(どういう原理か)電気をつけた。
「
「コスモス・・・?」
小首を傾げるB-7-320に武蔵はふふんと鼻を鳴らして説明する。
「うん!コスモスっていうのは、ギリシャ語で『宇宙』を意味する言葉なんだ!他にも秩序とか、世界とか、花言葉なら真心とかがあるね。」
流石は宇宙大好き小学生。ポンとその説明が出る辺りそういった知識も豊富なようだ。ドヤ顔をしながらそう名づける武蔵にB-7-320、改めコスモスはニッコリと笑い、武蔵の手をとる。
「コスモス・・・うん!コスモス!僕はコスモス!ありがとう武蔵!素敵な名前を付けてくれて!」
「う、うん。どういたしましてててて。」
ブンブンと握った手を振るコスモスに振動でガクガクと震えながらも返事する武蔵。体と同じく声はガックガクだが。
「これから宜しくな!コスモス!」
「うん!よろしく武蔵!」
こうして、地球人と宇宙人という異なる種族の二人が紡ぐ友情の物語が幕を開けたのだった。
────
武蔵にとってコスモスとの時間は何よりも受実した時間であった。
強く望んでいた宇宙人の友達。他の誰にもいない特別な存在。自分だけの友達であるコスモスと過ごす時間は彼の人生に最高の幸福を齎していた。
見るからに人外なコスモスは人目に着く場所に連れて行けない。だから出会った公園の人気のない場所に基地を作りそこに隠れて貰って放課後に彼の元に訪れて遊ぶという日々のルーティンを過ごしていた。
毎日毎日、友達の誘いを断り学校が終わっては放り投げるようにランドセルを部屋に置いてダッシュで公園へと向かう。
そして、第一声に「お待たせ」と言って彼らの秘密の時間が始まるのだ。
因みにコスモスが暇しないように漫画やゲーム機、宇宙の本などを置いてある。
時に一緒にボードゲームやカードゲームをしたり。
“オセロ“
「うぅーん、こうかな?」
「げ、一気にひっくり返された!勝てねー!」
“ババ抜き“
「これだー!ババだー!」
「よし、あがり!」
「ぬぉー!コスモスつぇー!」
時に漫画や本を読んだり。
“漫画“
「アハハハ!面白い!最高だよ!」
「ほんとでんじゃらす〇ーさんは面白いなぁ。」
“宇宙の本“
「あ、ここ僕の住んでる星雲」
「マジで!?」
また、時には一緒に音楽を聞いたりしてこの幸せな時間を謳歌していた。
「地球は凄いね、科学や戦闘能力がほかの星に比べて高くはないけどその分娯楽文化がどこの星より発展してる。色々あって全く飽きないし、科学だけの星よりもずっと楽しいよ!」
「そうなんだ・・・」
キュベレイを組み立てながらウキウキした口調でそう言うコスモス。宇宙の衝撃の事実を聞き少し驚愕する武蔵。
そう、地球の娯楽文化はこの宇宙ではずば抜けて高い。食に服、音楽にダンス、ゲームにアニメ、etcetc・・・。上げだしたらキリがないほどだ。
他の星が科学や闘争に特化した種族が多いがその分そういった文化は全くと言っていいほど発展せず更なる科学の発展や侵略行為などを娯楽と捉えるのだ。故にそういった『遊び』を知るものは極小数で、例えトランプでもそこらの文明を持つ星に投げれば星中で大人気になること間違いなしである。
そう考えると案外、外の宇宙人はつまらなそうだなと武蔵は思った。ゲームやお菓子の楽しみも無いなんて自分だったら耐えられない。地球に生まれてよかったと初めて思った瞬間であった。
それはそれとしてコスモスの暇つぶし用に持ってきたキュベレイだが父さんの部屋からパクってきたものだがバレたら怒られるだろうか。怒られるだろうな。まぁいいか、コスモスが幸せそうだし。と、開き直った武蔵はポテチを食べながらもうその事は気にしないことにした。
その後呆気なく父にバレ、こっぴどく叱られるのはまた別の話。
────そして、彼らが出会ってから三ヶ月後。
事件が起こる。
■■■
「キャアァアァァアァァァッッ!?」
■■■
キーンコーンカーンコーン・・・
「よし!終わった!早く帰ってコスモスのとこに行かなきゃ!」
一日の授業が終わり下校の時間になると誰よりも早く帰宅する武蔵。今日も誰よりも早かった帰り道、偶然道にいたおばちゃん達の噂話が耳に入った。
「ねぇ知ってる?あの公園で────」
「────え?」
その内容は、武蔵が最も恐れていたものであった。
■■■■
時に、UMA日本支部特訓稽古場。そこに二人の隊員が向き合っている。
一人はもちろん我らが主人公、飛鳥である。飛鳥は普段のキチッと着ている誇り高き隊員服ではなく、その身を古くからの伝統のある白い道着で包んでいる。若干汗の臭いがきついのは秘密である。
そして飛鳥と相対するもう一人の白い道着に身を包んでいる人物こそは、UMAの父、鉄人、ゴリラ等々数々の異名を持つその座に相応しき実力を持つ紅き獣『響木考介』隊長である。
彼は数々の超常現象と戦ってきた猛者である。その纏う気は正に武人のそれであり、それを真正面から受けている飛鳥は怪獣と戦う時以上に汗をかき、乾いた喉を唾で何度も濡らしている。
「いいか?飛鳥。何時いかなる時も心は平常を保つことが重要だ。理由のない悪意、人の域を超えた存在と対峙する時、その心には焦りや恐怖、悪への怒りなど様々な感情が湧き出るだろう。お前も何度も経験してるから分かるな。」
「はい。」
「だが、その感情に身を流しては行けない。大切なのはその激情を胸に沈めず、手足へと込め己を支える礎とすることだ。」
パンッといい音で自身の手と足を叩く隊長。
彼らが戦うのは怪獣という自然災害に近い存在だけではない。地球の外からやってきた生命体、即ち『宇宙人』との戦いも彼らの任務の一つである。
そしてそれらの宇宙人は基本的に悪意を持ってこの地球にやってくる。侵略、実験、誘拐、etcetc・・・そんな日常の中に潜む悪と戦うのもUMAの任務である。
中には外道極まりないやつだっている。そんな奴と対峙する時、きっとその者の心には怒りや憎しみなどの激しい感情が湧き出るだろう。しかし、人々の平穏を守るUMAの隊員がそれに流され行動しては元も子もない。それによる二次災害だって出るのだ。
