TSした男のアイドル生活? 作:ディアドコイ
あるんだな。
UAが30000を越えてました。わーい。
どちらかというと説明回です。
朝の10時に起きた。
普通なら寝坊だが、今日は日曜日なので問題はない。
特にやることはないが、ずっと寮にいても何かすることがあるわけでもない。
……折角ならば、燃えてしまった家でも見に行こうか。
武内さんには全焼したと聞いたが、何か残っているかもしれないし、この世界の自分について分かるかもしれない。
家の最寄り駅自体は聞いていたが、道に迷ったので時間がかかってしまった。
本当に全焼したのか、それとも撤去されたのかは分からないが、家の残骸は何一つ残っていなかった。
住宅が建ち並ぶ中で、この家だけ燃えたというのは不幸中の幸いに違いない。
もし燃え広がっていたならば、大惨事となっただろう。
……私がこの世界に来るときに周りの火も一緒について来たのかもしれない。
詳しいことは分からないが、神様がいるなら随分と意地悪だと思う。
まずこの世界の自分だが、既に両親共に病気で他界している。
武内さんの口から出た話なので間違いなく、私の同意だけでアイドルになれた理由だ。
この世界の自分はまだ高校生の年齢で、両親がいないことは非常に辛いことだっただろう。
生きていたならそれはそれで、中身が変わっていることにバレた可能性は高いので、どっちに転んでもハードモードには変わらない。
さらに住んでいた家が燃えているのだ。
17歳の少女にとって酷な状況であっただろう。
私も、武内さんに声を掛けられていなければ相当に不味いことになっていたに違いない。
「まあ!志穂ちゃんじゃない!」
突然横から声を掛けられて振り向くと、隣の家から中年の恰幅の良い女性が飛び出してきた。
「家が燃えてから、病院に行ったきり戻ってこないから本当に心配だったのよ!」
ご近所さんというやつで、おそらくここに住んでいたときに面倒を見てもらっていたのだろう。
体が覚えているのか、何となく懐かしさを感じる。
後遺症はないか、住む場所は見つかりご飯も食べているか、辛くなったら家に来ても良い等々の優しい言葉をかけていただいた。
質問も全てがイエスとノーで答えられるあたりが私のことをよく分かっている。
「本当に残念ね……。でも生きていれば何とかなるし、家ならまた借りれば良いと思うわ。表情はかたいけど、思ったより落ち着いていて安心しちゃったわ。一人に寂しくなったら、いつでも来て良いからね」
ほう、私の住んでいた家は借家だったらしい。
ほとんど話せない私の変わりに武内さんが色んな所へ手を回してくれているのは知っていた。
何となく火災保険の話もしていた記憶があるので、大家との話し合いもしてくれたのだろう。
……武内さんには頭が上がらない。
本人が知らないうちに、シンデレラプロジェクトで忙しい中でもここまでやってくれているのだ。
ご近所さんは最後にもう一度、いつでも来て良いという話をして去っていった。
前世で私は隣人の顔すら知らなかったが、こちらではうまくやっていたらしい。
なんだ、優しい人に恵まれているじゃないか。
今日ここへ来て良かったと思う。
来る前は体が嫌がるのを感じていたが、今は素直にそう思える。
次はどこへ向かおうか。
悩んだが、次は本屋さんへ来ていた。
降りる駅は美城プロのある場所だ。
ここは雑貨屋から飲食店まで大体何でもあって、便利すぎる場所だと思う。
本屋を選んだ理由は、この世界のこともアイドルについてもまだよく知らないからだ。
少しでも情報を持っていない限り、いざ社会に出ていっても困るだけだろう。
歴史が書かれている本や、アイドル情報雑誌、美城プロについて書かれている本を適当に選んでいく。
後は、求人誌も忘れずにもらっておく。
この体でできる仕事など限られている。
早め早めに仕事を見つけておかないと、後で絶対に苦労することになるだろう。
こちらの世界へ来るというチャンスをもらっておいて、日雇い労働者になるのはお断りである。
考えたくはないが本当に最悪の場合、体を売ることも考えないといけなくなる。
中身は男なので、そんなことは絶対に御免だ。
お腹が減ったので軽食が食べたい。
昼御飯としてはだいぶ遅いので、ランチはほぼ終わっているだろう。
そういえば美城プロの中にカフェがあったはずだ。
行ったことはないが、せっかくあるなら一度行ってみよう。
「いらっしゃいませぇ~。346カフェへようこそ!メニューをどうぞっ」
時間も時間だからか結構空いている。
接客の子も可愛いのは、大企業の力が為せるわざかもしれない。
接客の子が笑っているのに気づいた。
こっちの視線で何かを察したのかもしれない。
「フッフッフ……!今日は臨時でバイトをさせていただいてますが、その正体は!……メルヘンチェンジ!歌って踊れる声優アイドル!安部菜々でーす!キャハッ!」
「……」
「……キャ、キャハ。あ、注文ですね、すみません!」
可愛いと思ったのは間違いだった。
こういう雰囲気を持っている人は関わらないことが一番だと思う。
アイドルと聞こえたのも気のせいだろう。
こんな人が先輩にいるなら美城プロダクションが心配になる。
「ご注文のコーヒーとパスタです!ごゆっくりどうぞ~、キャハッ!」
さっき少しキャラ崩れかけたのにもう立て直している。
メンタルの強さが凄いと思います。
見た目からして凄く若いのに、あのキャラはどうしたんだろう。
コーヒーもパスタもどちらも普通に美味しかった。
「またのご来店をお待ちしています!キャハッ!」
いつもの私なら若い子がキャラ作っているんだな、で流せるはずだ。
だが、安部菜々さんだけは痛々しく感じてしまった。
……きっと疲れているんだと思う。
寮へ戻り、さっそく買ってきた本を読み始める。
なんと、アイドル情報雑誌に小日向さんが載っている。
先にデビューしているとは話していたが、本当にインタビューが載っているのを見ると実感がわく。
――もしかしたら、私ももうすぐ載るようなところまで来ているのかもしれない。
今ならまだ引き返せるし、早めに気がついて良かった。
求人誌から話さずに出来そうな仕事を探し始める。
……夜が明けるまで求人誌と睨めっこをするアイドルがいるらしい。
結局、取ってきた求人誌の中に条件に合致する仕事はほとんど見つからなかった。
感想でアドバイスや応援コメントをくれる方、本当にありがとうございます。
鋭い人が多くて、伏線がもうバレているのでは?と心配になっています。