PoH。
薄気味の悪いながらも、何を考えているかは単純明快で信用に値する男。
彼が俺を裏切る時は俺に利用価値がなくなった時ーーつまりは面白くないと感じた時だろう。
PoHはやりたい事があると一旦俺とは分かれて行動すると言って去っていった。
「最高の序幕を演じたオマエに負けないSHOWを見せてやるよ」
その言葉を残してPoHは森へと姿を消した。
PoHと分かれてから数分、俺は森の中を激走していた。
【レッドプレイヤー】。
自分の手でプレイヤーを殺したプレイヤーを指し示す言葉で、このプレイヤーは街への出入りが禁止される。
街への入場が出来ない今、安息の地を求めて奔走するしか俺の取れる行動はなかった。
次々と湧き出るモンスターを最低限の攻撃で屠って進んでいると目の前で三つの影が見えた。
目を凝らしてみると一人のプレイヤーを二人のプレイヤーが追っているのが見える。
面倒に巻き込まれないように来た道を戻ろうと踵を返した瞬間ーー
「⋯⋯この情報は売らないゴザ⋯⋯じゃない、売らないんダヨ!!」
独特の言葉使いが耳に入った瞬間に俺の身体は無意識に駆け出していた。
敏捷に全振りした俺の速さは離れた位置で言い争っていた三人の元に駆けつけるには時間がかからなかった。
俺は三人の元へと到達すると、彼女ーーアルゴを二人から庇うように二人の前に立ちはだかる。
「なっ!?」
「何奴でゴザル!?」
「はっ?ゴザル?」
俺は目の前の男の口調に、男は突然に現れた俺に呆然とする。
アルゴを助けるべく、考えもなしに突っ込んだが正直後悔している。
自分はボス戦に参加したプレイヤーの一人であるものの、敏捷で翻弄して手数でダメージを稼ぐ紙装甲タイプのプレイヤーだ。
先程のようにボス戦で疲労した状態でだったら一撃で倒すのも出来る程の威力はあるが無傷の相手には脅威になりにくいダメージ量。
勝てる気は毛ほどもしない。
しかし、アルゴの表情は背後にいる為に見えはしないが、俺の衣装を掴む手が震えているのから容易に予想できた。
こんな表情のアルゴを庇わないのは出来そうもなかった。
つくづく思う、俺は弱くなったと。
「おい、情報屋アルゴは俺の獲物だ。手を出すんじゃねぇ」
「何を言ってるでゴザル!先に聞いていたのは拙者達でゴザル」
「レッドプレイヤーに順番を守れって言うつもりか?」
二人のプレイヤーは俺の言葉の真意を確かめるべく、赤く染めっているであろうカーソルを見て驚愕を露わにする。
「お前ら死にたいのか?」
命欲しさに二人は脱兎の如く逃走する。
よかった、ここで正義感を掲げて立ち向かわれてもアルゴが服を掴む今は戦えそうもなかった。
「ふぅ、アルゴ大丈夫か?」
未だに震えてるアルゴに向き合おうと向きを変えるとーー
「うぉ!?」
アルゴが抱き着いてきて、間抜けな声を上げてしまう。
女子特有の柔らかな感触にドギマギしてしまい、安心させようとした言葉も今や彼方へと飛んで行った。
抱き締める訳にもいかず、行き場のない腕を空中で停止させて呆然と立ち尽くして数分、落ち着いたのかアルゴがゆっくりと離れる。
「ニャハハ、変な所見せちゃったナ」
照れ臭そうにヒゲが描かれた赤く染まった頬を掻くアルゴ。
そんなアルゴに何も言えず同じくらい赤くなっているであろう頬を掻く。
「エイトはカッコつけ過ぎダゾ」
エイト。
ハチを英語に変換してエイト、だからアルゴは俺をエイトと呼ぶらしい。
レッドプレイヤーと分かっても変わらずに愛称を呼ぶアルゴに少し頬が緩むのを自覚する。
「ムシャクシャしてやった、カッコ付けた覚えも後悔もしてない」
「ニャハハ、エイトは恥ずかしがり屋さんだナ」
からかうように言うアルゴからは恐怖の感情は感じられない。
用も済んだので早くこの場を去るか。
「エイト、行く宛はあるのカ?」
アルゴはβテストの際にいたプレイヤーの一人だ。
βの時の情報量を活かして、SAOの随一の情報屋プレイヤーに君臨している。
因みに俺とアルゴが知り合ったのもβテストの時だ。
雪ノ下さんの依頼でβテスターとして参加し、何気にSAOにハマって今回のゲームを買ったらこの有り様。
つまり、この惨状はあの依頼を持ち込んだ雪ノ下さんに全責任があると思う。