だからこそ、彼らにはどんな状況下であっても冷静さを失わないことが重要となってくる。だがしかし、それは感情を押し殺せと言っているのではない。その激情を自身を支え、突き動かすエネルギーにしろ、と言っているのだ。心を乱さず、体に力を漲らせる。それこそが今、まだ若い飛鳥に求められているものなのだ。
「よし!では稽古を始めるぞ!構え!」
「はい!」
「ここでは押忍!だ!」
「お、押忍!」
慣れない返事をぎこちないながらも返した飛鳥は素早く構える。対する隊長はただ静かに佇んでいる。
見るからにノーガードで隙だらけな姿勢だが、飛鳥は隊長から感じるプレッシャーにそう簡単に動けなかった。
ここで安易に突っ込めば隊長の策にはまる。だけど自分が行かねば隊長はきっと動かない。そう考えた飛鳥はすり足で少し前に出た。
「うっ・・・」
少し、ほんの少し距離を縮めただけなのに感じるプレッシャーはますます重くなる。まるで重りをつけられてるかと思うほどの凄みを全身に受けていた。何度かウルトラマンとして怪獣と戦っているのにこの気圧には何故か足が止まってしまう。
だが、自分とてUMAの一隊員。ここで怖気付いて下がる訳にはいかない。そんな男の意地を心に漲らせ、ジリジリと隊長に向かっていく。
まるで濁流の中を掻き進んでるが如く、少しずつ重みを増していくプレッシャーの中で近付く飛鳥。そして、ついにお互いの一手が届く間合いにまでにじり詰める。睨み合う両者。バクバクと忙しなく動く心臓の動きを感じながら飛鳥は響木隊長の動作を見る。が、以前動き無し。両腕は下げられ、相も変わらずノーガード。
(ならば、ガードが届く前に浴びせる!)
そう決心した飛鳥は目を見開くと一気に体を捻り、左正拳突きを放つ。
「ッ!」
だが、その瞬間遂に隊長が動いた。下げられた右腕が飛鳥の拳が届く前に弧を描き流れるような中段受けで横に逸らす。
飛鳥は少し驚いたが、直ぐに左を引き込め素早く右で蹴りを放とうと────
「なっ・・・!」
────した瞬間、違和感を感じ自身の足を見てみると、隊長の足で足首が抑え込まれ、蹴りが出る前に封じられていた。
(足刀押え受け・・・!)
まず普通なら出来ない技。数々の実戦をくぐり抜け、相手の一挙一動を観察し予測する優れた目を持たねば実践することは困難な高難易度な技である。
それに動揺している間に隊長は腕を引いて今にも放とうとしている瞬間であった。
(マズッ・・・!)
焦った飛鳥はそれをくらうまいとまるで腰の入ってない右の突きを出し・・・
「フッ!」
「うぇっ!?」
正拳突きを放つと思っていた体勢から直ぐに飛鳥の突き出された右腕を掴み背を向けて勢い良く引き、綺麗な一本背負いで飛鳥を投げ飛ばした。
「うわわわ!ぐべっ!?」
稽古場の床に潰れたカエルのような声を出して落ちる飛鳥。受け身は取れたもののそのまま床にぐでーっとしている。
「焦ったな。予想外の事態に急いて対応しようとするからそうなる。あの場合足を払って間合いから下がるか、冷静に捌くか、最悪防ぐかが望ましかった。」
「うぐぅ・・・」
「格上相手には一手一手が重要となる。焦らず、見切り、隙を突く。これが大事だ。まぁ、時には速攻の強引さも必要だが。」
「はい・・・」
「押忍、だ。」
「押忍ぅ・・・」
完全に伸びている飛鳥を溜息を吐いて起き上がらせようとして首根っこを掴もうとした瞬間、
《ビー!ビー!》
「む!」
稽古場に響き渡る大音量の緊急事態発生の警報。それ即ちUMAの出動案件。
こんな所でボサボサしていられない。一瞬で着替えた響木隊長は飛鳥を叩き起して汗臭い道着から制服へと着替えさせ、急いで司令室へと走っていった。
「何事だ!」
「街から緊急要請!未知なる生物の発見情報とのことです!」
「なにィ!?」
ドタドタと走り込んできた隊長と飛鳥。隊長は稽古場から走ってきたというのに汗一つかいていない。凄まじいスタミナとタフネス。それに対して飛鳥は後ろで息絶えだえと状況を聞いている。
「現在、未知の人型生物はその場から逃亡。しかし、反応から見るとまだ周辺に潜んでいるようです。」
「そうか。だとすると怪獣ではなく、宇宙人案件か。よし!飛鳥!真!想!お前達はAポイントから、鉄平!悟!お前達はBポイントから行き各自ターゲットを挟み撃ちにするようにして行け!絶対に逃がすなよ!」
「「「「「ラジャーッ!」」」」」
響木隊長の迅速な指示の元隊員達は元気よく(一人若干息が震えていたが)返事をし、各自専用車であるハマービークルの一つ『サルトプス』でポイントへの移動を開始する。
「目撃地点は・・・公園?ごく普通の公園だ。」
飛鳥は助手席で宇宙人が目撃されたと言うポイントを解析すると、そこは市街地の中にある極々普通の公園であった。流星丘公園。その名の通りよく綺麗な星空を見ることで少し有名な公園。それ以外特に何がある訳でもない。休日には母娘が遊んでいたり、BBQが行われている事もあるらしい。
「え?そんなとこに宇宙人が?」
後部座席から真が疑問の声を出す。顔を前にひょっこりと出し、飛鳥の専用端末を覗き見る。
「怪異ってのは意外と身近にあるもんですぜ姉御。」
運転をしている倖田が何故かキメ顔をしながらそう言った。しかし最後の言葉がいけなかった。結果、倖田は真に腿をつねられることになる。
「誰が姉御だ。」
「ちょっ!痛たたた!?今俺運転中!ナウドライブ!暴力反対!」
「チッ、後で覚えてなさい。」
腿の痛みに何とか暴れずに耐える倖田。運転中という事であまりやられなかったがどうやら後で罰を受けることは確定らしい。彼女はからかわれるのが嫌いなのだ。「やっちまった・・・」と呟いてあからさまに倖田のテンションが下がっていく。飛鳥はそのいつものコントを苦笑いで見守っていた。
なんてやっているとポイント付近に到着する。すぐ様車を降り、公園に入ってあたりを見渡す。
「ここね。よし、飛鳥は南西から。想は北西から接近。あちらに合わせて円を縮めるように追い込むわよ。」
「「ラジャー」」
真の指示により、バラける二人。別行動の鉄平と悟るもそれぞれが円を描くように配置に着く。これならどこから逃げようとしても誰かと対面、若しくは間を通り抜けることになるのでまんまと逃すことは無い。これをジリジリと公園の中心に向けて縮めていく。
緊張感が包み込む中全員がロックを外したスーパーUMAガンを構えながら何時でも宇宙人の出現してもいいよう集中して歩く。
