飛び込んだ建物。
大人に助けを求めれば、そこにいたのはまさかの人。
俺が驚きのあまりに呆けている間、その人たちの対応は早かった。
今、俺は魔方陣の中へ入り、セーラー服の少女の背後に隠されるようにして守られている。
俺の頭は一周回って冷静を取り戻しかけ、緊迫した状況のなか、再度混乱し始めた。
とても見覚えのある二人がいるのだ、目の前に。
GS美神!極楽大作戦の主人公とその先生が。
え、どうなってるんだ?
これ、マジか?
夢ではないと言うことはさっき頬をつねるなんて古典的なことをしたからちゃんと理解している。
アイツは化け物だ。
正真正銘、命の危機だったことにその時改めて気がついた。
一つ気になったのは美神さんが唐巣先生の背中に張ったあれ。
そして現れた化け物は先生を素通りして、俺たちのいる魔法陣の前に迫った。
───────化け物から姿を隠す札みたいなもんか?
ひたりひたりと黒いもやがかかって足は見えないがゆったりと歩いている。
長い手を伸ばせば余裕で此方まで届くのに。
態々こちらの恐怖心を煽ってくる。
嫌なやり方だ。
ニヤリと嫌らしく笑った口から鮫のようなギザギザした黄色い歯がみえた。
ひたり。
ひたり。
美神さんは気丈に構えている。
本当は怖いはずだ。
だってこの子は中学生だ。
そんな子に俺は守られている。
俺、カッコ悪いな。
ひたり。
ひたり。
「君これ、投げつけるだけで効果があるわ」
ぼそりと美神さんが囁き、背に隠して札を渡してくる。
「とにかく時間を稼がなきゃいけないのよ。私がピンチになったら助けてね。その代わり、私が君を守るわ!」
返事を返すより前に、最初の破魔札が爆発した。
爆風で視界が遮れると俺は美神さんに背押され、ミサの椅子の間をすり抜け唐巣先生の元へ走った。
二発目が不発に終わった際、このままじゃ美神さんの首が折られると俺は慌てて化け物の背後から破魔札を投げつけた。
しかしながら美神さんは解放されてもすぐには動けず、俺もノーガード状態。
ヤバい!マジでどうしたらいい!?
長い腕から生える爪が俺を引き裂こうと迫った瞬間、背後から神々しい光が炸裂した。
「………先生、依頼完了です。囮と護衛役でバイト代弾んでくださいよね」
「二人ともよく頑張ったね、もちろん弾むよ」
あっさりと言い放った先生。
しかし、GSからしたらこれが当たり前なんだろう。
命のやり取りをはじめて経験した俺は脱力感に襲われていた。
しかしながら、目の前で起きた出来事が未だに信じられない。
夢を見てるんじゃないかって感じだ。
うん、とにかく凄かったとしか言えない。
唐巣先生あんなに強かったんだ。
だって破魔札1発でも食らえば大概の敵は倒されていたのに、アイツは2発食らってもまだピンピンしていた。
俺が教会に飛び込んでからじゃ、打ち合わせだってできなかったはずなのに二人ともやるべきことをしっかり理解していた。
それも、俺を守りながら。
「美味しい紅茶とクッキーをだそう。それと君お家に電話しておこう、名前は?」
「俺、横島忠夫。助けてくれてありがとうございました!」
緊張の糸が切れたせいで足腰たたない。
カッコ悪いったらありゃしない。
そんな俺を唐巣先生がじっと見てくる。
かなり居心地が悪い。
「霊力が漏れ出ている…」
「!!?先生、それじゃあ」
「ああ、彼もこちら側の住人になってしまったようだ」
悲しそうな顔をする先生と、やってしまったと言わんばかりの令子さん。
こちら側の住人=GSがどんなに危険な仕事かを、二人はその身をもってよく知っている。
だけど、原作の横島だってその世界に足を踏み入れていた。
大丈夫。
ちょっとその時期が早まっただけだ。
「教えて下さい、アイツらを倒す方法を」
「…辛く厳しい道になるよ。それでも君が望むなら私たちは協力を惜しまないよ」
この日俺は唐巣先生に弟子入りした。
つまりは美神さんの弟弟子となった。