ハイスクールⅮ×S   作:悪魔の魂

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 一年ぶりの投稿。

 もう待ってくれてる人なんていないと思うけどやりたくなった。

 ほとんど夜月の心理描写です。




夜月の考えと不安

「まだこんな時間か」

 

 一誠に彼女が出来て数日後、一誠が彼女とデートしたであろう休日が終わった平日の朝。

 目が覚めた夜月が枕元に置いてある目覚まし時計を確認すると、まだ朝の5時であった。

 休日といっても学校から出された宿題以外に特にやることもなく、一誠は彼女とデート、小猫は休日でも部活があるため、その二人以外に仲のいい友人がいない夜月は暇を持て余していた。

 彼女とデートする一誠はともかく、小猫は部活の終わり時間にでも一緒に過ごさないかと誘おうと思ったがやめておいた。

 小猫が嫌いとか苦手とかそういうわけではない。

 いい友人だと思っているし、一誠ほどではないがそれなりに親しくなれたと思っている。

 ただ、年下の女の子を自分から誘うというのが気恥しく、抵抗感があったのである。

 聞かれれば情けないだのヘタレだの言われるような理由であることは自覚しており、相手が女性でも気軽に話しかけられる一誠を少し羨ましく思った・・・・・まぁ、一誠の場合そこに下心も混じっているだろうから尊敬しているかと聞かれれば微妙なところではあるが。

 そんなわけで外を散歩したり家でゲームしたりお菓子作りしたりと、結局平日と大して変わらない休日を過ごした夜月は少し早めに就寝しており、それが原因でいつもより早く目が覚めてしまったのだろう。

 起きるにしては早いために二度寝も考えたが、今寝て次目が覚めたら遅刻確定等洒落にならないため、このまま起きていることに決めた夜月は、とりあえず朝食を摂ろうと台所に向かい、冷蔵庫から適当に材料を取り出して簡単な朝食を作る。

 夜月自身、料理やお菓子作りには興味があり、今は亡き母に教えてもらっていた。 

 親友の一誠や、甘いもの好きで見た目に反してよく食べる小猫に、美味しすぎて驚かれるくらいの腕前はあった。

 

『いつかは一人立ちしないとね』

 

 料理を教えてほしいと頼んだ時に笑顔でそう言って了承してくれた母に感謝しながら朝食を終える。

 あの時は、いつかは親の元を離れて一人立ちしなければならないという意味で捉えていたが、もしかしたら母は自分や父に何かあって息子が一人になっても困らないようにと、あの時の言葉にはそういう意味があったのかもしれない。

 

 歯も磨き、学校に持っていく教科書等も整理した。

 制服を着ていると妙に落ち着かないため、着替えるのは学校に行く直前である。

 学校に行く準備は整ったが、それまではまだ時間がある。

 

 しかし、特にやることもなければ話相手もいない。

 

「・・・・・」

 

 休日も感じていたが、一誠と小猫に関わるようになってから、こうして一人で過ごす時間がとても空しく、寂しく感じるようになってしまった。

 理由は分かっている。

 二人と一緒にいる時間が楽しいから。

 

 両親が亡くなって転校し、詳しく知らない町と学校で、両親も頼れる友人もいない自分一人・・・1からのスタート。

 それが夜月を追い詰めた。

 せめて転校だけなら・・・両親が生きていればここまで追い詰められることはなく、交友関係も広かったかもしれないし、休日をあそこまで暇だの退屈だのとは思わなかったかもしれない。

 他人にここまで無関心にはならなかったかもしれない。

 現に転校してきて一年近く経つが、夜月が友人と呼べるのは一誠と小猫の二人だけである。

 

 それでも、0・・・文字通り全てを・・・自分の命を捨てなかっただけマシといえるだろう。

 あの時全てを諦めなかったから、生きることを選んだからこそ、こうして小さな幸せを得ることが出来た。

 それが嬉しくて、そして恵まれているとも思う。

 