そうして歩いているうちに飛鳥は途中にある草むらの中に入り・・・
「・・・あ」
「わッ!」
偶然、そこに隠れていた宇宙人と鉢合わせた。
「宇宙人発見!南西の草むらの中です!」
「あわっ!あわわっ!」
素早く情報を発信する飛鳥。その間も宇宙人から銃口は背けない。慌ただしく動く宇宙人が何か妙な事をしようとしたら即射撃するように。そしてあっという間に全員が駆けつけ、宇宙人の周りを囲むようにスーパーUMAガンを構える。
「宇宙人!無駄な抵抗はするな!大人しく確保された方が身のためだ!」
「あ、あの、ぼ、僕・・・!」
取り囲んで確保をしようとするが、ウルトラマンと同化してる故か飛鳥は傍から見れば抵抗しようとしているようにしか見えない宇宙人の様子がおかしい事に気がつく。
「ま、待って下さい。」
「?どうした、飛鳥。」
飛鳥が声をかけると今まさに宇宙人を掴もうとしていた鉄平が動きを止めて飛鳥の方を見て聞き返す。飛鳥は自分が、というハンドサインを出し鉄平に下がってもらい、宇宙人とコンタクトを取ることにした。
「えーと、いきなりごめんね?驚かせちゃって。僕達はUMAって言って君を探しに来たんだ。君はどこから来たんだい?」
飛鳥は出来るだけ優しい口調で宇宙人に問掛ける。他の隊員達は頭にはてなマークを浮かべる中、宇宙人は飛鳥に何か自分と近しいものを感じ、オドオドしながらも質問に答えた。
「僕は・・・宇宙から来たクリスタ星人。お兄さんは?」
聞こえてきたのはまだ幼い、子供のような声。飛鳥はこの子がまだ子供の個体だということを確信する。と、同時に意味深な質問が飛んできた。
「え?ぼ、僕は地球人だよ。」
「え、そうなの?少し僕と同じ感じがしたから・・・」
「あ、あー!その事は置いといて!少しお話が聞きたいんだ。僕達に着いてきてもらってもいいかな?」
地球外から来たある種同族故に分かる感覚があるのだろう。見事見抜かれて内心冷や汗ダラダラな飛鳥は強引に話を切り、宇宙人に同行を願う。
できるだけ優しく、警戒されないように注意しながら話していると突然、飛鳥は横から突き飛ばされ、その拍子に飛鳥の肘が倖田の脛へとクリーンヒットした。
「うわっ!?」
「ノゥッ!?おぉぉおぉお!?痛った!痛った!?」
飛鳥が転び、倖田はその近くで脛を抱えてぴょんぴょんと飛び跳ねる。それを冷めた目で見ていた真と呆れていた鉄平と悟だったが直ぐに宇宙人の方へと振り向くと目を見開いた。
そこには、宇宙人の前に手を大きく広げて盾になるように立っている少年がいた。
そう、武蔵少年である。
あの時、道のおばちゃん達の話を聞いた武蔵は即座に公園へと走り出し道中でランドセルを投げ捨ててまで全力でここにやってきたのだ。
「なっ・・・いつの間に?」
「それに、子供?」
急に現れた武蔵少年に困惑するUMA一同。武蔵少年は瞳を潤ませ、体が震えながらも宇宙人、いや友であるコスモスの前に壁として立ちはだかる。
「コ、コスモスを虐めるな!宇宙人だからってUMAに連れて行って酷いことするつもりなんだろ!そんな事させないぞ!お、俺が相手だ!」
ガチガチと歯を震わせながらも頼りないファイテングポーズで必死にコスモスを庇う武蔵。UMA一同はどうする?と予想外の出来事に顔を見合う。
「え、えーっと君は?」
「お、俺は武蔵!春野武蔵!コスモスの友達、いや!親友だ!」
そう高らかに叫ぶ武蔵。普通ならここで困惑か、疑念を抱く所だろうが、色物揃いなのがUMA。宇宙人を友達であると言い、大の大人相手に怖気付きながらも決して逃げようとしない勇気に熱き漢鉄平が胸を打たれた。
「取り敢えず、話は聞くからそこを────」
「な、なんて子だ!宇宙人を怖がらず、俺達に立ち向かう!そんな勇気!・・・俺は嫌いじゃないぜ!聞こうじゃないか!話を!なぁ皆!」
いきなり感激の涙を流しながら仲間に一気に捲し立てる鉄平。そんな鉄平にドン引きしながらも真はそれに賛成した。悟と飛鳥は苦笑いで、倖田は未だ痛む足を抱えながら鉄平に賛同する。また始まったよという思いを胸しまいながら。
もうちょっと洗脳だとかそういった特殊な所にも目をつけるべきなのではないかと真は思ったが、鉄平の余りの暑苦しさにその事を言う気にはなれなかった。
「それで、君と宇宙・・・いやコスモス君は何処で出会ったんだい?」
暑苦しい鉄平を置いておいて悟が目線を合わせて武蔵に質問する。一瞬ビクッとなった武蔵だったが、危害を加える気がないと察したのか腕を下ろし、話を始めた。
「・・・ここで。流星群の日に空から降りてきて、そのまま友達になったんだ。」
「流星群の日?・・・あぁ!三ヶ月前の!例の流星群の日か!そんな前からいたのか!?センサーには何の反応も無かったけど・・・。」
悟は懐から端末を取り出し、基地にいる唯隊員にその日の宇宙からの飛来物の反応データを見てもらったがそこには一切載っていなかった。つまり、それをくぐり抜けるほどの能力を持っているという事。それを聞いた悟は少し警戒心が上がった。
「うん、空からヒューッて。な!コスモス!」
「う、うん。」
「・・・んじゃあ、コスモス君はなんで地球に来たんだ?侵略目的とかでは無さそうだし。悪巧みもするタイプにはみえないしな。」
「それは・・・」
何故か言葉に詰まるコスモス。どうやら言い難い理由があるようだ。これは問い詰めねばと思った悟が更に質問を書い飛ばそうとした所でそれを不安げにみていた武蔵が何かを思い出したようにあっ!と声を上げる。
「そういえばコスモス、ここしか降りる所が無かったって言ってたよな。あれどうゆう意味だったんだ?」
「ここしかなかった?どういうことだ?」
「えと、うぅ・・・」
首を傾げる武蔵に眉を顰めるUMAメンバー。精一杯説明しようとして、直前に言い淀んでしまうコスモス。
それを見た悟は1つため息を吐くとその手をコスモスのクリスタルの頭部へ伸ばし、子供をあやす様にポンポンと優しく撫でた。
「大丈夫だ。ここにゃお前を責めるやつなんていねぇよ。ゆっくり、落ち着いて話してくれ。なっ?」
「・・・うん、ありがとう。」
面倒見のいい兄貴肌の悟はニッと眩しい笑顔でそう言うとコスモスも安心して落ち着いたのかお礼を言って深呼吸をする。
