ハイスクールⅮ×S   作:悪魔の魂

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初めて書くからやっぱり難しい


動き出す運命

まだ陽が出ている夕方頃、俺は今日も音楽を聴きながら駒王町を散歩していた。

聴く音楽によってリズムが変わり、体が無意識のうちに反応しているのか、そのリズムに合わせて足を前へと動かす。

 

朝起きてから朝食を食べた後学校に行き、学校で授業を受け、女子に追いかけられるイッセーを眺め、しばかれたイッセーと会話し、夕方はこうして散歩する。

時にはイッセーの家へ遊びに行き、時には塔城と話し、時にはあの森へ行く。

 

いつも通りの日常だ。

前と比べれば大きな変化かもしれないが、今の俺にとってはこれが当たり前だ。

そしてその当たり前を楽しいと思っている自分がいる。

これもイッセーのお陰だな。今度何か奢ろうか。

 

「ん?」

 

イッセーに何を奢るか考えていると、突如として違和感を感じ取る。

目の前にはいつの間にか、長い間放置されたかのような廃墟があった。

 

(いつの間にこんなところへ来たんだ?)

 

自分でも気付かないうちに見知らぬ場所へ来たことを疑問に思っていると、突然俺の鼻が異臭を感じ取る。

嗅いだだけでも不快になるその臭いに、俺は反射的に鼻だけでなく口も押えてしまう。

一刻も早くこの場を離れようと周囲を見渡すも、周りには枯れ果てた木や雑草が生えているだけだ。

そして後ろを見た瞬間驚愕する。

 

(道が・・・無い!)

 

違和感を感じてからは一歩も動いていないためそのまま後ろに戻れば帰れると思っていたのだが、自分が歩いてきた道がそこには無かった。これでは戻れない。

 

(なら俺はどうやってここに来た?)

 

ここに来るまでの経緯を思い出そうと記憶を探るが、まったくと言っていいほど思い出せない。いや、覚えてない?

 

(そういえば、ここに来るまでは違和感を感じなかったな)

 

違和感を感じたのはここに来てから。言い換えればそれまでは全く違和感を感じなかったということだ。

無意識のうちに来てしまったということだろうか。

 

(分からないことを考えても埒が明かないな)

 

これ以上考えても意味はないと判断し、何故こうなったのかではなくこれからどうするかを考える。

選択肢は二つ。廃墟に入らず他の道を探すか、覚悟を決めて廃墟に入るかだ。

他の道を探す場合は、運が良ければ帰れるだろう。

しかしここがどこかわからない以上、下手に動けば遭難して二度と帰れなくなる可能性もある。

それに、ほかに道がなければ嫌でもこの廃墟に入ることになるだろう。

 

「ウっ」

 

異臭が鼻を刺激し、鼻から肺へと移る。

これ以上ここにいたら、あまりの気持ち悪さにおかしくなってしまいそうだ。

一刻も早くこの場から離れなければならない。

確実性を得るためにも情報は必要だ。もう覚悟は決めた。

俺はイヤホンを外してから、廃墟の中へと通じる扉を開いた。

 

廃墟の中は薄暗いが目で見るだけなら問題なさそうだ。

入ってすぐ右側には開きっぱなしの扉があり、少し進んだ奥の方には大きめの扉がある。

先に扉が開いたままの部屋を見てみると、どうやらバスルームの様だ。

一目でそうだと分かったが、同時に何も無いというのも分かったため、奥の部屋を調べるべくその部屋を後にする。

自分以外には誰もいない。耳に届くのも自分が歩いた時の足音のみ。その現状が俺に緊張感を与えてくる。

バスルームを後にしてからこの大きな扉の前に立つまで全く時間はかからなかったが、それだけでも俺は冷や汗をかいていた。

緊張しながらもドアノブに手をまわし、大きな扉を開ける。

 

「・・・・・」

 

扉を開けた瞬間に誰かと目が合った。

その人は口を開けたまま瞬きもせずに微動だにしない。

さらにその人の周りには、人の腕だけのもの、足だけのものがあり、部屋の所々が黒く染まっている。

 

「・・・・・!?」

 

数秒の間思考が停止し、ようやく目の前の状況を理解する。

目があっている人は首から下が無いこと。

部屋を黒く染めているのは血だということ。

そしてこの状況こそが異臭の正体なのだと。

 

思いもよらなかった状況を前にして、身体が後退りしてしまう。

ここにいたらまずい!

