TSした男のアイドル生活?   作:ディアドコイ

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ボイスレッスンの違和感を覚えていたので、ボイストレーニングに変えました。これからも小さな修正をしていくかもしれません。


武内P視点 ②

シンデレラプロジェクトは当初の遅れを取り戻すかのような早さで進行しています。

先日、二人目のメンバーとして新田美波さんのスカウトにも成功しました。

新田さんの両親を説得するために、スカウトしたその日に広島へ日帰りで向かうという無茶をしましたが、無事に許可をいただけたので、一安心です。

真面目で面倒見が良い彼女の存在は、高柳さんにもこれから決まるメンバーにも好影響をもたらすはずです。

 

三人目は別事務所から移籍、という形になりそうですが、これもほぼ内定済みです。

オーディションも既に二次選考までは終わっていて順調にいけば春までにメンバーが全員揃い、デビューまで持っていけるかもしれません。

これから、さらに忙しくなりますね。

 

 

 

高柳さんと新田さんの顔合わせをしました。

少し緊張ぎみの新田さんと、表情の変わらない普段通りの高柳さんでしたが、上手く打ち解けられたようです。

前もって新田さんに高柳さんの性格の話をしておいたお陰か、静かな高柳さんへ首の動きだけで答えられる質問をしてくれています。

人数が多く、個性的になる予定のシンデレラプロジェクトでは新田さんのような人は非常に助かります。

本当にスカウトできてよかったです。

 

二人でも大丈夫だろう、と判断できたので事前に聖さんに頼んでおいたレッスンへと向かってもらいます。

明さんの方がしばらく予定が埋まっているので、ボーカルの基礎レッスンも頼んでいますが、高柳さんは大丈夫でしょうか。

少しでも口数が多くなっていただければ良いのですが。

 

 

今日は私はお二人とは別行動です。

朝に偶然会ったときに新田さんに昨日のレッスンについて聞いたところ、ダンスレッスンだけだったようで今日のレッスンも頑張ります、と笑顔で言われました。

一番気になることを聞けませんでした。

――高柳さんは大丈夫でしょうか。

 

夕暮れになり、仕事も一休憩という時間になりました。……しかし、三次選考まで来ると人数が絞られる分一人一人に神経を使います。

ここが頑張りどころです。

気合いを入れ直した時、扉が開けて聖さんが部屋へ入ってきました。

私を見つけると、早足でこちらへと向かってきます。

 

「お仕事中にすみません、プロデューサー。ですが、大切な話があります。」

 

ボイストレーニングを行おうとしたが、高柳さんの声がでなかったということ、サボりかと思ったが見学中も声を出そうと必死に口を動かしていたことを告げられた。

 

「ですが、前に独り言のように呟くのを見ました」

 

「本当ですか!?でも今日のレッスンだと確かに……」

 

「人前で話そうとすると極度に緊張して声が出ないのかもしれません。本人が頑張っている以上、現状は祈ることしかできません」

 

「……アイドルとして一人前になれるように全力は尽くすつもりです。もっとそういうことは事前に教えて下さい。声がでないと分かっている中でボイスレッスンをしろ、と言われた人の気持ちを考えるべきです」

 

「――そう、ですね。すみません……。」

 

確かにこのことは高柳さんをかなり傷つけたかもしれない。

注意していたつもりではあったが、自分の未熟さが全面に出た形となってしまった。

明日必ず謝罪しなければいけない。

 

「それに、高柳の運動能力はすごく不思議なんです」

 

困ったような顔で聖さんはそう言った。

だが、私は歩いているところしか見たことがないので答えようがない。

 

「当たり前のことに慣れていない、というか……。一日で簡単なステップは完璧にできるのに、体重移動するだけでふらつくんです」

 

すぐに慣れるとは思いますけど、と聖さんは付け足した。

確かにただ体重移動することなんて十数年生きてくれば当たり前にできることのように思います。

ステップが完璧にできるなら体幹が弱いわけでもないでしょう。

病院で二日寝ていたことで体の感覚に変化があったのかもしれない。

だが、すぐに慣れるなら問題はないだろうし、考えるべきことはそれではない。

 

「わざわざありがとうございます。明日、高柳さんに謝罪しにいこうと思います」

 

「こちらこそ、フォローをよろしくお願いします。」

 

失礼しました、と言って聖さんが部屋から退出していました。

この後、仕事はほとんど手につかず明日に謝罪を受け入れてくれるかだけを考えていました。

 

 

翌日、いつもより1時間程度早く会社へ向かいます。

高柳さんが何時に来るかわからない以上、エントランスで早めに待っておくべきでしょう。

そう思っていましたが、既にエントランスには先客がいました。

新田さんです。

目が合うと開口一番、新田さんはこう言いました。

 

「プロデューサーさん。志穂ちゃんの過去について教えていただけませんか」

 

「私は本当に最近のことしか知りませんが――。」

 

火事の一連の出来事について客観的に話していきます。

その後に、昨日の聖さんとの会話で予想したことについても伝えます。

新田さんは話を聞いている間、ずっと拳を握り締めていました。

 

「私、昨日志穂ちゃんが別に羨ましくなんかない、って呟くのを聞いたんです」

 

「……いつですか?」

 

「帰り道です。私はタオルを借りていたので、明日返すと伝えようとしたときに聞こえちゃったんです。志穂ちゃんだって話せなくて辛いと思います」

 

「私もそう思います」

 

高柳さんはいつも無口で無表情なので分かりにくいですが、こちらのこともしっかりと考えてくれています。

新田さんもそれを感じているのでしょう。

 

「――私が全力でボイストレーニングをやって志穂ちゃんのお手本になります。これ以上志穂ちゃんを悲しませないように、シンデレラプロジェクトを絶対に成功させましょう!」

 

新田さんに一日でこうも思わせられるのも、高柳さんの才能なのかもしれません。

 

「もちろんです。高柳さんのことをよろしくお願いします。」

 

新田さんはリーダーとして、シンデレラプロジェクトを引っ張ってくれるような素質を感じます。

――私も全力でお手伝いさせていただきます。

 

新田さんと一致団結してからすぐ、高柳さんが入り口から姿を見せました。

上手く話せないのを分かっていながらボイストレーニングを受けさせたことや自分の考えの至らなさについて謝罪します。

高柳さんも思い当たる節があったのか、既に許しているという風に頷いてきます。

 

いつもは目を見て頷く高柳さんが、今日は少しだけ目線が下にあります。

おそらく隈があることに気づいたのでしょう。

……これではどちらが大人か分かりませんね。

このミスを行動で取り消せるように、まずはシンデレラプロジェクトの選考をしっかりと、ですね。




後書きを考えていたら3時になりました。
少しでも面白いことを、と考えた自分が馬鹿ですね。
同じ作者名で、私よりずっと良い作品書いている人がいたので、そっと作者名を変えました。
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