「実は・・・僕・・・逃げてきたんだ」
「逃げてきた?何から?」
「宇宙海賊・・・そこに奴隷として捕まってたんだ・・・」
「えっ!?」
「なんだって!?」
コスモスから語られた衝撃の事実!予想の斜め上をいく事実にUMAメンバーも武蔵も大層驚いた。それに申し訳なさそうにしながらもコスモスは話を続ける。
「偶然、調査の為に母星から離れて単独行動してた時を狙われて・・・そのまま捕まったんだ。何とか抜け出したんだけど、近くにあった降りれそうな星が地球しかなくて。それで、偶然武蔵の所に・・・。」
「コスモス!!」
「ッ!」
苦痛そうに話すコスモスの話を武蔵が大声を上げて中断し、コスモスの肩に掴みかかる。眉を顰めて怒りを露わにする武蔵にコスモスは顔を下げて意気消沈して謝罪をする。
「ご、ごめん・・・迷惑だよね。こんなこと話したら皆も狙われるかもしれないって思って、それで皆を困らせて・・・」
「なんで言ってくれなかったんだよ!!」
「・・・え?」
罵声が飛んでくると思っていたが、飛んできたのは全然別の言葉だった事に困惑するコスモス。武蔵は更に詰め寄ってコスモスに心からの声をかける。
「なんでそんな大変な目に遭ってたこと言ってくれなかったんだよ!俺たち友達だろ!?なら辛い事も話してくれよ!」
「で、でも・・・」
「俺知ってんだよ!辛いこと一人で背負ってるともっともっと辛くなるって!友達の玩具壊したの隠しちゃったり!鉛筆無くしちゃったり!実はズルしてたり!友達に隠し事するってすっげぇすっげぇ心が痛いんだよ!」
「武蔵・・・」
コスモスの肩を掴んで目をしっかり見て武蔵。自分の経験から得たその痛みを知っているからこそコスモスの隠し、背負っていた苦しみも共感出来る。だからこそ武蔵はその事に怒っている。隠していたコスモスに、何よりもそれに気づいてやれなかった自分に。
「コスモス、俺はどんなことを言っても絶対に突き放さない。例え周りが全部敵でも俺だけはお前の味方だ。」
「どうしてそこまで・・・」
「だって俺達、友達だろ?」
「ッ!!」
コスモスは武蔵の真っ直ぐな誓いの言葉に涙した。外から来た自分を受け入れてくれて、大変な事を隠していたにも関わらず友達と言ってくれる武蔵の優しさに心を打たれたのだ。それを見た武蔵は泣いているコスモスを優しく抱き寄せた。
「ありがとう・・・ありがとう武蔵・・・」
「何言ってんだよ、当然だろ?友達は助け合うもんだからな。」
「ゔん・・・」
「あーもう泣きやめってほらほら。てかどっから涙出てんの・・・まぁいいか」
泣きじゃくるコスモスの背中をポンポンと叩く武蔵は少し触れてはならない部分に触れかけたが何とかスルーしたようだ。
異なる種族の深い友情に飛鳥達がホッコリし鉄平が号泣する中、どこからともなくパチパチパチと乾いた拍手の音が聞こえ始める。
「いやー、いい茶番を見せてもらったぜ。思わず腹抱えて笑っちまうとこだった。」
「ッ!?」
周りには人の姿が見えないというのに響いてきた渋い声に武蔵達は困惑して辺りを見渡し、UMA隊員達は警戒し武蔵達の盾になるよう円の陣形をとりUMAガンを構える。一人一人が注意深く辺りを見ていると飛鳥の近くにあった木の所の空間が歪み、一人の異型が姿を現した。
すぐさま全員その異形に銃口を向けて戦闘態勢へと移行する。五つの銃口が向けられている異形・・・いや、宇宙人は焦りひとつも見せずに余裕綽々と木にもたれかかっている。
「どうも初めまして弱小種族の地球人諸君?」
「・・・ヴォルガ・・・!」
「ヴォルガ?」
ケラケラと笑う宇宙人に対して小さく震えながらそう呟いたコスモス。それを聞いた飛鳥はそれがこいつの名前だと察する。
ヴォルガはニヤリと悪どい笑みを浮かべると大袈裟に腕を広げて律儀にも自己紹介を始めた。
「あぁ、その通り。俺の名はヴォルガ。宇宙海賊のカリスマ、マグマ星人ヴォルガ様だ!!」
宇宙海賊。それは読んで字のごとく宇宙で悪逆略奪を繰り返す荒くれ者共の集い。宇宙全域に存在し、情け容赦の無い略奪行為、星の地上げ行為、人身売買、etcetc・・・正しく悪と称されるべき者達である。その癖尻尾が掴みにくく姑息な為宇宙警備隊でも手を焼く奴らだ。
そしてそんな奴らの一人がこのマグマ星人ヴォルガ。
地球人は知らないが宇宙ではそこそこ名の知れた宇宙海賊である。主に行っているのは星の地上げに人身売買などの違法行為をコソコソと行い、自身よりも弱い種族を狙って狩りを行うなどなかなかに小物な事をしている。やっていることなら別に他の奴らとは大差ない。
だが、奴が名を上げているのはこういった事ではなく、その卑劣さにある。逃げるためなら仲間を平然と差し出し、裏切りはお手の物、強い者には媚諂い油断した所を後ろから刺すなど小物過ぎるやり方でのし上がってきたのだ。
「そいつは俺様が苦労して手に入れた道具なんだよぉ。だからさぁ、大人しく返してくれよなぁ?んん?」
ニタニタと気持ちの悪い笑みをしながらヴォルガはその右手に着いている自慢の長いサーベル、『マグマサーベル』を小さく揺らしながら武蔵達を見下してそう言った。
その言葉に武蔵は生まれて一番の激情を覚えた。
「ッ!巫山戯んなっ!コスモスはお前の道具なんかじゃない!俺の友達だ!」
「へー、逆らうってのかぁ?」
「当たり前だろ!さっさと消えやがれこのキザ野郎!」
武蔵の精一杯の悪口。小学生並というか、現役小学生の小さな煽りにあまり効果はないだろうと思っていた飛鳥だったが飛鳥の想像よりも煽り耐性の低いヴォルガは額に血管を浮かばせた。余りにも小さい器は直ぐに許容範囲を超え、怒りのマグマを湧き上がらせた。
「ん、んだとテメェ・・・!俺がキザ野郎だと・・・!?」
「事実だろバーカバーカ!そのセンスの悪い全身黒タイツを直してから一昨日来やがれ!」
「ゆ・・・ゆ・・・許さねェェェ!!俺様の馬鹿にしただけじゃ飽き足らずファッションを馬鹿にするなんて!調子づいてんじゃねぇぞこの下等な弱小種族がぁぁぁ!!」
ちょっとした罵倒に完全にブチ切れたヴォルガはそのサーベルを高々と振り上げ、先端にエネルギーを集中し電撃波として武蔵達に向けて全力で放った!
