TSした男のアイドル生活?   作:ディアドコイ

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2時台をお知らせします(ほぼ3時)。
UAが10000を越えました。本当にありがとうございます。
今回は文字数も3000を越えました。筆が速い人は本当に尊敬します。
これからも頑張っていきたいです。


寮の優しさ

「ひゃあ!だ、大丈夫ですか!?」

 

聞こえてくる高い声と、肩の辺りを揺さぶられることで意識が覚醒する。

薄く目を開くと、まるでピョコピョコと音をたてるかのように動くアホ毛が見える。

その持ち主に目を合わせると、起きたことに驚いたのか小さく悲鳴をあげた。

 

「あ!勝手にお部屋に入ってごめんなさい!」

 

睨み付けていると勘違いしたのかもしれない。

この姿になってから、視線を合わせるだけで謝罪されることが多い。

初対面の人へ、最初にマイナスのイメージを与えるというのは人間関係において不味いことだと思う。

相手に関わりたくないと思わせてしまったなら、もうその人とはそれきりになってしまう。

その相手が思春期の女の子ならば、1度そう感じさせたなら訂正できる場面も来ないだろう。

 

「えっと、晩ご飯だけじゃなくて、朝ご飯にも来ないから心配になってお部屋の鍵を借りてきたんです」

 

「……」

 

もう朝になっているのか。

掛けてある時計には9時過ぎとでている。

まずは取り敢えず声は出ないので感謝を込めて頭を下げる。

……自分の中では、頭を振るように下げるこのやり方にも慣れてきた気がする。

表情に変化はないので意味はないような気もするが、皆勘が鋭いのか何となく分かってくれる。

 

「あ、全然怒ってないですよ!ただ凄く心配で……」

 

本当に、この世界の人はエスパーなのではないだろうか。

 

 

先程の起こしに来てくれた黒髪の少女は小日向美穂という名前らしい。

すでに部屋の表札を見て私の名前を知っていたのか、同じ穂ですよ、と微笑んでいた。

笑顔が眩しくてキラキラとしている。

アイドルとして絶賛売り出し中らしいが、私にはわかる。

この子はアイドルとして成功するだろう。

私と違い、アイドルになりたいと願ってここまで来たことが伝わってくる。

 

応援してあげたいと素直に思える真っ直ぐな人だと思った。

 

 

小日向さんはわざわざ私を起こすために残ってくれていたようで、食堂には1人もアイドルはいなかった。

ただ、朝食は私の分を残してくれていたようで感謝の極みである。

1度もあったことがないだけでなく、挨拶にも行かなかった自分に優しいなんて、アイドルは外見だけでなく内面も良いのではないだろうか。

しかし、食堂の壁にセロハンテープが1つだけ貼り付いているのが、なぜか妙に気になった。

 

少し遅い朝食を食べ終え、気づく。

昨日は、結局服を買っていない。

午後から武内さんと会うのに、アイドルが昨日と同じ服を着ているなんて笑われてしまう。

財布を持ち、慌てて寮から飛び出した。

 

 

取り敢えず、寮からすぐ近くの若者向けそうな店へと入る。

服を決めることなんて5分あれば終わるのではないか、と思った私が馬鹿だった。

サイズが合うかの確認のための試着だったのだが、すぐに店員によるコーディネートが始まった。

こちらは話せないため着せ替え人形状態である。

ほぼ1時間取られてしまい、家電量販店へ行き火を使わないIH調理器を見る時間などなかった。

ここから寮へ1度戻った後に風呂に入り、今度は346プロの本社へ向かわなければ行けない。

……まだ一応の余裕はあるし、おそらく走ることになんてならないはずだ。

 

 

走らなければいけない状況になった。

風呂に時間をかけすぎたのだ。

初めて洗う女の体に戸惑いはあったものの、凹凸などないに等しい貧相な体をしているので時間自体はかからなかった。

問題は髪の毛である。

男の頃は坊主に近いような髪型だったため、今のショートボブ程度の髪でも洗うのに時間がかかった。

これまた乾かすにも一苦労で、女性が大変だと痛感した。

 

美城プロダクション本社の中へ入る前に息を整え、服装の確認も怠らない。

今から武内さんだけでなく、同じプロジェクトに所属する子とも会うのだ。

1日違いとはいえ、先輩である以上自分がしっかりとしなければいけない。

後輩に少しでも弱みを見せることなんて言語道断だ。

 

確認を終え中へと入ると、エントランスに巨体が見えた。

武内さんは遠くからでも判別がしやすくて助かる。

 

