Fate 〜A Stare Gem〜   作:カベルネ

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プロローグ

きっと自分は壊れていたのだろう。

それはもう、ずっと前から。空っぽの中身を創りあげ、偽り続け。

あまつさえ、結末(ここ)に至るまで…その『(なにか)』を燃やし続けたのだから。

しかし、後悔はしていない。壊れていたことを悔いることはない。

この自分だったからこそ、彼女とここまでくることができたのだということだけは確信しているから。

 

彼女は言っていた。生前彼女()()が怒りをぶつけた人間たちの願いは、とても美しいと言えるものではなかったと。彼女たちの瞳に映る人間の願いは、共同体としての生物の自覚に欠けていたと。彼女たちが心からその願いを叶えて欲しいと思えるような、優しい願いを持つものは、そもそも彼女たちの力を必要とはしなかったのだと。

 

願いを叶える力を持ちながら、自身でその力を使うことのできない彼女たちが抱え続けた願い。数合わせに近い立場でこの聖杯戦争(たたかい)に参加した自分が、それを叶えるためにここまで奮闘することになるとは思わなかった。正直なところ彼女は優秀だったが、自分は本当に素人同然だったのだ。今生きていること自体が奇跡だと言えるだろう。死にかけたことだってあったし、今更ながらに自分の無力さが情けなくなってくる。

 

だが、不思議と気分は悪くない、理由も…今ではよくわかる。

自分が何を賭けて、誰を想って戦ったのかは理解しているし、その目的があったからこそ、自分は…いや、自分と彼女はここまで戦ってこられたのだから。

 

おもえば、初めて会ったあの時から、自分は少しずつ、人として大切なものを、人ならざる彼女から教えられていたのだろう。

 

…自分は、彼女が何より尊いものだと、その美しい宝石の瞳を輝かせながら話したような人物であろうとし続けられていただろうか。

 

きっと、今それを考えても無駄であろうことは想像に難くない。

彼女の持つ最大の宝具(たから)は、浅はかな自分の本性など見通していたのだろうから。自分の気持ちにも、彼女はとっくに気づいていたのかもしれない。しかし、彼女と過ごした短いながらも濃い時間の間に、自分がどれだけ成長できたかと問われても、胸を張って答えられる自信はない以上、この気持ちを伝えなかったことを後悔する権利は自分にはないだろう。

 

でも、たとえそうだったとしても。

どこまでも浅はかで、無駄な足掻きばかりであった人生だったとしても。

何もなかった場所に生まれたこの『(なにか)』だけは…

 

人々の願いを叶える奇跡と…彼女の祈りの結末を迎えるための礎としての役割を果たすために…。

 

 

 

 

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