(マズイ!)
突然の奇襲に他の隊員が反応出来ない中、飛鳥はデルタプラズマーを握り締め前に出ようとしたが、その前に彼等の前に飛び出す一つの影があった。
「やぁッ!」
「コ、コスモスッ!?」
飛び出したコスモスはその両手を前に突きだし自身の前に目一杯の力を使ったバリアを貼って電撃波を防いだ。だが、子供であるコスモスと宇宙海賊のヴォルガでは余りにも力の差があったのかバリアは一瞬で破られ、反動でコスモスは大きく弾き飛ばされてしまった。
「あぐぅ!?」
「コスモス!」
コスモスが吹き飛ばされ、木に強く体を打ち付ける。武蔵は急いでコスモスの元へ走り、倒れるコスモスを抱き抱える。気を失ってしまっているようだが、死んでしまってはいないようだ。一先ず、武蔵はその事に安堵してヴォルガに怒りの視線を向けた。
対してヴォルガは更に高ぶるイラつきを隠そうともせずに髪をぐしゃぐしゃとかき乱す。
「あーあーあー!あー!ムカつく!ムカつくよお前ら!特にそこのガキ!クソ雑魚な人間の癖によォ!俺に歯向かってんじゃねェよぉぉぉ!」
衝動のままに叫び声を上げてサーベルを天に向けて掲げる。するとヴォルガの全身が禍々しいオーラに包まれ、どんどん巨大化して最終的には本来の姿である身長57メートルという巨大な体へと変貌し、比較すると蟻サイズである飛鳥達を見下す。
「デッカ!?」
「巨大化した!」
UMAメンバーは驚愕するがそんなことをしてる場合ではない。飛鳥は素早く武蔵を、真がコスモスを抱えて走り急いでサルトプスに乗せる。倖田が急いで運転席へと乗り込み、真が助手席へ乗るが飛鳥は武蔵を乗せると自分は乗らずに扉を閉めてヴォルガの方へ向き合う。
「飛鳥!?何やってるの早く!」
「先に行ってください!俺は時間を稼ぎながら鉄平さんの方に合流します!」
「そんな無茶な!」
「いいから早く!こっちだヴォルガ!」
「ちょ!飛鳥ァ!」
飛鳥は後ろから聞こえる真と倖田の制止の声を無視してヴォルガに向けてスーパーUMAガンで挑発する。
『アァ!?うぜぇぞテメェ!』
「うおぉ!?」
巨大化したヴォルガの電撃が飛鳥を襲う。ギリギリ回避するがそれによって発生した爆発に吹き飛ばされる。何とか受け身を取って立ち上がると車が走っていく音が聞こえる。どうやら倖田達が発進したらしい。鉄平と悟の姿も見えない。これなら、心置き無く戦える。
飛鳥は木の影に隠れながらデルタプラズマーを握り締め意識を集中させて瞑想し、明鏡止水のその先にある壁を超えて光と同化し、もう一つの姿へと変わる。飛鳥を中心に辺りが爆発したような強風に包まれると大地から光の柱が姿を現した。
『逃がさねぇぞ!下等生物共!』
その光の柱は今まさに真たちの乗るサルトプスを狙ってサーベルから電撃を放とうとしていたヴォルガのすぐ近くに現れ、その光の中から雄々しい腕が出てきてヴォルガのサーベルをガシリと力強く掴んだ。
ヴォルガが驚愕して光の柱を見ると徐々に光の柱が収まっていき、中から銀色の巨人、ウルトラマンが姿を現した。その姿を見たヴォルガは更にギョッと目を見開く。
「くそ!どうしてここにウルトラマンが!」
ウルトラマンの美しく輝くパール色の瞳に睨まれたヴォルガは怯みながらサーベルを振ってウルトラマンの手を振り払う。
ウルトラマンは弾かれた手をゆっくりと降ろしながらウルトラマンはヴォルガをその眼力で威圧しながら佇む。その貫禄に思わず尻込みするヴォルガだが、逆にここで奴を倒せば名が上がり更に宇宙に自分の存在を轟かせることが出来ると考えると大きな舌打ちをしてウルトラマンに対してサーベルを構えた。
対抗する姿勢を見せたヴォルガにウルトラマンは静かに腕を上げ、左手を開いて前に、右手は脇を閉めて構えた。
「ついてねぇぜ・・・光の国の野郎がこんな辺境の星にいるなんてよ・・・!」
サーベルの先端をウルトラマンに威嚇するように向けるがウルトラマンは怖気付かずに間合いを警戒しながら近づいていく。
「だが逃げねぇ・・・てめぇを殺して更に名を上げてやるっ!」
自らの野望を吐露しながらウルトラマンに向けて真っ直ぐサーベルを突き立てる。それをウルトラマンは横から流れるように手を当て横にそらすことで回避する。攻撃をスカしたヴォルガは今度は横薙ぎに振るうがそれも上半身を後ろに逸らすことで回避される。
大きな隙ができたヴォルガに蹴りを放つウルトラマン。避けることが出来ずに食らったヴォルガは腹を抑えながらたたらを踏む。
ならばとサーベルの先から光弾を発射するが尽く弾かれるとお返しとばかりにナックルシューターがヴォルガに放たれ、更に後退させられる。
(クソ!流石はウルトラマン!このままでは勝てない!どうすれば・・・!)