 だからこそ、音もなく自分一人しかいないこの時間がとても寂しく感じる。

 

「・・・・・」

 

 夜月はテーブルの傍に置いてある椅子に座り、音楽を聴いたり、何度も読んだ漫画をもう一度見返したりしながら時間を潰す。

 その時、小猫が拾ってきてくれた音楽プレイヤーをジッと見つめる。

 そんな夜月の内にあるのは、言いようのない不安だった。

 彼女とデートしたであろう一誠だが、このままあの二人が上手くいけば、間違いなく自分と関わる時間は減るだろう。

 そう考えると残念に思う夜月だが、それ以外にも感じていたことがある。

 これが嫌な予感というのか、デートが上手くいくかいかないか、そんな問題じゃない何かが起きるような気がした。

 そして音楽プレイヤー<これ>を拾ってきてくれた小猫。

 あの時起こったことが夢ではなく現実だというのなら、これを拾ってきてくれた小猫は・・・『裏』に関わっているだろう。

 

「・・・・・」

 

 近いうちにとんでもない何かが起こるんじゃないか?

 その何かに自分や一誠も巻き込まれるんじゃないか?

 

 夜月は、考えれば考えるほど大きくなっていく不安が杞憂であることを、もしその何かが裏に関係しているならば、その時は小猫が味方であることを願った。

 

 

 時計を見てそろそろ時間かと内心呟いた夜月が制服に着替えていると、家のインターホンが鳴った。

 誰が来たのか分かっている夜月は特に不思議に思うことも警戒することもせず、教科書等を入れたカバンを手に持ち、靴を履いて玄関の扉を開ける。

 

「おはようございます、夜月先輩」

 

 そこにいたのは、自分の後輩で唯一の女友達とも言える白髪の少女、塔城小猫であった。

 あの件以降、こうして決まった時間にわざわざ迎えに来るようになり、一緒に登校している。

 良ければ一緒に行きませんか?と最初に言われたが、それが建前であることはわかっており、同時に小猫が『裏』に関わっているのはほぼ間違いないだろうと確信に近い気持ちになった。

 怪しいからと監視しているのか、放っておいたら危険だからと護衛しているのか、はたまた両方か、少なくとも監視は間違いないだろうと考えている。

 本人の意思とは関係なく偶然だとしても、本当に偶然なのか意図的なのかわからない相手からすれば警戒するのは当然であり、詳しく事情を聴いてこないのも、正体のわからない相手を下手に刺激しないようにするためか、それとも・・・都合のいい考え方ではあるが、純粋にこれ以上巻き込みたくないと思ってくれているのか。

 相手の真意がわからず、しかし知ってしまえば今の生活が一変してしまいそうだと考えた夜月のとった行動は、あえて何も言わずそして聞かずに流れに身を任せる・・・つまりは現状維持であった。

 監視されて困るようなことはないし、あれから数日経っても相手からは何も言ってこないことから、こちらから踏み込むような真似をしなければ大丈夫だろうと思った故の判断だった。

 

 だが、監視されるにしても、その相手が小猫で良かったと夜月は思う。

 

 夜月は自分から『裏』に関わる気はなくとも、考えてはいた。

 理由は友人である小猫が関わっていることと、偶然とはいえ関わってしまった自分は少なからず目をつけられているだろうと考えたからである。

 だからせめてその相手が誰なのかだけでも特定しておこうと自分なりに考えた結果、たどり着いたのは『オカルト研究部』であった。

 

 裏に関わっているだろう小猫から考え、思い付いた可能性と繋げていく。 

 

 小猫が自分や一誠に近づいたのも裏が関係しているのではないかと疑うよな考え方をしたが、すぐにそれはないかと否定した。

 三人でやったことといえば、夜月が作った菓子を一緒に食べたり、一誠や夜月の家でゲームしたりと、とても裏に関係しているとは思えないことばかりである。

 家の中を探られたわけでもなければ、意味深な質問をされたわけでもない、完全なプライベートだろうと結論付けた。

 

 次に、その『仕事』の内容。

 これははっきりいってわからない。

 あの件で襲い掛かってきた異形のことを思い出せば、『人外の対処』ぐらいしか思い浮かばない。

 ただ、あんなのを相手にするなら少なくとも仲間はいるだろう。

 

 なら、その『仕事』をする時間帯は?いつ頃?どんな場所で行動する?