そう思い、すぐに廃墟を出ようと振り返ろうとしたその瞬間。

背中に軽い衝撃が走り、俺の意思とは逆に身体は部屋の中へと入る。

倒れそうになったが何とか踏みとどまり、すぐに扉の方へ視線を向ける。

そこには誰もいない。いないはずなのに、扉がまるで意思を持っているかのように、逃がす気はないといっているかのように勢いよく閉まった。

 

「ツカマエタ」

 

突然のことに呆気にとられて固まっていた俺の身体は、耳に声を捉えたことで再び動き出す。

顔を上に向けて声の持ち主をその目で捉える。

そこには天井に張り付く誰か、いや、何かがいた。

その何かは俺を逃がさないようにするためか、扉の前に降り立ってくる。

その姿を見た瞬間全身に鳥肌が立った。

青く染まった肌に、ゾンビのように白目をむき、何より背中からは虫の足のようなものが生えていた。

 

「ソノニンゲン・・マズカッタ・・・オマエハ・・ウマイノカ?」

 

そう言いながら異形は背中の足を伸ばし、俺目掛けて振り下ろしてくる。

俺は反射的に後ろに下がることでその攻撃から逃れるが、異形の足が床に当たった瞬間、床に小さなクレーターができた。

廃墟である故にボロくなっているとはいえ、その事実は俺にプレッシャーを与え、肉体ではなく精神にダメージを与えてくる。

一撃でも食らったら終わりだ!

だが異形はそんなこと知ったことかというように次々と攻撃を繰り出してくる。

横への薙ぎ払いを身を低くすることでかわし、再び振り下ろされるその足を横にローリングして回避する。

冷静なのか、焦っているのか、この時の俺に攻撃するという考えはなかった。

とにかく相手の攻撃に当たらないこと、どうすればあの異形から逃げ切れるのかを考えていた。

幸いにも相手の攻撃は単調で避けきれない速度ではなく、何とか避け続けるものの、このままではやられてしまう。

【持久力】は一般と比べれば高い方ではあるが無限ではない。いずれ限界がくる。

その証拠に段々と身体が思い通りに動かなくなっていき、呼吸も荒くなってきた。

 

(扉の前には異形が立っていて逃げられない。どうすれば・・・)

 

何とか打開策を見出そうとしたその時

 

ズルっ

「あ」

 

床の血で足を滑らせ体制を崩してしまう。

その一瞬の油断が命取りとなった。

異形がその隙を見逃してくれるはずもなく、暴力的な攻撃が俺の身体に浴びせられた。

吹き飛ばされた身体は大きな音を立てて壁へと打ち付けられる。

 

「!?」

 

もはや声すら出せないほどの痛みが全身に回り、意識が飛びそうになる。

何とか耐えきったものの倒れたまま動けなくなる。

 

「ドコカラタベヨウカ?ウデ?アシ?」

 

異形は俺を食らうべく徐々に近づいてくる。

動きたくても動けない、もう逃げられない、殺される。

そう思った直後。いなくなった両親、離れ離れになった友人達、無表情ながらも話し掛けてくれる塔城、そして親友の一誠。

今までに自分を支えてくれた人達の姿が頭に流れ込んでくる。これが走馬灯なのだろうか。

 

(ようやく日常を取り戻せたのにな)

 

すぐそこに死が迫っている。だが不思議と恐怖も絶望もなかった。

むしろ死ぬ前に、短い間だけでも楽しい時間を過ごせたことに喜びすら感じていた。

あいつに出会わなければ、きっと今の現状に絶望していただろう。

 

(せめてイッセーに恩返しくらいはしたかったな)

 

自分を友と呼んでくれた男を頭に浮かべながら、俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

「んん・・・」

 

陽の光に当てられて目を覚ますとベッドに横になっていた。

時計を見てみると朝の六時のようだ。

いつもより少し早いが、朝食でもとろうとベッドから出て体を起こす。

その瞬間、全身に痛みが走った。

身体を見てみると所々に痣がある

 

「っ!そうだ・・・俺は・・・」

 