「高柳さん、おはようございます」

 

こちらは会釈で対応する。

もう昼だが、芸能界では敬語に対応しているおはよう、が一般的という話をどこかで聞いた気がする。

私も使う機会があるだろうか。

口が動くかわからないが。

 

そんなことをぼんやりと考えていると、もう1人女性がこちらへやってきた。

 

「新田美波です。改めてよろしくお願いします」

 

「おはようございます、新田さん。こちらは同じシンデレラプロジェクトに所属している高柳志穂さんです」

 

紹介に合わせて一礼する。

こちらを見て、にっこりと笑いかけてくれる。

この時点で既に私よりもアイドルとしての品格がありそうだ。

まあ、私もレッスンすら受けてないんですが。

今日は予定としては同じシンデレラプロジェクト所属となる、この新田さんとの顔合わせだけなので仕事としては終了である。

楽すぎないか。

 

昨日1度説明して慣れたからなのか、かなり早くに見学を終えた。

 

ここで解散か、と思ったときに武内さんは言った。

 

「今の時間はレッスンルームが空いているので、高柳さんのために青木さんにダンスレッスンを頼んでいるのですが、新田さんも一緒にどうですか?」

 

「ぜひ、一緒にやらせてほしいです!」

 

聞いてないし、ダンスなんて踊ったこともないのだが大丈夫なんだろうか。

昨日すでに給料を頂いている以上、その翌日に断ることなんてできない。

せめて自分の全力を尽くそう。

 

「それじゃあ軽いステップからいくぞ!1,2!1,2だ!」

 

「高柳!動きがぎこちないぞ!」

 

「高柳!これは基礎なんだから、無駄なところに力を入れすぎるな!」

 

「今日はここらへんで終わりにするが、しっかりと柔軟して体を柔らかくしておくこと!以上だ!」

 

怒られることの大抵が私だった気がする。

体力も男だった時と比べて落ちているからか、ステップの基礎練習のはずがかなり疲れた。

新田さんの方は何かスポーツをしていたのか、動きが軽やかだった。

後輩の前で怒られるというのは、先輩としては情けない姿であるが、そんな考えを吹き飛ばすような私にとって嬉しい収穫があった。

――レッスンの中だと、ある程度体が動かせるのだ。

感情を身ぶり手振りで伝えたりはできなかったが、これで歌のレッスンも何とかなるかもしれない。

演技のレッスンを続けることで常に演技中だ、と思えるようになれば自由に話すこともできる可能性がある。

いつアイドルを辞めることになっても大丈夫なように、真剣にレッスンに取り組まなければいけない理由ができた。

今日の成果としては十分だろう。

 

 

新田さんと別れ、今日は寮へと帰る。

少し遅めの時間になってしまったが、今日は晩ごはんを食べることができるだろうか。

 

寮のドアを開けると、突然パンッと乾いた音が響いた。

同時に、たくさんのキラキラとした紙が降ってくる。

 

「ようこそ!346プロ女子寮へ!」

 

――。

きっと外から見ると一切驚いていないように見えるだろうが、内面は驚いている。

驚きすぎて固まってしまった。

朝に起こしに来てくれた小日向さんから、名前も顔も知らない子までがクラッカーを持っている。

晩ご飯も朝ご飯も来なかったから、と言っていた。

なぜ知っているのか。

彼女達は昨日の時点で私のために準備をしてくれていたのかもしれない。

……ちょっと泣きそうだ。

 

手を引かれて、食堂へと連れていかれる。

気合いの入った豪華な食事が並んでいる。

壁には折り紙で作った花がたくさんくっついており、手が込んでいるのがよくわかる。

残っていたセロハンテープはこれの剥がし忘れだったのだろう。

私が来ないから、慌てて片付けたのだ。

もう十分感動だ。

 

小日向さんが先に話すのが得意ではないと伝えてくれていたのか、心配していた質問攻めも一切なかった。

ここまで配慮されると申し訳なく思ってしまう。

 

――よし、口が動く。

せめて今のこの気持ちを皆に伝えないと。

 

「ありがとう」

 

決して大きい声とは言えない弱々しい一言になってしまったが、寮の皆から歓声が上がる。

こんなに歓迎してもらえるだけで、この世界に来れてよかったと思う。

 

アイドルをやめて、いつか退寮するまでにこの恩を返せるよう頑張りたい。

 




アーニャとだりーなの二人の口調が難しくて……。
まだ出てきませんが、先がすごく不安です。
それと昨日、輝子のSSRを引いたので、寮の仲間として話に出せないかプロットと睨めっこをしています。
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