勝つ為の手段を考えたいたヴォルガの目に武蔵達を乗せて逃げるサルトプスの姿が映る。そして策を思いついたヴォルガはニヤリと笑みを浮かべてサーベルに電撃を貯めながら位置を調整する。
そして充分に溜まった瞬間、ウルトラマンに向けて全力で放った。ウルトラマンはそれを焦ることなく避けようとするが・・・
「おっとぉ!?いいのなぁ!?避ければアイツらに直撃だぜぇ!!」
ヴォルガのその言葉に気づいたウルトラマンはハッと後ろを振り向く。ちょうどそこには道を走るサルトプスが。このまま避けてしまえば彼らの乗るサルトプスに直撃してしまう。それはダメだ!と咄嗟に避けようとした体をとめ身を呈して電撃を受け止めた。
「グァァアァッ!!」
電撃に体を焼かれるウルトラマン。その苦痛と痺れによって超人のウルトラマンとはいえ立っていられず膝をついてしまう。
「オラァ!」
そこにすかさずヴォルガが近づき強力な膝蹴りを叩き込む。痺れから防御もできずまともに食らってしまったウルトラマンは苦悶の声を上げながらメキメキと木々を巻き込みながら倒れ込む。だがヴォルガは容赦しない。倒れたウルトラマンに対して何度も何度も足を踏み付ける。
「テメェさえいなければ!もっとスマートに!奴を回収できたのによォ!」
苛立ちを隠そうともせずにウルトラマンを踏みつけるヴォルガ。そして最後には思い切りサッカーボールを蹴るような感覚でウルトラマンの腹を蹴りあげた。
受身も取れずに転がるウルトラマン。それでも何とか立ち上がろうと力を入れて、起き上がる。ヴォルガの卑劣な攻撃の数々によりボロボロにされてしまったウルトラマン。タイマーは赤にはなっていないがそれでもダメージは重かった。
「苦労して手に入れたんだ!『役立ってもらわなきゃ割に合わねぇ』!」
『なんだと・・・!役立つだって・・・!お前!あの子をなんだと!』
「へへ・・・あの種は貴重だぜぇ?1匹捕まえりゃ莫大なエネルギーが手に入るときた。それに例え奴が死んでもそれだけは生きる。狙わねぇ手はねぇだろ?宇宙にはアイツらを狙う奴らはごまんといる。だが奴らは中々守りが固くてなぁ。ガキ1匹捕まえんのがやっとだったんだ。それをむざむざ逃がしてたまるかよ。」
『まさか・・・!お前、あの子を!』
飛鳥はヴォルガがコスモスに何をしようとしているのかを察して目を見開く。ヴォルガはそれを見て邪悪な笑みを浮かべて答えた。
「あぁその通りさ!俺は奴をエネルギー炉として強大な兵器を作る!それこそ星一つ簡単に消し飛ばすようなな!普通なら無理だが、奴を使えばそれすら可能!俺はそれで恐怖による支配でぼろ儲けってわけさ!しかも死んでても構わねぇんだ!まるで兵器になる為に生まれてきたようなもんだよなぁ!ヒャハハハハ!奴は最高の“道具“だぜぇ!!」
「・・・・・・ッッ!!!」
ヴォルガの外道を通り越した醜悪そのものな言葉に飛鳥の、ウルトラマンの手がギチギチと音をたてて握り締められる。下らない計画の為に清らなか精神を持つ子供の命を奪おうとする目の前の明確な“悪“に凄まじい怒りが、火山の如く吹き上がってくる。
・・・だが、それを爆発させはしない。飛鳥の胸には響隊長の言葉が思い起こされていたからだ。
『激情を胸に沈めてはならない、それは己の手足へと込め自らを支える礎とせよ』
怒りがパワーに変わる。感情のエネルギーがウルトラマンを高ぶらせる。感覚が研ぎ澄まされる。
「だからまぁ、それを邪魔するてめぇは・・・ここで死ねや!」
三下のようなセリフを吐きながら、ヴォルガは右手のマグマサーベルの鋭い切っ先をウルトラマンの腹へと勢いよく突き立てた。だが、ウルトラマンはそれに対してなんの抵抗もせずに受け入れ、その結果マグマサーベルはウルトラマンの腹に深々と突き刺さってしまった。
「・・・ッ!」
ウルトラマンの腹部から光の血飛沫があがる。傍から見れば確実に致命的な一撃。とめどなく溢れてくる光。余りに痛々しい光景から、真は吐き気を催す。
「ヒャハハハハッ!ウルトラマン討ち取った・・・り・・・?」
それで勝ちを確信し、汚い笑いをあげるヴォルガだったが、突き刺ったマグマサーベルを抜こうとしてその笑みも薄れていき最後には笑いが焦りへと変わっていた。
「ぬ、抜けねぇ!?なんでだ!?」
幾ら力を込めて引っ張ても突き刺さったマグマサーベルが抜けることは無い。まるでセメントで塗り固めたように固定されている。
その間にウルトラマンの左手がマグマサーベルを掴む。ただそれだけでマグマサーベルにヒビが入り、ヴォルガは驚愕する。
(馬鹿な・・・!?握っただけで俺のマグマサーベルにヒビを!?)