自分の身に何が起こっていたのかを思い出した。

だがあれが夢ではなく現実だとすると、何故俺は生きていて自分の家のベッドで寝ていたのだろうか。

それに・・・

 

「これは・・・血か?」

 

俺の右手には指先から肘の前まで血がべっとりと付いていた。

 

(意識を失ってから何が・・・いや、やめておこう)

 

どうせ考えてもわからない。

今は生きていることを喜ぼう。

ていうか思い出しただけでも疲れてきた。身体も痛いし、今日は学校を休んだ方がいいか。

とりあえず音楽でも聴いて気分転換しよう。

 

「・・・・・ない」

 

 

 

 

 

♦

大公からはぐれ悪魔の討伐依頼が届き、私リアス・グレモリーは三人の眷属・姫島朱乃・木場裕斗・塔城小猫を連れてある廃墟へ来ていた。

外からでもわかる異臭が、ここに標的がいることを伝えてくる。

私は眷属達とアイコンタクトをとってから廃墟に入った。

すぐ傍にあるバスルームに何もないことを確認し、奥にある扉を開ける。

 

「これは」

 

予想外の出来事に、思わず声を洩らしてしまう。

その部屋の中は血で染まっており、人の腕、足、頭部。そして、はぐれ悪魔の死体があった。

裕斗が死体に近づき、その体を隈なく調べる。

 

「裕斗。どうかしら?」

 

「・・・急所への一撃でやられてますね」

 

裕斗が言った通り、はぐれ悪魔の体には急所の一か所に穴があいているだけであり、それ以外には特に外傷はなかった。

 

「いったい誰が」

 

「部長。少し離れたところにこんなものが落ちてましたわ」

 

他の場所を調べていた朱乃が手に何かを持って戻ってくる。

 

「これって、音楽プレイヤーよね?」

 

曲目を選択すると、イヤホンから音楽が流れ始める。

録音機能も確かめてみたが何も録音されていない。

被害者のものかしら?

ふと視線を横に向けると、小猫が驚いたような表情でこれを見ていた。

 

「小猫。これが誰のものか知っているのかしら?」

 

心当たりがあるのだと思い聞いてみる。

 

「それ、朝陽先輩のものです。」

 

「朝陽?」

 

「朝陽夜月君のことじゃないでしょうか」

 

「知っているの?裕斗」

 

「クラスは違いますが同じ二年です。あまり話したことはありませんが」

 

「そう。ここに彼の遺体はあるかしら?」

 

私がそう言うと、裕斗と小猫が周りを見渡し始める。

小猫がどこか焦っているように見える。

 

「ありませんね」

 

「ㇹ」

 

彼の遺体がないことを確認し、小猫がホッとする

彼と何かあったのかしら?

ここで朱乃が口を開く。

 

「でははぐれ悪魔をやったのは、その朝陽君なのでしょうか?」

 

それは私も考えていたことだ。

遺体がないということは、どうにかしてはぐれ悪魔を倒し、生存した可能性が高い。

 

「それはないと思います。朝陽先輩は神器も魔力も持たないただの人間ですから」

 

しかし、私と朱乃の考えは、小猫に否定される。

 

「じゃあ朝陽君が逃げ切った後に別の誰かがやったということかな?」

 

「ここで神器が発現した可能性もありますわ」

 

裕斗と朱乃が否定できない考えを述べる。

だが今ある情報だけでは、ここで何かあったのかはわからない。

 

「とにかく、一旦戻りましょう」

 

 

 

 

 

後処理をした後、私達は旧校舎にあるオカルト研究部の部室に集まっていた。

 

「とりあえず彼のことを調べてみましょう。私は使い魔で調べてみるわ。それと監視も必要ね」

 

「では、監視は私が」

 

「ええ。頼むわ朱乃。裕斗、あなたは他の生徒達から彼の情報を集めてきてくれないかしら。」

 

「わかりました。任せてください」

 

「任せるわよ。それじゃあ小猫」

 

私は廃墟で拾ったものを小猫に渡す。

 

「あなたはこれを持ってさり気なく彼に接触して。もし彼から魔力や神器の反応があったらすぐに伝えてちょうだい」

 

「わかりました」

 