 裏に関する仕事なら、表・・・一般の人に知られてはならないだろう。

 自分の中にある情報から考えられるのは、学校のない休日か、もしくは学校が終わった後の放課後・・・『部活の時間』か。

 

 そこまで考えれば、最終的にオカルト研究部・・・正確にはその部の部員達に辿り着くのに時間は掛からなかった。

 

 小猫が所属しているし、部活動で使われる場所は、今は使われなくなり誰も近づかなくなった駒王学園の裏手にある旧校舎だ。

 それに、部活動で旧校舎が使われていること自体は大半の生徒が知っているが、具体的に何をしているかは誰も知らない。

 部員全員が、学園の二大お姉様、王子様、マスコットと知らない者はいないと言っても過言ではないほどの有名人っぷりにも関わらずだ。

 堂々としていながらも上手く隠れているようなその在り方に、学生に紛れて一般人を装っているのではないかと思ってしまう。

 オカルト研究部というのも、本来の目的を隠すためのダミーなのではないかとも。

 現在は使われなくなった旧校舎が活動場所なのも、オカルトを研究するならと納得してしまいそうな場所である。

 

 あくまで推理であり確証なんてないが、考えれば考えるほど筋が通ってるような気がして増々オカルト研究部が怪しくなる夜月。

 

 怪しいからといって探ったり調べる気はないが、監視相手に小猫を選んでくれたことには感謝していた。

 夜月は近所付き合いはもちろん、学校でも一誠と小猫以外との交流は全くといっていいほどない。

 単純に他人には無関心というのもあるが、両親が死んで無気力になったことで他者との交流を自ら拒んだことが原因なのか、若干コミュ障気味になっているのだ。

 一誠と小猫と話す時も最初は何を言えばいいのかわからず、言葉を探すのに苦労した。

 もし相手が小猫でなければ、ここまで気が楽ではなかっただろう。

 

 そう思いながら、いつもとは違って両腕に猫を抱えている小さな後輩におはようと返す。

 

「今失礼なことを考えませんでしたか?」

 

「気のせいだ」

 

 勘がいいのか、内心とはいえコンプレックスを刺激されることには敏感なのか、無表情からジト目になる後輩を見て、『色々と小さい』ことを結構気にしてるんだなと夜月は思う。

 

「やっぱり考えてますよね?」

 

「気のせいだ」

 

 これ以上余計なことを考えていたら痛い目にあいそうだ。

 小猫は小柄な体格とは裏腹に結構力があるのだ。

 ついでに言うと、その小さな身体の何処にそれだけ入るのかと突っ込みたくなるぐらいの食欲があるということも付け加えておく。

 

「センパイ?」

 

「キノセイダ」

 

 さっきよりも声のトーンが下がる・・・というよりドスがきいてるような気がしなくもない小猫に、そんな小猫に若干恐怖したのかさっきよりも早口で否定する夜月。

 これ以上はさすがに自重しようと、夜月は小猫の気を紛らわせるために話題を変える。

 内容はもちろん小猫が抱えている一匹の猫のことである。

 

「小猫、猫飼ってたのか?」

 

「いえ、ここに・・・先輩の家の前にいました」

 

「・・・何故?」

 

「さぁ?」

 

 二人揃って首を傾げる。

 夜月は身を低くして猫を正面に捉え、ジーっと観察するように見つめる。

 灰色で形の整った美しい毛並み、夜の湖に月の光を浴びせたかのように透き通る青い瞳、そしてとても大人しい。

 猫としてはかなりの年月を生きているのだろうか?賢く、理知的な雰囲気を感じる。

 