それだけでその手にどれほどの力が込められているか分かる。そして俯いていたウルトラマンのゆっくりと上げられた顔を見て、ヴォルガは一気に血の気が引いていくのを感じた。
「俺は・・・」
凄まじい覇気を纏わせ、荒ぶる神の如き雰囲気を出したウルトラマンにヴォルガが心底恐怖したがそれからは決して逃れられない。
「俺は・・・!」
再び握る手に力が込められ、ヒビが一層広がるとウルトラマンは痛がる素振りも見せずにマグマサーベルを自身の腹から引き抜き、右手を今一度強く握り締め────
「俺は・・・!お前を!!許さなぁあぁぁアァいッッ!!!」
『デュウゥアァアァァアッッッ!!!』
「ッッ!?グオォオォォオォッ!?」
雄叫びと共に力強く握られた拳で渾身のアッパーカットを振り上げ、ヴォルガのマグマサーベルを真ん中から綺麗に殴り折った!
思わず悲鳴をあげ、腕を抑えながら藻掻くヴォルガ。だが、そんな事で攻撃の手は緩めない。ウルトラマンは折ったマグマサーベルを投げ捨て、苦しむヴォルガに容赦無く中段蹴りを叩き込んで吹き飛ばす。
「うぐ・・・ガァ・・・!ちくしょうよくも・・・!」
喘ぎ声をあげながらウルトラマンを睨めつけるヴォルガ。しかしその目線はどうしようも無く弱々しい。当たり前だ。自分より弱い者を狙い、人質、不意打ち、闇討ち、騙し討ち。そんな卑劣な手でしか結果を残せなかったたかだか宇宙のチンピラ如きが、高潔なる精神を持つウルトラマンに及ぶはずも無い。
この一回の攻撃で、自身のプライドの塊と言っても過言ではないマグマサーベルをへし折られた事でヴォルガは力の差を見せつけられその壊れやすい安っぽいメンタルは今にも折れそうになっていた。
「俺は、俺は宇宙盗賊のカリスマ、ヴォルガ様だぞ・・・!そんな俺がここで死ぬ筈が・・・!」
「ジュアッ!」
「グボォッ!?」
ふらつき、ブツブツと妄言を垂れ流すヴォルガの腹に強烈な下突きが叩き込まれ、器官的には人間に近しいマグマ星人のヴォルガは吐き気と口に吐瀉物がせり上がってくるのを感じ、思わず腰を曲げ頭を下げる。だが下げた先から顎に下からウルトラマンの上げ突きが突き刺さる。まるで弾けたようにヴォルガの頭が上へと飛び跳ね、後ろへと弧を描く。
そのコンボで最早意識を留めていないヴォルガは受身も取れずに地面へと倒れ込む。グラグラと揺らぐ視界、朦朧とする意識の中でヴォルガは無意識に逃走本能が働き、逃げなければと体を何とか起こす。
だが、その目の前にウルトラマンが立ちはだかる。
「ディヤッ!」
「ガッ!?」
ウルトラマンは情け容赦なく左鈎突きを脇腹に突き刺す。脇腹に伝わる激痛に退がろうとしたヴォルガの腕を掴み自分の方へ引っ張り、更に自身からも突っ込む事で威力を増した強力な鉄山靠を御見舞する。
再び吹き飛んだヴォルガは心が完全にへし折れていた。自分に勝ち目などないと確信するとすぐ様へっぴり腰になり、逃げる算段を考える。
(逃げなければ!俺はカリスマヴォルガ!ここで死んでいい器じゃねぇ!)
そうだ、もう一度痺れさせればいい。そうすれば逃げるだけの時間は稼げる!と考えたヴォルガは再び折れたサーベルに電撃を貯めウルトラマンに放った。
だが・・・
『ディア・・・!!』
「な!?」
電撃を受けながらも尚、ウルトラマンは止まることなく歩みを進める。効いてない訳ではない。それを意に介さない程に今のウルトラマンは凄まじいのだ。
ならばと今度は電撃ではなく光弾を発射する。しかし、これも効果はなく全く止まらない。
ビームを打つ。止まらない。火炎放射を放つ。止まらない。爆弾を投げる。止まらない。
最早、ヴォルガにウルトラマンを止めることは出来ない。何も打つ手がなくなったヴォルガはひたすらに体を震わせながらウルトラマンを恐怖に満ちた目で見ていた。
そしてついにヴォルガの前にウルトラマンが立つ。立ったそれだけなのにその凄まじい威圧感にヴォルガは今にも押し潰されそうになっていた。
ウルトラマンはおもむろに腰を下げ腕を大きく振りかぶるとそれを一気に振り上げ・・・
「ま、待デェッ!?」
ヴォルガの顎に綺麗なアッパーカットを御見舞した。その威力たるや衝撃で周りの木々が引っこ抜けんばかりの爆風と共にヴォルガを容易く空中へ跳ねあげ何度も回転させてしまうほど。
だがそれだけでは終わらない。
『ハァァァ・・・!』
先程、ヴォルガに食らった様々な攻撃の数々。そこから吸収していたエネルギーを両の手へと集中させる。左足を半歩前に出て半身になり右手と左手を合わせたまま前に向けて狙いを定める。空中を回るヴォルガに向けて意識を集中させ、エネルギーを解放する。
青いエネルギーが両の手へと集結すると左手はそのままに右手を弓矢を絞るように後ろへと引いてゆき力を溜めてゆく。そして完全に狙いが定まると引き絞っていた右手を一気に突き出し左手のエネルギーと共に光の矢となりヴォルガへと放たれた。
『ハァッ!』
勢いよく放たれたことで一筋の光の線となったエネルギー『アロービーム』は寸分違わずヴォルガの胸を貫きその体を更に上へと押し上げて行った。
上へ上へと押し上げられたヴォルガは成層圏を抜け、宇宙まで飛んでゆき遂にはヴォルガが乗ってきた宇宙海賊船へと向かってゆきアロービームのエネルギーが動力部を破壊し宇宙に1つの花火を散らせた。
『ジュアッ!』
その超視力でヴォルガを撃破した事を確認したウルトラマンは貫かれた腹部を抑えながら空の彼方へと飛んで行った。
━━━━━━━━━━━━━━━
ヴォルガの魔の手から逃れ、無事保護されなコスモス。もう彼を狙う者は居ないことを知ると武蔵は自分の事のように喜んだ。
しかし、次にコスモスが話したことに喜びを曇らせてしまう。
その内容とは、故郷への帰還。コスモスは誘拐されてここにいる身だ。故郷にいる仲間達をかなり不安にさせていることだろう。だからこそ1度帰り無事なことを知らせたかった。だが、故郷に帰るということはこの地球を離れるということ。武蔵と別れることだ。