廃墟での反応からして、恐らく小猫は彼と何度か話したことがあるだろうから、彼との接触は小猫に任せる。

魔力や神器があれば私達の方で保護し、無ければ記憶を消せばいい。

さて、どうなるか。

 

「今日はもう遅いから解散しましょう。明日から本格的に調査を開始するわよ!」

 

「「はい!」」

 

「・・・・・」

 

 

 

 

 

♦

学校が終わり、家への帰り道を歩いている間、俺は学校での出来事を思い出していた。

別に学校全体が大騒ぎになるようなことがあったわけではなく、俺からすれば少し変わったことがおきた。

夜月が学校に来なかったんだ。

最初は遅れてくると思っていたんだが、結局ホームルームが始まっても姿を見せることはなかった。

夜月に何かあったんじゃないかと思い担任に聞いてみたところ、怪我をしたから学校を休むと連絡があったらしい。

身体能力抜群のあいつが怪我をするところなんて想像できなかったが、そんな嘘をついて学校をずる休みするような奴じゃないし、事実なんだろう。後で見舞いに行こう。

それと、何か木場が生徒達に夜月のことを聞いてたな。

俺にも聞いてきたが、女子から人気のあるイケメンということと、何のために親友のことを探っているのかと思い、質問に答えはしたがかなりそっけない態度をとってしまった。

だが後悔してない!イケメンは俺にとって敵だからな!・・・夜月は別だが。

その時に夜月は怪我をして学校を休んだことも伝えたんだが相当驚いてたな。

何であんなに驚いてたんだ?いやまあ俺も驚いたけど、木場と夜月ってそこまで接点があるわけでもなかった気がするんだが。

 

「あのーすみません」

 

「ん?」

 

声がした方を見ると、そこには他校の制服を着た女子がいた。

長い黒髪で顔立ちのいい美少女、何より巨乳だ。おっぱい好きの俺としてはたまらない。

こんな美少女が俺に何の用だろうか。

 

「えっと、兵藤一誠君ですよね?」

 

「そ、そうだけど。俺になんか用?」

 

「私、天野夕麻っていいます。実はお願いがあって」

 

「お願い?」

 

「好きです!付き合ってください!」

 

・・・・・・・え?何?俺今告白された?

いや嬉しい!嬉しいよ!こんな巨乳の美少女が彼女になるとか、普段の俺ならあまりの嬉しさに感動の涙を流してたよ!

でも夜月のことが気がかりで素直に喜べない。

 

「ダメ・・かな?」

 

「そそそ、そんなことないよ!これからよろしく夕麻ちゃん!」

 

「本当!ありがとうイッセー君!」

 

その後、休日に夕麻ちゃんとデートする約束をし、一度家へと帰った。

 

 

 

 

 

「で?いくら払ったんだ?」

 

「金で作ったわけじゃねぇよ!」

 

「冗談だ」

 

目の前の男、夜月が言った冗談に俺は突っ込む。

夕麻ちゃんと別れた一度家に帰った後、見舞いをするために夜月の自宅へ来ていた。

インターホンを鳴らし、玄関から出てきた夜月は、全身の所々に痣があり包帯がまかれてあった。

親友の痛々しい姿に動揺したが、まだ痛みはあるが安静にしていれば大丈夫なようだ。明日には学校に来れるとのこと。

何があったのかも聞いてみたが聞かないでほしいと言われた。

聞いた瞬間に目から光が消えたから、これ以上聞いたら逆に追い詰めてしまうと思い、聞かないことにした。

話題を変えて俺に彼女ができたことを話し、今に至るというわけだ。

 

「ついにお前に彼女か。おめでとう。イッセー」

 

そう言いながら薄く笑う。

多分俺に彼女ができたことを知って心から喜んでくれる奴って、両親を除いたら夜月だけなんじゃないかな。松田と元浜は・・・

 

「あの二人が聞いたら怒り狂った後に落ち込むんじゃないか?」

 

うん、多分そうだと思う。

俺に彼女ができたことを知った途端、怒りながら詰め寄ってきて盛大に落ち込む二人の姿が容易に想像できた。

だがすまん!松田、元浜!俺は先に夢への第一歩を進む!