話がズレたので話を戻すと、アルゴと知り合った当初はアルゴ自身も情報屋なんて稼業はしておらず一介の冒険者だった。
その時にパーティーを組んでいたの俺だった。
そんな一時期パーティーを組んだ相手だから、少しながらも心配をしてくれているのだろう。
「あー、何処か人気のない安全地帯を探すしかないと思ってる」
βテストの時からだろう、俺が徐々に弱くなったのは。
アルゴに出会い、アルゴとパーティーを組んで、アルゴから無償の優しさを向けられたその瞬間から俺は弱くなった気がする。
だから俺は此処で冷たくアルゴを突き放して危険を及ばさないようにする何時もの行動が取れないでいる。
手羽内したくない、もっと知りたいと思ってるからこそ、俺は弱いんだろう。
「それならいい場所がアルじゃないカ」
「いい場所?」
「βテストの時に見つけたエクストラスキルのクエストの小屋だヨ」
「あー」
アルゴに言われて思い出す、βテストの時に知った隠しクエストの存在。
エクストラスキル『体術』を得られるクエストなのだが、このクエストは物凄く難易度が高い。
岩を素手で割るとか頭のおかしい内容なのだが、その岩が硬いし耐久力が高いしで割るのに時間を要する。
しかし、難易度が高いだけあってか使い勝手がよかった。
アルゴは途中で逃走したものの、俺は頑張って(アルゴが習得しろとうるさいから)習得してみたら投剣スキルに必須スキルだった為に愛用した覚えがある。
そして、そのクエストは山の頂上ら辺にあってモンスターが現れることない。
「スキルも手に入って、身を隠す場所も手に入ル。一石二鳥だロ」
「あー、確かにな」
「行かないのカ?」
「うん?なんでそう思うんだ」
「エイトが悩む素振りを見せる時は大体やらない、やりたくない時じゃないカ」
「よく見てんな」
「βテストの時にどれだけ関わったと思ってるんダ。エイトの考えは大体理解してルつもりダ」
ごめんなさい、少しストーカーみたいと思った俺をお許しください。
「だから、今回のあの時もエイトなら自分を犠牲にしてもキー坊を庇おうとすると思ったヨ」
「お前見てたのか」
「アァ、隠蔽を最大限発揮して隠れてタ。キー坊が責められてる時も、エイトが全ての
そこで言葉を切ったアルゴは顔を伏せる。
伏せる直前に見えたアルゴの表情は痛々しく歪んでいて、痛々しい表情をさせているのは俺だという事実に心が痛む。
「あれは庇ったんじゃねぇよ。俺がムシャクシャしてやっただけだ」
苦し紛れの言い訳。
昔の俺だったらもう少し聡明な言い訳が出来たんだろうが、アルゴの表情に焦りを覚えて無茶苦茶な言い訳になってしまった。
「にゃ⋯⋯」
「にゃ?」
「ニャハハハハハハハ」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯え。
俯く寸前に見えた表情は痛々しい程に悲しみにくれていて、それで勝手に泣いていると思い込んで苦し紛れの頭の悪い言い訳したんだがアルゴは大爆笑。
ははは、見たか俺の道化っぷり。
いやね、泣いてないならいいんだけどね。なんか滑稽じゃね今の俺。
「んだよ⋯⋯」
「悪い、同じ言い訳をするエイトが面白くて笑っちゃったヨ」
確かに同じ言い訳したような気もするが爆笑は酷くない?
「そうかよ⋯、受けたなら何よりだ」
「悪カッタヨ、謝るから許してくれヨ」
「別に怒ってる訳じゃねえよ。それよりも聞きたいことがあるんだが」
「ん、さっきのお詫びに何でも教えるヨ」
今何でもって⋯⋯⋯、何でもないです。
アルゴから物凄い怒気を感じて考えを振り消す。
別に邪な考えなんてなかったよ、本当だよ。
「んじゃ、エクストラスキルの所得する場所を教えてくれ」
「それは別に構わないけどいいのカ?あんなに渋ってたじゃないカ」
「まぁ、あの地獄をもう一回見るのは勘弁してほしいが、背に腹は変えられない。投剣スキルも前回愛用したスキルだからな、使い慣れたスキルを得る為にも必要だからな。特損勘定で考えた結果受けることにしただけだ」
「分かったヨ、案内は任せてクレ」
この後無茶苦茶くんれんした
アルゴの口調難し過ぎて調べつつ書いたら時間かかりましたぁ
つ、疲れた
感想などお待ちしてます(白目)