「コスモス・・・」
「武蔵・・・僕は・・・」
向き合った2人の空気は重い。見守っているUMAの一面もハラハラしている。
沈黙が続いていたが武蔵が涙を拭き自分の頬を思い切り叩いてコスモスに向き直った。目を丸くしていたコスモスの手を取り何かをギュッと握らせた。
コスモスが手を開いて見てみるとそこにはとても美しい石、いや最早宝石と言えるほど綺麗な鉱石が光り輝いていた。
「これは・・・」
「俺の宝物!友情の証として持っててくれ!」
「武蔵・・・!」
コスモスはその目に涙を浮かべて友達から貰った大切な宝物をギュッと抱きしめる。そして今度は武蔵に飛びかかりめいっぱい抱き締めるた。
「おいおい、ちょっと痛いよコスモス」
「ご、ごめん!武蔵!でも嬉しくてつい・・・。」
そう言いながら2人は目に溜まった涙を拭い、互いの手を取り合って力強く握手をする。その目に、もう別れの悲しみはない。
「絶対にまた来いよコスモス。じゃなきゃ、俺がお前の星に行っちゃうぜ?」
「ふふ・・・うん!約束!そうなったら、全力で歓迎するよ!ま、先に来るのは僕だけどね!」
再会を誓う言葉に2人は笑いあって惜しむように手を離した。後ろではもう感極まったUMAメンバーが号泣している。特に約1名が脱水症状で死ぬんじゃないかレベルの滝の漢泣きをしていた。
そうしていると、突然辺り一帯を突風が襲い始める。上から下に流れる風は何かが上から降りてきたような感覚を抱かせ、事実、その感覚は現実のものであった。
「迎えが来たみたい・・・そろそろ行かなくちゃ」
コスモスが呟くと共に上を見上げると空の中に突然ステルスモードを解いた巨大な宇宙船が姿を現した。太陽の光を遮断し、まるで夜かと見間違うほど暗くなった辺りに仄かな宇宙船の光が照らされる。コスモスと武蔵の状況も相まってとても幻想的な光景が映し出されていた。
「武蔵、僕からもこれを」
コスモスが武蔵に自分のエネルギーを詰めたとても美しく輝くアメジストの様な鉱石を手渡した。武蔵はそれを恐る恐る手に取り、少し重いそれに友の思いを感じ取り心が嬉しさで溢れかえっていた。
「・・・っ!ありがとな!コスモス!」
「大切にしてね?」
「あったり前だろ!家宝にするぜ!」
「ふふふ・・・それじゃあ、『またね』」
「あぁ!『またな』!」
最後のやり取りを終えると、コスモスの体が淡い光に包まれ宇宙船へと転送されて姿を消した。そして目的を達成した宇宙船はゆっくりと空に上がると大気圏を抜けた瞬間、光の線となって遥か彼方、宇宙の先へと飛び立って行った。
それを最後まで、光の粒が空の果てに消えてしまうまで見守っていた武蔵は一筋の涙を流してコスモスからの大切な贈り物をギュッと握りしめた。
「いつかきっと行くよ。それまで待っててくれ、俺の『親友』」
そう呟いて武蔵は小さく笑みを零した。遠くに去った友の為、遥かなる友情を守る為に宇宙飛行士になる事を胸に誓って。
━━━━━━━━━━━━━━━
こうして、非道な宇宙人との戦いは終わった。武蔵とコスモスの別れを見ていた飛鳥達は役目を終えた為、自分達の基地に帰ろうとした時に飛鳥は何かを感じとった。
「・・・?」
「どうかしたの飛鳥?」
「いえ・・・気の所為かな?」
何かに見られていたような視線を感じて飛鳥は周りを見渡すが彼ら以外誰もいる気配は無い。気の所為と判断してサルトプスに乗り込む飛鳥。
『・・・・・・。』
そうして基地に帰っていく飛鳥達をグロテスクな赤黒い物体が見つめておりサルトプスが見えなくなるとまるで空気に溶け込むようにその姿を消していった。
─────彼らはまだ気付かない。破滅の時は刻一刻と迫っていることに。
特殊稀少鉱石生命体 クリスタ星人
S14星雲のイオII星に住んでいる宇宙人。体が超高密度エネルギー体の結晶で出来ており、そのエネルギーは原子炉の約1000倍以上と言われている。その為か食事や睡眠を必要としない。穏やかな性格で感受性豊か。争いを嫌うという聖人のような宇宙人。
凄まじい科学文明を誇るがそれを自衛以外の武力に使うことはない。他の星から奪う必要が無いためである。だが、それ故に本人達の戦闘力は皆無に等しい。下手をすれば地球人にすら劣る。それでも他の宇宙人に侵略されてないのはそれほどの科学文明を持っているからである。
普段は地球の宇宙服をスマートにしたようなスーツを着ている。指は三本で手が大きい。頭部は郡晶のような形をしておりその中に浮かぶように本体の頭がある。(頭は白いDeemoを想像して貰えれば)大人になるほど頭の郡晶は美しく大きくなっていく。
ちなみにクリスタ星人にも種族があり、『アメジス』、『シトリン』、『ロズ』、『スモーキー』などに分かれる。コスモスはこのアメジス種に属する。彼らは名前の代わりに個体によって番号がふられる。
宇宙海賊
本編にあった通り宇宙で海賊活動をする者達。悪からしかものを奪わない所謂義賊のピースメインと見境なく殺し、奪う外道のモーガニアがいるという。どこの海賊漫画だ。
『パッシブカウンター』
この作品におけるマグナムシュートの性質を持つ技。相手の攻撃を吸収、増幅させる事で技の威力を上げる。吸収と言っても完全に無効化してる訳では無いのでダメージ自体は負う。
最近、『カムヤライド』という漫画を買いまして独特な絵柄と設定で面白い作品でした。ヒーロー物好きな人にはオススメです。次回は何ヶ月後になるやら・・・まぁぼちぼち更新していきます
次回予告!
宇宙から突如として現れた騒音怪獣ノイズラー。音を食料とするノイズラーは過去に何度か地球に訪れており、あまり被害はないと考えたUMA。だが、今回のノイズラーは少し違う。実はこのノイズラー・・・グルメだった!ある理由から質のいい「音」を求めるノイズラーの為、史上最大の音楽会が始まる!
次回、怪獣オーケストラ!
最大最高の音を響かせろ!