 だが、なんだろうか?この同時に感じる何とも言えない違和感は。

 普通の猫にはないであろう、しかし悪い気はしない違和感。

 上手く言えない、強いて言うなら・・・・・暖かい。

 

 気づけば、夜月は猫の頭を撫でていた。

 手に感じるモフモフした感触と、心に感じた暖かさが直接手に伝わっているようで心地良い。

 猫は嫌がる様子も抵抗する素振りも見せず、寧ろ気持ち良さそうに目を細めていた。

 しばらく撫でていると、猫がゆっくりと目を開き夜月の目をジッと見つめる。

 夜月も撫でる手を止め、しかし離さず猫の頭の上にのせたままジッと見つめ返す。

 青い瞳からも感じる暖かさは、まるで・・・見守ってくれているようで・・・・・

 

 心地良い感覚に浸っていると、猫の身体が小刻みに震えだした。

 いや、正確には猫を抱えている小猫の身体が震えていた。

 一体どうしたのかと小猫の顔をみると、夜月は内心驚愕するのと同時に動揺した。

 

「小猫」

 

「・・・ぇ?」

 

 声を掛けると、一瞬ハッとした表情になりこっちを見る小猫。

 目は見開かれ、少し息が荒い。

 

「どうした?」

 

「・・・どう、とは?」

 

「・・・泣きそうな顔になってたぞ」

 

 夜月が今までに見たことない小猫の顔だった。

 

「え・・・」

 

 自分でも信じられないといった様子の小猫。

 見開かれた目からよく見える金色の瞳が揺れる。

 目に見えて動揺しているのがわかる。

 そんな動揺が見える表情を隠すように俯く小猫。

 言ってはいけないことを言ってしまったか?と夜月が後悔していると、小猫が顔を上げる。

 そこにあるのは笑顔、いつも騒がしい学園の生徒たちが見れば一発で堕ちてしまいそうな綺麗な笑顔、そして・・・普段の小猫ならまずやらない、故に夜月には無理をしているのがひと目でわかる笑顔だった。

 

「何でもありませんよ、そろそろ行きませんか?」

 

 夜月は驚愕と動揺で小猫の笑顔に釘付けになってしまい気づいていないが、小猫が抱えている猫もまた、小猫の笑顔をジッと見つめていた。

 

 

「・・・そうだな」

 

 呆然として少し遅れて返事をする夜月。

 笑っていても、声からは精神的疲労が感じ取れ、裏に関わっている以上に複雑な事情があるのではないかと予想する。

 それが何なのかはわからないが、一つ分かるのは、それは安易に自分が踏み込んでいいものではないということだった。

 

 猫が小猫の両腕から降りる。

 こちらに背を向けて離れていく。

 タイミング的にもこちらの言葉を理解しているような行動に驚く夜月と小猫。

 猫は一定の距離を離れると振り返り、一鳴きした後に再び背を向けて去っていく。

 まるで『またね』と言っているように感じた二人は、去っていく猫に軽く手を振った。

 

「行くか」

 

「・・・はい」

 

 笑顔で返事をする小猫。

 無理するな、とは・・・言えなかった。

 何も知らない分際でそんなことを言う資格はない。

 

 二人で学校へと歩いて行く。

 あの猫とはまた会うような気がする。

 

 だが、あの不思議な雰囲気で身を包んでいる猫との出会いは、嫌な予感が現実になる前兆にも感じた。

 

「先輩」

 

 声を掛けてくる小猫。

 その声は、今にも消えてしまいそうな弱々しい声。

 どうした?と言う前に夜月の手に肌の感触が伝わる。

 小猫が夜月の手を握っていた。

 

「小猫?」

 

 小猫は俯いたまま何も言わない。

 どんな表情をしているのかは窺えない。

 

「・・・・・」

 

 小猫に何があったのかはわからない。

 

 だが、今だけはこうしていようと、夜月は何も言わずに手を握り返した。

 

 




 目で見たこと、心で感じたことを文字で表現するのって難しい。
 
 次はいつになるか・・・。
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