GS横島‼-煩悩なしで生き残れ-   作:こたろー

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#13

ませてるんじゃなくて、

……………枯れてるだけなんです。

 

そう心のなかで返し、先程より足早に石の階段を上る。

 

「にゃー」

琥珀がやはり一番乗りで、こちらの到着を待っている。

 

(……あぁでも。…………まだ、枯れて…まではいってないか…)

 

「………結構長いのね。この階段」

「はい。でも、ここからの景色は最高ですよ」

 

二番着。

眼下に広がるそれは、夕日を浴びキラキラとしていた。

夕日が当たらずに薄暗くなり始めたところでは明かりが見え始め、街灯も灯っている。

 

(やっぱりきれいだな)

 

青と赤、それとオレンジ。

色が調和し何ともいえない色に染まっている。

 

「…きれい」

いつのまにやら追い付いた令子さんが並んでその景色を見ていた。

 

風が火照った体に気持ちいい。

ちらりと令子さんを盗み見る。

風に靡く髪をおさえる仕草が何故か少し色っぽかった。

 

 

「と、これ以上暗くなる前にやらなきゃ」

「にー」

 

琥珀は祠の脇にお座りしていた。

すりすりと体を擦り付けている。

 

………マーキング?

気持ち良さそうだ。

 

いつもの通りに掃除をして、水とお供えのちょっとした菓子をあげれば、急いだこともあって10分もしないうちにそれは終えた。

 

「ここの神様、何処に行っちゃってるのかしら?これだけの神聖な空気と強固な結界。並みの神様じゃないはずだけど…」

 

敷地内を探索していた令子さんが祠まで戻ってきたが、やはり今回も収穫はなかったようだ。

 

祠の裏側はもう鬱蒼としていて、森になっている。

迂闊に入り込んだら出れそうもない。

そのうち入ってみようとは思っているけど。

 

「ちゃんとお会いしてお礼を伝えたいんですけどね。琥珀も借りちゃってますし」

「にゃー」

 

肩にお座りした琥珀が愛らしく鳴いた。

優しく頭を撫でれば、ぐるぐると喉を鳴らした。

 

「琥珀には私も助けられたわ。……十二支の式神暴走、私じゃ止められなかったもの」

 

「それは俺も同じですよ?…むしろ俺は色んな人達に助けて貰いっぱなしです。だから絶対強くなろうって思ってます。次は俺の大切なものを守れるように」

 

「…守る…か」

 

私は、何を守ろう?

小さい時から唯一私を愛し、守ってくれていた最愛の母はもういない。

 

私には何があるだろう?

何が残っているんだろう?

 

母を殺した化け物は相討ちと聞いている。

復讐すらさせて貰えないのだ。

 

 

琥珀を抱き上げる弟弟子を見つめる。

 

(横島君とであってから色々あったな)

 

出会ってからそんなに経っていない。

だけどすでに、こちらのペースは崩されっぱなしだ。

なのにそれを心地よいと感じている。

いつの間にか私の大切なものに入っている。

 

せめてこの子は、その家族は。

 

私の身近な人達は皆GSだ。

それは命がけの仕事だ。

私の母がそうであったように。

 

私が守らなきゃ、ママの分まで。

私と同じ思いをこの子がしないように。

 

ため息を深呼吸に変える。

もう大分薄暗い。

 

「令子さん、帰りましょう。琥珀も一緒に」

「…うん」

「にゃー」

 

手を優しくだけど、しっかりと繋がる。

私より一回りは小さな…男の子の手。

その手を伝って琥珀が私の肩に上った。

 

全く。

横島君も大概だけど、琥珀も私をあのアパートに帰す気はないらしい。

 

クスリと笑みがこぼれた。

 

少なくともあと5年はしないと私の対象には入らないけど、この子が大切ってとこはきっと変わらないだろう。

 

この子とは長い付き合いになりそうだなと、揃って家路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ?」

「えっ!?」

 

傍目から見れば姉弟仲良く帰宅した俺達。

そんな俺達を実に良い笑顔で両親が出迎えた。

 

「だぁーかぁーらぁ、令子ちゃんは今日から改めてうちに住むのよ」

 

本当に手続き大変だったわぁ。

だけど、持つべきものはコネクションね!

 

頬に手を当てて、満足げな笑顔だ。

 

や、やりやがった。

まぁ、母さんずっと女の子が欲しかったって言ってたもんな。

 

ちらりと横目で伺った令子さんは鳩が豆鉄砲食らったみたいな、らしからぬ顔をしていた。

…この例えって古いのかな。

 

「まぁ、そんなわけで忠夫の隣の部屋が令子ちゃんの部屋になる」

「父さん………」

 

うん、母さんの独断だけじゃ動かないもんな。

 

荷物も運び込んでおいたから、あとで荷解きをしておきなさいね。

そう、言ってにかっと笑ったその顔には曇りがない。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!母の荷物や、もといたアパートは!?」

 

ここでようやっと令子さんが動き出す。

 

「安心して?令子ちゃん。お母さんの荷物何かは唐巣さんが預かってくることになったから」

 

がしりと令子さんの両肩を掴む母さん。

逃がさないわよ?と言わんばかりだ。

 

先生アンタもか。

 

「あと、アパートなんだが、大家さんが若い娘さんの一人暮らし状態をずっと心配してくれてたんだ。家賃の節約にもなるし、学校も少しだけだけど近くなる」

 

そりゃ母子家庭じゃなぁ。

 

「大丈夫よ!令子ちゃんのパパはお仕事の都合でどうしても日本に戻れないみたいだから、私たちが唐巣さんの代わりに身元引き受け人になったのよ」

 

いくら弟子でも、唐巣さんと同居させられないしね。

 

「こう、その…突然言われても」

さっと母さんが令子さんに手紙を手渡した。

 

 

 

 

 

「貴女のママからよ」

 

 

 

 

 

 

少し時間を下さいと言った令子さんは、用意された自身の部屋に籠った。

 

「ただ、貴方は御風呂!早く行ってきなさい!」

「…うん、そうする」

 

 

脱衣所でポンポンと服を脱ぎながら考える。

何とも自分勝手な令子さんの両親について。

 

父親はテレパシーなんかの能力を言い訳に、人から嫌われたくないのもあり最初から関わろうとしない臆病者だし、正義感溢れる母親は娘よりも世界の平和をとった。 

 

 

───────ガラガラガラ

 

原作を知っているからこそ、二人の事情や心持ちは知っている。

 

 

ごしごしごし。

 

 

だけど知っているからこそもっとやり方があっただろうと言いたくて仕方ない。

 

 

ごしごしごし。

 

「にー」

 

ごしごしごし。

 

ザバー。

 

お互いに大切で思いあっているくせに、噛み合わない。

すれ違いがうんでいるこの状況。

 

あ"あもう。すんごく今。

────────イライラしている。

 

ザバン。

 

俺は果たして、来るべき日。

来るべき時が来たとき、感情に流されず、しかし状況に流されず冷静でいられるだろうか?

 

「にゃー」

 

 

 

 

 

琥珀と二人風呂に浸かりながら、にべもなくそんなことを考えた。

………また、一人で泣いてないといいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

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