どうぞよろしくお願いします。
『疲れた。』
それが私の口癖。
楽しくても、嬉しくても、結局私の口から出るのは同じ言葉だけ。
『 あたし』の仮面をかぶる私が、どんな性格だったのか。誰も知ることはないだろう。
──そう思っていたのに…。
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20xx年8月。
ミーンミンミンと蝉の鳴き声が聞こえる炎天下の青空の下、私はいつものように花に水やりをしていた。
「**ちゃん、いつもありがとねぇ」
ここは近所のお婆ちゃんの庭。決して親戚などではないが、良くしてくれる私の理解者である。
「いいのよお婆ちゃん、こちらこそいつもごめんね」
今日も私は学校を休んでここに来ているのだが、誰も私を責めない。私に親はもういない。
「水やりをしてくれたおかげでお花が喜んでるよ」
「ならよかった!じゃあ、また明日ね」
家の裏口から出ていく私に、お婆ちゃんはありがとうといいながら手を振ってくれた。
お婆ちゃん家を出て、元来た道をもどる。太陽が照りつけ、肌が焼けていくのを感じながらゆっくりと進んでいく。私の母が亡くなったのも、こんな猛暑日だった。
今から17年前、田舎の中心にある家で私は生まれた。当時母は18歳。相手は同じ学校の同級生だったそうだ。普通に付き合って、お互いに好きあっていた。田舎だからデートなんて言っても行く場所はほとんどない。それでも、二人で海に行き水をかけ合ったりして笑いあうような普通のカップルだった。
──それでも、それが長く続くことは無かった。
母が私を身ごもったと伝えた瞬間、父の態度は一変。母を床に投げ飛ばし「俺にそいつを養うほどの甲斐性なんてねぇんだよ!!」と舌打ちをして家から出ていった。それ以来2度と会うことはなかったそうだ。
それ以来、母は私を女手一つで育てた。色んなバイトを掛け持ちし、夜遅くまで働いてくれた。お婆ちゃんは母が働いている間、幼い私の面倒を見ていてくれたのだ。
「ただいまー…誰もいないけど。」
私の声は家の中にすぅっと溶けた。家の角に座り込む。
チリンチリンと風鈴の音がする。
時刻はもうすぐ正午、お腹の虫の唸り声が聞こえる。
「お腹すいたなぁ…」
冷蔵庫を開けてみるが、すぐに食べられるようなものもない。
「…なんか作るか」
フライパンに火をつけバターを溶かす。昨日食べ残したご飯と冷凍のコーンを入れて塩胡椒で味付けをして完成。チャーハンだ。1人暮しを初めて2年、お婆ちゃんが教えてくれた時短料理だ。
「いただきます…」
バターの香りが口の中に広がる。よかった。上手くできたみたいだ。
家にテレビはないので、外から聞こえる蝉のオーケストラをBGMに黙々と食べ続けた。
「ごちそうさまでした。」
お皿を片付ける。洗い物を溜めるのはすきじゃない。
ひと通り片付け終え、縁側に座っているとガサガサと音が聞こえる。
またか…、と思いつつ声をかける。
「…何してんの」
続きます。