 

夕麻ちゃんに告白された時は、夜月のことが心配で素直に喜べなかったが、夜月は大丈夫だと分かり不安がなくなったからか、俺の気分は高揚していた。

それからは他愛もない話をし、明日学校で会う約束をしてから自分の家へと帰った。

 

 

 

 

♦

イッセーが見舞いに来た次の日の朝、俺は家を出て学校へと向かう。

いつもならこの時も音楽を聴いているのだが、家の中を探しても見つからなかったため多分あの廃墟においてきてしまったんだろう。

正直もう一度あの廃墟へ行く気にはなれなかった。

まあどうやってあそこへ行ったか覚えてないから行きたくても行けないが。

おいてきたのは諦めて新しいのを買った方がいいだろう。

今でもあの時のことを思い出すと気分が悪くなってくる。こういう時に音楽を聴けば気を紛らわせて誤魔化せるんだが。

とにかくあの時のことを思い出さないようにしていると俺に声が掛かる。塔城だ。

 

「朝陽先輩」

 

「塔城か。おはよう。」

 

いつも通りの無表情・・・ではなく少しだけ驚いているように見えたのは気のせいだろうか。

 

「おはようございます。昨日は怪我をして休んだと聞いたので心配しました」

 

心配してくれてたんだな。

あまり感情を表に出さないがいい奴だな。

 

「ありがとうな心配してくれて。あと何で怪我してるのかは聞かないでくれると助かる」

 

「わかりました。聞かないでおきます」

 

塔城は了承してくれた。

イッセーや塔城が信用できないわけじゃない。ただあの時のことを思い出したくないんだ。

一刻も早く忘れたい。

 

「そうだ、先輩に渡すものがあります」

 

そう言いながら、塔城は鞄から俺の音楽プレイヤーを取り出し・・・ん?

 

「部活の帰りに道端で拾いました。次からは落とさないように気をつけてください」

 

そう言いながら俺に差し出し、俺は受け取る。

本当にそうなのか疑問に思い、思ったことをそのまま口にだす

 

「道端で拾ったのか。俺はてっきりあの廃墟に落ちてるのかと思ってたんだが」

 

ピクっ

ほんの一瞬、極僅かにだが塔城の表情が変わったことを俺は見逃さなかった。

だが悪い奴じゃないのはわかっているし、塔城も聞かないでくれたので、俺も詮索はしないことにする。

 

「ありがとな、拾ってくれて」

 

「いえ、それじゃあ行きましょうか」

 

何故あの廃墟へ行ったのか、あの異形と関係があるのだろうか。

口にはださずとも心の中で疑問に思いながら、塔城と一緒に学校へ行った。

 

 

 

 

 

♦

「こんな美少女がイッセーの彼女になるなんて有り得ない!」

 

「イッセー!お前いくら払ったんだよ!」

 

「だから金で作ったわけじゃねぇっての!」

 

何処かで聞いた冗談を本気で言われて思わず声を荒げる。

放課後になってから夕麻ちゃんと合流したんだけど、案の定松田と元浜に問い詰められています。

予想通りすぎて逆になんて言えばいいのかわからない。

うん、

まあ、

とりあえず、

 

「お前らも彼女作れよ」

 

笑顔でそう言ってから、夕麻ちゃんを連れて二人から離れ、近くにいる夜月に声を掛ける。

 

「よお!夜月」

 

「おうイッセー。後ろの二人が死んだ魚のような目になっているのには突っ込まないとして、そっちが」

 

「俺の彼女の夕麻ちゃんだ」

 

「イッセー君と付き合ってる天野夕麻です」

 

「朝陽夜月だ。・・・なるほど。確かにイッセーの好きそうなタイプだ」

 

夜月は夕麻ちゃんの胸を見ながらそう言う。

さすがは俺の親友だ。わかってるじゃないか。

 

「じゃあ俺は邪魔にならないように先に帰るよ。頑張れよイッセー」

 

「ありがとな。夜月」

 

礼を言って夜月の背中を見送った。

俺に気を遣ってくれたんだろうな。

 

「じゃあ行こうか夕麻ちゃん」

 

「うん」

 

夕麻ちゃんは俺に笑顔を向ける。

休日のデートが楽しみだ。

彼女もデートも初めてだし、夜月も応援してくれてるから失敗しないようにしないとな。

 

そして休日

 

俺は何も知らないまま夕麻ちゃんとデートに行った。




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